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死にたがりの魔王様!!  作者: ノアちー
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遥か昔の物語2


勇者達が少女が捕らわれた、悪漢どもの隠れ家にたどり着いたのは夜も更けた深夜だった。


少女のすすり泣く声が微かに聞こえ、2人の怒りは頂点に達する。


されど、少女の身を案じ闇にその身を潜め、少女を助けだす為に最善を尽くした。


悪漢どもが眠りにつくのを静かに待ち、焦る気持ちを抑える。


隠れ家の中から一切の音が消え、見張りの者が時折だす、あくびの音と虫の声だけが辺りに響く。


勇者達は音もなく見張りに近づき、その夜の静寂を乱すこと無く天誅を加え、静かに隠れ家の中へと入っていった。


隠れ家の大きさからして、部屋は多くても4つ、しかし恐らくはこの入口の奥は大部屋になっているようで、3つ、大部屋に残り悪漢どもののほとんどと、愛しの娘が捕らわれていることだろう。


そーと扉の隙間から中を覗き見て、少女の位置を確認する。少女以外の気配は4つ、しかし、1人の姿が扉の位置からでは見えなかった。


中に入ってきてしまった以上、もう時間はかけられない。


2人は意を決して突入する事を決意した。


静かに、されど素早く扉を開き勇者が扉の近くで寝ていた男を切り伏せる。それとほぼ同時に妻が魔法で娘の近くにいた男を切り裂いた。


しかし、上手くいったのはここまでだった。


手間にいた男が何かを喚きそれに勇者が切りかかった時、姿が見えなかった男がすっと立ち上がったのがわかった。


運悪く、その男は少女のすぐ後ろで寝ていたのだ。


妻の魔法は間に娘がいる為放てない。


既に手には剣を持っている、男も何かしら喚きながらその凶刃は少女へと吸い込まれていった。






そして、






少女の真なる「異常」が明らかとなった。






まず、妻の悲鳴が木霊した、自らの最愛の娘の腹から無骨な刃が生えてきて、真紅の血が滴り落ちてきているのだ、いつくの修羅場を潜ろうとも、母親に耐えられるものではない。


同じく悲痛な思いに胸を痛め、さらなる怒りを瞳に宿しながらも勇者は見ていた。


自らが愛する娘のその真紅の瞳からは、生気が抜け落ちることは一切なく、むしろその紅い輝きを一層と強め光輝くそのさまを。


それは、とても死にゆく者の瞳ではなく、神秘的で妖艶な美しさを醸し出し。この極限の状態の中でさえ目を離せず思考を停止させた。


そしてそれが、勇者の見た最後の光景となった。




攫われた少女は泣き疲れて眠ってしまっていた。


幸いな事に、少女を攫った悪漢どもは少女にはそれ以上手をあげなかった、大切な人質ということもあったし、少女の幼い容姿から女性として見られる事もなかった。


それでも、彼らの機嫌1つで自分の身がどうなってもおかしくないと分かっている少女はただただ恐怖した。


少女は男の1人の喚き声で目をさました。


暗闇の中、その瞳に映ったのは血を流して倒れる男が2人とそして、今まさに父によって切られるであろう1人の男だった。


そう、父だ。愛するお父様、勇者として世界を救いいつも自分に優しい父。


そして、その傍らに母の姿もあった。愛するお母様、厳しい時もあるけれどいつも自分の事を考えていてくれる母。


しかし、2人の顔は歪んでいた、お父様の顔は強ばり、お母様の顔は絶望に見開かれていた。


不思議に思っていると、少女の下腹部に激痛が走り、そこを見ると無骨な剣が自分の腹を割き真紅に濡れていた。


次の瞬間、轟音が鳴り響き、建物が目の前の父と母が、自分の周りの全ての物が勢いよく吹き飛んでいった。


自らを刺し貫いていた刃も一緒に吹き飛ばされ、少女は1人座り込んでいた。


下腹部の激痛は消えてはいないが驚くほど弱くなっている、まるで刺された事実などなかったかのように。


目の前には吹き飛ばされ、壊れた木材の残骸と両親と悪漢どもの骸。


死んでいるのは明らかだった、みな一様に全身に無数の貫き傷とおびただしい量の血を流している。


目の前の光景が理解出来ずに後ろを向けば同じく無数の貫き傷を作り絶命している骸が1つ、傍らには砕けた血まみれの剣が落ちていた。




そう、これこそが少女の真なる異常、いや「異能」。


痛覚こそは正常にあるものの、決して死ぬ事がなく、壊れることもない不死身の体「不滅の美(ヴィーナス)」と。


自らの命の灯火が消えぬ限り、一定以上の痛み、または明確な意思のある攻撃を受けた100倍の威力で自らの周囲一体に全自動で反撃する「不可神領域(タナトス)」であった。


しかし、幼い今の少女にはそれがわかるはずもなく。


少女は目の前の両親の死を受け入れる事ができず、これはどんな悪夢なのかと、泣き続けるのみであった……。



その後、彼女はいったいどうしたのか。


それは今はわからない。


しかし、この時から5000年ほど時は流れた今でも、彼女はその美貌をそのままに生きている。


決して老いず、死ぬ事が出来ないことを嘆きながら……。



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