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bukimi

留守番電話

作者: yuyu

 マフラーが手放せない季節に入った。昨日から、雪もちらつき始めている。冷え切った両手をこれ以上冷やさないように、赤い毛糸の手袋をつける。


彼から昨年の誕生日にプレゼントしてもらった物だ。首に巻いているマフラーも同様に誕生日を彩る為にと、優しい彼が買ってくれた。


 私は今、繁華街の道沿いにうっすらと積もっている雪を眺めながら、スマートフォン専用の店舗へと歩いて向かっている。


 理由として、もう少し今の料金よりも下げて利用したいこと、機種変更を行いたい事の二点が挙げられる。


 高校生の身分では、学校の決まりでアルバイトは不可。両親からのお小遣いはあるが、服や友達との遊びですぐに無くなる。スマートフォンの料金は、母が一緒に払ってくれていたが、アプリの課金・通話代等がたたり、ついにはお小遣いの中から、自分で払うようにと今月から言われていた。


 「お小遣い少ないのに、無理だよ」


 半ば諦めながらも、店舗に着いた為、店員と相談し、もっと安いプランや機種変更等の手続きを行った。この料金ならぎりぎり払い続けていけることも確認済みだ。店から出ると私は盛大な溜息をついた。


 「何であんなに説明長いんだろ。途中から眠くなってきたから、あんまり聞いてなかったけど、安くなったしラッキー!」


 店員に相談すると想像通り、膨大なプランの種類についての説明や、機種の性能について等話が続いた。


 私は、一言一言に対し、曖昧に返事をしながら説明を聞いていると、とても安い料金で今後は支払えることになった。


 今後の料金についての不安感が払拭された為か、家に着くまでは鼻歌を口ずさみながら、歩いていた。


 新しい機種とプランに変えて、数週間は経ったであろうか。見知らぬ番号から、電話がかかっていた。一回だけだったので、初めは無視をしていた。


しかし、かかってくる頻度が多く、一度だけかけ直してみたが、無言。何も音が聞こえない。そのような状態が続いた為、着信拒否を行うべきか悩んでいた。彼に相談すると、


 「そんな電話かかってきたら、俺が怒鳴ってもうかけてこないように言うよ」


 そう言ってもらえたので、次の日、また見知らぬ番号からの着信があった為、彼にすぐに電話を取ってもらった。


 「ずっとしつこいんですよ!あんまりかけてくるなら警察呼ぶからな!」


 そう怒鳴りつけるとすぐに電話を切った。さらに、着信拒否の設定まで行ってくれた。


 「もうこれで電話かからないはずだ。また何かあれば相談しろよ」


 彼はそう言って、私にスマートフォンを渡してくれた。夜も遅くなってきたので、彼と別れ、家路に向かっていた。スマートフォンに着信がある。また、知らない番号からであった。


 「さっき、着信拒否してもらった番号なのにどうして!?」


 驚きを隠せないまま、私はスマートフォンの画面を見たまま固まってしまった。着信は途絶えたが、留守番電話があるという通知が表示された。恐る恐る、留守番電話のメッセージを再生する。


 「……氏名は片岡真矢。現在はE高校に通っている。家族は父と母、妹が一人。血液型はA型。髪が肩までの長さで薄茶色」


 メッセージはそこで終わっていた。声はまだ若い男のようであった。私はメッセージの内容に驚愕した。全て、合っているからだ。


 「いやああああああ!!」


 恐怖のあまり、スマートフォンを地面に叩き付けた。パリンっと割れる音が響いた。とっさに拾い直し、画面を確認する。画面には斜めに大きな傷が入っており、画面が見えなくなっていた。電源ボタンを何度押し直しても画面に明るさが戻ることは無かった。


 自宅に着き、母に今までの着信やメッセージについて話をするも、信じてもらえず、自分で落としたのなら、自分で買い替えなさいと言う始末。


 「もう踏んだり蹴ったりだよ」


 一人でにそうぼやきながら、先ほどのメッセージについて考える。さっきのは何?着信拒否を行ったのに、また違う番号でかかってきた。メッセージの内容が全て合っていたことが何よりも気持ちが悪い。


 「そうだ!番号変えたらいいんだ!」


 自分の番号さえ変えれば、もうあんなにも気持ち悪い着信や、メッセージが残ることも無いだろう。私は、はやる気持ちを抑え、明日の休日にまた店舗に行くことを決めた。


 翌日、この前機種変更を行った店舗に入り、店員に自分の番号を変える旨を相談した。すぐに受付へと案内された。椅子に腰かける。目の前にいる、営業スマイルを浮かべた店員が、聞き取りやすい声音で私に話かける。


 「今回は番号を変えられるとのご相談でお間違いないでしょうか」


 「はい……あと、画面も割れてしまったので交換もお願いします」


 「畏まりました。差し支えなければ、今回番号を変える理由をお伺いしてもよろしいでしょうか」


 その言葉を聞いた途端、脳裏にメッセージに残された男の声が浮かんだ。


 「実は、知らない番号から何度も着信があって。一度、着信拒否までしたんですけど、

また番号を変えて着信があったんです。さらに留守番電話のメッセージの内容も気味が悪くて」


 私の言葉を聞いた店員の顔が怪訝な表情へと変わっていく。たまらず、私は店員に問いかけた。


 「どうされたんですか」


 店員はうろたえながらも、ゆっくりと言葉を述べていく。


 「お客様、失礼ですが、前回のプランを確認させて頂きましたところ、留守番電話のサービスは含まれておりません」

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