表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼のアクシア  作者: 館 阿木夫
7/8

007 変化~ それぞれの思惑~

    





「はい、解りました。当社からも調査チームを派遣致しましょう」

「ふぅ〜、やれやれ」


 ここは西山インダストリの社長室。複数のモニターが備え付けられている社長の机と、観葉植物が目に付くだけの殺風景な部屋に西山博士の姿があった。部屋の左手の壁一面にはモニターが備えてあり、バストアップ状態で此方を見詰める軍人の姿が映っている。通信が終わったのか映像が変わり、モニターには戦闘機の企画書の様な設計図がスクリーンセーバーとなってランダムに現れては消えてゆく。西山博士はモニターには目もくれず、机の上に両肘をついて指を組んだ。彼はこの姿勢が一番集中出来るからだ。

「博士、研究開発室のドクター・クラークより報告が有るそうです」

「解りました」


 間髪入れず彼の元に社内連絡が入る。西山は机に備え付けのコンソールを操作する。壁一面にモニターが現れ、白衣の女性が映し出された。彼女はAI戦闘機の脳波からメンタルを解析し管理する医師だ。


「博士、先日の事件のデータから興味深い物を発見しました」

 それはアクシアの飛行記録から解った隼勢とのシンクロ率だった。

「初めてとは思えない好成績です」

 ドクター・クラークが提示したデータには、以前アクシアのパートナーだった男とのフライトデータも添えてあったが、特に見るべき所もない平凡な数値を表している。それに比べて隼勢とのデータは荒削りだがアクシアとの相性は素晴らしく、もっと調べてみたいと思わせる面白いデータだった。


「ふむ……そうだ!どうせなら……」

「博士?」

「クラーク君、一時間後にミーティングを開く。用意出来るだけ良いから、色々な比較データを用意してくれ」

「承知しました」

 返答と共に画面が元のスクリーンセーバーに戻る。西山博士は背もたれに体を大きく仰け反ってにやりと微笑んだ。


「まさか本当に白馬の王子様を(さら)ってくるとはね」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 この火星は有史以来、大国間の様々な思惑が絡んだ歴史を辿ってきた。


 地球歴・西暦千九百六十年代、アメリカ合衆国とソビエト社会主義共和国連邦の二大勢力が相次いで火星の探査計画を表明した。


 同歴・千九百七十三年、ソビエト連邦が送り込んだマルス三号が人類史上初めて火星への着陸に成功。


 同歴・千九百七十六年、アメリカのバイキング一号が着陸に成功。火星の地表面の写真の撮影に成功する。


 同歴・二千十八年十一月、アメリカ合衆国は探査機インサイトが通算七機目の着陸に成功したと発表。インサイトは地中奥深くに巨大な氷の塊の様なものがあることを確認。研究者達の学説を裏付ける歴史的大発見を次々ともたらした。


 同歴・二千四十八年五月、アメリカが惑星移住計画を発表。国連もこれに参加を表明。


 同歴・二千六十五年八月、世界二十ヶ国の人員で構成された国連開拓団が火星に初めて入植する。


 以来、様々な大国や諸国連合が競って火星開拓に乗り出し、それはやがて新たな領土問題を引き起こすことになる。



 ──同時刻  アメリカ連邦国・ニューアメリカ州 州都バイキング郊外


 いくつもの巨大な工場が軒を連ねる敷地の一角に、これまた巨大オフィスビルが数棟建ち並んでいる。その中でも一際目立つ重厚なビルディングの”ある一室”に彼等はいた。


「なにっ…… もう一度言ってくれないか?」

「はぁ、それが」

「『NHI』に送り込んだエージェントとは連絡がとれず、例の新型試作機の略奪にも失敗。おまけにずっとマークしていた『コネクティッド』は消息不明ときた。説明したまえ」

「はい……。エージェント、コードネーム『ドナルド』がNHI社に潜入し、試作機『アクシア』を奪取する事に成功したところまでは確認できております。しかし、合流地点に向かう途中で何らかの妨害にあい、通信がロストした模様です。そして例の件の『コネクテッド』の少年ですが、マークしていた工作員諸共、あの核攻撃に巻き込まれた可能性が……」

「もういい!下がりたまえ」

「はっ!はいっっ!」


 日頃は冷戦沈着な振る舞いが目立つこの男も、腹心からの報告に怒りをあらわにしていた。

「キャサリン、居るかね?」


 男がその場で独り言のように呟くと、目の前に綺麗なブロンドヘアーの女性がホログラフィーで浮かび上がる。男は顔色ひとつ変えず的確に指示を伝える。


「はい、ボス、如何致しましたか?」

「彼を呼んでくれないか」







久しぶりのアップです。今後は仕事に負けず、少しづつコツコツと執筆していきたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ