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僕はハーレム高校生。  作者: 首領・アリマジュタローネ
【夏編─街デート】
96/279

僕は休日にサッカー部のマネージャーと街デートをするイケイケハーレム高校生。


 デートというのは[親しい仲の男女が日時を決めて、遊びに行くこと]を意味している。お互いに恋愛感情がなくとも、親しい仲の男女であれば、その時点でデートなのだ。


 単に遊びに行くだけなら、相手側の要求に準ずるだけで問題はない。


 けれど、名目上今回の目的が『デート』であるなら話は変わってくる。デートは生きるか死ぬかの戦争だ。デート・ア・ライブともいう。


 女性はデートに行く際「男性がどのようにして自分をリードしてくれるのか」を判断していると聞く。

 

 ならば、彼女もきっと、内心ではこのように思っていることだろう。



(脳内・柳葉 明希[悪])

『あらあら、ガッキーさんったら。仮にもあたしの彼女を名乗るだなんて、随分とイキってくれているじゃないの』



(脳内・柳葉 明希[純粋悪])

『いいわ。特別に試してあげましょう。アンタがどれくらいの男なのか、()()()()()()()()()()()()()()()雑魚に用はありません。せいぜい失望させないでね。ヘタレでビビりの童貞クン……フフフ』



 ふむ、中々のやり手である。



 まさか、この新垣 善一が誰かに試されるだなんて思ってもいなかった。はっはっは、いいぞ。やってやろう。挑戦に乗ってみせようじゃあないか。


 柳葉 明希。君にその覚悟があるのであれば、僕も腹をくくろう。本気でやってやる。全力を出して、アンタを楽しませてやる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《差出人: ☆AKI☆》


 明日の予定を送っておくね〜〜\(^o^)/ 遅刻は厳禁DEA━━(σ ´゜д゜)σ━SU!!


 10時半しゅうごう! (`・v・´)v


 11時えいが! ( 'ω' )/


 13時おひるごはん!щ(゜д゜щ)


 14時しょっぴんぐ! (๑`・ᴗ・´๑)b グッ


 17時からおけ! ( ✧Д✧) カッ


 19時ばんごはん!(•ᴗ•)


 ご飯食べたら、かいさん! (* ̄▽ ̄)ノ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 昨夜、送られてきたメッセージの内容を再度読み返して、僕は自宅を出る。時刻は午前7時前。集合場所である駅前に到着するのは、30分後くらいだろう。


 遅刻厳禁だと言うのだから、早くから集まっておくことにした。デートの下見でもしていれば、三時間なんてあっという間に終わるだろう。


 今出来るうる限りのオシャレもしてきた。ジョガーパンツを履いて、腕時計も身につけている。朝ごはんだってきちんと食べているし、頭は冴え渡っている。準備は万全さ。



「……いい天気だな」



 週末の土曜日。時計台の下。ポケットに手を入れながら、上空を見つめる。


 僕が敬愛する天気予報士、今泉(いまいずみ)さんによると、今日は比較的穏やかで過ごしやすい気温だとのこと。彼が言うのだから、絶対だ。


 頭上の白いキャンバスに余計なものなど何一つとして含まれていない。全てが絵の具一色で染まっている。降水確率ゼロパーセント。所謂、大晴天。モーニングサンデー。



 真夏の日差しを浴びながら、セロトニンを放出させる。到着まで残り三時間。僕はたった一人で、待ち合わせ場所を確保し続ける。



 ああ、ほんと。

 ──絶好のデート日和だぞ。



 ※ ※ ※ ※ ※



「495人……と」



 流石に疲れてきたので、一旦背中を伸ばして休憩を取る。


 かなり早く到着し過ぎたせいで、やることがなくなってしまった。デートの下見も朝早くでお店が閉まっていたので、やれずじまい。今はこうして【改札から出てくる人の数を数える遊び】をやっていた。


 何時からやり始めたかは忘れたが、もうすぐでキリの良い五百人だ。三時間以内でこれなら多分多い方だと思うが、平均数値がわからないので、データとしては不十分だ。


 時計の時刻が既に10時半を過ぎようとしている。おや、遅刻かな……?



「あ、496人、498人……ちょっと待て? 今、何人通った!?」



 しまった、見逃した! せっかく500人になるまで数えようとしていたのに、僕が時間に気を取られている内に、隙をつかれてしまった。……くっ、やるな。街の人々め。


 ちょっと面倒になってきたので、四捨五入して500人にしておく。記念すべき500人目は赤服のおじいさんだ。おめでとうございます。賞金はございません。



「えっほ、えっほ……」



 と、おじいさんの後に続いて、見覚えのある姿の少女が改札を通った。拳をグーにして、小走りをしている。


 あの行動パターンが読めない感じ、間違いない! 柳葉 明希だ。せっかくだから501人目にカウントしよう。賞金もあげちゃうよ。



「おーい、こっちこっち!」


「あ、ガッキー……! ごめん、遅くなっちゃった!!」



 片腕を上げて呼びかけると、尻尾を振った犬みたいに近付いてきた。ベンチから立ち上がって、彼女の服装を観察する。


 黒のリュックサックに、白のゆったりとしたTシャツ。ストライプの少し長めのスカートにスニーカー。首元にはリボン。本日はレモンイエローのようだ。


 ここまででも「あぁ、お洒落だなぁ」と見惚れるレベルなのだが、もう一つだけ特徴的な小物があった。



「準備に時間が掛かっちゃって……。ガッキー、待った?」


「ううん、今、来たところだぞ」



 小走りの彼女にそう答える。本当は三時間前から変なゲームをしていたのは内緒だ。



「ほんと? よかった! 遅刻厳禁だって言ったのに、やっちまったぜ……うへへ」



 急いでいたからか、息を切らしている。頭上に被っていた紺のキャップを脱いで、ハンカチで汗を拭っている。そう。彼女は本日、おニューのお帽子を被ってきていたのだ!



「入学式でガッキーと初めて会った時も、こうやって遅刻してた気がするー」


「そうだっけ?」


「そうだよー」


「ていうか、なんだかいつもと雰囲気が違うな。お洒落だ」



 昔の話はさておき、今はデートに集中しておきたかった。個人的に気になっているのが、このキャップである。夏っぽくていいな、これ。どこで購入したんだろう。



「え? ホント!?」


「本当だ。特にその帽子が素敵だと思う。どこで買ったんだ?」


「これ? どこだっけ? 忘れちゃった、えへへー」



 テヘペロと舌を出してはにかみながら、スカートの丈を掴んで、ひらりと身を回す。可憐なステップで服装を見せつけてくるが、それより帽子が気になった。


 小物類大好きっ子な自分にとって、こういうちょっとしたアイテムは興味の対象の一つであった。日差し予防も完備だなんてな。これは善一的にもポイントが高い。



「改めて見ると、やっぱり明希って可愛いな。とっても可愛い。帽子だって似合っているし、ベリーキュートだ」


「ちょい、ちょい。ガッキーさん、アンタ褒めすぎよぉ〜」


「いや、冗談抜きでガチ可愛い。素敵だ。今日もサラサラのショートヘアーだな。リボンもいい色をしている。帽子だってすごく似合っているし、ベリーラブリーだ」


「も〜! いいって〜。はずいから〜」



 身体をクネクネし始める。まだこの程度ではやめない。もっとだ、もっと言おう。



「爪も綺麗だし、照れてる顔もいい。なんだか、大人っぽい雰囲気になった? いつもと違うな。肌もきめ細かやかだし、どの角度からみても、美人だ。なんでこんなに整った造形をしているのか、疑問で仕方ないぞ。スキンケアを怠っていないんだなー。すごい!」



 何度も、何度も、しつこいほどに褒める。彼女はご近所のおばちゃんみたいな反応をして「あら、やだ」と手を振っていた。



 ……よし、いい調子だ。



 大概の場合、女性はデートとなるとお洒落をしてくるのは確実だ。異性と二人で歩いているだけで人目はつくのだから、ある程度見られることを想定した上で、普段と違った着こなしをしてくるであろう。


 そこに気付けるか、どうかが重要だ。


 例えば髪型が変わっているのなら、「その髪似合ってるね」と褒める。服装が似合っていたら「いいね、可愛いな」と言う。褒められて嫌な気持ちになる人間はいないのだから、きちんと声に出すことが肝心だ。


 せっかくのデートである。やはり、彼女にも気分よく過ごして貰いたいものだ。




「じゃ行くよ。ほら、おいで? 僕の可愛い子猫ちゃん」




 ある程度、褒めたので、早速デートを開始させる。男らしさをアピールしながら、エスコートする。デートだから頑張らなくては。


 優しく微笑みながら、彼女に手を差し伸べると。



「えぇ……」



 ドン引きされた。うん、やり過ぎた。


 ※ ※ ※ ※ ※



 駅前を抜けて、繁華街へ向かって歩き出す。週末なので混雑していることだろう。


 今から訪れるのは、県の都心部に位置する『秋花原あきはなばら』という街だ。商業施設と高層ビルが立ち並ぶここは、飲食店を筆頭に沢山のお店が点在していて、娯楽の楽園として知られていた。



「ったく。ガッキーってば、時々おかしな事を言うよねー」


「悪い、調子に乗りすぎた……」


「急に何を言うのかと思ったら、なんだい!『 僕の可愛い子猫ちゃん』って!あたしじゃなかったら、ドン引きしてるよ!?」


「……ちょっとノリで」



 彼女に「ていてい!」と裾を引っ張られながら咎められる。宗の影響だろうか。悪ノリが増えている気がする。


 お説教をされながら、ビル群の間を抜けていく。やっぱり人が多いな。外国人が客引きしているし。



「子猫ちゃんだなんてさ。そんなにあたしを可愛がりたいの? ガッキーの性癖?」


「……やめてくれ。恥ずかしい」



 俯きつつ、静かに制する。性癖とか女子高生が言ったら、ダメだかんね?



「あれれー? あんな事を言っておいて、照れてるのー? なら明日、部活の皆に言っちゃおっかなー。ガッキーに『ほら、おいでよ。僕の可愛い子猫ちゃん。いっぱい可愛がってあげる』って言われたって」


「そこまでは言ってないぞ!?」


「えー、そうだっけー? 可愛い子猫ちゃんにはわかんないなー」



 うぬぬ……こやつ。弱みを握りよったな。苦しゅうない!苦しゅうないぞ!



 意地悪な顔をして、僕にちょっかいをかけてくる可愛い子猫ちゃん。いや、部活のみんなにだけは言わないでくれ!? 安田くんに絶対変なあだ名を付けられるから!【出会い厨(笑)】とか【ペット愛好家】とか【DMですぐ自撮り写真を送ってくるヤツ】とか!



「……ごめんなさい、なんでもします。だからさっきの発言は忘れてくださいお願いします許してください」



 両手を合わせて、許しを請う。格好は悪くて、情けないが、プライドと尊厳をかけて、ここはなんとしても口封じをしておかなくてはならない!


 僕の小物感溢れる行動が満足だったのか、明希が立ち止まった。電柱の前で「うーん、どうしよっかなー」と小首を傾げている。あかん……これマズいかもしれへんでぇ……。



「ゴクリ!」



 生唾を飲み込むと、明希は両手を腰に当てた。「今なんでもするって言ったよね?」と言いだけな表情で、薄ら笑う。



「なら、ガッキーくんにはひとつだけ、お約束をしてもらおっかな?」


「約束?」



 ん? 一体なんだろう。財布になれってか? 貯金はあるから引き出せば金はあるけど、ブランド物とかはちょっと……。



「うん!」



 小指を立てて、明希はウットリとした表情で続けた。




「今日一日だけ、あたしの彼氏になって」




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