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僕はハーレム高校生。  作者: 首領・アリマジュタローネ
【雨空。ーrainy dayー】
86/279

Side:E


ーーーーーー



 ──私は、ずっと抜け出せずにいる。



「……」



 帰宅してからすぐに思うのだった。自分の心が酷く動揺していることに。



 何故ここまで揺れ動かされているのか。考えなくとも、答えはいつも傍にあった。



 部屋に戻り、景色を眺める。外は相変わらずの単調な空模様で、なんの変化も感じられない。



 雨を嫌う人もいる。雨が好きな人もいる。私はそのどちらでもない。



 正解と不正解の狭間に取り残されている。そこからずっと、抜け出せずにいる。



「……はぁ」



 雨の足音を遠くで聞きながら、ため息をつく。狭い天井を見上げていると、心が押し潰されそうになる。



 あの子のはとても可愛かった。

 

 あの子のお気に入りは、私よりも明るくて綺麗だった。水玉模様がよく似合っていた。


 まるでこれからの雨を楽しみにしているようで、キラキラと輝いて見えた。



 それに比べて、私はどうだろうか。



 脚はすっかり折れて、とてもじゃないけど、使うことなんてできない。一体、何が違ったんだろう。



「……」



 枕に顔を埋めて、ひとり考える。


 取り留めない妄想を繰り広げる。

 


 それでもやっぱり答えは出なくて、私はそこで考えることを放棄する。



 思考停止のほうが、苦しくならないから。



 自信がある人が羨ましい。諦めることに慣れてしまうと、全てのことがどうでも良くなってくる。悲しいとか、悔しいとか、そうやって思えるだけ、まだマシ。



 ぼんやりと時間が過ぎるのを待っている。好きだった春も、いつの間にか終わってしまった。もう次は来ない。



 ──桜が、再び咲くことはない。



 もしも、だなんて願うこともやめた。簡単に断ち切られるモノを、わざわざ欲しがろうとも思わない。どうせ、わかりっこないんだから。やっても無駄なことはもうしない。



 なにも要らない。求めていない。

 平穏だけが、寄り添ってくれればいい。




「……バカバカしい」




 小さな言葉をその場に吐き捨てる。

 誰もいない暗闇へと放り投げる。



 殺した息で呼吸を止めて、横目でチラリと向こう側を見る。



 まだ雨は降り続けていたけど、



 どこか心は穏やかになった気がした。




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