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僕はハーレム高校生。  作者: 首領・アリマジュタローネ
【雨空。ーrainy dayー】
83/279

Side:A"


ーー


 キンコンカンのチャイムが鳴ったので、あたしは颯爽と部室まで駆けてゆきました。すぐ行きます! 走っていきます!今日は観たかったドラマの再放送があるので、早く帰ります!!!! うん! 未来で待ってる!!



「んーー?」



 ジャジャジャーンと部室まで顔を出しにきたけど、パイセン達はいなかった。いないのなら帰ってもいいかなーー??



「よし、帰ろう! レッラーゴー!!」



 右手を高らかにあげる。ボクシングって勝った方が腕をあげるじゃないですか? でも、天秤は負けた方が上がるんですよ。それっておもしれぇなと思って。


 どこかで聞いたことのあるような名言を残しながら、校舎に入っていく。わざわざグラウンドを横切って帰ると意味もなく濡れてしまうので、こうやって帰る方が効率が良いのです。あたしって、賢いなぁーー!!




【一年生成績(男女総合)】


・学年5位 玉櫛 宗

・学年10位 海島 菜月

・学年17位 新垣 善一

 〜 〜 〜 〜 〜

・学年89位 安穏 のどか

 〜 〜 〜 〜 〜

・学年152位 葵 渚

・学年186位 安田 元久

 〜 〜 〜 〜 〜

・学年241位 井口 義雄

 〜 〜 〜 〜 〜

・学年389位 源 蓮十郎

・学年390位 茜 穂乃果

・学年392位 柳葉 明希(全400人中)




 廊下を走っていると、途中で見覚えのある姿を発見する。よっ、と後ろから声をかけようと思ったけど、驚かせるのは悪いなぁと感じたので、やめました。



「おやおや? なぎたんではねぇか」


「あ、明希ちゃんっ……!」



 そこにいたのはウチのクラスの美少女、葵 渚ちゃんでした。ひとりでトボトボで歩いています。


 なぎたんはとーっても可愛いクラスメイトの女の子です。ハゲダニには可愛い子がいっぱいいるけど、あたしはなぎたん推し。人気投票があればCDいっぱい買って貢いでいることでしょう。萌え萌えキューン。



「どしたのさ。こんなところで」


「え、えっと……」



 なぎたんが腕をギュッと握りながら、暗い顔をしている。どうしたんだい。イヤなことでもあったのかい? お姉さんにご相談してみなYo! Yo! ですよ! ですよ。の最近はー、カジサックをお手伝いしてるYo!



「えっとねっ……! 図書館に本を返しに寄ろうかなって」


「にゃるほど〜」



 丁寧に教えてくれた! にゃるほど、夏休み前だもんなー。


 なぎたんは文学女子です。休み時間もよく難しそうな本を読んでます。たぶんね、頭いいんだと思う。勉強できるよ、あの子。


 それにしても、いいなー。あたしゃ憧れちまうよ。そんな熱中できる事があるなんて。


 放課後、夕焼けに染まった物静かな教室の中でひとり黄昏ながら読書をする。ステキなシチュエーションだ。彼氏との待ち合わせまでの時間潰しだったら、余計に最高なんだけどね……。ウヘヘ。



「これから帰るところっ……?」


「そそ! ちょっくら用事がありまして」


「そうなんだっ……! じゃあ、またね!」


「あいあーい」



 敬礼をして、その場を後にする。もしかしたらなぎたんは一緒に帰りたかったのかなー? と頭の隅でほんのちょびっとだけ想像したけど、気にしないことにした。


 それにしても元気なかったみたいだけど、大丈夫なのかなー? 雨きらいなヒト?



「やっべ! 電車が間に合わぬ!」



 時刻を確認してから、もう一度走り出す。



 ×××


 しばらく人の少ない廊下を通っていると、またしても知り合いが前から歩いてくるのが見えた。



 ガッキーこと、新垣 善一くんだ!



 ガッキーはクラスでも人気の男の子。よくみんなが優良物件だと噂しています。ガッキー、カッコイイもんねー。親しみやすいし、面白いし、なんだか可愛いし。


 同じ部活に入っていると、よく友達から色々と質問されることがある。『どんな人?』だとか『お近づきになれるだなんて、羨ましい!』だとか。皆の衆、欲望に忠実!


 それを聞くたびに、ガッキーは人気者なんだなぁとつくづく思うあたしなのでした。でも誰も部活のマネージャー入らないよね。そこまでしんどくないんだけどなー。


 ガッキーと話すのは楽しい。だけど、あの手のイケメンは競争率が高いし、カッコよすぎるから、あたしのタイプではなかった。あたし的にはクリスチャン・ベールみたいな男性がいいかなー。なんつって。



「ガッキー、お疲れsummer vacation!」


「おぉ、どうした。急ぎか?」


「んー、ちょっとねーー!」



 急ぎ足で横を過ぎ去って行く。振り返らないあたしはまるで風のようです。疾風迅雷っ……! 音速を超えるっ……! 0.1秒縮めんのに一年かかったぜっ……!!



 ※ ※ ※ ※ ※



「のどちゃんだーー!」


「明希ちゃん」



 次に登場したのはのどちゃんこと、安穏のどかちゃんでした。あたしが珍しい生き物を発見したようなテンションで話しかけると、ちょっとだけ笑ってくれやした。天使っす。



 のどちゃんも、とっーーーても可愛い女の子なのです! もう説明は不可! 語彙力足んないから!



「なにしてるのー?」


「ん? 雨を見てて」


「雨いいよねー。あたしも好きー」



 のどちゃんは下駄箱のところで雨宿りをしているみたいだった。屋根の下で立ったまま、腕に傘をぶら下げている。寒くないのかなー?


 いつもはなっつんと一緒に歩いているところをよく見かけるのに、今日はなんでかひとりだった。ずっと外を見つめてる。この雨だとショーシャンクの空にごっこ、できそう。



「あれー、今日はなっつんと一緒じゃないの?」


「うん。用事があるって先に帰っちゃった」


「そーなーのーかー」



 むむむ? これはもっと仲良くなれるチャンスなのでは? のどちゃんの生態系を調査したい! コイバナとかしたい!



「じゃあ、一緒に帰ろうよ! お話しよ!」



 話し相手になってしんぜよう、という気持ちで話かけました。ところが、のどちゃんは首を横に振りました。



「あ、ごめん。友達と待ち合わせをしてて」


「え」


「また今度お話しようね」


「(血涙)」



 意気揚々と誘ってみたけど、あっさりと断れてしまいました。なんだい! あたしなんて用無しってコト!? 誰がラ・フランスじゃい!


 いいもん! いいもん! ひとりで帰れますし! サーモンのお寿司! あたしだって友達なのに! 見捨てるなんてヒドイよベイビー!



「……オーケーイ。必ずだよ?」



 うぬぬ……と断られたショックを隠しながら、鞄を開く。中から折り畳み傘を取り出すと、のどちゃんが「あ。」とこちらを見た。



「そのカサ、可愛いね」


「ふぇ?」


「見せてー」



 近付いて、手元を覗き込んできます。渋々前に手を出すと、のどちゃんはキラキラとした瞳でお気に入りを観察し始めました。なんやこいつ……あたしに気ぃあるんか……?



「どこで買ったの?」


「地元だよ!(にしおかすみこ感)」


「へぇー、いいね」


「いいでしょー。オキニなの。のどちゃんはどんなの使ってるのー?」



 やられたらやり返す、繰り越し返済だ!



「えー、私のはいいよ」


「なんでさ! みせてよ、みせてー」


「可愛くないよ?」


「絶対、ウソだぁー」


「うーん……」



 のどちゃんが半ばイヤそうに赤い傘を見せてくれる。どこが可愛くないんだよ! 情熱のレッド最高じゃん! 謙遜しなさんな!



「えー、ふつうに可愛いじゃん。良いと思うよ、それ! のどちゃんに似合ってるし!」


「そうかな?」


「うんうん! 赤を選ぶところにセンスを感じるー!」



 赤はイイっすよね。見てるとテンション上がるべ。お祭り気分になっちゃいそう。って、それはアカーーーーーン!!



 法被を着て、今にも踊り出しそうなあたしはのどちゃんと楽しく会話できてハッピーなのでした。(ドヤッッッ)



 ※ ※ ※ ※ ※



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《差出人:ママ》


 牛乳と卵が切れたから買ってきて〜。゜(゜´ω`゜)゜。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「んもぉっ……お母さんったら」



 携帯に表示された画面を見つめながら、ため息をつく。もうドラマの再放送見れないじゃん! 録画してるからいいけど、リアルタイムで鑑賞したかった!


 たとえ再放送であっても、リアルタイムで観たかったあたしでしたが、こうなるともう諦めざるを得ない。


 駅前までやってきたけど、引き返して、スーパーに向かうことにした。





「雨は好き〜。どこか楽しい気持ちになれるから〜♪」




 スーパーの中で鼻歌を歌う。財布をポケットに入れてるせいか、小銭が揺れています。じゃらじゃらちゃりんちゃりん。



 卵と牛乳を鞄に入れておりますと、外で誰かが歩いているのが見えました。赤い傘の女の子。




「あ、のどちゃんだ」




 のどちゃんでした。のどちゃんが手前で傘を差しながら、隣と人と歩いています。奥にいるのはビニール傘を持った男の子。アレ……まさか……!




「え、ガッキーじゃん……」




 なんと、お相手は“あの”ガッキーでした! 二人が仲良さげに歩いています! 親方、見ましたか! これスクープですぜ!? 週刊誌にネタを売り込みましょうよ!!


 なんということでしょう……。友達を待っていると言ってたのに、まさかガッキーだったなんて・・・(唖然)



 こりゃ、デカい戦争が起きるでぇ…………!!




「……どうしよ」




 一瞬、外に出るのを躊躇したけど、躊躇わずさっさと帰ることにした。



「あ、明希ちゃんだ」


「おぉ、柳葉か」



 二人の声が聞こえたけど、空気の読めるあたしは聞こえてなかったフリをして、歩道橋の上を渡っていきます。みちゃった。みちゃったー。イチャイチャしてるところ見ちゃったもんねー。




「やっぱ、今日は良いことあったなぁ……」




 視界の隅にチラリと映る彼らを見つめながら、静かに呟きます。二人のこれからに幸あれです。いいね、いいねぇー! ボーイミーツガールだねぇー!



 なんだか楽しくなってきたので、スキップして、傘を振っちゃった。ニヤニヤが止まらない。いつから付き合い出したんだろ〜。気になるなぁ〜〜。




 とある六月の放課後、冷えた歩道の裏側。




 二人の歩く姿を遠目で眺めながら、後でガッキーにLINEでもしてやろうと思うあたしなのでしたまる。




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