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僕はハーレム高校生。  作者: 首領・アリマジュタローネ
【雨空。ーrainy dayー】
75/280

Side:B


ーーー



 ──憂鬱なもんよ、こんな日は。



 急に降り始めた雨が、その勢いを強め続けていた。窓の外を眺めながら、眉間にシワを寄せる。自分でもブサイクな顔になっていると思う。


 お昼休み。食堂の一角。目の前には食べ切れてないサラダ丼。隣にはあの子。浮かない気分なのは、きっと天気が悪いせい。



「急に、降ってきたね」


「……そうね」



 器に割り箸を置く。これは正直、あんまり美味しくなかった。次は注文しない。


 自分でもヤバいと思う。天気が悪いくらいで、こんなにもイライラしているのは。


 天気予報で、今泉(いまいずみ)さんが『一日中、雨』って言ってたから、ある程度予想はしてたのに。大体、なんでこういう時には当たるのよ。いつもはハズれるクセにっ!



「はぁ」



 ため息をつく。雨は嫌い。

 いつになっても好きになれない。


 外出は出来ないし、ローファーが染みて、靴下を濡らす。前髪はうねるし、頭痛だってする。もー……やだやだ、めんどくさい。



「どうしたの、なっちゃん。体調悪い? 保健室行く?」



 裾を三回引っ張って、のどかがこちらを覗き込んできた。心配してくれているのか、小動物みたいに首を傾げてる。一つ一つの仕草がいちいちズルい。


 あたしから見ても、可愛いってすぐにわかる。こんなの、あたしがやっても絶対可愛くできない。


 たぶん、こういう些細な動作にグッと惹かれたんだろう……あのバカは。



「平気よ。ただお腹いっぱいなだけ」



 のどかが手元を見た。ラップに包まれたおにぎりを頬張っている。



「サラダ丼?」


「そ。アンタ、食べる?」


「ごめん、お腹いっぱいだ」



 僅か二個で腹を膨らませるのどか。少食な子は羨ましいわね。



「もっと食べた方がいいわ。食べなさすぎ」


「なっちゃんが食べすぎだと思う」


「うっさい! 食べないよりマシでしょ!?」



 もう一度、箸を持ち直して口に運ぶ。でも、確かに、さっきミニラーメンを食べたせいってのもあるかも。今度からは控えるわ。



「……そうだね」



 両手でラップを包みながら、のどかは無理に笑う。時々見せる、この寂しそうな表情がどうしようもなくあたしは苦手だった。



「なっちゃんはすごいね。いっぱい食べれるし、足速いし、勉強だってできる。期末テストの成績も良かったもんね」


「……」



 クシャクシャとラップをボールにして、のどかが言う。テストの話は避けていたから、あちらから切り出したのは意外だった。



【一年生成績(男女総合)】


・学年5位 玉櫛 宗

・学年10位 海島 菜月

・学年17位 新垣 善一

 〜 〜 〜 〜 〜

・学年89位 安穏 のどか

 〜 〜 〜 〜 〜

・学年241位 井口 義雄

 〜 〜 〜 〜 〜

・学年389位 源 蓮十郎(全400人中)



 テストの成績は学年十位。自分でもびっくりするくらいの好成績だった。あたしに勉強を教えてくれた善一にも、勝てるとは思っていなかったし。



「なっちゃんはすごいよ」


「……どうも」



 褒められても全然嬉しくなかった。皮肉を言われている気がして、なんだかとてもムシャクシャした。そうやって、のどかの言葉を素直に喜べない自分にも、苛立ってくる。



 悔しくない。理由がないから。


 だからこそ、とても悔しい。



 矛盾した感情が、胸の奥のところでずっと渦巻いている。あたしはそれを奥歯を噛み締めて、潰す。悔しくない。悔しくない。理由がないから。あるハズがないから。


 きっと、この怒りの原因あたし自身にあるんだと思う。じゃないと割に合わない。



「アンタも勉強頑張りなさいよ。……あたしも頑張るから」


「うんっ。一緒にがんばろ!」



 愛らしく頷くのどかは、やっぱりすごく可愛かった。どうしようもなく可愛いから、きっとこの笑顔に魅力される人がいてもしょーがないと思う。


 だから、あたしは抱え続ける。

 このどうしようもない感情を。

 これからも吐き出すことはない。



 いつまでも、いつまでも、ずっと。




「ところで、アンタ、この前の勉強会──」




 サラダ丼も最後の一口。食べる前に尋ねようとした。誰かさんがヘマをやらかしたあの日のことを。別に気になったワケじゃない。ただ、あたしのせいにされるのがイヤだったから話そうとしただけ。


 でも、その言葉は最後まで発することは出来なかった。だって、のどかが急に席を立ったから。



「……っ」



「? どうしたのよ?」



 ポケットに丸めたラップを入れて、のどかが下唇を噛んでいる。食堂の入り口らへんを見つめている。


 目を向けると、見覚えのある姿がチラホラと映った。怒鳴るような声もする。




「ガッハッハ!! 完全復活とは言わねーけど、そこそこ調子は良い方だぜェーー!?」




 少し肌寒い、六月のとある日。



 雨はどこか寂しげに、降りやむ事を知らなかった。

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