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僕はハーレム高校生。  作者: 首領・アリマジュタローネ
【雨空。ーrainy dayー】
73/279

Side:A


ーー



 ──降り始めた雨に、願いを込めて。



今泉(いまいずみ)です。例年よりも三日早い梅雨入りの訪れに、これから一週間はスッキリしない天候が続きます。温度管理には気を付けて外出するように心掛けてください。では、まず関東のお天気ですが……』



 雨が降ってる。昨日の夜からずっと。ニュースを観ても、そんな話題ばっかり。



「も〜、また洗濯物乾いてなーい。雨イヤ! パパも仕事遅くなるって言ってたし、買い物行きたくなーい!」


「おはよー。お母さん朝っぱらから元気だねぇ〜」



 テレビの電源を消して、あたしはキッチンでぼやいていたお母さんへ挨拶をする。


 今朝は天気が悪く、予報でも一日中雨が降るって今泉さんが言ってた。多分、部活も室内練習だと思う。


 牛乳をコップに注いで、喉に流し込む。そういや、この前ガッキーの家で飲んだホットミルク。アレ、美味しかった! 最後に食べた卵料理も最高だったし、是非ともまたご招待されたいっすね。


 ……うし、絶対行こう! 無理やりでも押しかけよう! これはもう行くっきゃない。



 濡れた窓ガラスの内側に触れながら、上空にそびえ立つ灰色の雲を眺める。うーん、雨ってそんなにイヤかな? あたしは好きなんだけど。



 みんなは雨だとテンションが下がったり、憂鬱になったりするみたいだ。でも、あたしはそうは思わない。だって、雨って良くない? 最高じゃない?


 雨音を聴きながら、夜眠りにつけるなんてステキなことだと思うんだけどなー。深夜にオーケストラの演奏を聴いてるみたいで逆にテンションが上がっちまいますよ。



「イヤな理由もわからなくはないけどさー……」



 テーブルの上に置かれた味噌汁を啜りながら、あたしはぼやく。熱が冷え切った脳を溶かしていく気分だった。うみゃー。



 確かに雨はジメジメするし、靴下だって濡れちゃうし、おまけに少し肌寒くて、毛先とかすごくパサつくし、なんなら二、三枚は多く着込まないといけない。


 だけど、それも慣れてみたらどうってことない。ある意味新鮮とも言えるし。


 例えば納豆だって臭いという先入観を捨てれば、美味しい食べ物でしょ? 健康的だし。しょうゆ入れて、ネギ入れて、からし入れて、いっぱい混ぜる。これが至高。朝ごはんの定番はやっぱり、納豆と白米と味噌汁でしょ!



 ……あれ、なんの話だったっけ?



 朝ごはんを食べていると、よくわからなくなってくる。やっぱり頭はまだ動いてなかった。テスト終わったばっかりだし許してクレオパトラ!!



 熱帯雨林? 砂漠? 貴重な水分源?



  ふぇ??




「ま、いいべ!!」




 細かいことは気にしない! それが一番です! メモしとくように! 気楽にいこうよ。



「ごちそうさま」と告げて、食器を洗う。歯磨きを済ませて、洗面所に向かった。鏡に向き合いながら、髪の毛をセットして制服に着替える。首元にリボンを付けることも忘れない。


 今日の気分はマスカットメロン。どうしてか目にいい緑を取り入れたかった。ちなみにこのリボンは7色あります。亡くなったおばあちゃんから貰った大切なモノなの。



「雨は好き〜。どこか楽しい気持ちになれるから〜♪」



 鼻歌を歌いながら、お着替えを完了させる。頭の中では素敵な風景が今にも踊り出しそうなくらいに広がっていた。



 葉の裏から顔を出すカタツムリ。


 小さな足に似合わない長靴を履いて、走り回る子供たち。


 ぽちゃぽちゃの水たまり。


 雫の落下するおと。


 ノスタルジックなふいんき(←なぜか変換できない)。



 それら全てが美しいハーモニーを奏でている。イッツアライフイズビューティフゥー!



 玄関に出る。靴を履きながら、鞄を覗いて手を突っ込んだ。



「……今日こそチミの出番だぜ」



 鞄から水玉模様の折り畳み傘を取り出した。これもオキニ。高校入学をキッカケになんか可愛いのが欲しくて、奮発して買ったヤツだった。意外に高いのよ、オホホ。



 ずっと使っていなかった。でも、今日はざあざあ雨じゃない、しとしと雨っぽいし、風も強くないから、デビュー戦のタイミング的にはピッタリかもしれない。完璧ね。いぇーい!



 きっと水玉傘ちゃんも使ってくれる日を待ち望んでいたことでしょう。ありがとうって言ってるかもね。大切に使わなくっちゃ!



「行ってきまーす! お母さん!」



 勢いよく玄関を飛び出していく。お母さんは優しい笑顔で手を振って「いってらっしゃい〜」と言ってくれた。


 

 とある六月の平凡な一日。


 傘を開くと、見える世界が変わった気がした。全てがキラキラと輝いて映る。


 うーんと、一つ伸びをして、あたしは学校までの道のりを駆けてゆく。



 ……あぁ、今日もなにか良いことあるかなぁ、とそう願いながら。




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