僕は欲望に忠実な変態系ハーレム高校生。
「がっきー! のどちゃーん! ごめんねー、待たせちゃって……。おっ、テント完成してるじゃん!?」
テント完成から数分後、荷物を預け組がゾロゾロと戻ってくる。四人とも(菜月、明希、桜さん、渚)は既にお着替えを完了させていた。
いつでも海に入れる状態と化している。
つまるところーー水着姿だ。
「ホントありがとー!!」
ぴょんぴょんと跳ねている明希は黄色Tシャツを着ていた。
胸ポケットのあたりに【島人】の文字が刻まれている。
どこかで買ったお土産品だろうか。
でも、確かに、大きな括りで考えると、我々はみな島人である。
下はオーシャン柄のショートパンツ水着。
頭には先ほどのキャップを被っている。
「善一くんたちも着替えてきたらっ……?」
「おう、そうするよ」
共にやってきた渚。おだんこヘアーを携えながら、フリルのスカートを履いてきていた。花柄の水着である。
タンキニというやつだろうか。
胸元が完全に隠れている。
「なっちゃん、更衣室どこ?」
「あっち」
菜月はビキニを着ていた。
おへそがちらりと顔を見せていた。
あんまり見れなかった。
「……なに?」
「えっ? あ、いやその」
それでも気付かれてしまう。
彼女は眉間にシワを寄せて、胸の辺りを腕で押さえる仕草をした。絶対に見せてたまるか! という意思表示らしい。もう見てしまったけど。
「善一くんは海島さんの水着が見たかったのよね。さっきバスであれだけ熱弁していたのだし、良かったじゃない。念願のビキニよ」
「いや、それは桜さんの方でしょ!! 話を盛らないでくれますか!?」
「全力で否定するだなんて、卑しい」
「ならどうしろと!」
「見たかったんでしょう。なら、きちんと自分の言葉で伝えたらどうかしら。ビキニ姿を見せてくれて、どうも有難うって」
「そんなこと言えないですよ!?」
「あらあら、鼻息が荒くなってきているわよ。そんなに……興奮しているの?」
「してませんから!!」
「……上、羽織ろっと。のどかいこ?」
「うん」
クスクスと笑う桜さんに振り回される僕を気持ち悪く思ったのか、菜月と安穏がそそくさと更衣室の方まで向かって行った。
紳士アラガキは死んだ。変態だと思われた。
変態という名の紳士である。古い。
僕は変態じゃない。僕は素直なだけ。
紳士アラガキは変態なんかじゃない。
断じて、変態なんかではない。
※ ※ ※ ※ ※
「海島さんはEカップよ」
えっ……?
耳を疑った。疑わざるを得なかった。
桜さんがセクハラおっさんよろしくな発言を繰り出してきたからだ。菜月の胸が……なんだって? そういうお話はあまり聞こえがよろしくなくたっていい。
時を戻そう。
「な、なんですか? 急に(Eって言った?)」
「更衣室で見てきたのよ。せっかくだから報告しておこうかと思ってね」
「興味ないですから!(Eってどのくらい?)」
「あら、鼻の下伸びているわよ?」
「伸びてません!(果物で喩えてほしい)」
賎しい会話がまた始まった。
僕は海岸を見つめている。大勢の人たちが波に揺られていた。イルカやらシャチやらの浮き輪に跨っている。小さな子供たちは大人と共にボートに乗っている。
「喜ぶと思ったのに残念。じゃあ、もう善一くんにはみんなのカップ数を教えてあげない」
「別にいいですよ」
「強がっちゃって。本当は知りたいくせに」
「知りたかったとしても、敢えて聞かないのが“紳士の嗜み”ですよ」
「何が紳士。貴方のどこが紳士なの。ふざけないで頂戴」
「ふざけてません! 紳士アラガキですから!」
ふざけたっていい。
「なにが紳士……。紳士だと語るのであれば、女性のことを一切性的な目で見ないでくれるかしら。『あの人の跨っている浮き輪と同化したい。水着と浮き輪が接触している丁度境目の部分に手を入れたい。上下に動かしたい』などと思わないでくれるかしら」
「そんなこと思いもしません!」
「海というとてもスケベな空間の中で、男性が性的想像を全て排除した上で遊びに興じれるとは到底思えないけれど、そんなに言うのなら証明して見なさいよ。貴方が紳士アラガキである証拠を」
「……」
「ほら、答えられないじゃない。所詮は口だけね」
背後から攻撃的な言葉が飛んでくる。
遠くで、波がざぱーんと跳ねた。
「有益な情報だと思ったのに……がっかり」
ビーチチェアで寝転んでいる桜さんが、サングラスをかけてため息をついた。
日焼け対策なのか長袖シャツを羽織っていた。
ストローハットも被っている。
そうやって上半身全体は隠しているのだが、下半身には自信があるのか、ショートパンツからわざとらしく脚を伸ばしていた。
右脚と左脚を交差させて、素足を見せつけている。
通りかかった男性たちの視線を集めている。
欲情させている。
日差しと視線が強い。
紫外線も強い。
「下ネタ言っておけば、なんでも喜ぶと思わないでください(知識は水だ。独占してはいけない)」
テントの前で体操座りをしながら、僕は述べる。
Eカップってどれくらいの大きさだろうか。
「流石は“自称紳士ね。じゃあ、幾ら私がセクシーな格好をしても興味を示さないってことね?」
「はい?」
声の方をチラリと覗くと、桜さんが上着を脱ぎ始めたのが見えた。
うわっと思ったのも束の間、僕の方に服を投げてくる。
「ちょっ、ちょっと!?」
頭に被さったシャツを払いのけると、短い髪を掻き上げるのが見えた。
肘を曲げて両腋を見せながら、ニヤリと笑う。
桜さんは黒のレース水着を着用していた。
少しだけ透けている。
何も見えないのに、何かが見えた気がした。
「ねぇ、善一くん。サンオイルを塗ってくれるかしら?」
「…………」
「あらあら、ダンマリしちゃって。どうしたの? 恥ずかしくなっちゃった? 私の《E寄りのCカップ》を見て興奮しちゃったの? 紳士なのに。こっちを見なさいよ、変・態さん」
僕は変態ではないのだ。ホントに……。
「あら? おかしいわね。胸の話をすれば善一くんは元気になると思ったのだけれど」
「なりませんよ。どんなイメージを持ってるんですか!」
「水着を忘れたのだって、こうやってテントの中で彼女たちを視姦するのが目的じゃないの?」
「すいません、僕ちょっと用事が」
「あら? ふふ……」
「ジュースを買いにいくだけですよ!?」
もう嫌だ!この人!!
・海島 菜月→梨
・葵 渚→グレープフルーツ
・安穏のどか→柿
・柳葉 明希→みかん
・櫻木 晴香→りんご




