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僕はハーレム高校生。  作者: 首領・アリマジュタローネ
【夏編─海合宿(上)】
171/279

僕は可愛い女の子たちと朝から遊んじゃうパリピ系ハーレム高校生。



 しばらくすると、海が見えてきた。

 綺麗な海である。浜辺には人がたくさんいた。



「あ、桜さん。海ですよ、海」

「みたらわかるわ。何をそんなに興奮しているの?」

「海って……なんかテンション上がったりしません? ロマンを感じるというか」

「海賊にでもなればいいわ」



 よし、四皇を目指そう。



「おや、善一くん。アレをみてご覧なさい」

「はい?」

「半裸の女の子たちよ」

「??」

「半裸の女の子たちが液体を浴びせあっているわ」

「言い方が非常に悪いです……。水着を着用してますから」

「あんな姿で泳ぐだなんて下品。全裸になれないのかしら?」

「……下品の基準とは」



 ここはヌーディストビーチじゃないんだぞ。



「布切れで胸やお尻を隠しているだなんてお下品よ。あそこまでいったのなら、逆に曝け出した方が女らしいでしょう」

「女らしいって……」

「そうね。今のは差別的発言だったわね。反省するわ。ごめんあそばせ」

「悪役令嬢みたいな語尾」

「『男らしい』とか『女らしい』とか旧世代の考え方よね。男女格差が未だになくならないワケ」

「……」

「もっと社会は女性を敬うべきね」

「……」

「私はフェミニストだからそんなことを思っちゃう」

「……政治的発言やめてくださいよ」



 色々と怖いんです。



「でも善一くんだって、あの半裸の女の子たちをみて何か思うことがあるでしょう?」

「……え、いや、楽しそうだとしか」

「突起物が反応しているわよ?」

「してませんから!」

「潮の香りがする……」

「潮ですか!?」

「あら? あら?」

「あ、いや、これはその……」



 桜さんが僕の隣でヘラヘラと笑い始めた。



「え? いま善一くん何を妄想したのかしら? 【潮】というフレーズから一体何を連想したのかしら? やだ、善一くんったら【潮】という言葉に良からぬ意味があると思ったの? 思っちゃったの? 貴方ったら、本当に……まったく……もうっ、ダメじゃない////」


「ノーコメントでいきますからね……」



「ふふ……。まるで、鼻ノ下(はなのした) 伸夫(のびお)よ」



 誰だよそいつ!!



 ※ ※ ※ ※ ※


 バスを降りるや否や、日差しが容赦なく降り注いできていた。

 冷房が効いていた車内との温度差に驚く。

 頭がくらりとして、咄嗟にガードレールを掴んだ。



「がっきー、大丈夫?」



 明希が声をかけてきた。明希はとても優しい。流石はウチのサッカー部のマネージャーを務めるだけある。普段からチームメイトに対する適切な声掛けを行えている。


 「平気だよ」と笑いかけるが、全然平気ではなかった。頭がズキズキしてて、胃もキリキリする上に、なんか視界もクラクラするし、足元もフラフラしている。擬音にまみれて僕は死ぬ。



「酔い止め効かなかったのかなぁ……」



 近くで渚が心配そうに両手をギュッと握っているのが見えた。渚はとても優しい。

 バスに乗る前に「これ……!」とあらかじめ酔い止めを渡してくれていた。せっかく貰っていたのにも関わらず、逆に心配させるだなんて僕の身体のバカバカ!

 

 「大丈夫だよ」と笑いかけるが、全然大丈夫ではなかった。頭がズキズキしてて、胃もキリキリする上に、なんか視界もクラクラするし、足元もフラフラしていた。擬音にまみれて僕は二度死ぬ。



「……情けないわねっ」



 菜月が腰に手を当てて、僕を見下ろしている。菜月は時々優しい。あとお胸がややビックだ。


 さっき桜さんから変な話を聞かされたせいで、菜月の顔をまともに見ることができなかった。それどころか、身体の方に視線が誘導されてしまう。でも、ここは紳士アラガキの出番。なんとか、堪える。



「ごえっ……」



「ちょっとアンタ、あたしの顔みて吐きそうにならなかった?」



 大いなる誤解だ。




「善一くんのことだから大丈夫だと思うよ」



 

 素っ気ない声の主は安穏である。安穏のどかである。安穏は優しいけど、今は厳しかった。たぶん他のみんながいるからである。僕と二人きりの時は優しいから気にしなくていい。



「安穏の言う通りだ。僕は……平気さ。うっぷ……」


「……平気そうに見えないんだけどっ」



 平気である。ただ少し頭がズキズキしてて、胃もキリキリする上に、なんか視界もクラクラして、足元がフラフラしているだけだ。僕はそのうち擬音に殺される。



「……安穏、お茶をくれ」


「お茶? あったかな?」


「早く」


「もーー……」



 頭がくらくらしているのをなんとか抑えながら安穏に頼み込むと、彼女はバッグの中からペットボトルを出してくる。



「はい。なかったからお水ね」


「……ありがとう」



 ゴクリと喉に流し込み、瞬きをする。

 ふぅと息を吐き、彼女にペットボトルを返す。関節KISSだとかそんなことはもう気にしてない。

 周りの視線も、気にならない。


 渚や明希が固まって立っているのを横目に、僕は立ち上がる。


 安穏は今日も可愛かった。



「みんなありがとう。アラガキはもう大丈夫だ!! 完全復活したぞ!!」



 グッと拳を掲げて、天高く笑う。

 空には数匹のかもめが「くーくー」と泣いていた。



「……うふふ、見せつけてくれるわね」



 ストローハットの隙間から顔を見せてくる。




「流石は、助平(すけべぇ) 好太郎(こうたろう)じゃない」




 だから誰だよそれ!!



 ※ ※ ※ ※ ※

 

 海合宿の始まりである。ちなみに[海合宿]というネーミングは桜さんが勝手に付けたものであり、特に意味はない。

 単にみんなで遊びに来ただけだ。

 細かい予定などは特にない。


 桜さんの別荘でお泊まりをして、明日には帰る。それだけだ。


 一つ屋根の下で彼女らとお泊まりするとなると普通は緊張するが、もうなんか慣れてしまっている僕がいた。


 宗がこの現場にいたら「どうせ、キャッキャッウフフするんだろ?」と煽ってきそうだが、そういうことにはならないだろう。

 なったとしても安穏とだけである。



 安穏。そう、安穏のどか。


 僕は明日ーー彼女に告白する。



 明日の夜に開かれる【夏祭り】にて僕は想いを告げることを決めたのだ。

 彼女にも事前に約束をしてある。


 つまり、今の僕には失うものがない。あとは安穏の選択次第。僕は行動を起こしたのだ。それならばこの波のように……流れに身を任せて、事の端末を見守るだけ。ただ楽しむだけでいい。


 今を楽しむだけでいい。


 ×××



「うわー、広いなぁ」



 視界に広がっているのはどこまでも続く雄大な海。


 眩い日差しに包まれながら息を呑む。


 地球の地表約七〇パーセントを占める限りある資源に触れていると、自分たちがどこまでちっぽけな存在なのかを再認識させられる。


 全ての生物たちの原点はここだ。水の惑星と呼ばれるこの地球が、ここまでの自然を築き上げてこれたのは全て母なる海のお陰。


 決して、菜月の広大な胸なんかではない。



「善一くん。ぼーっとしていないで、テント作るの手伝って」


「ごめん」



 安穏に言われて早速作業を再開する。夫婦初の共同作業だ。

 まだ午前中なので人が少なく、良い場所を確保できた。パラソルを組み立てて、シートを敷く。


 桜さんは先に別荘に向かうと語っていた。荷物を置いてきてくれるらしい。


 つまり、ここにいるのは僕と安穏だけ。



「浮き輪とかは海の家に頼んだ方が早いかな? 明希がかなりの量を持ってきてるみたいだし」


「あ、おっきなシャチもあるんだね。プールでしか見たことなかった」


「ほんとだな。これって実は意外と難しくて乗りこなせないんだよなあ」


「ビーチボールもあるし、後でビーチバレーしようね?」



「お、おう……」



 会話がまったく噛み合っていない。

 だが、それもいい。



 安穏は今日も可愛かった。彼女にしたかった。いや、するのだ。必ずしてみせる。決定事項です。


 白シャツに黒のショーパン。水色のパーカーに白のサンダル。日焼けした足がすらりと伸びている。


 可愛い。可愛すぎる。Yシャツの胸のあたりのロゴも含めて全部が可愛い。今日は髪をくくってるらしい。長い髪が菜月みたいにポニーテールになっている。可愛さ満点。この子は可愛いを体現している。可愛すぎる。ナイスですねぇ〜。


 もうぶっちゃけいうと、桜さんたちには帰ってもらってもよかった。戻ってきて欲しくない。

 このままずっと二人でいたい。

 今日一日海でデートをしたい。


 うん。新婚旅行はハワイにしよう! そうしよう!



「ふ〜んふーん♪」



 ノリノリの僕。ハメを外しつつ、鼻歌混じりにテントを組み立てていると、安穏と目が合う。



「……誰にも言ってないんだよね?」



 彼女がボソッと声を漏らす。

 僕は静かに頷く。



「ああ。バレてないと思う」



 真面目トーンで答える。

 安穏はペタペタとサンダルで砂浜を踏みつけた。



「……みんなで行く流れになったらどうするの?」


「その時はなんとかする」


「できるの?」


「誤魔化すだけだ」


「渚さんとか……」


「大丈夫だから」


「……ほんとに?」


「本当に。ほら、帰ってくるまでに終わらせよう」



 作業を続行する。


 彼女はそれ以上、夏祭りの話題を出してはこなかった。僕も触れさせなかった。



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