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僕は人付き合いが苦手なハーレム高校生。



「え?」

「ん?」



 僕と安穏さんは互いに首を傾げあう。まるで文鳥の挨拶のようだった。



「はぁ? 友達になりたいって、アンタ急に何言ってんの?」



 先に反応してきたのは隣の海島さんだ。鋭い視線を浴びせてきている。


 ああ、確かに「友達になって下さい」だなんてこっぱずかしい事を平気で言う人が、今の時代にいるとは到底思わないだろう。現状友達希望を出すのはネットの世界くらいだ。


 分かり合えたらズッ友だょ…!というように、友達申告なんてしなくてもわかることである。


 多分衝動的で、突発的で、考え無しの単純な思いつきに過ぎない。


 深い意味なんてない。友達から始める恋だなんてよくある恋愛ドラマのように、始めたかっただけだ。特に意味などはない。



「な、何がだ! 僕は本気だぞ」


「本気でのどかと友達になりたいワケ? うわ……なにそれ。キッモ」



 さっきから茶々を入れてきてる海島さんは一体なんなんだ。関係ないだろう。

 


「キモいというかむしろ痛い。……のどか、やっぱりコイツ変よ。関わらない方がいいわ」



 そう言って彼女を連れて教室の奥へと向かおうとする。



 え、僕ってそんなに痛くてキモくて変なのか……。



 が、安穏さんは動かない。僕の方をジッと見つめている。



「私と友達に?」


「……あぁ、うん。ごめん急に」

  


 流石に唐突すぎただろうか。



「もしイヤなら無理にとは──」



「いや」



「ほら、ホームルーム始めるぞ。俺が一年B組担任の西田だ。名前を呼ばれた者から出席番号順に席についていけ」



 抑揚のない声と共に教室の扉は開かれる。


 中からヨレヨレスーツを身にまとった男がぶっきらぼうに僕らにそう言って、出席簿を教卓へ置いてからそこへ立つ。


 先生が静まり返っている空間を見て、不思議に思ったに違いない。



「なんだ、修羅場か?」


「違うわよっ!!」



 即答で突っ込む海島さんに担任教師は疑惑の目を向けながら出席簿を開くのだった。



 え、普通に拒否された?



 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「穴があったら入りたい、埋まりたい。黒歴史だ……誰か僕をこの世界から消してくれ」


「おいおい、ため息ばっかりしてたら幸せ逃げんぞ?」



 昼休み教室でうなだれる僕に宗が声をかけてくる。



「……僕の幸せとやらが空気に乗って逃げてゆくなら、今苦しんでる人の元へ届くことを願ってるよ」


「なら俺は、お前の不幸をおかずにしてやる」



 この男、最低である。励ましにきたワケではない。ただ、からかいにきただけだ。



「ま、お前の悩みの種は大体分かってるが、一応俺に話してクレメンス」



 うむ、形式上ではあるが励ましに来てくれたみたいである。ちゃんと話すか。



「かくかくしかじかだ」


「あー、なるほどね。って、わかるかよ」


「女の子に『友達になりたい』って言ったら、即答で拒否されたんだ……。見てただろ」


「ざまぁwwwwwwwwwww」


「もう二度と口聞かないからな!」



 ふん、だ。宗なんて嫌いだ! お弁当の中身が全部ちくわぶになってしまえ!



「ヘイヘイ悪かったよ。よーし、わかった。恋愛コンサルタントを生業としているこの玉櫛様に任せな! 一発で今夜は彼女とランデブーパーリナイだぜ?」



 頭の悪そうな横文字言葉を乱立して欲しくないものである。というか、恋愛コンサルタントってなんだよ。お前学生だろ。



「それにしても『彼女なんて作る気は毛頭ない』とか昨日はドヤ顔をかましてたクセによぉ、ホント笑いもんだぜ。で、どこに惚れたワケ? 安穏さんだっけ。意外と地味なタイプが好みなんだな」



 ドヤ顔なんかしてないし、地味なタイプとか言わないでほしいモノである。



「それが全然わからないんだ。世界が急に明るくなったと思ったら、いつの間にか恋に落ちてた、的な」

 

「具体性ゼロ人間かお前は」


「好きになるのに理由なんているのか?」


「……うぜぇ。まぁ事情はわかった。ちょっと待ってろ」



 宗は何故か満足そうに頷いていた。一体なにがわかったのか。




「安穏さーーーーーん!!!」

 



「お、おい! 急に何をする気だ!?」




 大声を出したせいか皆が僕らの元へと視線を向ける。は? いや、それは早いって!!




「いないか、食堂でも行ったっぽいな。よし、殴り込みじゃああああああああああああああ!!! 告白しやがれえええええええ!!!!!」




「なんでそんなにテンション上がってるんだ宗!? 告白ってバカか! バカなのか!?」



「黙れぇぃいい!! そうこうしている内に想い人が他の誰かの物になってるかもしれねーんだぞ! こうしちゃおけん、今すぐ突撃じゃあああああああ!!!!」



「待て! 待ってくれ!」



 廊下に向けて走り出そうとするヤツの口元を手で覆う。


 幸いにも男子がバカをやってるー的な目で見られただけで今はまだ状況を抑えられる。ひとまずはお茶でも飲んでから一息ついて……。



「ガッキーとクッシーさっきから何を騒いでるのー?」


「……善一くん大丈夫?」



 と、ここで柳葉さんと渚が同時に近付いてきた。ふがふがと喋ろうとする宗の口を抑えつつ、平常心を取り戻す。



「だ、大丈夫さ! 二人共。ごめんうるさくしちゃって。あ! そういや紹介してなかったよな!? 柳葉さん。こちらが僕と宗の幼馴染である渚だ。仲良くしてやってくれ!」



 言うと、柳葉さんと渚が見つめあう。



「おおー、ガッキーたちの幼なじみー? よろしくねー! あたしはガッキーとクッシーのおとももちである柳葉明希だよー」


「は、はい。葵渚です……。よろしくお願いしますっ……!」


「ありゃりゃ人見知りタイプ? いいよ、そんなに緊張しなくても。気軽に明希ちゃんって呼んでねー! あ、そうそう。みんなは部活何に入るとか決めたー? もし良かったらオススメがあるんだけど」



 柳葉さんは渚と握手を交わした後、ポケットから何かを取り出してきた。何枚かのチラシのようで、僕らにそれを手渡してくる。宗教勧誘とかはやめてくれよ……?


 受け取って中身に目をやる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 【皆さんも私たちと青春を謳歌してみませんか】


 暑い夏!! 白い雲!! と言ったら一体何をご想像しますか?


 海水浴? (ヾノ・∀・`)ナイナイ


 山登り? (ヾノ・∀・`)ナイナイ


 夏といえばやっぱりスポーツ!! 仲間たちとグラウンドを駆け巡ろう!!(^^)

 

 モテたい男子( *´艸`)

 イケメンに会いたい女子(*´Д`)


 是非とも願いを叶えて差し上げましょう!!!!


 我々の部活では恋人を作れること間違いなし(*´з`)


 “イケメン部員“”美人マネージャー”を募集中(笑)


 甲子園よりももっと熱い青春が君たちを待っている(*^-^*)



 さぁ、今こそサッカー部へ入団だ\(^o^)/



 体験入部、見学会も以下の日付でやってますよ(/・ω・)/


 お店へ急げッッッッッッ!!!!!!!!


       ハゲダニ高校サッカー部一同

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「…………なんだこれ?」



 目を丸くしていると、柳葉さんはピースピースと笑いかけてくる。あら、素敵な笑顔。



「これあたしが作ったんだー! ってことで、今日見学会あるから来てねガッキー! クッシーとあおちゃんも待ってるぜよ~。ほんじゃ、お花摘みにいってくるー」



 チラシだけを置いてすぐさま教室から去っていく柳葉さん。え、なんだコレ。僕ら勧誘されたのか? ってか、自分で作ったって……。



「……善一くん?」


「あ、いや咄嗟で驚いてしまっただけだ。またサッカー部はなぁ……。他の部活を考えているよ。マネージャー募集しているみたいだけど、渚はどうだ?」



 もちろんサッカーが嫌いなワケではない。むしろ好きな部類だ。将来はC・ロナウドみたいな一流プレイヤーになりたくて練習に励んだものである。才能の壁というやつに押し阻まれてダメだったけど。……なぜ笑うんだい?



「えっと……部活は他を考えていて、そ、それより……!」



 渚があたふたしながら必死に言葉を探しているようであった。


 両手をギュッと握って、彼女は僕を指差す。


 

「し、宗くんが呼吸をしてなくて」



「ふぇ? う、うわ! 顔が真っ青だぞ! お前大丈夫か!?」



 見るとヤツは今にも泡を吹きだしそうだった。カニかな? 一体誰がこんな事を! あ、僕か。



「し、しぬ。い、イッチーに俺は、ころ……ころ……ころころ、ちょこころね」



「シュウーーーーーーー!!!!!!」


 

 何はともあれ、なんだかんだでいつも場を引っ掻き回す我が親友である。


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