学校
のんびりとね、暇つぶしにやってます
午前5時半、コケコ鳥の鳴き声でナディは目を覚ました。今日からいよいよ第4学年、魔法の授業が始まる。気合を入れてナディは起き上がった。
リビングへ行くとすでにカムラと母はすでに起きていて母がカムラの学校へ行く支度を手伝っていた。
カムラも今日からは第1学年となる。
きっと同級生達はカムラの剣術の腕に度肝を抜かれることだろう。
昨日は本当にカムラの強さに驚かされた。
朝食を食べ母に見送られながらカムラと一緒に家を出た。
まずはセラの家にセラを迎えに行きそれから学校へ向かう。
セラの家に着くとまだセラは出てきていなかった。
どうやらまだ準備ができていないようだった。
ドアを開けてセラを呼ぶ。
「セラーもう来たぞー早くしろー」
すると奥から返事が聞こえた。
「ちょっと待って!今ミラの準備してるから!」
ミラとはセラの妹だミラはカムイの1つ年上で第2学年だ。
カムイはよくミラと剣術の稽古をしている。カムイがあれだけ強いのだからミラも相当強いのだろうと思われる。
しばらく待つと2人が出てきた
「遅れてごめんね〜ミラが寝坊しちゃってさ、ほんとこの子普段トロいのよ。剣振ってる時だけまるで別人みたいなんだけどね」
まだ眠いようで玄関前でぼーっとしているミラの手をカムイが引いて早く行こうと急かす。
いつまでもミラのペースに付き合ってるわけにもいかないので、ナディとセラとでミラの手を引き学校へ出発する。
学校まで普通に歩くと一時間半はかかるのでいつも走っていく。
いつものペースで走れば大体30分ほどで学校に着くのだが今日は初めて学校へ行くカムラが一緒なので少しペースを落として走る。
3分ほど走るとようやくミラが目を覚ましてきたようでしっかりと自分の足で走り始めた。カムイもまだまだ余裕そうである。
もっと早く行こうと言ってくるが絶対に最後キツくなるからやめておけと言っておく。
結局カムラに負けていつもより早いくらいのペースで走り出したが散々余裕だと言っていたカムラも15分ほど走ると疲れてきたようで足が少しフラフラし始めた。
20分ほど経った頃にはもうカムラは大分限界のようだった。なので、そこからは歩いて学校まで向かうことにした。いつもより早いペースで走ってきたので10分も歩けば学校に着きそうだった。
「兄ちゃん、ちょっと休憩しない?」
歩きだして間もなくカムラはそんなことを言ってきた。
「なんだよカムラ、そんな疲れたのかよ?そんなんで大丈夫か?」
そう言うとカムラは顔をしかめて言ってきた。
「そうじゃないんだよ、さっき足ひねっちゃって歩くのがすごく痛いんだよ。」
カムラの足を見てみると軽く腫れているようだった。あまり問題はなさそうだったが、カムラがうるさいので仕方なくおぶってやることにした。
それでも10分ほど歩くと学校が見えてきた。ここ一帯には1つしか学校がないため割と遠くからもこの学校へ通っている。そのため生徒数はとても多く、1学年に約50人のクラスが5つほどある。
校門をくぐると学年ごとに指定されたエリアへ行くように連絡版に書かれていた。
第1学年と第2学年の指定エリアは近かったのでカムイのことをミラに任せてセラとともに第4学年の指定エリアへ向かう。
指定エリアへ行くとすでに多くの生徒が来ていてナディとセラはお互いに久しぶりに会った友人と会話をして時間を潰した。
15分ほどすると第4学年の主任教師がやってきて、大体でいいので整列するようにと指示した。
「おはよう、諸君。休暇は満喫できただろうか?まあ、皆それぞれ家庭の手伝いなどで忙しかったであろう。忙しかったからといって剣術の稽古を怠ってはいないだろうな?」
主任教師が話しはじめてしばらく経った頃セラが後ろからこっそり話しかけてきた。
「ねぇ、ナディ。右のほうに妙な感じのローブを被った人いるじゃん、あんな人去年までいたっけ?」
そう言われて右のほうを見てみると確かに妙な雰囲気を纏った怪しげな人物がいた。
ナディ達以外にも気づいている人がいるようで、少しザワザワしていた。
「君たち、いったい何を騒いでいるんだ?私の話に集中しなさい。」
そこで、前の方にいる生徒が主任教師にあの変な人は誰かと尋ねた。
「なるほど、君たちは彼のことを気になっていたのか。ちょうどいいここで紹介しておこう。ヴェーダ君、来なさい。」
そう言われると妙なローブを着た人物は前に来た。
「彼の名はリグ・ヴェーダ、今年から始まる魔法担当の教諭だ。見た目は少し怪しいかもしれないが中身は多分大丈夫だ!」
多分ってなんだよ、多分って・・・
「御紹介上がりました。リグ・ヴェーダと申します。最近まで王都でとある貴族の護衛をしていました。私は君達の中でも特に優秀な才能を持っていると判断したものの特別な魔法指導を担当する。これからよろしく頼む。」
なるほど、ということはこの先生が俺の魔法の先生になるっていうことだな。いや~頑張ろ。
「さあ、では私の話の続きを始めようか。ヴェーダ先生の紹介が入ったからといって私の話が終わったわけではないからね。」
皆もう話は終わりだと思っていたのであたりからブーイングが飛ぶ。
「静かにしなさい。そんなんで魔法が使えるようになるんでしょうかねー?魔法っていうものは初めは中々上手く使えません。使えるようになるまで頑張り続ける忍耐力、それから集中力はとても大事ですよ。私の話ごとき集中して聞いていることもできない者が魔法を使えるようになるんでしょうか?」
そう言われて皆大人しくなる。
「もう昨年から何度も言っていますが今年から魔法の指導が始まります。魔法はこの世界で生きていくためにはとても大事なものです。魔法がある程度は使えるようにならなくてはこの世界で生きていくのは大変です。最低でも初級魔法がしっかりできるようになるまでは頑張ってください。詳しい魔法の話については各々授業で説明を受けてください。」
その後もまだ主任教師による話はしばらく続き、話が終わる頃にはみんな話を聞き飽きてクタクタになっていた。
話が終わってからようやく新しいクラスの編成が発表された。
新しいクラスではセラと同じクラスになることができた。
新しいクラスがわかったらそのクラスへ行くように指示されたのでセラとともに新しいクラスへ向かう。
教室に入ろうとしたら突然後ろか襲い掛かられた。
「よう!ナディ、セラ。俺も同じクラスだぜ、よろしくな〜」
「ガイル!まず離してくれ!苦しい、死ぬ」
「あ、すまん」
話しかけてきたのはガイル・ルクフォードというナディとセラのもう1人の幼なじみだ。無駄に力の強い筋肉バカである。手加減というものを知らないようでいつガイルに殺されしまうだろうかとナディはいつもヒヤヒヤしている。
ガイルはナディたちと家もそう遠くないので第2学年の途中くらいまでは一緒に登下校していたのだがいつも全力で走るので疲れるのでナディとセラは別で行くことにした。
ガイルは単細胞なのでそう難しい魔法は使えなさそうだなと思った。
「ガイル、あんた本当手加減知らないよね〜ナディは弱いんだから簡単に折れちゃうよ?注意してよ」
「ああ、ごめんごめん。ナディみるといちいち大げさに反応してくれるからつい面白くて」
「・・・おいガイル!こっちは必死なんだよ!ふざけんな!あとセラ、お前俺のことばかにしすぎだろ。」
そう言うと2人はケラケラと笑った。
ガイルもセラ同様に剣術が得意である。ただセラは連続した素早い攻撃が得意なスピード型だが、ガイルは一撃の重さを武器にするパワー型だ。勝負をするとほぼ互角である。
「お前ら俺が剣術できないからって俺のこと舐めてるけどなー、魔法だったら絶対負けないからな?逆にお前らのことバカにしてやるからな?」
「って言っておきながら魔法も全然できなくてマジで無能な奴になる」
「そうして彼の人生は私に一生奴隷のように使われて終わるのです。」
と、ガイルとセラは続けて言い再びケラケラ笑う。本当いつもいつも好き放題言ってくれるもんだ。というかなんでセラに使われないといけないのだろうか。それもアリか?いやなしだろ!
しばらくの間雑談していると教室に先生がやって来たので席に着く。
「みんな、今年からこのクラスの担任となるベラ・ラベラルだ。よろしくな。主任の話が長かったのでここで話をするのは無しにしよう。」
そう言うとクラスで歓声があがった。
「よし、じゃあ早速授業を始めようか。魔法の授業を期待していた者も多いかもしれないが残念ながら今日は剣術だ。木剣を用意して鍛錬場に集合だ!」
今日魔法をやると思っていたナディは落ち込んだ。魔法をやるどころか大嫌いな剣術をやることになるとは・・・
鍛錬場へ行くと先生が剣を持って待っていた。
「さあ、授業をはじめよう。みんな休暇中は剣の鍛錬を怠っていないだろうな?休暇中どれだけ頑張ったか手っ取り早く見るために今日は早速だが模擬戦をやろうか!」
一部では不満を口にしていたがセラやガイルは喜んでいた。
「勝負は1対1。対戦相手は去年までの成績をもとに先生が決めさせてもらった。まずは下の方から2組ずつやるとしようか。では呼ばれた者は順に出てくるように」
始めに呼ばれた4人は前へ出るとそれぞれの対戦相手と向かい合い構えた。
「制限時間は5分。制限時間内にクリーンヒットを決められた方が勝ちだ。では、はじめ!!」
その試合は両試合とも5分で決着はつかず引き分けに終わった。次の組みではナディが呼ばれたが勝負は開始2分ほどでクリーンヒットを決められ負けた。
その後も試合は順調に進みいよいよ最後の対戦カードとなった。
「さあ、次でラストだ。次はセラリス・ホーネット対ガイル・ルクフォードだ。両者は前へ」
2人が前へ行き間合いを取り向かい合って構えた。
「では、始め!!」
開始と同時にセラがガイルに詰め寄り木剣を振る。それをガイルは冷静に木剣を使って捌くと得意の強烈な一撃で反撃した。しかしそれをセラはアッサリとかわしもう一度間合いを取るとフェイントを入れつつもう一度ガイルに攻撃を仕掛ける。ガイルはその攻撃を読みしっかりと木剣でしっかりと受けはじき返した。
今までの対戦とは遥かにレベルの違う攻防に皆目を奪われていた。
均衡が崩れたのは開始4分後だった。
セラが鋭く緩急をつけた動きを見せ、その動きにしっかりついていけなかったガイルは辛うじてギリギリでセラの攻撃をかわした。
しかし、攻撃をかわした時にバランスを少し崩してしまった。
その隙を狙ってセラが一気に背後に回り込んで攻撃した。勝負が決まった。
「それまで!勝者セラリス・ホーネット!」
先生の合図で歓声が上がる。ガイルもすごいがやはりセラはすごいなと思った。
対戦が終わり教室へ帰ると今日の授業はもう終わりですぐに解散となった。
セラとナディはガイルと別れ、校門でカムラとミラが来るのを待った。
5分ほど待つと2人は来た。カムラは随分と嬉しそうな顔をしていたので帰りながら話を聞いた。
「カムラ、お前随分嬉しそうだけどいいことあったのか?」
「うん!友達がいっぱいできたし、剣術すごいなって先生に褒められた!」
カムラの剣術を見た先生は入学したての生徒がそこまで強いのかと驚いたに違いない。
「よかったな、剣術はにいちゃんに勝てるように頑張るんだぞ!?」
「うん!分かった!頑張るよ!」
うっ・・・心が苦しい。なぜそんなにも素直に自分の言ったことを間に受けるんだよ。ヤバいよ。
そう思っているとナディの横を走るセラからとても冷たい目線が向けられた。
強くて尊敬できる兄と見られたいがために嘘をつくナディをたいそう哀れんでいた。
家に着くと父が午後の仕事の準備をしていた。
荷物を部屋に投げ捨て、すぐに手伝いに行く。
久しぶりの学校で中々疲れていたようで仕事が終わったころにはへとへとになっていて、家にすぐに寝てしまった。明日は頑張ろう。