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小話集  作者: 海陽
1/5

IFルート・ミイド×忍「闘神」

『何を考えてるんだ?シノブ』


『んー?』


窓から外をぼんやりと眺める恋人を、背中から包むように腕に閉じ込めた。窓の外は、紅涼の風が微かな砂埃を巻き上げ去っていくダルムの街並み。


『そろそろ今年も終わるなぁって』


そう、俺はとうとう捕まえたんだ。ずっと恋い焦がれていたシノブを。旅を共にし、ずっと耐えなければ、と我慢していた募るばかりの想いを耐えきれずに彼女へぶつけて。



『頼む!どうか……っ、故郷ニホンを諦めて、俺と共に生きてくれないか』



我ながら、良くもまああんな事をシノブに言えたなとは思う。ずっと母国へ帰りたがっていたことを、俺は隣で見てきて知っているから。そんな彼女に国を捨ててくれなどと。……けれど、彼女はそんな俺に応えてくれた。『私の一生で唯一の人になると、約束してくれますか』と。

その日から俺たちは恋仲になった。ダルムに定住を決めて、首都から引っ越して今に至る。



***



『ミイドさん、これはどう?似合うかも!』


今年も後10日に迫っていた紅涼の4月10日。シノブに誘われ街の小物や短衣を取り扱う店々を回っていた。ただの買い物では無いらしい。見るもの手に取るもの全て、俺に似合うかどうかを基準にする。

別に俺の誕生日、などではない。シノブの誕生日でもない。なんの祭りも無いのに、何故?


『シノブ?何故俺のものばかりを?』


『ん?プレゼントおくりもの!ミイドさんにね、何かあげたかったの。クリスマスだよ!』


プレゼントという言葉は、以前誕生日の時にシノブが内緒で俺に贈り物をしてくれた時に教えてくれた言葉だ。オリネシアで、俺とシノブしか知らない言葉。その事が弛んでいた頬を尚更にだらしなくさせた。


で、今も俺に『プレゼント』をしてくれるらしい。何故、何もないのに?……それに『クリスマス』って何だ?!俺にも何か贈らせてくれ!俺からもシノブに『プレゼント』 をしたいんだ。指を絡めて手を繋ぎ、俺たちはそれからも暫く店々を見て回っては冷やかして回った。



『で、クリスマスって何だ?』


『クリスマスっていうのは、』


お互いにお互いへの『プレゼント』を買って帰宅して。一服して聞いてみる。


曰く。


『クリスマス』というのはシノブの世界にある祭りのようなもので、『クリスマス』の晩にその年を良い子で過ごせた子供の所には『サンタクロース』なる男が彼らが寝ている間に、頭元へ『プレゼント』を置いていくのだらしい。その中身は彼らが欲しがっていた物が入っているのだとか。ただし『サンタクロース』が来るのは子供だけで大人には来ない。


『でね?クリスマスって何も子供だけのものでも無くて。……恋人たちの日でもあるんだよ』


『!』


『もちろん1人きりや家族で過ごす人も居るんだけど、1年頑張ってきた自分へのご褒美に、とか。親から子供に何か贈ったり、とか。恋人同士でお互いへ何か贈りあったり……そんな日なんだ』


少し頬を染めて気恥ずかしそうに説明されて。……ああ、そんないじらしいことをしようとしてくれていたのか?可愛過ぎるだろう!


『でもクリスマスって、冬にある日なんだ。オリネシアには無い季節のものだから……ちょっと迷ったんだけど。それでも年末には変わりないかなって思ったのと、ミイドさんにお礼もしたかったの』


『お礼?』


この世界オリネシアで、私の唯一になってくれてありがとう、って』


『!!』


それは。……それは、俺の科白なのに!唯一無二の祖父の居る母国への道を閉ざして、俺の気持ちに応えてくれた。あんなにも帰りたがっていた、恋しくて泣きもした故郷を諦めてくれたんだ。俺の為に。礼を言うのは俺の方だ。


『シノブ……っ』


『んぎゅ?!』


愛しさ、罪悪感、多幸感。ああ、何て表現すればいい?やや変な叫びを上げて俺の腕に抱き込めた彼女を、両腕で抱き上げて寝台へ運び下ろす。


13歳も年下なシノブは、いつか俺に愛想を尽かすかもしれない。どんなに愛してももっと良い男が現れたら……。そう思うと止まらなくなって恐ろしくなる。

だけど。それでも、俺は俺なりに愛しい恋人を愛し尽したい。異世界の祭りを持ち出してはその日その日を俺たち2人の『特別な日』に仕立て上げて、祝ってくれるシノブを。


『シノブ、シノブ。……俺を、愛して』


弱音も吐いてしまうけれど、赦してくれるか?


『ミイドさん、ずっと一緒にいて下さいね』


照れた笑みを見せて、言わずとも『大好き』だと満面で俺に伝えてくれる彼女をそのまま寝台へ押し倒す。ちょっとびっくりして、それから艶やかに笑って。堪らず抱きついた俺を同じようにぎゅっと背中に腕を回してくれた。




プレゼントは、色違いの揃いの茶杯をお互いに。……ああ、シノブの国では『ゆのみ』と言ったっけな。最初から中身が知れたプレゼントだが、それでも嬉しい。幸せだ。



その晩は、凄く濃厚な時間を過ごした。シノブの声や表情に態度がとても可愛かった、とだけここでは伝えておく。



『ずっと、愛してる』


『私も』


ああ、こんなに幸せで良いんだろうか。幸せ過ぎて不安になってたら、ちゅっとシノブから頬へ口づけをもらった。そこからまた睦み合ったのは致し方ないと思う。

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