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テガミ  作者: 蒼原悠
プロローグ。
1/23

序章






※本小説の更新は、十一月三十日午前零時までの毎日零時、七時、十九時に行います。



本小説は、フィクションです。










 つらいとき。


 悲しいとき。


 いつも溜め込んでる自分がいた。



 つらい気持ちも、悲しい気持ちも。

 何もかも自分の内に閉じ込めて、気丈に振る舞ってる自分がいた。



 怖かった。


 本当の自分はとても弱くて、脆くて、儚い。

 その事実を周りに知られるのが、怖かった。

 本当の自分は、仮面の裏に隠し通して。

 いつでもいい人の顔をして、キャラクターを作って生きてきた。

 どんな場所でも、それは変わらなかった。自分が、いる限りは。





 だけど人間、限界は何にだってある。


 ある日、我慢の堤防が唐突に決壊して。

 見せたくない、隠しておきたかった嫌な自分が、みんなに露呈した。

 周りはみんな、驚いたように目を丸くした。

 やがて、言った。「やっぱり、そうだったんだ」って。


 嫌われてしまえば、一瞬だ。

 みんなはあっという間に離れて行った。

 独り暗闇の中に座り込んで、関係の崩壊を見ていることしか出来なかった。


 そんな中からもまた、暗い感情が沸き上がってくる。

 このままではまた、悪循環だ。直感で、そう思った。





 また、生きる場所を変えるのか。



 また、逃げるのか。



 そんなの嫌だ。

 自分のままで、ありのままで生きられる場所が欲しい。

 この荒れ狂う心を鎮める方法が、欲しい。



 心の奥深く、見えない自分が泣き叫んだ。





 その時視界に入ったのは。

 一本の鉛筆。

 一枚の白紙。

 それだけだった。



 それはケータイのように誰かと繋がるモノでもなければ。

 聖書や啓蒙書のように、疲れた心を癒せるモノでもない。

 何の変哲もない、ただの紙と鉛筆。


 鉛筆を手に取り、ふと考える。


 これは、どう使うものなんだろう。

 なぜ、人はこんなものを開発したのだろう。

 世界中でたくさんの人たちがこれを使っているのは、なぜだろう。


 そう疑問に思ったとき。

 初めて少し、未来が開けた気がした。



 今、自分にできること。

 それは、心の奥に溜まったその気持ちをこの紙に吐き出しぶつけ、(カタチ)にすること。


 カッコ悪くていい。

 きれいじゃなくていい。

 最悪、読めなくたっていい。


 溜まり続けたこの思いを、少しでいい。解して、溶かして、流すことが出来るなら。

 誰も傷付かずに、笑って暮らしていけるなら。

 そのために、この紙と鉛筆があるのなら。


 五十通りの平仮名と片仮名と、何万もの漢字。アルファベット。

 この世に生まれた言語の全てが、今は味方になってくれるんだ。

 才能なんて要らない。思いの丈を、ただ真っ直ぐに────
















 「9月23日


 今日、嫌なことがあった。」──────








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