表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

ついカッとなる女子高生の現状

作者: 怠惰な箱

※女子高生がどういう生き物か知らないので現実とはかけ離れている可能性が大いにあります。ご注意ください。



登場人物

・高橋千香

……今回のお話の主な舞台となる部屋の主。彼女は友人に切り出した話とは…。


・田中深雪

……この三人の中では一番の常識人にして豆腐メンタル。


・鈴木紫乃

……爆弾常備系女子。職質されたら間違いなくお縄な人。


・高橋梨香

……千香の姉。彼氏持ち。いちゃいちゃあんあんしてて隣の部屋の千香の精神力は常に10を切る。


・じっちゃん

……ぎっくり腰。あまり役に立たない。ちなみに千香と血縁関係はない。祖父とかではない。

 季節は夏。

多くの学生は今年こそはと宿題を計画的にやると心に決めたものの、やっぱ明日やろう~と思い始めてきた時分である。


 そんな頃、肩よりは長くした髪を二つに結んだ少女、高橋千香は自室にて声高々に叫んだ。

「どいつもこいつもイチャイチャして、暑いったらありゃしない!」

そこに彼女の家に遊びにきたのであろうその友人のうちの片方、千香よりも多少長い髪をそのままおろしている、鈴木紫乃は呟いた。

「お前そもそも出かけてないだろ。だったらカップルなんて早々お目にかからないんじゃないか」

それにもう一人のショートヘアの少女、田中深雪は

「あ~、高橋のことだからもし出かけてるにしても課題のために近所の図書館くらいしか行かなそうだしね」

と、紫乃に賛同した。

「あなたたち何か忘れてない……?主に私の家族に起きたことに関して」

千香は拳を握り肩を震わせ、低い声で言う。

二人は即座に、


「ああ、この前おばさんが商店街のくじ引きで二等当てたやつだろ」

「えっ、私はこの前自動販売機で当たりだしてたの見たけど」


と千香も聞いてなかったことを言った。

千香は

「ちっがーうっ!!というかお母さん運微妙にいいね!その運今すぐ下の娘に分けてほしいよ……」

彼女の状態をさすがにかわいそうに思ったのか深雪は切り出した。

「で、結局なにが起きたの?」

「姉に彼氏ができた」

「はーい、解散解散」

深雪はパンパンと手を叩く。

ちなみにこの間15秒弱の出来事であった。

だが、千香は続けて、

「お姉ちゃん、隣の部屋でしょ?たまにあるんだよね、彼氏つれてくること……」

このとき紫乃はすでに興味をなくしたのか、千香のベッドで寝て耳をほじっていた。女子力の欠片もなかった。

「でさ、夜な夜な、昼間もかな?着衣」

「ストォォップッ!ちょっとそこから先洒落にならないから止めなさい。あなたのお姉さん的にもその彼氏さん的にも」

深雪は千香が言っていることを赤い顔をして遮った。

「ちっ……、そこまで言うなら止めてあげます」

「うん、やめようね」

しかたないですね、と顔を人目見ればわかる表情に、深雪はやや疲れながら返した。

そしてする事がなくなったのかしばらく沈黙が続く。

「……」

「………」

「…………暇だ」

痺れを切らした千香は何やら机の方に向かってパソコンをいじり始める。

深雪はしばらく何やってんだこいつ、という視線で眺めていた。

千香はお目当ての物を見つけたらしく、イスをクルッと回転させて

「というわけでこちらをお聞きください」

と言った。

『というわけ』に特に文脈的なつながりはない。

すでに再生されているらしくパソコンのスピーカーからジジッ……とノイズが聞こえる。

「何かの録音?」

「お姉ちゃんたちの会話だよ。機材提供は鈴木です」

「鈴木なにしてんの」

紫乃は静かにサムズアップしたのだった。




□□□


「梨香、頼む!というかお願いしますっ」

一人のイケメンが黒髪ロングの彼女に土下座をしている。

「えっ…と」

彼はたじろぐ彼女に再三要求した。


「お願いなので巫女服を着てくださいっ」


□□□




「……なにこれ」


 隣の部屋から聞こえたのを録音したであろう会話を聞き、深雪は呆れていた。千香は

「いや、あのさーこれが隣の部屋から聞こえてくるわけですよ。録音以外になんの選択肢がありますかね」

「いくらでも選択肢はあるわっ」

キリッと言う千香に深雪は素早く返答した。そこに今まで沈黙を保っていた紫乃が

「そうだ、爆発という選択肢が」

懐から手榴弾の様に見える物を取り出した。

「危ないもの取り出すなぁぁぁぁあっ!」

焦る深雪に千香は更なる爆弾発言をした。

「ちなみに───」




□□□


 高橋梨香は困っていた。というのも、今までなんだかんだ言って腐れ縁だった彼を異性として認識し、ついに男女交際という形に踏み切るに至ったわけだったのだが、

「えっ…と」

「お願いなので巫女服を来てください!」

なぜか彼は土下座をしている。

もともとちょっと(?)変わった人ではあると知っている。知っていたのだが…。

「な、なにゆえ巫女服を?」

その彼、伊藤隆司のあまりの真剣さに引いていた。

「似合うからだ」

即答された。なんだろう、妹とどこか同じ雰囲気を纏っている、と梨香は冷や汗を流す。

「いや、似合うとかそんなもんじゃない。長い黒髪だし、どことなく漂う大和撫子的な雰囲気……、もはや一部であると言っても過言ではないだろう」

いつの間にか立ち上がって隆司は梨香に詰め寄り、両手を握っていた。

梨香は改めて隆司の顔を見てみる。真剣な表情であり、会話さえなければ正直、カッコいいと思う。だが、やっぱり彼女の脳裏には自分の妹の姿がよぎる。しかもいかがわしいものを想像している時のをだ。

「隆司は私にすごく似合うから巫女服を着てくれっていってるのね?」

いっている内容を理解しているものの、確認してしまう。

「ああ、できれば今すぐにでも見てみたい」

やはり即答だ。彼氏の発言に思わず顔が赤くなるのがわかる。

「じゃあ、その今着るから、ちょっと待ってて!」

つい、言ってしまう。隆司はまじまじと梨香を見つめ、

「ありがとうございますっ…!」

泣き崩れた。


□□□




「───ちなみにこういうノロケかなりの頻度で聞こえてくるのよね」

「……」

「……爆弾用意」

千香は若干死んだ目、深雪はかなり死んだ目、紫乃はいつもと同じ死んだ目であった。

すると突然深雪が立ち上がり、

「ちょっとお手洗い借りるね」

と部屋を出ていった。

紫乃は彼女が行った後に

「あいつ吐きに行ったな」

「だね」

深雪はいつもと同じでメンタルがあれだった。

恋愛系は特にダメだった。




 五分後、深雪は戻して、否、戻って来てこれまた唐突に

「この中で男女交際、異性に告白したまたはされたことがある人挙手」

すごくシーンとなった。

「この話題はあまりにも不毛すぎる」

「だね」

「……」

「どっか遊びに行こう、明日以降とか」

沈黙に耐えきれなかったのか深雪はそう言ったが、

「パス、だるいしバイト入る」

と紫乃が、

「暑い、焼ける、出かけたくない」

と千香がやる気のない返答をする。


 そこに突然窓がガラッと開いた。

「お困りのようじゃな」

なぜかどうみても年輩の男性にしか見えないおじいさんが二階に位置するはずの部屋の窓に手をかけていた。

ハッスルしすぎである。

それに千香は「じっちゃんっ!」と嬉しそうに言ったが、深雪は「謎展開だわ……」と呟いていた。

しかし、このじいさん、町でも少し有名な相談相手である。

もしかしたらこの現状を打開できるかもしれないと深雪は微かに期待した。

うむ、と髪のない頭を撫でながらじいさんは、

「なんでもじいさん相談室、一回の相談につき百円からじゃ」

「あっ、ならいいや」

千香は手で帰れ帰れと追い払った。

千香の寂しい対応に、「けー、つまらんの」と悲しそうにじいさんはすごすごと引き下がる。

そして窓を閉める直前に

「あっ、そう言えば今日梨香の彼氏来てるみたいじゃ」

と言い残していった。

深雪がえっと言うと同時に廊下からバタバタと足音が聞こえてくる。

そして千香が立ち上がりドアを開けると

「あ」

セーラー服の梨香が立っていた。

千香は流れるような動作でばたんと何事もなかったようにドアを閉め、さらに鍵をかける。

「あのこれはっ」

ドアを叩く音ともに梨香の弁解が聞こえる。

千香は

「はっ、今日もお楽しみのようですね」

ボソッと呟いた。

続かない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ