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わーい遅くなってすみません(泣)
最新話ですm(_ _)m
「さて、ユキムラ。どうする?」
「動きを止めて連打だろ」
「だから、どうやってですか?」
「リンが突っ込めばいいと思う」
「ならセンパイも一緒に行きましょ?」
「嫌だね」
「自分で振っといてそれは酷いんじゃないですか!?」
「ゆきくん、作戦は?」
「臨機応変に適宜判断。よし、散開するぞ」
「……それ作戦って呼べるのかな?」
動き始めたスティグマを傍目に俺たちも移動を始める。
皆と別れ、上と下が大きく削り取られた結果形だけ見るとドーナツのようになっている足場を走っていると、ピピピ、という電子音を発して目の前にウィンドウが現れた。
見ると、ユキムラからの通信だ。
「どうした?」
<いや、今まで考えたこともなかったんだけどさ、離れて意思疎通が難しいなら通信で済ませればいいと思って。別に動けなくなるわけじゃないし>
「まあ確かに。他の2人は?」
<パーティチャットで誘ったからもう来るだろ……おっ>
<もしもし?>
<どうしました?>
頭の中で残りの2人の声が響く。確かに便利だが、頭に直接響くと集中し難いな。
2人に事情を話し終えたユキムラにそれを伝えてみると、ふむ、と頷いて話し始めた。
<なら、ウィンドウの設定で『通信設定』の『顔ウィンドウ表示』っていうのにしてみ? 俺のおすすめは『連動型』だな>
「ん? どれどれ……」
手を振ってウィンドウを出し、手早く設定を弄る。各種設定から潜って言われた通りのボタンを押すと、目の前にそれぞれ3人の顔が映ったウィンドウが現れた。
「おっ?」
<出来たか。それだと頭に直接じゃなくてウィンドウから声が出るから大丈夫だろ? 声を発して無い時は消えるから視界の邪魔にならないし>
「そりゃ便利だな」
<あれ? センパイ知らなかったんですかー。おっくれってるー>
「てい」
<あ、ちょ―――>
イラついたのでリンのウィンドウを指で突き刺すと、ブン、というテレビが消える時のような音を発してウィンドウが消滅した。
すぐさま再び現れて<何するんですか!>と叫んでくるが、視界の端でスティグマが何やら始めたので、ウィンドウを空中でドラッグして邪魔にならない位置に移し、そちらに神経を集中する。
スティグマが既に球体を保てていない部屋を突き抜けるほどの馬鹿でかい剣を上に掲げると、その柄のあたりから赤い光が漏れ出し、徐々にバラバラの大きさの無数の残骸から出来た剣身を覆っていく。
<当たったら即死でも可笑しくないな>
「洒落になんねぇな、おい」
<でも、さっきの感じからして連続攻撃を叩きこめばHP削りきれそうですよね>
<問題はどうやって近づけばいいかだけどね>
巨大な剣は赤く輝き、まさに暴力の権化ともいうべき存在感を放っている。あれを喰らって無事で済むとは思えない。
となると、何が何でも躱すしかないのだが、それにはスティグマが剣を振う速度が関わってくる。出来ればある程度遅いと助かるのだが、果たしてどうなるか。
<っ!? 来るぞ!>
ユキムラが警告した瞬間、空中を滑るようにしてスティグマが動き出す。後方にホバリングしながらその巨大な剣を両手で構え、滑らかに前へと振るった。
剣は足場へと激突し、途端に俺たちはとんでもない振動に襲われる。ときたま起こる地震なんて比じゃない程の激しい振動だ。
激しい振動の中、何とかスティグマとその巨大な剣を確認すると、身体の角度からして狙われているのは俺ではないらしい。基本的にヘイトはダメージを与えると上昇するので、姫様が回復魔法を使ってないなら狙われているのはユキムラかリンだろう。
そして、振われた剣はそのまま衝撃を振り撒きつつ足場を削り取っていく。その速度は見えないほどでもないが、それでも驚異的な速度で足場を斬り裂いていき、赤い残滓と耳をつんざくような轟音を残し、上から下まで一刀両断にした。
<おいおい、結構速いぞ>
「無事か?」
<何とかね。……今のターゲットは俺だな。何とか躱せるし、次も俺なら仕掛けてくれ。ただ、そうとは限らないから注意しろよ>
「分かった。リン、挟み込むぞ」
<あいさー。合わせます>
今狙われたのはユキムラだったようだ。舞い上がった砂塵のせいで視認は難しいが、あれを躱すとは流石はユキムラだろう。
打てば響くようなリンの声はまあ聞き流し、そのままダッシュとジャンプを使って残骸の上を次々に飛び跳ねる。
<ヒメは魔法待機させて離れとけ。もし回復使うとヘイトがそっち行くからな>
<うん、わかった>
「姫様が回復使う時まで生きていられればいいけどな」
<それは言わないでくださいよ。一撃で死ぬとか……まるでラグナじゃないですか>
「……まさしくもってその通り、だな」
<おいおいお前ら、忘れてないか?>
これだからまったく、というようなふざけた声色でユキムラが言った。
「何だよ」
<あいつの攻撃方法はあの馬鹿でかい剣だけじゃないだろ?>
そして、ユキムラが首をやれやれと竦めると同時に、視界端のスティグマが動き出す。
機械仕掛けの純白の翼を大きく広げ、その周りに光球を次々に作りだし、そこから全方位にレーザーを解き放った。
その数、合わせて数百は行くだろうか。白いレーザーは屈折しながら猛スピードで空を斬り裂き突き進み、敵を圧殺せんと迫る。
「……おい、ユキムラ」
<……正直、すまんかったと思ってる>
思わず低くなった俺の責めるような言葉に、ユキムラは目を合わせずに答えた。
<ヒメセンパイ! 防御できます!?>
<いや、あんな数私の魔法じゃ無理だよ!>
「司令官! 敵の攻撃規模がおかしいであります!」
<狼狽えるな! 全軍、突撃ぃ!!>
<そこ2人! ふざけてないで集中してください!>
画面の奥からリンに怒鳴られ、ユキムラと2人目を合わせて首を竦める。「俺たちはいつも真面目なのに」「逆に俺たちほど真面目な奴っていなくないか?」というアイコンタクトだ。
まあ、ふざけるのはこれくらいにして、俺は手早くウィンドウを開き、アイテムを実体化させる。使ったことが無いのでまだバックパックから取り出せないのは難点だが、その効果は折り紙つきだ。ユキムラ曰く取りあえず持っておけ、という未踏破エリアでの必須アイテムの1つらしい。
取り出したのは一着の外套。俺はその白染めの外套を羽織り、そのまま武器を換装。機巧剣を取り出し、ワイヤーの技能を発動させて剣先を前に向けて引き金を引き込んだ。
「よし、行くか」
迫るレーザーを確認し、もう一度引き金を引く。レーザーは俺を付き貫かんとすぐそこにまで迫るが、その後急激に横方向へと引っ張られ、足場ギリギリの低空を這うように移動する俺の動きを追い切れず、次々に足場へと突き刺さって爆発を起こした。
そのままさらにもう一度引き金を引いて慣性の法則に従って低空を滑空し、レーザーの合間を縫って再びワイヤーを射出する。
多少のレーザーは躱し切れずに喰らってしまうが、元々の威力が低い上に、俺が来ている外套に阻まれて行動を阻害するには至らない。
俺が着ているのは『白鼠の衣』。光属性攻撃のダメージ微軽減と、一定以下の威力の光属性攻撃を受けた際の硬直の無効という心強い効果を持つアイテムだ。
「一定以下」の制約がかなり厳しいことが問題なのだが、今回に限ってはクリア出来ている。レーザーは数と追尾性で圧殺してくるが、一発一発の威力は弱い。まさに適切な攻略法と言えるだろう。
「……ユキムラの言うこと聞いといてよかった」
これ無かったら硬直して斬られて死に戻りじゃん。
飛ぶ勢いをそのままに、スティグマへと接近するために2つ目のワイヤーが刺さったところを起点として、ワイヤーの長さは縮めずに弧を描くようにして上空へと飛ぶ。
レーザーを無視して宙を飛んでいる際に後方で爆発音が聞こえるが、レーザーによって発生した爆煙に突っ込んだせいで視界が悪すぎて何が何だか分からない。もしかしたらスティグマが剣を振り下ろしたのだろうか。
そして、レーザー地獄から抜けたのか、煙が晴れて開けた空域へと飛び出す。
耐久度が擦り減って意味を成さなくなった外套を脱ぎ捨て、同時に周囲を見回す。他の奴らは確認できないが、少し下の方にスティグマが佇んでいた。少々上に行き過ぎたらしい。
そのまま強襲を掛けようとするが、スティグマが剣を腰だめに構えたことでその考えは放棄する。
スティグマは翼を器用に動かし、身体の正面をこちらに向けた。心なしか赤く輝く剣が一際エフェクトを纏っているようにも見える。
そして、その腕が閃き、巨大な剣が恐ろしい剣速で放たれるのと同時に、俺は手元の引き金を引き込んだ。
「―――ッ!」
急速に下方向へと引っ張られたせいで身体に一気に衝撃が襲うが、そのお蔭で間一髪スティグマの剣を躱すことに成功する。
巨大な剣はそのまま地響きのような音を上げながら足場や滞空していた残骸を飲み込んでいき、丸い足場を一周斬り払った。
これですっかり四分割され、ついに原型が全く分からなくなった足場はというと、何か大切な機能を失ったのか、そのまま四方へと徐々に墜落を始めた。
生き残った残骸に着地してその光景を眺めるが、最早やり過ぎだろ、という感想しか浮かばない。何だこれ。
<センパイ! 仕掛けますよ!>
「お、おう。どこだ?」
<すぐ上です! 硬直させてくれればあたしとユキムラセンパイで削り切ります!>
「無茶言うなよ! どうやって攻撃当てろって!?」
<それなら私が狙撃するよ!>
姫様がそう言うや否や、後方から極光の砲撃が真っ直ぐスティグマへと伸び、そのままその身体へとぶち当たった。
<どう? 当たった?>
<いや、左手を突き出してガードしてる! んなのありかよ!>
「知らんわ! とにかく仕掛けるぞ!」
ダメージは与えられていないが、スティグマは今釘付け状態だ。姫様の作ったチャンスを無駄には出来ない。
点在する残骸を足場にスティグマへと突き進み、その途中で両手棍へと換装する。
スティグマは左手を振るって姫様の砲撃魔法を打ち破るが、もう遅い。俺は両手棍を握りしめ、三角跳びの要領で残骸を蹴りつけ、弱点だと思われる後頭部へと強襲を掛ける。
両手棍スキル重単発技『虎砲・轟』。通常は虎の気迫を撃ち出す技能だが、この技能はゼロ距離で直接当てると敵の硬直に補正が掛かる。まさにこの状況にうってつけの技だ。
ライトエフェクトを纏った棍をスティグマの首筋へと叩き込み、大きく吹き飛ばす。
しかし、そのまま硬直するかと思われたスティグマは翼を広げて制止し、逆にこちらに向かって左腕を突き出して突っ込んで来た。
「こいつ、硬直無効か!?」
<アサヒ! 躱せッ!>
ユキムラが叫ぶまでもなく回避のために二段ジャンプで距離を取るが、それだけでは翼を持つ相手を躱し切れるはずがない。そのままガシッ、と頭を鷲掴みにされた。
「げっ」
スティグマはそのまま万力のような力で俺の頭を握り締め、その手にライトエフェクトを纏わせる。
って、いくらなんでも、頭バンで死ぬとか嫌過ぎる……!
「センパイ!」
HPがゼロに向かって刻一刻と減り続ける中、上空から舞い降りたリンが右手に握る剣を一閃する。
剣は俺の頭を握り潰さんとしていたスティグマの左手を手首から両断し、すかさず俺はリンの手を掴んでスティグマを蹴り飛ばし、離脱した。
「リン、助かった!」
「ふふん、崇め奉ってもいいんですよ?」
「流石は腕を両断することに定評のあるリンだな!」
「それは何か嫌です!」
取りあえず機巧剣へと換装し、最後のワイヤーを使って地上へと伸びる柱に向かって飛ぶ。今や周囲に確固とした足場はこれらの柱しか残っていないと言えば、今まで暴れまわってきたスティグマの凶悪さが分かるだろう。
すると、次の瞬間、俺たちが今までいた空間をスティグマが剣で薙ぎ払った。
機巧剣を操って何とか回避したが、さっきからHPこそ減ってはいないものの精神的な疲労が着々と蓄積していく。端的に言えば、大質量の武器が近くを通り過ぎるのは怖すぎた。
「随分とスリリングだな、まったく!」
「新感覚アトラクションですよ、きっと」
「命の危機にさらされるのが新感覚なら、そりゃそうだろうよ!」
残骸を躱しつつ何とか無事に柱へと着地し、背後からはスティグマが追って来ているためそのまま地上に向かって走り出す。
流石に柱を折る事は出来ないのか、表面を削るように剣を擦りつけてくるスティグマを、柱の側面を回ることで何とか回避していく。
「やっこさん、柱は斬れないみたいですね!」
「そりゃそんなことやられたらお仕舞だろ。柱も破壊不能オブジェクトじゃないっぽいところが怖いけどな」
技能も織り交ぜて走りながら、リンと言葉を交わし合う。
地上まではあと2分も掛からない。地上に降りると翼を持つスティグマを相手にするのはかなり困難になるだろうが、今この柱の上で迎え撃つよりかは楽だろう。上の足場の残骸で相手できていたら楽だったのだが、残骸もスティグマの攻撃で減っていたし、考えても仕方がないことだ。
「……センパイ。やっこさん、剣を腰だめで構えましたけど」
「ほら跳ぶぞ」
最悪を想定し、隣を走るリンを抱えてそのまま柱の重力圏内から飛び出す。
同時に、宙を舞うスティグマがその巨大な剣を振りおろし、柱をくの字に叩き折った。それによって柱には修復不能なほどに深刻なダメージが与えられ、破砕箇所から柱全体に亀裂が延びていき、そのまま粉々に砕け散った。
一瞬で考え付いた中じゃ最悪に近いだろう。柱は砕け散って最早走行不可能で、残骸は跳躍の足場程度にはなる大きさだが、それを足場にして跳んでもどうせスティグマの方が速い。
となると、頼れるのはこの武器のみだ。
「うひゃあ! って、これからどうするんですか!」
「まあ、慌てなさんな」
最早移動手段となりつつある機巧剣を握りしめ、現状使える最後の技能を発動させた。
機巧剣スキル特殊技『バレット・オン』。再行使制限を無視してギミックを装填する代わりに、使い終わった後に通常の2倍の待機時間を要求する、何とも使い勝手の悪い面倒な技能である。
ガシャン、と空の薬莢を吐き出して剣身が再装填された機巧剣に『ワイヤー射出』の技能を使い、準備を完了させる。
「センパイ! 来てます!」
「分かってるよっと」
落下してる状態でさらに斜め下へと二段ジャンプを行い、上から迫った赤黒い剣をギリギリ躱す。そのまま急速落下をしたまま、迫ってきたある物に向けて剣身を射出した。
そして、剣身は空を裂いて飛び、「それ」の肩口に突き刺さる。
「あれは!」
「ああ。まだ生きてたようで何よりだ」
俺は眼下で直立する漆黒の巨人、『アーマードコア・イプシロン』を眺めてリンに応えた。
剣身が突き刺さったことで俺たちがターゲットされたのか、イプシロンはこちらに腕を伸ばして来る。だが、流石に愚鈍な動作のイプシロンに捕まるわけもなく、俺はワイヤーを操作してイプシロンの剛腕を避け、弧を描くようにして地面へと向かう。
「ふう、動きが遅くて助かったな」
「でもターゲットにはされたままっぽいですね。どうせ誰か今まで戦ってたでしょうし、その人たちに任せますか」
「賛成。俺たちにはスティグマがいるし、面倒は避けるし作らないってね」
話しながらも地上に向かい、頭の中でユキムラと姫様と合流する算段を立てている時に、突如、体勢的に後ろを見ているリンが思わず喉から漏れたような悲鳴を上げた。
「どうした!? ……って」
振り向くと、片腕になったスティグマがすぐそこまで迫っており、しかも、その馬鹿でかい剣を今にもフルスイングしようと大きく振りかぶっていた。
「センパイ!」
「リン、口閉じてろ!」
叫び、思いっきり機巧剣の引き金を引き込む。同時に放たれたスティグマの剣が俺たちに迫るが、間一髪で機巧剣がワイヤーを巻き上げる方が速く、俺たちは紙一重で剣の錆、宇宙の藻屑にならずに済み、そのまま上空へと舞い上がる。
そして、剣はそのまま突き進み、直線状にいたイプシロンを叩き折った。
「「―――なっ!?」」
ズガァァァアアアアアッ!!! という轟音が響き渡り、赤く輝く剣はあろうことにか、仲間であるはずのイプシロンを真っ二つに粉砕してしまった。
流石に目を剥いた俺たちを歯牙にもかけず、スティグマはそのまま剣を引き戻し、大きく翼を羽ばたかせて俺たちへと一直線に向かってくる。
「ご臨終なさいましたね」
「ああ。ったく、後2発なのに」
舌打ちをひとつ打ち、崩れ行くイプシロンの残骸に向けてワイヤーを放ち、そのまま落ちる残骸に引っ張られて地面へと落下し、スティグマを躱す。
次は上段に剣を構えたスティグマを見て、引き金を引き、勢いをつけて振り下ろされた凶刃を何とか回避する。
剣が既にボロボロのイプシロンの残骸をさらに粉々にしたことで、イプシロンは粒子となって消えていくが、その間になんとか俺たちは地面へと近づく。だが、あと少しというところで、剣を引き戻したスティグマが再び剣を上段に構え、突っ込んで来た。
既に残骸は消滅したため足場は無く、残り時間も考えるとここで機巧剣を失うのは痛い。
となると、手は限られてくる。
「リン、二段ジャンプは!?」
「あります!」
「なら頼む!」
短い言葉で意思疎通を済ませ、俺はリンを手放して身体を下に向ける。空中でバランスを取ってリンと足を合わせた。
お馴染みの、コンビネーション空中移動技である。
「「せーのっ」」
同時に足に力を込め、俺は地面に、リンは低空を飛ぶようにして空を駆ける。
前転して衝撃を殺して地面に着地し、次の瞬間に全力で前へと跳ぶ。同時に、すぐ後ろへと剣が振り下ろされた。
俺はそのまま背後からのとてつもない轟音と衝撃に俺は成す術もなく吹き飛ぶ。だが、そうしてHPと精神力を犠牲にこの地獄から何とか生き残ることに成功したのだった。
「いってぇ……リン!!」
「何ですか?」
「……あれ?」
吹き飛ばされた状態から気力で身体を起こし、安否の分からない仲間の名前を呼ぶ。すると、その応えはすぐ隣から聞こえた。
隣を見ると、涼しい顔してリンが着地したところだった。
「どうかしました?」
「……何でもないよ、ったく。ユキムラ」
<おう、無事か?>
何とも言えない心境を誤魔化して頭を掻きながら立ち上がり、まだ繋がっているはずの通信へと呼びかける。
すかさず現れたウィンドウに「問題ないよ」と返し、上空のスティグマを見据える。
スティグマは剣を構え、今にも襲ってきそうだ。
「あとどれくらいで来れる?」
<もうすぐだ。1分掛からないな>
「そりゃ優秀なことだ」
口角を上げ、皮肉を言うようにしてユキムラと笑い合う。
<でもあと1分無いよ!>
だが、続けて現れたウィンドウで、姫様が悲痛な顔をして残酷なタイムリミットを告げた。
あまり直視したくなかった現実を突き付けられ、思わず右隣のリンと顔を見合わせて、同時に溜息をついた。
「きついな」
「きついですね」
<てかこれ無理じゃないか?>
「……手は尽くしたけど、厳しい」
「だよなぁ…………ん?」
突如会話に放り込まれた左からの聞き覚えのある声に、リン、そしてユキムラと姫様もそちらを向く。
そこには、一仕事したぜ、といった感じに流れてもいない汗を拭う猫耳フードの『道具屋』フィナと、その後ろでやれやれ、と首を竦める『魔物使い』リーベが、いつの間にやらちゃっかりと立っているのだった。
この一話で作中時間は約5分間。流石ですね。




