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門の番人  作者: 成田チカ
3/6

Chapter 3

 最近、ジェニーがどうも変だ。

 いや、ジェニーが変なヤツなのは子供の頃からよくわかってる。でも、そうじゃなくて、態度というか、行動というか…。上手く説明できないけど、何かが変だ。

 この間の週末、僕がジェニーと一緒に日課のランニングに出た後、そのままジェニーのお母さんであるローラの厚意に甘えて朝食をご馳走になる事になった。

 暖かくなってきて外が気持ち良かったから、僕はしばらくジェニーの家の庭で腕立てや腹筋をやったり、ストレッチをしたりしていた。若い芝生の青い臭いが気持ち良かった。

 一通り終わると、僕は庭先にある水道口から水を出して、そこで顔と頭を軽く洗った。いつもなら、それが終わる頃にシャワーを浴び終わったジェニーが降りて来て、タイミングよく僕にタオルを出してくれたりするんだけど、その日はどういうわけか、ジェニーがタオルを胸の前で握り締めたまま、ボーっと突っ立って動かなかった。

「ジェニー、タオル」

 ジェニーは僕の方を見たまま、動かない。

「ジェニー? おーい」

 目の前で手を振ると、ジェニーは一瞬ハッとして、それから俯きながらタオルを僕の方に差し出した。

「あ? あ…。あ! ゴ、ゴメン! はい、これ!」

「…サンキュ」

 僕がタオルで顔や頭を拭いている間、ジェニーはボーっと僕の方を見ていた。風邪でも引いたのかなと思っている時に、遠くからジェニーのお母さんのローラが声を掛けてきた。

「ダン? 今日は暖かいから、汗も随分掻いてるんじゃない? ジェイクので悪いんだけど、このTシャツに着替えたら?」

 そう言いながら、ローラはジェイクが置いて行ったTシャツを一枚、テラスにある椅子の上に掛けた。

「ありがとうございます」

「朝食、もう用意できてるから。中に入って二人で食べなさい?」

「はい。すぐに行きます」

 ローラは僕らに手を振ると家の中に戻っていった。僕はテラスに向かって歩きながら、着ていた汗で身体に張り付いているTシャツを脱いだ。すると、後ろのほうから変な声がした。

「ひ、ひやぁあ!」

「へ?」

 変な声のした方を振り向くと、ジェニーがあたふたと顔を手で隠そうとしていた。

「…何やってんの?」

「や、ちょっ、あのっ。振り向くの、反則! し、しかも、その格好でこっちに来ないで~!」

「え?」

 この格好ったって、別に全裸じゃないし(下着とジョギングパンツは履いたままだ)。何が悪いんだか、僕にはさっぱりわからない。

 ジェニーは、しまいには地面の上にしゃがみ込んだ。まるで、かくれんぼをしている子供みたいだ。

「ジェニー。本当に、大丈夫?」

「だ、だ、大丈夫! 大丈夫だから、早くあっち行ってシャツを着なさいよっ」

「え? あ、うん」

 僕はテラスに行くと、ローラが用意してくれたダグのTシャツを着た。LサイズのジェイクのTシャツは、僕には少しブカブカだ。だけど、最近、筋トレをやっている影響もあって、昔ほどズルズルになっている感じはしない。そう言えば、最近、自分の持ってる服が少しきつくなってきたかな。次に仕事の収入が入った時に、新しい服を買いに行った方がいいかもしれない。そう言えば、前にジェニーが僕の着ている服が似合ってないだの、形が変だの、散々文句を言ってたっけ。

「ジェニー、今度さ」

「ん?」

 ジェニーは僕をちらっと上目遣いで見ると、服を着たのを確認したのか、ほっと安堵の息を漏らしてから立ち上がり、僕の方へと歩いてきた。

「何か言った?」

「うん。今度、次の入金の後、買い物に付き合ってくれないかな?」

「買い物?」

「うん。最近、服が少しきつくなってきたみたいなんだ。それで、新しい夏服を何着か買おうかと思って。一緒に行ってくれる?」

「あ、うん。いいよ。でも、何で?」

「だって、僕が自分で選んだ服って、いつもジェニーには不評だからさ。それなら、ジェニーに僕の服を選ぶの、手伝ってもらおうと思って」

 僕がそう言うと、いつもなら「全く、仕方ないなぁ」とか「面倒臭い」とか偉そうに言うジェニーが、どういうわけか、はにかみながら笑顔で「わかった」としおらしく言った。

 …調子が狂う。

「ほら、早くキッチンに行こ? 食事が冷めちゃうよ」

 何故だか上機嫌なジェニーが、僕の腕を引っ張りながら扉に向かう。

「あ、うん…」

 僕はジェニーに腕を引かれながら、家に入った。

 やっぱり最近、ジェニーが変だ。


 五月に入って、学校も残すところ、あと一月とちょっと。夏が近付いてきている。

 毎年、この時期になるとサマーキャンプの話題やバイトの話で持ちきりだけど、今年はそうも言っていられない。この夏は、来年卒業後の進路を決める大事な時期だ。

「ダン! ダンはどこの大学のキャンパスツアーに参加するの? 私はここと、ここにも行くんだけど、もしダンも行くなら、一緒に行かない?」

「あら、あなたとダンじゃ、成績が全然違うじゃない。ダンはもっと上の大学を狙っているんでしょう? 私と一緒に、ここの大学のキャンパスツアーに参加しない?」

「何よ。あんたの成績だって、ここは無理じゃない!」

「うるさいわねっ!」

 ギャンギャン、キー、キー、キー…。

 女って、どうしてこう、自分以外の人間について、まるで自分のことのように熱く語れるんだ…? 大体、どうして最近、僕の周りにはこうも煩いギャラリーが行く先々に付いて回るんだろう。前みたいに、空気のように放っておいてくれた方が、よっぽど楽だ。なのに僕が一体何をしたって言うんだ…?

 僕がウンザリしながら辺りを見回していると、丁度廊下の向こう側にジェニーの姿が見えた。ジェニーは女の子達に囲まれている僕の姿を見るなり不機嫌そうな顔をして、その場に仁王立ちになった。まずい。

「あのさ。悪いけど、僕、そろそろ行くね。じゃ、また!」

 女の子の垣根を押し分けてジェニーの方に向かおうとすると、その先にまるで待ち構えていたかのように、一人の女子が立っていた。確か、彼女は1学年上だったと思う。

「ハ~イ、ダン。あなたに、お願いがあるんだけどぉ~」

 アイスクリームにハチミツをかけてこね回したような声で、その子は僕に話し掛けてきた。はっきり言って、この手のタイプは苦手だ。

 僕はしかめっ面になりそうな顔を無理矢理平静に保って、出来うる限り穏やかに言った。

「何?」

 彼女と、彼女の後ろで様子を見ている友人達が「きゃあ」とか言いながら身体をくねらせた。何なんだ。

 彼女はマスカラがこってり付いた睫毛をバシバシと上下させながら、上目遣いで僕を見ながら口を開いた。

「私のぉ、プロムのパートナーに、なってくださらないかしらぁ?」

 目の前で不気味なほどフェロモンと安い香水を撒き散らしているその子に、悪気は無いけど僕は吐き気を感じた。嫌な過去が頭の中に這い出しそうになって、慌ててそれを押し込める。

 プロムのバーティー会場の入口で、今よりも派手に着飾った目の前の彼女と、スーツを着た僕が花のアーチの下で並んで写真を撮っている図を想像しようとした。だけど。

 …ありえない。

「ごめん。無理」

 それだけ言って、僕は逃げるように走り出した。

「ちょっ! 何よそれ、早!」

「待ちなさいよ、ダン・ウィーザー!!」

 僕が走り出すのを見て、ジェニーは先行して学校の駐車場に向かって走り出した。ジェニーはリモートで車のロックを解除すると、するりと運転席に滑り込んでエンジンをかけた。

 僕がジェニーの車の助手席に滑り込むと同時に、車が動き出した。バックミラーの中に、追いかけてきた数人の女の子達が遠くで息を切らせている様が映っていた。

「サンキュ、ジェニー。助かった…。はあ…」

「何か最近、女の子達に囲まれて楽しそうね、ダン」

 冷ややかに言い放つジェニーに少しムッとしながら、僕は答えた。

「誰かさんが、ちっとも助けてくれないからね」

「あら。それは勘弁願いたいわ。あの中に飛び込むくらいなら、魔物の群れに突っ込んだ方がまだマシよ」

「僕だって、門と対峙してる方が、彼女達に対峙してる時よりよっぽど楽なんだけどね」

 僕の台詞に、ジェニーがプッと噴き出した。

「なるほどね。言うようになったわね。見習い番人さん♪」

「うるさいな。僕だって、すぐに一人前になってやるさ」

 もうすぐ、僕は一人前の正規の番人として認められるために、協会が定める検定試験を受けることになっている。それに合格すれば僕は番人として協会に正式登録され、仕事に応じて給料が支給される。(今は見習いだから正式な給料は出ないけど、仕事に応じてマイクとローラが僕に小遣いをくれている。)そして、この夏に行なわれる奨学金の選抜試験に合格すれば、大学にも協会の援助を受けながら行くことが出来る。こんな好条件に恵まれるなんて、思ってもいなかった。まぁ、まずは番人の検定試験に合格しないことには、全てが水の泡なんだけど。

 信号待ちの間、黙り込んでいる僕をチラッと見て、ジェニーが言った。

「大丈夫よ。ダンならきっと、検定試験に合格するって。私だって合格したんだし」

「ちなみにそれは、何歳の時?」

「えーっと…。確か、十歳とか、その辺かなぁ?」

 そう答えてから、ジェニーは慌てて言葉を足した。

「あ! あ、でも、でもね。私はその前に何年も父さんと母さんのサポートしてたし、物心付いた頃から、ずっと基礎を叩き込まれてたから!」

 信号が青に変わった。見慣れた景色が流れていく。

「でも、一族の人間ですら、落ちる人もいるって聞いたけど?」

「それはまぁ、素質とやる気の問題ね。いくら番人の家に生まれたからって、ちゃんと修練を積まないと門は閉められないもの。修練無しで閉められるんなら、そこらの赤ん坊にだって閉められるはずでしょ?」

 ジェニーの励ましてるんだか何だかわからない返答に苦笑していると、不意にジェイクの顔が頭に浮かんだ。

「…ジェイクは、随分と悩んでたみたいだよ?」

 僕が独り言のように言った言葉に、ジェニーが真面目な顔で答えた。

「知ってる」

 しばらくの間、車の中に沈黙が流れた。

 同じ両親から生まれたのに、ジェイクは門が見えないために番人の素質無しとされて、自分の居場所を探していた。その先に見つけたのが、門から出てしまった魔物を倒すハンターという役割だ。

「ジェイク、元気にしてるかな」

 ポツリと僕が小さく呟いた言葉を、ジェニーはちゃんと聞いていた。

「この間、『身体中が筋肉痛で動けねー』って情けないメールが入ってた」

「プッ。ジェイクらしいね」

「そうね。でも、何だか楽しそうだから安心した」

「うん」

 車は住宅街を抜け、周りに森しか見えない道を走って行く。

 僕らが住むのは町の外れで、辺りにはジェニーの家と僕の家しかないような所だ。「近所」とは言っても、ジェニーの家と僕の家の間は少し離れている。元々は農家の持ち家だった僕の家がそんな場所にあるのは理解できるが、ジェニーの家が何故そんな場所にあるのかは、最近まで全く理解できなかった。

「ダン。最近は、大丈夫なの?」

 僕の家が見えてきた頃、ジェニーが僕に尋ねた。

「…うん」

「そう」

 ジェニーが車を僕の家の前に停めると、僕は車から降りた。玄関の横のドライブウェイには、見たことの無い古い小型のピックアップトラックが停まっていた。誰のかなんて、どうでもいい。

「ダン」

 ジェニーが控え目に呼ぶ声が聴こえて、僕は振り返った。そこには、僕を心配そうな顔で見つめるジェニーがいた。僕は無理矢理、笑顔を作る。

「大丈夫だよ。慣れてるし」

 僕が自嘲気味にそう言うと、ジェニーが「そうじゃなくて」と言いながら首を軽く横に振った。ジェニーが僕を心配しているのは、僕はよく知っている。ジェニーの家族は皆、ここがどういう家なのかを知っているから。

 ジェニーは縋るような目をして、僕に言った。

「ダン。今日も、後でうちに来るでしょ?」

「うん」

 僕の返事に、ジェニーは安堵の息を漏らしながら微笑んだ。

「じゃ、あとで」

 僕がジェニーに頷くと、ジェニーの車は静かに動き出し、去って行った。


 何年も手入れのされていない僕の家は壁の塗装が剥げ、所々下の木の色が見えてしまっている。最近は二階で雨漏りもするって父親には告げているんだけど、いつも「また今度な」という答えが返ってくるだけだ。一応自分で応急処置はしたけど、それがいつまで持つかはわからない。テラスは木の床の浸食が激しくて、危ないから誰も使っていない。あと数年経てば、この家は崩れるんじゃないだろうかと思う。

(その前に、出てってやるさ)

 僕は立て付けの悪いドアを何とかこじ開けて中に入った。

 この家に人がいることは滅多に無い。父親はどうせ帰ってこない。以前は義母と妹がいたが、二年前に義母は妹を連れて出て行った。僕の三つ上の姉は、コロコロと顔と名前の変わる「彼」のところに入り浸ったまま帰って来ないことの方が多い。今日は珍しく、表に停まっている車の持主と一緒に来ているみたいだけれど。

 色褪せたカーテンが引かれたままの薄暗いリビングの中を横切って、僕の部屋がある二階へと向かう階段に差し掛かった。二階には、階段のすぐ横に姉の部屋があり、続いて僕の部屋、そして突き当たりに父の寝室がある。薄暗い中、電気も付けずにそのまま階段を昇る。ギィと低い音を立てて軋む階段を昇っていくと、次第にそれ以外の何かが軋む音と、男女の喘ぎ声が聴こえてきた。

(全く。平日の昼間っから、何やってんだか…)

 残念ながら、こんなことでうろたえるほど、純情に育つような環境に僕はいなかった。僕の姉は良くも悪くも男好きするタイプらしい。特に義母が出て行ってからは、ブレーキの利かなくなった暴走車のようだ。僕がいてもお構い無しにリビングやキッチンで男と抱き合っていたりする。時にはまるで、僕にわざと見せ付けるように。何が目的何だか、さっぱりわからない。

 僕は自分の部屋に入ると、手早くバックの中を整理した。明日必要なもの、今日出された課題に必要なもの、明日の着替えや何かを全てバックに詰め込んだ。姉が今日ここにいるなら、僕は今夜は戻らない。ジェニーの両親に頼んで、今夜はジェイクの部屋に停めてもらおう。

 僕は重たくなったバックを担いで玄関に向かった。足音なんて気にしない。どうせ姉達には聴こえちゃいないだろう。大体、僕の足音よりも、彼らの声の方がよっぽどうるさい。

 立て付けの悪いドアを開けて、無理矢理閉めた。鍵なんて掛けない。こんな家に盗みに入る泥棒がいたら、すごくマヌケだ。ここには盗めるものなんて、何も無い。全ての電化製品は10年以上古いものだし、貴金属なんて何も無い。

 僕は家の外壁に立て掛けてあった自転車に跨ると、ジェニーの家に向かって走り出した。


 僕の家からジェニーの家までの間には、昔はトウモロコシなどを育てる畑があったらしいが、今では雑草が生い茂る野原が広がる。そのすぐ後ろには森が広がり、その中にジェニーの家がある。

 僕がまだ小さな子供でここに引っ越して来てすぐの頃は、森は暗くて大きくて、まるで巨大なモンスターのようで怖くて近寄れなかった。そこが暖かな、安らぐ場所へと変わっていったのは、いつの頃からだったろう…。

 そんなことを思いながら自転車を漕ぐうちに、僕はジェニーの家に到着した。僕の家と違って、ジェニーの家族が住む家はきちんと手入れの行き届いた、明るくて綺麗な場所だ。ここに来ると何故か、僕はいつも安心する。

 僕は自転車をテラスの横に立て掛けると、玄関に回ってベルを押した。すぐにジェニーがやって来て、ドアを開けてくれた。

「早かったのね…って、何それ。スゴイ荷物ね」

「うん」

 僕がジェニーの横をすり抜けて家の中に入ると、足元にこの家の2匹の猫、インキーとスモーキーが僕の足元に擦り寄って挨拶をしてくれた。

「あ。やっぱり、いたんだ?」

 ジェニーが遠慮がちに小声で尋ねた。

「うん。だから、今夜はジェイクの部屋に泊めてくれるとありがたいんだけど」

 僕の言葉に、ジェニーが頷いた。

「大丈夫でしょ? どうせなら、月曜の朝まで泊まっていけば? 明日から週末なんだし」

 僕らはとりあえずリビングに向かった。

「ねえ、母さん。今晩から週末の間、ダンがジェイクの部屋に泊まってもいいでしょ?」

 ジェニーがリビングの奥に続くキッチンにいるらしいローラに話し掛けると、「もちろんよ」と明るく答えるローラの声が返ってきた。

 僕は荷物をリビングの隅に置くと、キッチンに向かった。ローラはオーブンを使って何かのお菓子を焼いているらしく、そこら中に甘い匂いが漂っている。子供の頃から、この時間にここに来ると、いつもお菓子の匂いがする。

「我侭言って、すみません」

 僕がそう言って頭を下げると、ローラがニッコリと微笑みながら僕に優しくハグとキスをくれた。

「遠慮すること無いわ。それに、今ではあなたは私達の仲間でもあるのだから。自分の部屋だと思って、ジェイクの部屋を好きに使ってもらって構わないわ。ジェイクだって、この家を出る時にそう言っていたでしょう?」

「そうですけど…」

 ジェイクが旅立つ時、彼は僕に自分の部屋をいつでも使ってくれていいからと言って、僕に部屋の鍵までくれた。でも、その鍵を使うことはあまり無いだろうなと思って、僕は冗談半分に鍵を受け取っていた。

「うちのことは心配しなくていいのよ? 昔はうちもあなたに知られてはいけない部分があったから、距離を置かざるをえなかったけれど、今は違うのだし」

「はい。ありがとうございます」

 僕が再び頭を下げてから顔を上げると、ローラが微笑みながら僕の両頬を両手で包み込んだ。相変わらず、ローラの手はふんわりと暖かい。

「ダン。いいこと? 前にも言ったと思うけど、あなたが門の番人になると決めた日から、あなたは私達の家族と同じよ?」

 ジェニーと同じ青い瞳が、僕を真っ直ぐに見つめていた。僕が頷くと、ローラは安心したように微笑んだ。


-----------------------------


 僕が門の番人になろうと決心したのは、そこに僕にとっての自由があると感じたから。

 僕が「門」を見ることが出来ることを知ったジェニーの家族は、僕に門の番人になることを勧めた。番人になれる素質を持つ人間が少ない上に、現在、番人の絶対数が不足していることが原因だったのだけど、僕は始めは番人になる気なんて、毛頭無かった。大体、僕はその時、まだ自分がハロウィンの日に見たり感じたりしたことが現実のものだなんて、納得できていなかった。

 それをあっさりと覆したのは、ジェニーの父であるマイクが言った言葉だった。

「ダン。君が番人になれば、仕事に応じて支払いが出る。つまり、君は仕事を持つということになるんだ。さらに、君の能力がある程度認められれば、協会のサポートを受けて大学に行くことだって出来る。言うなれば、君は君の力で生きていくことが出来るようになるんだ」

 収入を得られれば、あの家を出ることができる。その上、半ば諦めかけていた大学への道も開ける。それまでも奨学金を貰うことを考えてはいたけれど、僕が門の番人になれれば、そのチャンスが確実に広がる。

 そんな理由で決めたなんて、打算的だなとは思う。でも、僕が僕の力で生きていくことが出来るというのは、僕にとってはかなり魅力的な話だ。

 ただ、やっぱり現実はそんなに甘くはない。

 大学へのサポートを受けられるのは将来有望とみなされる番人のみだと言うことなので、僕はまず、番人として認められるためにマイクとジェニーの下で猛特訓を始めた。

 体力作り、門の基礎知識、番人の基礎訓練や彼らにまつわる歴史。様々なことをジェニーの家族に教わってきた。そして、ラッキーなことに、冬に起こった巨大な門の一件で僕の道はさらに開けた。

 あの一件から数日後、僕はマイクとローラから呼び出された。僕が彼らの家に行くと、一通の手紙を渡された。ご大層なエンブレムの入った封筒には、ご大層なエンブレムの入った便箋が入っていて、その中には「マイクとローラ・オルセン預かりの番人見習い、ダン・ウィーザーを本協会の大学奨学生候補とし、本年度夏に実施される選抜試験の受験資格を与えるものとする」と書かれていた。

「これって…。どういうことですか?」

 僕が便箋をマイクに渡すと、それを読んだマイクとローラが少し興奮気味に言った。

「やったじゃないか。これは要するに、君の実力を認めたから、この夏のテストに合格したら大学に行く奨学金をあげるよってことだよ。まずは第一関門突破だね」

「おめでとう、ダン」

「え? でも、『実力を認めた』って…。どうやって?」

 困惑する僕に、ジェニーが微笑んだ。

「この間のあの、大きな門の一件じゃない? あれ、大人の番人が数人掛かりでも閉められなかったでしょ?」

「ああ…。でも、あれって、たったの数日前…」

「あれだけ大きな門だったんだもの。協会の上の人なら、きっと遠くにいても感知してるわよ」

「へー。そういうもの、なんだ…」

「まぁ、レポートもちゃんと書いたしね。あの大人たちに手柄を持っていかれないように、『私とダンの二人で閉めました』って、しっかり書いといた~」

 そう言って得意顔で微笑むジェニーの手にも、同じ封筒が握られていた。

「って、ジェニーも…?」

 僕が尋ねると、ジェニーは「ああ」と言いながら手に持っている封筒を僕の目の前でヒラヒラと振った。

「当然でしょ? 私が選ばれなくて、どうするのよ」

「まあ、そうだろうけど…」

「フフ。でも、私はテストをパスしてるも同然なんだけどね。ま、一応、それじゃ形にならないから夏の試験には出て来いって」

「『形にならない』って…?」

「形式上、選抜試験は一応受けに来なさいって。ほら」

 そう言って差し出されたジェニー宛の協会からの手紙には、確かに「ジェニー・オルセンを本協会の大学奨学生と認める。但し、本年度夏に実施される選抜試験には形式上、出席されたし」と書かれていた。

「フフフ。ほーらね?」

 得意気に笑うジェニーの頭を、マイクがペシっと軽く叩いた。

「いった~!」

「ジェニー。前にも言ったが、奨学生に選ばれても学力が伴わなければ、資格が撤回される可能性もあるからね? しっかり勉強しなさい」

 ジェニーは頭を押さえながら、軽く舌を出した。

「はぁ~い」

 マイクは僕らを交互に見ながら微笑んだ。

「よろしい。ダンと二人で頑張りなさい。とりあえず、ダンは五月に行なわれる番人の検定試験に受からなければ、選抜試験を受けられないからね?」

「あ、はい! これからも宜しくお願いします!」

 僕が頭を下げると、マイクとローラは嬉しそうに微笑んだ。

「よーし。じゃ、瞑想の訓練するぞ! ほら、ジェニーも一緒に!」

 張り切って僕らを鍛えようとするマイクに、ジェニーが抗議した。

「ええー。今からぁ?」

「文句言わない!」

「はぁーい…」

 どんな訓練だって、あの家での時間よりも数倍楽だ。あの家の呪縛から解き放たれるのなら、僕はどんな訓練だって耐えられる。

 僕は僕の歩く先に、明るい光が見えてきたような気がした。


  ----------------------------------- 


 その日のディナーは、ローラが僕の好きなローストビーフを作ってくれた。

 はっきり言って、僕はローラが作るものなら何でも好きなんだ。こういう言い方をすると、何か語弊があるかもしれないけど、実際にローラが作るものは何でも美味しいし、普段家庭料理と縁の無い生活をしている僕には、ここでの食事は天国のようだ。

 今、中央に可愛らしい花のアレンジメントが飾られたダイニング・テーブルを、ジェニーの両親と祖母のジョアン、ジェニーと僕の五人が囲んでいる。その傍らではインキーとスモーキーの2匹が彼らの夕食を採っている。

(いいな、家族の食卓って…)

 ここで食事をする度に、いつもそう思う。

 僕の家では、義母が家を出てから家族が揃って食事をすることが無くなってしまったから、食事は一人で黙々と食べるものになっていた。

「そうだ。ダンに訊きたいことがあるんだ」

 食事の途中で、おもむろにマイクが僕に尋ねた。

「何ですか?」

「さっき、ローラと母の三人で話し合ったんだが…」

 マイクはそう言うと、軽く咳払いをしながら居住まいを正した。僕もつられて背筋を伸ばす。

「ダン。良かったら、私達と一緒に、この家に住まないか?」

「…は?」

 思いがけないマイクの台詞に、僕は困惑した。

(住む…? この家に…、一緒に? え? ここに、住む…?)

「えっ?!」

 何故か、僕と同時にジェニーも声を上げた。それに驚いて、僕らはお互いの顔を見合わせた。その様子を見ながら、ローラとマイクが声を上げて笑い始めた。

「何を二人とも驚いているんだか、ねぇ…」

 ジョアンおばあちゃんがそう言いながらやんわりと笑った。

「え、だ、だって…。ダンが、ここに、住むの…?」

 何故か僕以上に困惑しているジェニーが尋ねると、マイクとローラが頷いた。

「ローラが、その方がダンも修練や仕事をしやすいんじゃないかって言うんだ。確かに、ダンがここにいてくれたら、我々は動きやすい」

(確かに、その通りではあるけれど…)

 幸い、僕の家には僕が新月の夜、明け方まで帰ってこないことがあることを咎める人は誰一人としていないけれど、未だに携帯電話を持たない僕は、彼らと近い場所にいた方が色々と便利なことはわかっている。それに―。

(あの家から、離れられる)

 隣とは言え、家自体は離れているし、何よりもあの薄暗い、ジメジメとした家から離れられるのはありがたい。

「僕は―」

 そう言い掛けて、僕はジェニーを見た。ジェニーは真っ赤な顔をしながら俯いていた。それを見て、僕は焦った。

(え? ジェニーは、イヤなのかな…?)

 僕は恐る恐るジェニーに尋ねた。

「ジェニーは、僕がここに住んでも、大丈夫…?)

 僕の言葉に弾かれたようにジェニーが顔を上げて僕を見た。青い瞳が不安気に揺れている。

「ジェニーがイヤなら、別にいいんだ、今のままで」

 僕がそう言うと、ジェニーは勢いよくブンブンと首を横に振った。

「ち、違うの。そうじゃなくて…。私は、ダンがここに住むのは、いいことだと思う」

 そう言ったまま、ジェニーはまた俯いた。その横顔は、耳まで真っ赤だ。

(ジェニー、体調が悪いのかな…?)

 僕はそんなことを思いながらも、マイクとローラに向かって背筋を伸ばした。

「本当に、いいんですか…? 僕が、ここにお世話になっても」

「もちろんよ」

 微笑みながらそう言うローラに、マイクが頷いた。

「やっぱり、男の子のいる食卓は賑やかでいいしねぇ」

 ジョアンおばあちゃんがそう言いながら笑った。

 この、暖かな場所にいられるなんて、本当に夢みたいだ。

 番人になると決めてから、少しずつ、僕の欲しかったものが手に入っているような気がして、僕は嬉しかった。ただ、横で真っ赤になりながら俯いているジェニーが気になるけれど…。


  -------------------------------


 どうしよう…。

 私は自分の部屋に戻ってから、かなり悶々としている。時折隣のジェイクの部屋から聞こえる物音に、ビクっと身体が反応する。今までジェイクがいた時はそんなことは一度もなかったのに、あそこにダンがいると思うと、変に意識してしまう自分が情けない…。

 私はベットの上に座りながら、枕をギュッと抱き締めて、その上に顔を埋めた。

 ―ダンが、うちに住む。

 それは、今までに何度か私も思ったことよ。

 ダンの家が複雑なのは、昔から知ってる。ダンの家に起こった話を聞く度に、ダンがこの家の子になっちゃえばいいのにって思った。

 でも、それは叶わないことだと思っていた。だって、私は門の番人の一族で、ダンは違うから。

 幼い頃から、自分達は町に住む他の人たちとは違うのだと教えられてきた。私達には私達の使命があって、それは他の人たちには知られてはならないこと。

 昔はもっと、大っぴらに番人として一族の者たちは生きていたって習った。ただ、それがいつの日からか出来なくなった。夜に街中を徘徊しては怪しげな術を使う番人や、魔物と平気な顔して戦うハンターを、昔の人達は「魔女」って呼んで、そのせいで魔女裁判にかけられた一族の人たちが、大勢処刑されたのだという。

 それ以来、番人の一族は世間から隠れ住んだり、自分の正体を一族以外の者から隠しながら生きてきた。だから、私達は一族以外の人たちとの間には壁を作って、距離を置いて生きている。それが、私には時折、辛かったわけなんだけど。ちっちゃい頃は、どうして他の子達と遊んじゃいけないのか、わからなかったし。

 ダグや私には、友達と呼べる人がいなかった。ダンは小さい頃に出会ってから、いつも私の事を気遣ってくれたけど、私には、それにどこまで応えていいのか、わからなかった。

 だから、ダンに番人としての姿を見られた時はどうしようかと思って、めちゃくちゃ焦った。けれど、その後にダンに門が見えていたのが判った時は、すごく嬉しかったし、ダンが番人になると決心してくれた時は、これでダンとの間に壁を作らなくてもいいんだって、内心ほっとした。

「でも、まさかうちに住むだなんて…」

 正直な話、エマにダンとの関係を訊かれた時から、自分とダンの関係が余計にわからなくなっている。それに加えて、最近の学校での女の子達のダンに対する騒ぎ方といったら…! ちょっと私がダンの側にいないだけで、チャンスとばかりにダンを取り囲むのは、一体全体、どういうわけなのよ? つい最近まで、ダンのことなんて空気扱いしてたくせに!

 はぁ。落ち着け、ジェニー。

 最近、ダンのことを考えると、私の思考回路がおかしな方向に行ってしまう。

 この間も、そう。

 庭先でストレッチしているダンが綺麗だったから、思わず見とれてしまった。

 ちょっと待って? 「ダンが綺麗」って、それってどうなの? 相手はダン(男)よ?

 でも、本当に綺麗だなって、思ってしまった。あのダンに…。あああ! 一生の不覚!

 水道で顔を洗ってるときも、肩とか、背中とか。あれ? ダンってこんな風だったっけ?って…。

 極めつけはその後。何で脱ぐのよ…。しかも、この私の目の前で!

 綺麗だなと思ってた肩や背中が、Tシャツ越しじゃなくて、生よ、生! しかも、意外と筋肉があるからビックリした…。

 あ、待って? 筋肉が出来たのって、私と一緒に筋トレに行ったりしてるからじゃないの? そう言えば、最初の頃はヒーヒー言いながらベンチプレスとかやってたのに、最近は「ヒー」とも「グエ」とも言わずに、黙々とこなしてるのよね。

 ランニングだって、最初の頃は最後の1マイルくらいの間、死にそうな青白い顔して「ジェ、ジェニー、もうちょっと、スピード落として、は、走って…」とかゼエゼエ言いながら言ってた様な記憶があるのよ。元々がヒョロヒョロした子だったしね。それが今じゃ、こっちが時々「ペースもうちょっと下げてよ」って思うくらいなのに…。悔しいから絶対に言わないけどっ。

 ああ、何だか腹が立ってきた。何か、ずるい!

 そうよ。ダンばっかり、カッコよくなっちゃって…。それで女の子達が周りでキャーキャー言ってるわけでしょ? 何よ。全部、元はと言えば、ダンの番人の素質を見抜いたこの私のお陰じゃないの!

 そう思いながら顔を枕に沈没させていると、以前エマが私に言った台詞を思い出した。

『だからさー。手を繋いだり、ハグしたり、キスしたり、抱き合ったりしたいってことじゃない』

 ダンと。他の女の子達が…。

 私、ダンと手を繋いだり、ハグしたりしたことあるわ(子供の時だけど)。

 キスも、さよならのキスとか、沢山したし(おでこやほっぺにね)。

 抱き合う…は、さすがに無いけど。

 ダン、と…? えーっと…。それは…。きゃああああああ!

 その時、私の部屋のドアを誰かがノックした。心臓が一気に飛び上がる。

「だ、だ、誰?」

「ジェニー。僕。ダン」

 ダンの声を聴いた瞬間、息が詰まった。

「ジェニー?」

 返事をしない私に、ドアの向こうのダンが心配そうな声を掛ける。返事をしないと!

「あ、あ、開いてるよ…?」

 声が変に上ずってしまった。

 一呼吸置いてから、ドアの向こうからダンの声が聞こえた。

「開けるよ?」

「うん」

 遠慮がちにドアが開いて、ダンがドアと壁の隙間から顔を覗かせた。ベットの上で頭と枕を一つにしようとしている私の姿を見て、ダンが一瞬、両目を見開いた。

「…何やってんの? ジェニー」

「あ、う…。か、考え事…?」

 何で疑問形になっちゃったのかわからない。私の返事を聞いたダンも首を傾げている。ダンは、困った時にいつもするように、鼻を人差し指で少し掻いた。

「えっと、話が、あるんだけど。今、大丈夫?」

「う、うん。入ってきなよ」

「うん…」

 ダンは部屋に入ると、ドアを少し開けたままの状態にして、私のベットの側の床に座った。ダンがこの部屋に入るのは初めてじゃないけど、何だかドキドキする。

 ダンは少し俯きながら言った。

「その、今日の話なんだけど」

「うちに住むって…話?」

「うん」

 ダンはそう言うと、そのまま黙ってしまった。少し伏せた目は、一体何を見ているんだろう…。

 静かに流れる沈黙が、私を一気に不安にさせた。

「あ、あのさ。私は、あの、ディナーの時に、い、言った通りだから」

 慌てながら噛み噛みな状態でそう言って、ダンの言葉を待った。

「…本当に?」

 そう言いながら顔を上げたダンの瞳と目が合う。小さい頃から変わらない、綺麗な緑色の瞳。その中に、何だか情けない顔をした私が映ってる。

「うん。本当」

 私はダンの瞳の中の自分を見つめながら答えた。

「本当に、そう?」

 ダンの穏やかな声が、私を心配するように問い掛けた。

「どうして、訊くの…?」

「だってあの時、ジェニーが少し変だったから」

「変って?」

「何か、真っ赤な顔して、下向いてたから。何か、怒ってるみたいだったし。だから、僕はジェニーが本当は僕にここに住んで欲しくないんじゃないかって、そう思った」

「あ、あれは…!」

 一緒に住むって言うシチュエーションを想像したら、メチャクチャ恥ずかしくなって、それで―とはさすがに言えなくて、慌てて言葉を引っ込めた。でも、残念ながら、ダンはそれに気付かないような人じゃない。

「『あれは』、何?」

「言わない」

 プイ、と顔を横に背けると、ダンがクスッと笑うのが聴こえた。

「ふーん」

「絶対に、言わないからっ」

「そう? じゃ、わかった」

 ダンはそう言うとひょいと立ち上がった。

「へ?」

 拍子抜けした私がダンを見上げると、ダンはいつもの優しい笑顔で微笑みながら私を見下ろしていた。

「イヤじゃないなら、いいんだ。僕、ジェニーが本当はイヤだと思ってるのに、それを押してまで無理にここに住みたいとは思わなかったから。ジェニーが賛成なら、僕も安心だし。じゃ、僕もう寝るね。おやすみ」

「あ。う、うん。おやすみ」

 ダンはそのまま部屋を出て行って、閉じられたドアの向こうから、ダンが隣の部屋に入る気配が聴こえた。

 ダンがこの家に泊まるのは、これが初めてじゃない。昔にも、何度かこういうことがあった。けど…。

 隣がこんなに気になるなんて、今までに一度も無かった…。

 っていうか、何なのよ、これ!

 私は悶々としたまま、しばらくの間、ベットの上でイモムシのようにゴロゴロと転がっていた。

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