09 夢(弐)
ちびっ娘
「おかえりなさい」
まただ、またあの夢を見ている。真っ黒な空間でベッドに横になっている。自分の身体を見下ろすとやはり男だった頃の肉体がそこにあり、髪の毛は長くなかった。気を失う瞬間まで一緒にいた筈の朔耶の姿も見当たらない。いるのは俺とちびっ娘、そして双子の片方だけだった。
有希
「……あと二人いたんじゃなかったっけ」
昨日の夢では双子はちゃんと二人いたし、中学生くらいの無表情の女の子もいた筈だ。
ちびっ娘
「愛は今外に出てるわ。蓮華はついさっき半分は珊瑚と、もう半分は貴方と一緒になったの」
有希
「……一緒に?」
一緒にって、どういう意味だろう? 半分? それに名前だけ出されても、誰のことだかわからない。……でも、どこかで聞いたことのあるような名前だな。愛、珊瑚、蓮華……いつ聞いたんだっけな?
ちびっ娘
「私の名前は光。このシステムの保護者よ。よろしくね」
有希
「……システムの……保護者?」
何の事だかさっぱりわからない。でもやっぱり聞いたことある名前だ。っていうか可愛い。
光
「うふふ、わからないって顔してるね。りかに聞けばたぶん教えてくれるわよ」
……君の微笑にノックアウト寸前。
光
「……聴いてる?」
有希
「……え? あ、ごめん聴いてなかった」
光
「もうっ、しゃんとしてよね」
頬を膨らませてプンプンするちびっ娘光。もう……それすらも可愛い。蕩れ〜。
光
「……もういいよ。行ってらっしゃい」
有希
「……行ってらっしゃい?」
話を聞かずにメロメロモードに入りかけていた俺に流石に怒ったのか、背中を向けてそう言う光。隣に立つ双子の片方はそのまま動かなかったが、ふと目が合うと、俺に手を振って「ばいばい」と言った。直後、またあの灰色の砂嵐が視界を覆う。あぁ、これで今日の夢は終わりかと、俺はそのまま横になって目を閉じた。