12 夢(参)
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感想・批評、大好物です。遠慮せずにどんどん下さい。
光
「お帰りなさい」
有希
「……ただいま?」
愛
「…………」
珊瑚
「……(ウズウズ)」
篠
「ふふっ」
視界は真っ黒い壁や天井で埋め尽くされ、自分が夢を見ていることに気づく。またこの黒い部屋か。ベッドの上で、今度は上半身を起こした状態。最近、というよりは、『さき』の身体に入ってからはこの夢しか見ないな。……あれ? 夢を見ているってことは、俺は寝てるのか? いつの間に眠ったんだ? 確か『さき』の部屋で『さき』達の交換日記を読んでいたはずだ。
光
「有希、あなたにお願いがあるの」
有希
「……? お願い?」
愛
「…………」
珊瑚
「……(ウズウズ)」
篠
「ふふっ」
今日は昨日より一人増えている。茶色い長い髪のちびっ娘、光。赤い短髪のセーラー服少女。綺麗な黒髪の双子の片方。そして新顔の、霧がかかったように薄ぼんやりとして姿がはっきりとは見えない、笑い声からして女性と思われる人物がいた。
光
「お願いというのはね……」
有希
「あ、うん」
愛
「…………」
珊瑚
「……(ウズウズ)」
篠
「ふふっ」
真剣な表情でちびっ娘光が俺に言う。俺にお願いって、いったいなんだろう? 俺に出来ることならなんでも……って、これ夢だよな。なんで俺はこんなに真面目に聴いてんだよ。
光
「あなたに、幸を守って欲しいの」
有希
「……え? 『さき』? 守る?」
愛
「…………ちっ」
珊瑚
「……(ウズウズ)」
篠
「ふふっ」
ん? 今あの赤髪の子、舌打ちしたか?
有希
「『さき』を守るって……なんの話?」
夢だとわかってはいるが、なんとなく気になってしまう。
光
「……? あなた、日記を読んだんじゃないの?」
有希
「日記……交換日記のこと? あれは最初と最後しか見てないよ。『さき』が書いてるページが見たかっただけだから」
光
「裏表紙を読んだのなら……わかるはずだけど」
不思議そうな顔をして首を傾げながら言う光。
有希
「最後って言ってもそれは最後に書かれたページの事で、それ以降のページは見てないけど」
そう言う俺に呆れた顔をして、溜め息を小さく吐いた。
光
「はぁ……だったらここに来るのはまだ早いわ。もう一度日記をゆっくり読んで、また明日いらっしゃい」
有希
「えぇ? 俺まだこの夢見なきゃいけないの?」
そろそろ飽きてきたし、たまには違う夢も見たかったりする。
光
「いいから言う通りになさいっ。じゃあね。また明日」
愛
「……ボソッ(もう来るな。っていうか死ね)」
有希
「……」
……聴こえたぞ。あの赤髪、今絶対に俺に対して毒を吐いたよな。なんで俺何もしてないのに、そんなに嫌われなきゃいけないんだ。いくら夢でも、流石にちょっと気分良くないぞ。
珊瑚
「おにいちゃん、また明日ね〜」
有希
「ん? あぁ、また明日ね」
双子の片方は朔耶に負けないくらいの笑顔で手を振ってくれた。あー、やっぱり子どもは可愛いよ。ぎゅってしたくなる。それにしても、双子のもう片方は何処にいったんだ? 最初は双子だったのに、消えて双子じゃなくなったのか? まぁ夢だからどうでもいいけど。