双子星
『全てを忘れましょう。二度と辛い思いをしないよう、私は全てを忘れることにいたしましょう』
大陸の中心には、天まで聳えるほどの高い山があり、どれほど遠く離れて頂の形を見ようとしても白く厚い雲に覆われその姿を見ることは叶わない。
あまりの高さに空と繋がっているのではと人々は思う。
そこは神の世であり、人が辿り着ける場所ではないと言われている。
不思議なことに山頂を覆い隠す雲は常に白く淡い輝きを放っており、雨をもたらす鉛色になることがない。
稀に我こそはと山頂を目指す冒険者もいるが、山頂を見届けて帰ってきた者は誰一人としていない。せいぜいが中腹――いや、中腹にさえも辿り着けずに戻ってくる者ばかりである。
世界の中心とも呼ばれる山の、神々が住まう場所とも言われる雲の東側、初夏を迎えるころになると夜空に寄り添うような二つの星が見えはじめる。
二つの星は日を追うごとに中天へと移り、晩夏となるころには雲に遮られ見えなくなってしまう。
夏の間にだけ見える二つの星を、人々は双子星と呼んでいた。
昔々、まだ人という存在がなく神々だけが暮らしていたころ、時を同じくして生まれた兄妹神がいた。
兄神は風をまとい、何者にも囚われず自由をこよなく愛していた。美しくも精悍な風貌、空を大地をと力強く駆け抜ける立派な体躯、そして、各地を巡って見たものを面白おかしく伝える話術と、好かれこそすれ嫌われることなどない神である。
一方、妹神は慎ましく、神の世でも唯一の花を咲かせる力を有していた。
妹神が咲かせる唯一の花へおりた朝露を口に含めば、ほかでは得ることのできない甘露となり、優しく揺らせば触れ合う花弁の奏でる音が神々の心をも魅了する。
兄妹神は魂の半身として、寄り添うことは常であり、夫婦になるのも当然であった。
しかし、兄神は妹神と寄り添うことを当然と思いながらも、自由を愛する心ゆえに妹神に自由を奪われている思いもあった。
ましてや、兄神はほかの女神からの誘いも多く、夫婦だからといって妹神だけに固執することは自由を愛する気質が損なわれているのではと思うようになった。
いつしか兄神は、妹神が嘆くのも気に留めることなく、自由気ままに興が乗じた他の女神と愛を交わすようになり、とうとう妹神が堪え切れずに浮気な兄神を殺したのち、自分をも殺めて死してしまう。
哀れに思った全てを統べる創始の神が兄妹神の体を夜空に輝く星としたのが、人の世で後に双子星と呼ばれるようになった神の話である。
豊穣を祝う祭を終えた三日後、そろそろ双子星が神の世である雲の陰に隠れるから見に行こうと、ルーフェナは二つ上の幼馴染であるカロンから誘われた。
けっして裕福とは言いがたい村ではあるが、実り豊かな村に生まれ育ったルーフェナは今年の初夏を迎えて十八となった。
山から山草、山菜、薬草などを採ってきては糧としている両親の影響か、ルーフェナは山の生活を好む一風変わった少女である。
年頃だというのに恋や結婚への興味は薄く、彼女の興味はこと薬草に傾倒していた。
おかげで、恋人を作るきっかけの祭も食い気を満たすばかりで、誰とも踊らず仕舞いだった娘に両親の嘆きは深い。
そんな色恋とは程遠いルーフェナと、もっとも歳の近い異性が幼馴染のカロンである。
カロンの親は村で唯一の雑貨屋を営んでおり、ルーフェナの親が採ってきた山の恵みを買い取っているという付き合いだ。
仕入れのためにときおり街へ出ることから、村長の息子に次いで人気のある結婚相手でもある。
村長の息子であるキーセンとカロンは共に長身であるが、細身で柔和な美男子であるキーセンに反して、カロンはがっしりとした体に精悍な顔立ちのため、娘たちの人気を二分している。
二人の趣はまるで異なるが、村ではなかなか見ることのできない二枚目だ。
一方は村長の息子と権威を刺激され、もう一方は街の華やかさに触れる機会があるとくれば、恋に浮かれる娘たちへはしゃぐなというのが無理な話である。
祭のとき、二人の男は娘たちから踊りに誘われた。
キーセンは誘ってくる娘たちすべてと平等に踊り、カロンは平等にすべてを断っていたが、食い気一筋のルーフェナにとってはどうでもよいことである。
そんな娘たちに人気のあるカロンから、夜に星を見ようと誘われた。しかも、双子星である。
これが愛の女神が世の恋人たちを祝して贈った星を見に行こうと誘われたのなら、さすがに色恋に興味の薄いルーフェナとて、もしやと思ったかもしれない。
しかしこの双子星、夫である浮気な兄神に嫉妬した妹神が兄神を殺して自害したのち、哀れんだ創始の神が二人を星にしたという逸話のある星である。
甘い雰囲気を醸し愛を囁くのに、これほどかけ離れた星は他にあるまい。
とはいえ、真剣な表情で誘うカロンの声は、どことなく切実な響きにも聞こえる。
年頃の、未婚の娘が異性と夜に二人だけなどと、本来ならば断るべきところであるが、幼きころより知るカロンから達ての誘いである。堅物が人の姿をしていると揶揄されるほどのカロンが、互いの両親に、ましてや幼馴染でもあるルーフェナの信頼を裏切るはずはないだろう。そう思ったルーフェナは逡巡もつかのま頷いて応えていた。
その夜、二人は村人が寝静まったころ、山の中腹にある小さな湖で落ち合った。
ルーフェナの両親には、月の輝く晩にのみ花開く月光花を採りに行くと告げて出てきた。
いくら信頼のあるカロンであれ、馬鹿正直に親へ告げれば止められることくらいルーフェナでも分かる。
夜の山道を案じたルーフェナの親ではあるが、それも常のことなので半ば諦めつつ注意を促す言葉で見送った。
月光花を摘みながら約束の湖まで行けばカロンは既に到着しており、湖の畔に敷いた敷布に腰を下ろしていた。
瓶にはほどよく冷やされた果汁、そしていくつかのビスケットが篭の中に入っている。
それらを口にしながら、目当てである双子星を二人黙って見上げる。
ルーフェナとて親の期待に気づかないわけではない。だが、どうしても恋や結婚を考える気にはなれないのだ。
今回、気心しれたカロンとはいえ、曲がりなりにも異性から夜の逢瀬に誘われ、腰の重いルーフェナも結婚を考えるきっかけとなった。たとえ、見る星が悲恋と死を象徴するかのような双子星であろうともだが。
では、夫となるべき相手はどういう人が良いのだろうか。
村娘たちに人気のあるキーセンは、ルーフェナから見れば八方美人にしか思えず、どうしても自分の夫となる姿が想像できない。いや、夫となったキーセンにつくす自分が想像できない。
歳の近い一人身の異性を順に思い浮かべるも、やはり村娘たちがはしゃぐような将来が想像できない。
娘ならば、父親が理想になるという。自分の父親のような男性ならば。無口だが、母親を愛しむ情は子どもながらにも感じ取れる。父親のように寡黙で、妻以外に情をかけない、そんな男性ならば自分もつくせるのではなかろうか。
ルーフェナはそう考えながら双子星を眺める。
では、隣にいるカロンはどうだろう。見た目は申し分ない。寧ろ隣に並ぶ自分に申し訳なさがたつほどだ。その上、寡黙であり真面目に仕事もこなし、小さな村の雑貨屋にしては大成しているといえよう。遠くない未来には、街でも店を構えようかとの噂を聞く。ルーフェナの思う夫像に限りなく近いようにも思える。
しかし、カロンではルーフェナの心の琴線に今ひとつ触れない。
キーセンのように万人へ優しいわけではない。むしろ、万人に冷たい。妻にまで冷たいのはルーフェナとて嫌だが、カロンは誠実ゆえに相手へ期待を持たせぬ冷たさである。
期待をしていないルーフェナにとって、カロンは誠実そのものに見える。
ならば、なぜ琴線に触れないのだろうか。なぜ、カロンに恋をしないのだろうか。双子星を見上げ続けていた首が疲れてきたので湖面に眼差しをむけてルーフェナは更に思考する。
そう――カロンからは何もしないが、カロンへ何かしらを期待する女性の多さが、異性として意識することを避けているのだ。
最近では父親のかわりにカロンが街へと出向いている。村でも目立つ色男だ。街に行ってもおそらく女性の目をひくだろう。
意図せずとも女性の目をひく男性を夫にするなど、ルーフェナにとっては考えられない。
自分の夫となるべき男性には、寡黙で妻に愛情を注ぎ、子を慈しみ、互いの両親を尊敬し、そして他の女性からは意識されないような、そんな男性を選ぼう。
ルーフェナはいささか的外れながらも、両親の憂いを払ったかのような心持ちで清々しい気分になった。
そんなルーフェナへ、それまで黙っていたカロンが徐に問いかけてきた。
「ルーフェナ。双子星の話は知っているかい?」
「あら、やだ。馬鹿にしないでよ。それくらい知っているわ。浮気者の夫である兄神を嫉妬のあまりに殺してしまい、後悔から自ら永久の命を消してしまった妹神。二人を哀れんだ創始である神が夜空へ弔ったら星になったのでしょう? ……でも、私はこのお話は嫌い。そんな浮気者な夫と結婚しなければ良かったのよ」
カロンの問う意図が分からないながらも、ルーフェナは肩を竦めて思うままに答えた。
「そうだな……でも、それは本当ではないんだ。違うんだよ」
カロンは珍しくも苦い笑みを浮かべて呟く。
自嘲めいたカロンの表情を初めて見たルーフェナは、カロンの呟きに疑問を感じながらも怪訝さが先立ち、何が違うのかを聞く機会を失う。人の姿をした堅実、生真面目と言われるカロンに、よもや不誠実な過去でもあるのだろうか。そんな懸念がルーフェナの胸に過ぎる。つかのま口を閉ざしたカロンが再び問いかけてきた。
「ではルーフェナは夫となる男に何を求める?」
「私? 勿論、浮気なんて一切しない、兄神とは正反対な誠実な男性を選ぶわ。妻である私だけを一途に愛してくれる人ね」
「誠実か……おじさんとおばさんが零していたよ。ルーフェナに結婚の兆しがちっとも訪れないって。……俺はどうだろう。ルーフェナが望むよう、常に誠実であろうとしているし、誠実にしてきたつもりだ。結婚を申し込んだら受けてくれるだろうか」
「カロンが? 私に?」
つい今しがたカロンを結婚相手になど考えられないと思い至ったばかりのルーフェナは思わず素っ頓狂な声をあげ、丸くした目でカロンを見つめる。が、次の瞬間には噴出しながら手を振った。
「ないわ。カロンが夫だなんて! 村の女の子たちに恨まれちゃうもの。それに、結婚したいほど私が好きだなんて思いもしなかったわ」
何せ、夜中の逢瀬に誘う口実が悲恋と死の代名詞でもある双子星だ。いくら堅物のカロンとはいえ、恋しい娘との逢瀬にはもう少し華やかさを考えるだろう。あり得ないと笑うルーフェナは、精悍な面立ちを今にも泣きそうに歪めているカロンの表情に、揺らしていた手をぎこちなく下ろした。
「え? えっ?! やだっ。本気で言ってるの?」
目を見張ってカロンを見つめるルーフェナは、信じがたいとばかりに声をあげる。
「本気だ。ルーフェナがずっと好きだ。これからも、ずっと君を愛し続ける。浮気な振る舞いはけっしてしない。どうか、俺と結婚してくれないだろうか」
ルーフェナにとって、まさに予想だにしなかったカロンからの結婚の申し込みである。真摯に再度申し込んでくるカロンに、村の娘なら喜びに涙しながら受け入れることだろう。
しかし、やはりルーフェナの心に響くものは訪れない。ただ、幼馴染には応えられないという心苦しさだけが募る。
「……ごめんなさい。……その、正直なところ、結婚したいとか、そういう気持ちもないし、恋とかよく分からないの。カロンのことは好きよ? でも、結婚ってなると……なんだか……」
ルーフェナ自身、自分の気持ちが分からず、カロンへどう伝えればよいのか考えあぐねて口ごもる。
「いや、いいんだ。俺のことを好いてくれているんだよな? 今はそれでいい。たとえ、その好きが兄に対するようなものであっても、今は十分だよ」
結婚の申し込みを断られたわりに、カロンの表情はさきほどとは打って変わり晴れやかな笑みを浮かべている。
世の男性とはこれほどにあっさりとしているものなのだろうか。もっと、普通は落ち込むべきなのではないのだろうか。そう、疑問に思いつつも恋の経験がないルーフェナは、下手に疑問を口にし、つかず離れずであった居心地のよいカロンとの関係が壊れるのを恐れて押し黙る。
さきほどまではカロンとの結婚などあり得ないと思っていながら、いざカロンが離れるかもしれないと思い恐れる自分の心に、ルーフェナは戸惑いを覚えた。
困惑した表情のルーフェナに、カロンは普段と変わらない穏やかな笑みを浮かべて帰路を促してきた。
「さぁ、そろそろ帰ろうか。今夜のことを忘れてとは言わないけど、ルーフェナが思い悩む必要はないよ。俺は気が長いんだ……とてもね」
帰り支度を整えて立ち上がったカロンはルーフェナに片手を差し出す。
あのころもこうしてカロンは手を差し出してくれる。あのころ――あのころとはいつのころだっただろうか。ふっとルーフェナの胸中を過ぎった疑問は一瞬で、浮かんだ疑問でさえ直ぐに曖昧となってしまう。
カロンの手を借り立ち上がったルーフェナは、双子星を今一度見上げたあとカロンと共に歩き出す。
「知ってるかい。今、王都では星学というのが広がっていてね。言葉通り、星を学んでいるんだ。今日見ていた双子星だけど、もっと昔は離れていたんだって」
「……そうなの? どれくらい昔?」
「俺たちが生まれる前。俺のオヤジやお袋、ルーフェナのおじさんやおばさんが生まれるより前だよ」
「そんな昔のこと、よく分かるね」
「そうだね。俺たちが爺さん婆さんになるころには、もっと寄り添ってるかもしれないな。あんがい、くっついて一つになってるかもしれない」
昨日までと変わらぬ態度のカロンに、ルーフェナも次第に普段通りの調子を取り戻す。
「じゃぁ……もし、一つになってたら双子星は夫婦星になるのかしら」
離れていた双子星が夫婦星になるなら見てみたい、と空を仰ぎながらルーフェナは楽しげに告げつつ湖畔をあとにする。
妻である妹神を泣かすなと、創始である神に一度だけ注意を受けた。
けっして瞼を開くことのない、妹神と仲のよい時と運命の女神にも告げられた。
だが、妹神が泣きついたからであろうと兄神は鼻で笑い、気にすることもなかった。
やがて、妹神は兄神の不実に心を疲弊させやつれていく。
妹神にしか咲かすことのできない唯一の花も、妹神のやつれように合わせて数が少なくなっていった。
どれほど妹神がやつれようとも、甘露な朝露をおろす一輪だけは咲き続けていた。
空を大地をと自由奔放に駆け巡り、陽気な女神たちとの享楽に耽けることも飽いた兄神が、ようやく思い出した妹神のもとへ戻ったときは、髪も肌も艶を失い見苦しく痩せこけて変わり果てた姿となっていた。
それまで会っていた美しい女神たちと比べ、妹神のあまりの醜さに嫌悪し、兄神は辛辣な言葉を浴びせる。
それまで慎ましく言い返すなどしたことのない気弱な妹神は、兄神の吐き捨てる言葉にさえ涙を見せず、その場を立ち去ろうとする兄神に消え入りそうな声でか細く告げた。
「全てを忘れましょう。二度と辛い思いをしないよう、私は全てを忘れることにいたしましょう」
何を言い出すのかと、兄神は憤怒の表情で妹神を振り返り口汚く罵ろうとした。
しかし、振り返った先に妹神の姿はなく、たった一輪の萎れた花が落ちていただけであった。
時を同じくして生まれた妹神を失った瞬間、兄神は魂の半分を喪失したのだと知り慟哭する。
無限であると思っていた妹神からの愛を失くし、兄神の神気も希薄となっていった。
兄神の愛を受けることもできずに神気が薄れ、醜くやつれていった妹神は、それでも兄神への愛を枯らすこともできずに花を咲かせ続けていた。妹神の咲かす花は兄神への思いそのものである。
永久を生きる神は数多の生き物と同じように死ぬことはない。たとえ体を消失させようとも魂は永遠である。
妹神は友である時と運命の女神を呼び、願いを告げる。
どうか人の世に自分の魂を織り交ぜて欲しい。
神であることも、兄神のこともすべて忘れましょう。永久に恋焦がれる苦しみから解き放たれ、かわりに肉体の死を繰り返しましょう。
時と運命の女神が回す糸車は神と数多の生き物が過ごす時を、そしてけっして開くことのない瞼には神と数多の生き物の運命が終わりのない織地のごとく織り上げられていく。
神としての体を失えば二度と神の世で過ごすことは叶わない。当然、時と運命の女神は異を唱えるが妹神は微かに笑う。
貴女にはこの運命も見えていたでしょうと。
時と運命の女神は涙を流しながら妹神の願いをきくこととなる。
そして、女神の見る数ある運命の一つが織り上げられることを願い、創始の神の慈悲に縋り妹神の体を夜空へと送った。
半身の魂を見失ってしまった兄神は、やがて妹神の体が夜空に輝く星となったことを知り、時と運命の女神に乞い願った。
兄神は時と運命の女神に、妹神の魂の傍で人の生を過ごさせて欲しいと乞う。
女神は兄神に告げる。
「私はお前が嫌いだ。そして、憎い。だから、何度人として生まれ変わろうとも神の記憶はけっして忘却させない。人として生れ落ちればお前の運命は私の手の内だ。望みどおり、妹神の傍で生を過ごさせてやろう。魂に刻まれたお前への愛を忘却した妹神の傍でな。そして妹神の愛が他の者へ向けられる苦しみを永遠と見続けるがいい」
それでも構わないと兄神は涙しながら懇願する。
二度と妹神に辛い思いはさせない。妹神を愛し、愛されてはじめて自分が存在するのだと知った。妹神がいなければ自分は存在する意味もない。また、妹神の魂が人の世にあるのであれば、自分の魂も人の世にあるべきなのだと兄神は返す。
なんとも自分勝手なことだと女神は辛辣に告げるが、時を同じくして生まれ魂の半身である我らは離れることができないと兄神は言う。
運命の見える女神は兄神の言葉の意味を知っているが、理解はできない。なぜなら、魂の半分を喪失するなど、双子の神でしか感じ得ないからだ。
兄神の願いは叶い、妹神の魂の傍で転生を繰り返す。
創始の神は兄神の体を夜空に送った。瞼を開くことのない女神が見る、一つの運命がいつか訪れる日を願い。
夏が繰り返し訪れるたび、双子星の距離はわずかながらに近づいている。
幾度と妹神が他の者へ愛を向けるさまを、兄神は傍で見守り続けてきた。
カロンは幾度と人の生を繰り返す兄神である。そして、ルーフェナは全てを忘れて人の生を繰り返す妹神だ。
双子星を二人で見に行ってからのち、ルーフェナの信頼と愛を得るためにカロンはよりいっそう励む。
離れていた二つの星が寄り添い、やがて一つに重なるときまで後少し。
星企画
『星』をイメージしてお話を書くだけの簡単なお仕事。
初心者歓迎未経験OK、経験者も歓迎。
http://naroutm.web.fc2.com/index.html
主催者 tm 様の告知
http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/87699/blogkey/506138/