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鉢割
「晩夏の三日月を見上げ杯を交わす二人」というシチュエーションを200文字で表現しようという路傍之杜鵑氏の「二百文字小説企画Es」を見てつらつらと
ようやく色付き薄紅となった朝顔と、初月を肴に唐津皮鯨へ注いだ酒をやる楽しさは格別である。
朝顔のたおやかな花弁を褒め、きゃしゃな蔓をそっと指先でなぞり、瑞々しい葉をそろりと撫でててやれば更に色を増すのもいじらしい。
差しつ差されつ山杯を交わし、儚げな初月が顔を隠す頃、ほんのりと甘い香りを放ちほろ酔いとなった朝顔をかいなに抱いて新鉢を割る。
薄紅から緋へと色を変えた朝顔に、これだから鉢を割るのは止められないと思うのである。