電子牡丹灯篭
夏のホラー2011の企画を見てつらつらと
カラリ、コロリと聞こえる音に目が覚めた。
いつから聞こえていたのか、不思議と思い横へと寝返りながら耳を澄ます。
電源の落ちたモニタに小さな明かりが映りこんでいるのが見えた。
右の上角に映り込む小さな明かりは、再びカラリ、コロリ、と聞こえた音に合わせて右へ、左へ、と微かに揺れる。
寝る際には明かりを全て消し、光が差し込まないよう厚いカーテンを閉めてあるというのに、モニタに映り込む光はどこの明かりだろうか。
一度疑問に思うと背筋が薄ら寒く感じ、モニタから目が離せなくなった。
カラリ、と明かりが右に揺れ、コロリ、と明かりが左に揺れる。
暗いモニタの中にある一点の明かりが音に連れて心做しから大きくなっているように見える。
大体この音は一体どこから聞こえてくるのだ。
窓の外からではない。
下駄を履いた足がゆっくりと歩を進めるように間延びした音だ。
カラリ、と音が聞こえる。
モニタからだ。
ゆっくりと布団を引き寄せ見開いた目だけはモニタを見つめて息を凝らす。
最初は小さな光だったのに、画面の中央までやってきた明かりはここから見ると五百円玉の大きさになっている。
明らかに近づいているのだ。
この明かりはこのままどこへ行くのだろうか――恐ろしさに身を強張らせながら様子を見ていると、明かりは向きを変えて画面の左へと移動していく。
間際、赤い地に真っ白な牡丹の描かれた振袖の裾が見えた。
カラリ、コロリ、右へ揺れ、左へ揺れ、明かりは徐々に小さくなりモニタの左側へと消えてしまった。
あれは一体なんだったのか。
再び現れたらと思うと、結局まんじりともできずに朝まで過ごしてしまった。