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第11話 音

 王のお見送りも終わり、『陰』では再び修行が始まった。


「今日は課外授業です。第9年生のオレンとロクは結界の張り方のテストも行いますから」

「急ですね」

 第10年生で皆のお姉さん的存在のヘレナが言った。

「えぇ。魔物の被害が続いてましてね。結界を貼る人間の手が追いつかないそうなんです。で、僕達も実習兼お手伝いに向かうことになったんです」

「なるほど」

「向かうのはすぐそこの集落ですのでゆっくり歩きながら、でも魔物の気配に気をつけながら行きましょう」

『はーい!』



 数分歩くと人の姿が見えてきた。

「あぁ。待ってたよ」

「お待たせしました。ほら皆さん挨拶を」

『よろしくおねがいします!』

「うちには『陰』使いがおらんでね。よろしく頼むよ」

「それじゃあ早速仕事にかからさせてもらいます。1~5年生はヘレナとソムニーと共にこの周辺の様子を見てきてください」

「わかりました」

「6~8年生は結界の張り方を見て、勉強してくださいね」

「集落は青年団の者達に案内させましょう」

「よろしくお願いします。それじゃあそれぞれしっかりやるんですよ」



「うわっ!?」

 バチンと大きな音を立て、小さな紙は燃え尽きてしまった。

「オレン、余計な力が入ってますね。呼吸を整えてもう一度」

「師匠、見てきたよ」

「特に異常はありませんでした」

「そうですか。そうだ、先輩として二人にアドバイスしてあげてください」

「そ、そのなんだ? 頑張れ」

「リラックスよ、オレン、緑」

 ノワエの言葉にそわそわするソムニーと優しくアドバイスするヘレナ。

「う~ん、なんか実践のせいか緊張しちゃって……」

「そうそう。集落の人のためにちゃんとやらないとって思うと」

「その気持ちはとても大事です。程よい緊張がないといけませんからね。ですが力を抜くというのも大事なことなんで――ん?」

「何の音だ?」

 どこからかフルートの音が聞こえてきた。

「綺麗な音」

「あっ」

 音の主はフルートを吹きながら、こちらにやってくる。

「ムジカさん」

「こんにちは。どう? 緊張はほぐれた?」

「そういえばなんだか胸のつかえが取れたような気がします」

「今の曲はリラックスに最適だからね」

「師匠、誰?」

「この前のお見送りで紹介した――あぁ、ソムニーは居ませんでしたね。彼女はムジカさん。グランド・マザー様のお孫さんです」

「えええっ!? おばば様って孫がいたのか!?」

「みんな同じリアクションするのね」

 ムジカは苦笑いを浮かべた。

「今日はどうしたんですか?」

「この前も話したとおり、こうやって音楽で人々を癒してまわってるの。『心』の人間はこういう部分でしかお手伝いできないからね」

「そうでしたか」

「これから集落の真ん中で仲間と演奏会をするの。聞きに来てよ」

「えぇ、結界が張り終わりましたら伺いますよ」

「じゃあ私は準備に戻るわ」

 ムジカはそう言うと走り去っていった。

「みなさんも今週は忙しかったでしょう。最後に一仕事したら行きましょう」

『はい!』

「それじゃあ、ソムニーとヘレナも手伝ってくださいね」

「えっ、お、俺も!?」

「当たり前じゃないですか。ほらほら」

「俺はもう一回異変がないか見てくるよ!」

「あ、こら!」

 ノワエが止める間もなく、ソムニーは何処かへ行ってしまった。

「まったく、ソムニーは……苦手だからって仕方ないですね」




 それから数週間、魔物の発生数やそれによる被害はは増えていくばかり。

 城や城周辺のスブリミスには全く現われない魔物。富裕層の人間は自分達に被害が及ばないため、我関せずとヒューミリスへの援助やマナの祝福たちの派遣など手を貸すようなことはしなかった。自分達の身は自分で守るしかない状況にマグヌスは頭を抱え、ノワエは魔物退治や結界張りにあちこち飛び回る毎日が続いた。


 そして、さらに状況が悪化する出来事が起きたのだ。

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