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第88話: 観測者、初日の断崖で『正解』を書き込み、最強の指揮官(コンダクター)を誕生させる

ドドンパの新装備の作成過程と、お披露目回です!

 

◇ 第1エリア エウレカ草原・断崖

 

 僕たちはドドンパの新防具を作る為、集まっていた。


 集まったカオス・アトリエの面々は、恐ろしいことに今回のクラフトに必要な要素を全てクリアできる、規格外の能力持ちたちだった。


「イオリ、この場所エモすぎんだろ!!」


 ドドンパが興奮して叫ぶ。


(ほらな、見たことか。やっぱ『エモい』と言い出した。単調な奴め)


「イオリ君、この場所すごく素敵なんだけど、なんでここなの?」


 シロロの問いに僕が答えようとした時 「エモさですか!?」とルナールが割って入ってきた。


  シロロの疑問は至極真っ当だが、ルナールお前もかと思いながら僕は説明を続けた。


「ここが、第1から第5エリアの中で最も標高が高い場所だからだ。火山も標高だけ見れば高いが、頂上まで登る事ができないからな」


「なるほど、理にかなってるな。てかここが一番登れるところで高いのか」


(フゥなら火山でも嬉々として登ってそうだな)と思いながら彼女を横目に見ると、案の定ドヤ顔をしていた。

 語らせると長くて面倒なので、僕は遮るように先へ話を進める。


「……だが、空間の全容を完全にマッピングするためには、さらに上から俯瞰して見下ろす『絶対的な高度』が必要になる。フゥ、頼む」


「ふふっ、任せてちょうだい!【記憶地層ジオ・メモリア】!!」


 フゥが掘削機ドリルを突き立てると、断崖絶壁の先端からさらに巨大な『地層を丸ごとくり抜いた様な台』がズゴゴゴッと隆起する。

 

障害物の一切存在しない高高度環境ステージが完成し、僕たちを乗せたまま空高くへと上昇していった。


「まち子、もう一度言っておくぞ。真核の体積に対し、空気の密度(1.29g/L)と完全に釣り合う『0.64グラム』の中性浮力に固定するんだ。取得判定にならないよう、必ず『大楯』越しに触れろ」


 僕の指示を聞いたまち子が力強く頷き、ドスンッ!

 と大楯を地面に構えて叫んだ。


「【守護大楯・得意(シンギュラリティ・)点の防壁(シェルター)】よ、私の愛の重さを固定しなさい!  ――【MIN】!」


 まち子が巨大な盾の先端で、ソフトボール大の真核にコツンと触れる。


 すると、『クリオライト・イーグルの真核』がフワリと宙に浮き上がった。


「完璧だ。だが、この高度では風で流される。カイザー!」


「ハッハー! 風で流サレルかもしれない不確定な量子モ!

僕様が『其処で静止シテいる未来』を選択シテやル!!」


 カイザーが虚空を掴むように剣を振るう。


「ホレ! 選択ダ!」と果てしなくダサいポーズを取る。


 かつて僕たちのスキルを強制遮断した極悪チート

思考と記憶の双鴉(フギン&ムニン)】の時とも張り合いが取れそうなほどにな。

 腰を深く落とし、両手の人差し指を頭にくっつけるアレだ。

 効果の凄さを掻き消す程のダサいポーズだった。


 だが、このダサポーズシリーズからなる今回のチート能力

【事象の選択】も効果は凄まじい。


 万力代わりに悪用し、真核を強風吹き荒れる空中の『絶対座標』にピタリと固定することに成功しているのだから。


「……ここからは精密作業だ。シロロ、ラメの準備をしろ」


「うんっ!行くよー!きらきら〜☆」


 シロロが大量のピンク色のラメを空中にばら撒く。


 僕は【星界の天球儀】を起動し、【絶対座標(システム)の転写(・ミラー)】を発動した。

 空間にサイバーチックな「ARグリッド(立体網目)」の光を照射した。


「ルナール、音響浮遊でラメを空中にトラップするぞ。僕が【地殻共鳴手甲】のバイブロ核から40kHz(40,000Hz)の超音波を下から上へ照射し、空中の定在波(Z軸の層)を作る」


「分かりましたっ!なら私は、水平方向(X・Y軸)の干渉波を作ります! 


基準周波数を442Hz(A=ラ)に設定して、倍音成分を微調整……空間を正確なミリ単位の格子状に分割チューニングしますね!」


 キィィィィン……ッ!!


 僕の放つ超音波の「ノード」と、ルナールが奏でる和音の干渉波が、空中で完全にクロス(共鳴)する。


 ピシィッ!!


「あああっ……!完璧なピッチ、一切の濁りがない純粋な

視覚(ヴィジュアル・)的倍音(オーバートーン)』……!空間そのものが、美しいスコア(楽譜)として調律されましたっ!」


 ルナールが、空中に構築された幾何学的な光景を見て、音楽家としての興奮を隠しきれずにうっとりと頬を染める。


「うわぁっ……綺麗……!!」

 シロロも息を呑む。


 空中に無軌道に舞っていた無数のラメが、音圧のトラップ(クラドニ図形)によって強制的に整列し、僕の照射したARグリッドの光の線に沿って『物理的3Dレーザーマップ』を構築した。


「……仕上げだ。ここから僕の『観測』の精度を、極限まで引き上げる」


 僕はインベントリを開き、かつて第4エリアの需要商材と予想して買い集めた『鏡の破片』『クリスタルガラス』、そして『遮光レンズ』を取り出した。


「あ、お前が裏でボヤいてた奴かそれ。売れ残ったやつ。それどうするんだ?」


 ドドンパが余計な嫌味を言ってきたので、いっそここで投げ出してやろうかと思ったが、途中で作業を放棄するのは僕のポリシーに反するため、その考えを切り捨てる。


「光学フィルターを作る。夜とはいえ、月明かりや眼下に広がるエウレカの街の環境光ノイズは、精密な測距(LiDAR)の邪魔になるからな」


 僕は空中に配置した『鏡の破片』で、ラメに反射したARグリッドの光を乱反射バウンスさせて一点に集め、『クリスタルガラス』の屈折率を利用して光の束を真っ直ぐに整流する。


 さらに、その通り道に『遮光レンズ(偏光フィルター)』を挟み込むことで、月明かりなどの不要な環境光を完全にカットし、純粋な『座標データ(光)』だけを抽出した。


 そして最後に取り出したのは『壊れた双眼鏡』。


 片方のレンズが割れ、使い物にならなくなったただのガラクタ。


 だが、初日にこの断崖で最初の武器【断崖写本杖】を作った時から、これが僕の『観測』のすべての始まり(原点)だった。


(……リリース初日。

 僕は一人でこのひび割れたレンズを夕日にかざし、システムに『異常なノイズ』をねじ込んだ。

 ただのゴミを使って環境データを偽装する、孤独なハッキングだった。

……だが今は違う。

 僕の『観測』と仲間たちの規格外な力が、この空間のすべてを完璧な数値データとして掌握している)


 僕は壊れた双眼鏡を構え、残った片方のレンズ越しに、静止した真核を真っ直ぐに見据えた。


 あの日、ただのノイズ(嘘)を生み出したこのレンズは今、僕たちが見出した『正解』の光束を、寸分の狂いもなく一点へと導いてくれる。


「懐かしいなー、その双眼鏡。最初、『なにそんなガラクタ買ってんだこいつ』って思ってたけど、本当ずっと使うんだな、それ」


 ドドンパが後頭部で両手を組みながら、ニヤッと笑いかけてきた。


「フッ……感謝しろ。お前のためにわざわざ引っ張り出してやってるんだからな」


「へいへい、すいませんね。頼りにしてるぜ、先生」


 軽口を叩くドドンパの態度に呆れつつも、僕は少しだけ口角を上げ、最後の仕上げ(作業)を行う。


 双眼鏡のレンズが、抽出された純粋な光のデータをピンポイントに集束させ、静止した真核へとレーザーのように撃ち込む。



「【事象の強(デコヒーレンス)制収縮(・スキャン)】発動」


 ギュルルルルッ!

  と天球儀の回路が激しく回転し、1999人分の『視線のログ』が僕の脳内へと強制的に流れ込んでくる。

 


「ぐっ……ッ」


——【System】——

精神的処理落ち(ブレイン・ラグ)』が適用されます。

——————————

 強烈な演算負荷と倦怠感に襲われ、僕の体は泥に沈んだように重くなり、思わず膝を折りそうになった。

 


「おいイオリ!?  大丈夫かよ、顔色やべぇぞ!」


 ドドンパが慌てて手を伸ばそうとするが、僕は片手でそれを制した。


「……触るな、ログがブレる。……問題ない。この空間の『絶対的なマッピングデータ(正解)』を、物理的に確定ロックさせる」


 僕は軋む脳をフル回転させ、息を吐き出しながら次へと繋ぐ。


「【記録保持レコード・リザーブ】展開。空間反響定位ログ、上書き(ドッキング)


 第5エリアでストックしておいた『氷粒子の反響定位』のログが、この断崖の空間へと解放される。


 レンズを通して集約された完璧な物理空間 (ラメのグリッド)の光データと共に、この場所に流れた環境ログが、宙に浮いたままの真核へ静かに吸着(記録)されていくはずだ。


「……よし、ログは乗った。この環境(空間)の構築を開始してから、現在35分が経過した」


「そしたら……あと25分だな」


「ああ、今拾えば道中の蹴って運んだ記録も混入してしまうからな」


 僕は時間を計算し、全員へ指示を飛ばす。


「あと25分だ。この完璧な物理空間を維持し続けろ。そうすれば、真核に記録される1時間分のログは、100%この『レーザー測距空間』のデータだけで上書き(オーバーライド)される」


「ハッハー!25分間このポーズヲ維持スルノハ、主神と言えどモ骨ガ折レルがナ!」


(ダサいポーズで決めている所悪いが、選択した時点でお前の仕事は終わりだろう……バカな神だ)



 〜24分後〜


 果てしなく精密な作業をしていると言うのに、僕の仲間達はどんちゃん騒ぎをしていた。


 この待機時間の間、僕は集中を途切れさせないよう一言も喋る事なくその光景を見つめていたが、こうして客観的に見ると……。


『カオス』

 この一言に尽きる。


 無駄にダサいポーズを維持する神、愛の重さを語る赤い女神、キラキラしたラメの空間で音楽用語を叫び合う女子たち。


 僕はふと、一抹の焦りを覚えた。


(ぽよんの時みたいに、この騒いだ内容まで環境ログとして真核に記録されていたりしないよな……?

  いや、あれは回復アイテムのカテゴリーに分類される『マカロン』を摂取したからだ……ログに成分が残るのは当然のシステム挙動だ……)


 会話の音声データ(雑音)をログに残す事は無いのは分かっているが、同時に嫌な予感もする。


(システム……わかってるよな……?

  この神聖な物理ハックの結晶に、こいつらのアホな会話ログを混ぜたりしないでくれよ……。

 呪うぞ、いい加減)


 システムに理不尽な脅し(毒)を吐きながらも、僕は視界の隅の時計を見やる。

 そろそろだ。


「おい、お前達。あと数十秒だ。ドドンパ、待機しろ」


「おう!  みんなサンキューな!  まじ助かったぜ! 

俺の……いや、みんなの力を最大限活かすようないい装備が出来るように祈っておいてくれ!!」


 ドドンパが真核の前に立ち、期待に満ちた顔で手を伸ばす準備をする。


「あと5秒だ。3……2……1。取れ」


「っしゃあ!!」


 ガシッ!!


 ドドンパの手が、宙に浮いていた真核をしっかりと掴み取る。


 100%純粋な『絶対座標』のログを宿した真核は、数秒後に光の粒子となって彼のインベントリへと送り込まれた。


「へへっ、久々だな、この真核が手に入る感覚。クランに戻ろうぜ!」


 長時間の拘束から解放された皆が、思い思いに「お疲れー!」「疲れたわー!」と声を掛け合う。


 相変わらず騒がしくて、連携が取れているのか取れていないのか分からない。

 少し変わった、いや、多分『World(ワールド) of(オブ) Arche(アルケ)』で一番カオスな連中だが……。


「……悪くないな」


 緊張の糸が切れたせいか、僕は思わず本音を吐露していた。


「ん?  イオリ、なんか言ったか?」


 ドドンパが不思議そうに首を傾げる。


 誤魔化そうとしたが、どうやら僕の顔は自分でも分かるくらい赤くなっていたらしい。


「えっ、なんかイオリ君照れてる!?カワイイ〜!」


「ふふっ、本当に。綺麗なピンクトルマリンみたいね」


「ハッハー!照レ隠シトハ、青いナ!」


「マスターイオリ、ご安心を。私の愛の重さ(大楯)でそのお顔を隠して差し上げますわ」


「お、エモーショナルですか!?」


「ルナールちゃん、そればっかだな!?」


 皆が顔を見合わせてドッと笑う中、少し恥ずかしくなっていた僕は、わざとらしく咳払いを一つして空気を切り替えた。


「……さあ、答え合わせ(コンパイル)の時間だ」


「おう!行くべ!」


混沌工房カオス・アトリエ


 制作に関わったメンバーが見守る中、ドドンパがピンクすぎるクラン専用の【核生成コンバージョン施設】へと真核をセットしようとする。


 ちなみにだが、まち子が加わったことでピンクな上に魔王の翼(?)を生やしていた施設はVer.3.0へと変わり、さらには赤い鎧まで装着(?)して見た目がすごいことになっている。


 だが僕は知っている。

 こいつらの暴走はもう止めようがない事を。


「なんか、緊張するな……」


 ドドンパの肩が震え始めるが、ルナールがそっと背中を押した。


「ドドンパ君、大丈夫です!Risoluto(リゾルート)(決然と)!堂々と胸を張って進みましょう。

だって、これから私達のコンダクター(指揮者)になるんですから!」


(……音楽用語での励ましはエモいが、目の前にあるのは魔王の羽と赤い鎧が生えたピンクの生成機だ。

 どうやっても荘厳なオーケストラには見えないぞ)


 僕が一人内心でツッコミを入れる中、ドドンパがルナールの手と言葉に背中を押され、真核をセットしてボタンを押し込む。


 カッ……!!


 すると、青白い激しい光が真核を纏って明滅し、ホーム内を眩く照らした。


「うお、なんかすげーな」


 〜数分後〜

 真核にまとわり付いていた光がドドンパの元へと集まり、スゥッと収縮して彼の中へ内包されていく。


(まさかこれは……僕の時と同じ……超特殊職業へと派生したのか……?)


「おお!スッゲー!イカすゴーグルだぜ!」


 僕はすかさず、ドドンパが装備した真新しいゴーグルを観測した。


「【詳細観測ディープスキャン】」


——【Log】——

【観測ログ: 解析開始】

【対象: ドドンパ】

・職業: 記録派生 超特殊職業『絶対座標の(アブソリュート)指揮者(・コンダクター)

【ドドンパ専用 名称:全天候型(LiDAR)測距儀(・ゴーグルK)

・種別: [ 頭防具 / 空間演算デバイス ]真核防具

・ランク: ログ・デザイン級(戦術司令型)

・製作者: ドドンパ

・ステータス: AGI+15 / INT+25 / PER(知覚)+50

・属性: 光 / 風(音響)


[ログ構成]

・ベース:クリオライト・イーグルの真核

・中性浮力の獲得

・障害物ゼロの高高度環境

・事象の絶対静止

・物理的3Dレーザーマップ

・光学フィルター

・空間の絶対確定

・カオスな祭典


[固有パッシブ]

・絶対安全圏の可視化

 視界に『3Dワイヤーフレーム』を展開。

 敵の魔法や大技の爆発範囲をミリ秒単位で計算し、

「絶対に攻撃が当たらない死角アンチ」を青い光の枠として装備者のみ強制表示させる。


狂宴の(カオス・)指揮者(フィルタリング)[10/日]

 混入した「どんちゃん騒ぎ(雑音)」から変換された能力。

 味方の無軌道な行動や環境ノイズを全て戦術の「変数」として許容し、瞬時に再計算を行う。

 盤面が乱れても、タクトで引くナビゲーションラインの精度が一切落ちない。



[隠し効果]

・名前:損失回避(プロスペクト)の戦術鏡(・グラス)

 

【フレーバーテキスト】

「ミリ単位の死角アンチを見つけ出せ。神聖なる物理ハックの結晶は、仲間たちの喧騒カオスというノイズを吸収し、絶対的な『指揮』の権能へと昇華した。観測者の『目』と、指揮官の『手足』。

『さあ、タクトを振れ。誰一人傷つかせない、完璧な盤面オーケストラを完成させるために』ーー観測者より。

——【Log】——

第88話いかがだったでしょうか?


カオス・アトリエ総出の「LiDARハック(儀式)」!

ちゃっかりログに混入している「カオスな祭典(どんちゃん騒ぎ)」はドドンパ愛でつけました。

これでカオスな動きしていても避けまくれる理由が作れました。笑


次回でVer.1.0が完全に終了します!

そして90話からはいよいよ第6エリアへと突入します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

〜次回予告〜

3/5【朝8時10分】に投稿ハック致します!


少しでも「LiDARハックすごすぎる!」「イオリのデレ最高!」と思っていただけたら、ぜひ画面下の【ブックマーク】や【☆☆☆☆☆】で応援していただけると、執筆の最大の励みになります!

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