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第76話 観測者、クビになったチーターを拾い、新入り(主神)とハズレの洞窟を探索する

ギャグ+シリアス本編+ギャグでお送りいたします。

 

◇現実 イオリの部屋


 僕は仕事から帰宅して夕飯を食べながら、オフ会前に起きた事件の掲示板を見ていた。


【第5エリア キーアイテム獲得:『凝固点降下』攻略法スレ】


『それ知ってる』から始まる知識マウントユーザーや、第6エリアのアイテムについての考察、バザー大荒れ冷徹魔王『k』事件などが書かれていた。


 好き勝手言いやがる。

 まぁどうでもいい、そんなことは。


 実は先週、ジィサンから借りた金を返すため、ぽよんに指示を出して『ある情報』と『必須アイテムの開示』を配信で行わせた。


 例の『空白のアルカナ(大)』と『枯れた樹の枝』という換金アイテムでロン君が発見したやつだ。


 これらが第6エリアのキーアイテムになるのは間違いない。


 そして、ぽよんの配信で情報を開示した

結果――『氷砂糖』と『岩塩』の相場は、1Gから5000G台にまで大化けした。


 MP回復アイテムはフィールドに10個までしか持ち込めないという厳しい仕様上、第5エリアのギミックである

『正解壁』と『失敗壁』はプレイヤーにとって凶悪すぎた。


 この『凝固点降下』攻略法は、MPを温存する画期的な方法として大流行したのだ。


 情報開示後は、ジィサンと共謀(悪徳)し、5,000Gと20,000Gによるアンカリング効果を利用し即完売させてやった。


 ちなみに、ぽよんの借金は10万Gだけ減らしてやった。

 一気に完済させるつもりはない。

 まだまだ僕の奴隷(広告塔)として働いてもらわなければならないからな。……(残り950万G)。


 抱えたタスクも終えた。


 今日の『真核回収計画(もといプニプニ計画)』を立てるため、僕はヘッドギアを装着した。


 そういえば、2ヶ月後に控える大型アップデート(Ver.2.0)

までに、毎週少しずつ各エリアに新エネミーやイベントエリアが追加されていくらしい。


 今朝、今週のエネミーが追加されたと聞いたが、どんなエネミー(素材)か楽しみだな。


「ログイン」


混沌工房カオス・アトリエ


 さて、まずは新エリアのエネミーの調査に……。


「ぽよ〜〜!  わん、とぅー、すりー、ぽよ〜ふぉーっ!!」

「わん、とぅー、すりー、守ってふぉーっ!!」

「わん、とぅー、すりー、可愛くふぉーっ!!」


 ログインした僕の視界に飛び込んできたのは、ホームの中央で謎の掛け声に合わせて体操をしているぽよんと配下達。


 ロン君も当然やっている。


 プルンっ!

  プルンっ!

  プルンっ!


 VRの世界で何をしてるんだこいつらは。


「ワン!  ツー!  スリー!  ハッハ!  フォー!」


 なんだ、カイザーとまち子も居るのか。


「………………は?」


 僕の脳内の処理装置が、完全にフリーズした。


「ハッハー!  ヤァ!  kイオリくん!!」


「御機嫌よう、『k』」


「お、お前ら……何故ここに……それに……」


 いや待て、立ち聞きしたあの話(サクラや実験場のこと)をここで出しても不審がられるか……。


「ハッハー!  僕様も『めっちゃアトリエ』に入れてくレ!!!」


「私もぽよん軍守衛として入る義務があるんですの」


「……は?」


 冗談じゃない。

 何を言っているんだこのバカどもは。

 つい数日前まで死闘を繰り広げ、僕たちを蹂躙し挙句には本陣をエラーごとブラックホールで消し飛ばした張本人たちだぞ。


「……。断る」


「アリガトウ!!  ではフレンド申請かラするヨ!!!」


 ダメだ、こいつはログインする時に脳の8割を筋肉か何かに変換されたのだろう。

 会話のロジックが成立していない。


【フレンド申請:カイザー・ライトニング】

[ YES / NO ]

 ポチッ。

[ NO ]


「ハッハー!」


【フレンド申請:カイザー・ライトニング】

[ YES / NO ]

 ポチッ。

[ NO ]


「ハッハー!」


【フレンド申請:カイザー・ライトニング】

[ YES / NO ]

 ポチッ。

[ NO ]


………。


 さすが選択遅延の悪用者。

 申請した未来を選択しているのか、UI操作が見えん。


 この後、この不毛なやりとりは数十回繰り返された。


 僕の貴重な時間の無駄であるため、渋々承認した。


「よろしクネ!  kリオイ君!」


 ムカついたら、ぶん殴っても許される法案は通ったんだっけな。


 僕は脳内で国会を開く。


……0.1秒後。

 よし、満場一致で可決されている。


 ドゥクシ!!


 フゴォッッッ。


 僕の全力の右ストレートが顔面にクリーンヒットしたが、カイザーは吹っ飛ばなかった。


 こいつ無駄にVIT(耐久力)高いな。

……いや、単に僕の観測士としての基礎STR(筋力)が低すぎるだけか?


 彼は口元から血のダメージエフェクトを垂らしながら、満面の笑みで僕に言った。


「今日カラ、ここは『ヴァルハラ』だネ!!」


 ドゥクシ!!


 フゴォッッッ。


【クラン『Chaos Atelier』への参加申請】

【申請者:カイザー・ライトニング】

 [ 許可 / 拒否 ]

 ポチッ。

 [ 拒否 ]


「ハッハー!」


 当然続いた。

 これも10回はやったな。


 僕は一応、クランチャットでみんなに意見を聞いた。


 二人の加入に猛反発の声が上がると思ったが、意外とみんなすんなりと受け入れた。

 あのルナールでさえも。


 まぁ、この二人は『俺もお前も俺』の悪巧みにはあまり直接的に関係していなかったようだしな。


 根はただの戦闘狂と、ぽよんの限界ヲタクだ。


 僕は思考を切り替えた。

 手持ちの盤面に『強力な駒』が増えたと思うしかない。


 他の一般プレイヤーからブーイングを受けそうな気もするが、知ったことか。


「おい、色々聞きたいことはあるが……『聖刻の円卓』はどうなったんだ?」


「わかRun!!!」

 カイザーが走るポーズを決めてきたので、とりあえず殴っておいた。


 ドゥクシ!!


 フゴォッッッ。


「それは私から説明するわ。貴方は薄々気付いているでしょうけど……」


 見かねたまち子が、静かに口を開いた。


 ◇


 それから僕は、アトリエ内の別部屋にてまちとバカから詳しい話を聞いた。


・『聖刻の円卓』は事実上解散

・『俺もお前も俺』とアサシン『無為』は不明

・彼らはサクラであり、命令はただ「強者プレイヤーとして看板になること」。

・「公式公認のチーター(上位権限:オーバースペックの貸与)」であったこと。

・現在は『クビ』により、その特権を剥奪されたこと。

・元々は普通にプレイしていた幼馴染の集まりだった。

・フェンサーは「飽きた」と言い別ゲーへ移行。

・『温度差で逝けよ』は、リアルで祖母の介護を見るため一時休止。


 あのシュレディンガーの猫×ハデスの隠れ兜を使っていた暗殺者は『無為』と言うらしい。


「と言うわけダ!  情報もあげるし役立つので今日から頼むナ!  アールヴ(精霊)ヨ!」


 僕は再び拳を構えたが、もう諦めることにした。

 疲れる。


「私もいいかしら?  リーダー『k』」


「……ああ。ただし、僕のクランに在籍する以上、クランの方針には必ず従ってくれ」


「了解ダ!!」


「もちろんですわ!」


 フレンド申請と加入申請がまち子からも届いたので、許可をしておいた。


 拒否はしていない。

 カイザーじゃないからな。


「あぁぁ、ぽよん様〜〜〜!!」


 承認された瞬間、まち子は嬉々としてぽよんの元へ飛んで帰っていった。


 ぽよん軍守衛(ガチ勢)と、バカ(主神)が加わり、僕らのクランは総勢9人+1人ミツルマン体制になった。


 彼らが運営から受けていた恩恵のチート『能力の完全底上げ』はすでにステータスから消え去り、イベント時のような圧倒的な戦闘力は失われているらしい。


 とは言っても、『真核』自体が持つシステムの記録は本物だった。


 カイザーの選択遅延の能力やオーディンの神話ギミックは、ちゃんとシステム上に刻まれていたのだ。

 どうやってあんなデタラメを作ったのかと思ったが、

全て『俺もお前も俺』の監修プログラミングだったらしい。


(まぁとりあえず、色々と考えなければな)


 部屋には僕とカイザーが残され、二人で居ても特に話す事がないので、僕は退席しようとした。


 その時、カイザーが真剣な眼差しになり、ふと低い声で喋り出した


「イオリ。言っておくぞ。僕達のようなサクラはまた現れると思う……。『俺もお前も俺』……イズン達は、能力を剥奪されていないはずだ」


「なんだと……?」


「奴の父親はな、運営のお偉いさんだ。『聖刻の円卓』というギルドの所属そのものが、上位権限のトリガーになっている。そこを抜けていないと言うことは……」


「………そうか」


「目的はワからナイが、何かあルゾ!!  以上ダ!」


「……お前、喋り方普通にしたらどうだ」


「ハッーハッハーッハー!!  ではヨロシく頼むナ!」


 照れ隠しのように、カイザーはバタバタと騒がしい足音を立ててメインフロアへと戻っていった。


 一人残された部屋で、僕は静かに思考の海に沈む。


 僕と同じ職業である『観測士』。

 そして、俺もお前も俺の超特殊職業『量子観測士クオンタム・オブザーバー』。


 この『観測士』と言う職業は、この世界の仕様の裏を突けば間違いなく最強になれる。


 直接的な攻撃スキルが一切無いため、一般的には不遇職として扱われているが。


 以前公式サイトに載っていた全体の職業分布データでは、そもそもリストに載ってすらいなかった。


 このゲームの重要システム『真核』(直前1時間の環境ログの吸着)を最も完璧に吸着させられるのはこの職業しかない。


 そして量子力学において最も重要な要素である『観測』。


 これに何か由来する事が、運営の目的なのか……。


「……今考えるべき事ではないな。現れたら、その場で盤面を作るだけだ」


 プニプニ……僕の脳内も、すっかりシロロたちに毒されている。

 もう末期だな。


 僕は頭を振り、メインフロアへと戻った。



「フゥは来ていないのか?」


「あ、第4エリアに行ったよ!なんか隕石 エネミーが5種類も増えてて、プニプニしてくるって」


 シロロが答える。


「そうか、メテオライト(隕石)系のエネミーだったか」


「ぽよ〜〜!!  人間k!  おやつくれなのだ」


 ぽよんの相手が面倒なので、僕はインベントリからカヌレ(2000G)と氷晶石(100G)を取り出し、放り投げた。


「ぽよ〜〜〜?!  カヌレなのだ〜〜!」


 第1回クランイベントの時、アイテムが存在するのかすら知らない状態で約束してしまった『カヌレ』を先日町で見かけてしまった為購入した。

 女性プレイヤーばかりで変な目で見られたがな。


 約束は守らないといけない。

 ぽよんの為なのが非常に悔しいが。


「ハッハー!  新しいエネミーの場所へはモウ行ったカ?」


「いや、まだだが。どうかしたのか」


「今言ってた、メテオライト系エネミーがとんでもなく強いらしいですわ?」


 まち子が補足する。


「第6エリア実装前に強エネミーか。何か由来がありそうだな」


「ねー、プニプニはどうするのー?」


「今日はどっちみち計画だけだ。まずは追加されたエネミー達を観測しにいく」


「ハッハー!  ならば僕様もいこう」


「私はぽよん様とストレッチしてますわ」


「私もーー!!  ぽよトレ〜!」


 そんな時、ルナールがログインしてきた。


「お疲れ様ですっ!  あれ、ドドンパさんは来てないんですね!」


「「お疲れ〜〜」」


 なんだ?

  さてはルナールも、現実リアルで本当に満更でもないのか。


「あれ!  カイザーさんにまち姉さん!!」


「オオ!  フェンサー妹!」

「こんばんは、ルーちゃん」


 先ほど、公式アプリからのクランチャットでやり取りを確認でもしたのだろう。


 ルナールもスムーズに二人を受け入れたようだ。


「ホレ!  kヨ!  行くゾ!  妹も来るカ?」


「行きますっ!!  ……どこに?」


 こいつもポンコツだな。


「新エネミーが追加されたんだ。それの調査にな」


「なるほどっ!  ぜひ!」


 こうして僕、カイザー、ルナールの奇妙な3人組で新モンスターの調査に行くことになった。


 ◇ 第1エリア エウレカ草原


「フム!  ここから見ていくノカ!!」

「ここ、もうあまり来ないですよねー」


「僕もリリース以来駆け足だったからな、あまり多くは知らない」


 まぁ、1999人をこの場所へ集め、運営に緊急メンテナンスを余儀なくさせてやった事はあるが。


 カイザーは冒険者端末で何やら情報を探しているようだった。


「ナニナニ。大草原の新エネミーが、1種見つからない。ダソウダ!!」


「追加されて10時間ほど経つが、まだ見つかってないとなると……希少猫系レアエネミーか、特殊ギミックだな」


「このエリアって、ギミックありましたっけ?  風が吹いているくらいしか……」


 僕は知っている。

 このゲームは、サービス開始の365日前よりLIVE映像が流れていたんだ。


『情報の図書館』だ。

 未だ僕が使っていない隠し情報だってある。


 ある兎型のエネミーが3匹入って行くのをな。

 だが確認した際、それらしきエネミーはいなかった。


「少し気になっていた場所がある」


「前カラ気にナッテイタが、君は情報の鬼と聞く。あと眼鏡魔王トカな!」


 ドゥクシ!!


 フゴォッッッ。


 くそ、殴った僕の拳の方が痛いじゃないか。

 次はロン君でぶん殴るか。


「このエリアには、洞窟があるのを知っているか?」


「それって、行き止まりの洞窟ですか?」


「そうだ。僕も確認にいったことはあるが何もなかった。

――『あの時点』ではな」


「初期の頃に噂になってましたけど、もう忘れられてそうですもんね……」


「フム、つまり今ナラ、何カ見えルカモしれなイのだナ!」


「そうだ。いくぞ」


 僕は二人を置いて歩き出すが、後ろでヒソヒソと何か言っているのが聞こえる。


「イズンとナニカ似ていルナ!妹よ いつモこうナノカ?」


「あはは、確かに少し似てますけど、でもイオリさんはいい人です」


「ハッハー!  ソウカ!  それはよかッタ!!」


「待ってクレー!  k!」


「イオリさーん!  私も真核蹴りたいですーーっ!!」


 不穏な物騒なワードを叫びながら、二人が僕の後ろをついてくる。


 さて、何が見つかるかな。


◇ エウレカ草原 ハズレの洞窟

 

 しまった。暗がり用のトーチ(松明)系アイテムを持っていなかった。


 もしこんな場面が来ても、普段ならシロロのピカピカ魔法か、灯台ドドンパが自ら発光するせいで、アイテムとしての必要性を全く感じていなかったのだ。


「どっちか明かりを持っていないか?」


「私はチューニングハンマーしか持ってないですっ!!」


 こいつはなぜ自信満々に、全く関係ないことを……。


 聖刻戦以来、すっかりアトリエに馴染んできた彼女だが、最近気づいた。

……彼女は少しバカだ。


 だが、僕の後ろにはもっとバカが加入してしまった。


 やはり加入は断るべきだったか……。


「ハッハー!  持ってないガ、光を出せるぞー!!」


「【僕様専用スキル:めっちゃ高速で動き光りが残るヤツ!】」

 ※システム名称:【時空剣士スキル:瞬刻の(スレイプニル・)神座(ステップ)


 カイザーが凄まじいスピードで、暗闇の洞窟の壁や天井を縦横無尽に走り回る。


 神話級の必殺の高速移動スキルが発動し、彼が通った軌跡にまばゆい光の足跡(残滓)が残り、洞窟内を一時的に明るく照らし出した。


「わー綺麗ですねっ!  カイザーさーんまってー!」


 僕はただ、神々の力をただの「蛍光灯代わり」に使うバカ二人の姿を、茫然と眺めることしかできなかった。


 あいつは本当に、残念な主神オーディンだな。


 だが、光に照らされた洞窟の奥を見て、僕は目を細める。


 僕の予想が正しければ、ここに何か『追加』されているはずだが……。


第76話、いかがだったでしょうか!


まさかの元・円卓組からの加入で、我がカオス・アトリエも総勢10名の大所帯(カオス空間)となりました。


イオリの胃痛と物理ツッコミ(ドゥクシ!)はまだまだ続きそうです(笑)。



次回も『朝8:10』 に投稿ハック致します!


画面下の【☆☆☆☆☆】や【ブックマーク】を押していただけると、イオリのSTR(筋力)が少しだけ上がるかもしれませんので、ぜひ応援よろしくお願いします!

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