表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/125

第56話:観測者、システム(神)の箱庭を暴き、物質界(マルクト)の終わりを検索する

『World of Archeワールド・オブ・アルケ』の真実

この世界が異常なまでの物理エンジンを有していたのは

マルクト(物質界)と言う再現をしていた為。

いくらかかるんでしょうかそんなの笑

それでは、至宝蹴り(しほけり)の根幹の開示回をどうぞ。



 ◇ 第5エリア グラキエス・ロタ・チェンバー

  【第6の間:八腕の氷穴】

 

ロン君は、ボスの『幻氷の氷蛸クリオライト・アイスクラーケン』の蛸足3本を平らげた後、完全に寝てしまった。


 だが、当然ながらボスはまだ倒していない。

 残りの5本の足と巨大な本体が、空間の亀裂から丸見えになった状態でのたうち回っている。


「……論理ロジックも法則もあったもんじゃないな」


 僕は空中に浮いて寝ているマカロンを見上げ、頭痛を堪えるようにこめかみを押さえた。


 あの武器マカロンは、僕の緻密な計算やシステム設計など嘲笑うかのようなバグ性能だ。


 そもそも、空間のテクスチャ(防壁)を『甘い匂い』という味覚センサーで判定し、物理的な咀嚼で突破するなど、どんな三流のプログラマでも書かない最悪のスパゲティコードだ。


(……運営め。

 物理演算エンジンだけは一丁前に精巧に作り込んでおきながら、自律AIのデバッグは完全に放棄しているじゃないか。

 こんな不確定要素イレギュラーを放置している時点で、システム管理者の怠慢だ。

 僕がプロマネなら全員首を飛ばしているところだぞ)


 僕が心の中で運営に対する論理的な暴論(愚痴)を唱え続けていると、ボスが足を食いちぎられた痛みで逆鱗に触れたのか、残りの触手を振り回してさらに激しく暴れ出した。


 バシャアァァァンッ!!


「ぽよ〜〜!  タコさん怒らないでなのだ〜〜! 

 美味しいのが悪いのだ〜!!」


 ぽよんが理不尽極まりない説得を試みている。


 その後方では、ルナールが地べたにアヒル座りをして、愛用のハープを必死に布で拭いていた。


「うぅ……取れない……スライムの粘液がこびり付いて……」


 取るのは大変だろう。

 酢でもぶっかけるか?


 もはや僕の思考は、戦闘中に座り込んで楽器を拭くスパイ(仲間)を見ても、何のツッコミも浮かばない。

 このクランではよく見る光景だからだ。


 ドドンパが、ルナールの見ていない隙を突いてタクトを振り、【濃霧予兆】を発動した。


 すると、ぽよんが慌てて『闇霧ダーク・ミスト』を発動する。


 嘘のスキルの為に仕込んでおいた動作が、パブロフの犬のように染み付いたのか。

 ぽよんは反射的に発動してしまった。


 だが、今はすごく邪魔だ。


「ぽよんちゃあああああん!  前が見えねぇ!!」


 ドドンパが闇霧の中で叫ぶ。


「ぽよ〜〜?!?!  ご、ごめんなのだ〜〜!」


「どこの弦まで拭いたっけ?!  あれぇぇ?!」


 ルナールも暗闇の中でパニックになっている。


(……カオスだな。

 ルナール、君が円卓のスパイでなければ……)


 そうであったなら僕は君を気に入ったかもしれない。

 君も、この混沌の要素がたっぷりと詰まっているしな。


「タコ。少しは当ててきたらどうなんだ?」


 ボスの触手が闇雲に飛んでくるが、僕たちには当たらない。


 ボスの攻撃である『蛸足墨』には強烈な視界不良のデバフがかかるシステムだったはずだが、僕たちには全く意味を成していない。


【System:視界不良レジスト】

【BGMジャック効果:凍結・視界不良・拘束・転倒を無効化】


「……お前、完封されてるじゃないか」


 ルナールが先ほど発動したポップスのバフには、拘束の他に視界不良無効も含まれていた。


 巨大蛸の天敵が、清楚な吟遊詩人(の弾くポップス)とはな。


 やがて視界が闇に染まる中、各地で地面を叩く激しい音が鳴り響いていたが、徐々にその音が収まっていった。


 なぜかボスの動きがピタリと止まったのだ。


「……フッ、グロッキー状態か」


 足を3本も喰われ、闇霧の中で暴れ回って疲労困憊したらしい。

 どうしようもないボスだ。


 ロン君のおかげではあるが、使えるものは使う他ない。

 最高効率になるならな。


「ドドンパ!  ルナール!  僕がスキルで視界を晴らす! 

晴れたらルナールはATK上昇バフ、ドドンパはモーション管理だ!」


「おう!」


「はい!!」


「ぽよん!  ロン君は寝ていても武器としては機能するか?」


「ぽよ〜!  ロン君のスキルは使えないのだ! 

  でも、スライムの通常攻撃はできるのだ〜!!」


「よしそれでいい!  お前のダイラタンシー現象を見せつけてやれ!」


 僕は巨大なペン――『断崖写本杖』を構えた。


「記述。――『暴風』」


 ゴォォォォォォォッ!!


 僕の放った風の魔法が辺りの闇霧を吹き飛ばしていくと、

 そこ にはプールの水面でぐったりと横たわるボスタコの姿があらわに なった。


 クリオライト特有の屈折(不可視迷彩)など、すでにロン君が 空間ごと足を食いちぎったことでシステムがバグり、

 完全に解けて丸見えになっていた。


「これでも喰らうのだ〜! 

  【甘姫粘魔王スキル:おやつちょうだい! 】」


 ぽよんが叫ぶと、彼女の足元から大量のグミのような粘液が射出され、ぐったりとしたタコの巨体をグルグル巻きにして拘束した。


「おおっ!」


 ぽよんが珍しく、ちゃんと自身の職業ロールのスキルを使いこなしている。


 そうか。


『IQ3』や『ロンマカロン』のイメージしかなかったが、彼女はれっきとした記録派生の特殊職業『甘姫粘魔王』だったことを忘れていた。


「すげぇ!  あの巨大タコが、ぽよんちゃんのグミ足に完全に拘束されたぞ……!」


 ドドンパが感嘆の声を上げる。


「拘束してやろうとしたクラーケンが、逆に拘束される。ミイラ取りがミイラになる典型だな」


 僕は冷たく言い放つ。


「てか、タコ完全に動けねぇじゃん。

 俺、タクトでモーション管理とか、スキル使わない方がいいもんな。

 カウント(予測)することねぇわ」


 ドドンパが手持ち無沙汰にタクトを肩でトントンと叩く。


「なら、実況・解説でもするか? 

  これからルナールのライブが始まるぞ」


 僕の指示通り、ハープの汚れを拭き取ったルナールがスッと立ち上がり、弦を激しく弾いて新たなスキルを発動した。


【システム干渉観測ディープ・インターセプト

 ジャンル設定:K-POP(BPM:130)


 干渉レベル:エリア・ハック(環境ルール書き換え)


『모두 같이!(モドゥ カチ!:みんな一緒に!)

最高にHighなステージにするよっ!!』


「おーっと!  今度は韓国語もお手のもの、ルナールちゃん!  キャッチーなダンスチューンだ!  かわいいいい!」


 ドドンパが完璧なオタク(ファン)のコールを入れる。


「か、かわいいのだ〜!  ふーっ♪ なのだ〜!」


 ぽよんも横でペンライトのようにロン君を振り回している。


【System:味方全体 ATK・INT+150%】

【System:味方全体 RES・DEF・DEX・LUKマイナス100%】


「……やはり、あのハープ(響岩k)を使えば、どんなジャンルでも自在に弾けるのか」


 僕は極端なパラメータの変動ログを見て呟いた。


「スーッゴイ!  攻撃に全振りした超絶尖ったバフ&デバフだー!!  けど、かわいいから全部許す!」


「お前、煩悩が露骨になったな」


 僕は実況に熱が入るドドンパを横目に、ぽよんにトドメの指示を出した。


「よし、ぽよん!  ルナールのATK+150%が乗った、渾身のダイラタンシーハンマーをお見舞いしてやれ!!」


「ぽよ〜〜!  わかったのだ!  ロン君、おねんね中にごめんなのだ〜!」


 ぽよんが、寝ているロン君(王笏)を両手で力強く握り締め、大きく振りかぶった。


 スライムの特性である「急激な衝撃を与えると硬化する(ダイラタンシー現象)」。


 プォーン♪

 

 気の抜けたような風切り音と共に、マカロンのハンマーが、

 グミで拘束されたクラーケンの脳天に直撃した。



 ドッッゴーーーン!!!!


 すさまじい轟音と衝撃波が第6の間に吹き荒れた。


  クランイベント『円環の回廊』で見せた元のダイラタンシーの 威力など、ただの遊びだったのだ。

 ルナールの極悪バフが乗ったそれは、とてつもない質量兵器へと変貌していた。


  巨大なボスが、悲鳴を上げる間もなく氷の地面に深くめり込み――無数の光の粒子となって砕け散った。


  《 VICTORY!! 》

  華やかなファンファーレが鳴り響く。


  ボスの消滅と共に、部屋の中央には青白い光を放つ転送石碑セーブポイントが出現した。


 【System:第6の間をクリアしました。】

 【System:進行状況が保存セーブされます】

  僕は空中にウィンドウを展開し、現在時刻を確認する。


  「……時刻は15時か。午前10時からぶっ通しでダイブしている。VRとはいえ、三半規管や脳の疲労リソースも限界に近いだろう」


  「あー、確かに。腹も減ったし、今日はこの辺で一旦休憩にするか?」


  ドドンパが首をポキポキと鳴らしながら同意する。


  ルナールは完全に安堵した顔で、その場にへたり込んでいた。

 スパイ特有の精神的疲労に加え、

 このクランの異常性に振り回されてHPもMPもゼロなのだろう。


  「ジィサン達は大丈夫かな?」


  ドドンパが呟くと、ルナールも心配そうに口を開く。


  「ろ、ロン君のおかげでなんとか(ズルして)突破できましたもんね……Aチームの皆さん、心配です」


  彼女の顔は、本気で仲間を心配している様な顔にみえた。


  (……君はスパイなのに、どうしてそんな純粋な顔ができるんだ)


  緊迫した状況や、ふとした瞬間に、人は表情や発言、挙動などに本性が顕著に現れるものだ。


  今の彼女からは……

 円卓への忠誠心よりも、ここ(アトリエ)への『心の揺らぎ』がハッキリと見てとれる。


  そんなことを考えながら、僕は先ほどの空間の亀裂で見えた

『Tav』という文字列を頭の片隅に置きつつ、ドドンパに答える。


 「ああ。今日はここで解散だ。続きは各々のスケジュールを見て、またクランチャットで決める。

 ……それと、ジィサン達だが問題なさそうだぞ」


  僕は、戦闘の裏でジィサンから既に入っていたメッセージを空中に表示させた。


ーーーー

[送信元:ジィサン]

[件名:ボス討伐済]

イオリk君、今回はずっと分断されっぱなしだったのう。

こちらは討伐済だぞぅ!

プールの底にフゥお嬢ちゃんが『火山』の地層を隆起させて、  プールの水が沸騰。

紫色のグロテスクな茹でダコ になったわい。

そこからはもう火力無双だったのう。

シロロお嬢ちゃんとワシで削り、ミツルマンが最後決めた!

カッコ良かった……!!

そして、そちらも大丈夫だろうと思い、

セーブもされたので一足先にホームに戻っておる!

ーーーー


「うわー。なんか向こうもズルいなー。地層隆起で水ごと茹でダコって」


 ドドンパが笑う。


「私たちも、だいぶズルかったのでは?」


 ルナールが苦笑いする。


「ぽよ〜!! 

 ぽよん大活躍なのだ〜!  人間k、おやつ!!!」


(……フゥの『記憶地層ジオ・メモリア』か。

 やはりあれは、環境そのものを破壊する有能なスキルだ)


「でも無事に勝てていてよかったぁ。そしたら私も、お昼ご飯食べてきますね!!」


 ルナールが立ち上がり、明るく言う。


「了解!  じゃあな、ルナールちゃん!  ゆっくり休めよ!」


「はいっ!  皆さんもお疲れ様でした!」


 ルナール、ドドンパ、ぽよんが順にクランホームへの転送操作を行い、光の粒子となって消えていく。


 僕は誰もいなくなった氷の部屋で、先ほどロン君が喰い破った空間――あの一瞬だけ見えた『赤いエラーノイズ』の文字を脳裏に反芻しながら、静かに【クラン転送】のボタンをタップした。


 クランへ戻ると、ジィサン達からも「昼食をとって来る」という追加のメッセージが入っていた。


「……さて、僕も落ちるか。アレ(Tav)の意味を調べるために」


 ◇ 現実世界リアル イオリの自室


「……ふぅ」


 ヘッドギアを外し、僕は現実の自室で小さく息を吐いた。


 カーテンの隙間から、傾きかけた土曜日の午後の西日が差し込んでいる。


 冷たい水をコップ一杯飲み干すと、僕は休む間もなくデスクへ向かい、PCの電源を入れた。


 カタカタカタ……ッ。


 ブラウザを立ち上げると、お馴染みの検索エンジン『G○○gle』のトップページが表示される。


 今日のロゴマーク(Doodle)は、土曜日だからか、はたまた何かの記念日か、アルファベットの『O』の部分が輪っかのついた『土星サターン』のデザインに変わっていた。


(……サターン。

 ローマ神話の農耕神であり、土曜日(Saturday)の語源となった星か)


 そんな無駄な情報データを脳の片隅で処理しながら、僕は検索窓に、先ほどゲーム内で観測した文字列を打ち込んだ。


【検索:『Tav』 意味 神話】

【検索:『生命の樹』 階層構造】

 エンターキーをターンッ!

  と叩く。


 画面にズラリと並んだオカルトと宗教学の検索結果を、僕は異常な速度でスクロールし、脳内の変数と結びつけていく。


 タロットカード、カバラの『生命のセフィロト』、そしてヘブライ文字。


「……なるほど。そういうことか」


 パズルのピースが、恐ろしいほどの精度でカチリ、カチリと音を立てて組み上がっていく。


 僕は、検索エンジンの『土星サターン』のロゴを指でなぞりながら、暗い自室で独り言をこぼした。


「土星。ヘブライ語の占星術で言い換えれば……

『シャバタイ(שבתאי)』。

その語源は、ユダヤ教における7日目の安息日……

 『シャバット(土曜日)』だ」


 世界の創造が完了した、7日目。


 そしてカバラの教えにおいて、その『シャバット』が象徴する生命の樹の最下層(終着点)こそが。


「第10のセフィラ『マルクト』。……意味は【王国】、 

 そして【物質界(現実世界)】」


 僕は深く息を吐き出した。


 そういうことだ。

 運営システムは、物理演算エンジンを無駄に精巧に作っていたわけじゃない。


 第1エリアからこの第5エリア(Ver1.0)までの領域全体が、生命の樹における『物質界マルクト』という設定の箱庭だったんだ。

 だからこそ、現実の物理法則(凝固点降下やダイラタンシー)が絶対のルールとして君臨し、通用していた。


 そして、僕はさらにページをスクロールし、ロン君が喰い破った空間の裏側にあった文字――『Tavタヴ』の項目を開く。


物質界マルクトから、上位の次元へと至るためのパス(小径)。そこに割り当てられた22番目のヘブライ文字こそが……

Tavタヴ』。意味は【交差点】、そして【終わり】」


――物質界マルクトの底を抜けた先にある、終わりの世界。


 僕たちは今日、土曜日シャバットに、物質界マルクトの限界(第5エリア)を観測したんだ。


 僕は、椅子に深く背中を預け、天井を仰いだ。


「ククッ……アハハハハッ!!」


 乾いた、しかし歓喜に満ちた不気味な笑い声が、自室に響き渡った。


 最高だ。


 運営(神)は、ただのゲームを創ったんじゃない。

 この世界そのものを『生命の樹』の階層構造を用いて設計ログデザインしている。


 だとしたら、物理法則マルクトの限界を超えた先のエリア(Ver2.0)は、どうなる?


 論理が通用しない、完全に魔法と精神が支配する高次元のファンタジー領域に突入していくということだ。


「……見つけたぞ。この世界の、ルールを」


 土曜日の夕暮れ時。


 僕はG○○gleの土星サターンのロゴを薄暗い瞳で見つめながら、次なる世界(Ver2.0)――物理法則が崩壊した狂気の世界をどうハックし、どう蹂躙してやるかという、極上のシミュレーションに没頭し始めた。

今回の56話はこの物語の本当の『真核』を開示する回になりました。

ここを目指していたのでなんだか肩の荷が降りた気がします。


お気付きだったでしょうか?

12.13話で『22Lv』に上げた時、ドドンパは空歩と言うスキルを手に入れました。

42話でぽよんの真核を記録設計ログデザインする際にぽよんに課した**何もしない時間**『22分間』

43話でロン君についたスキルの無敵時間『22秒間』

48話のバックドア78%=残り22%

ここまではシステム干渉に関するものでした。

50話の22:22

51話の22サーバー

55話の22体のエネミー

この3話は22への示唆として提示しました。


ロン君は**大アルカナ22番目**と言う存在しない数字

21番目のThe World (世界)の外側の存在という意味


難しいお話ですが、この後数話を挟んでクランイベント戦 対『聖刻の円卓』編へと突入しますが

そのお話が終わればこの22の真実に迫るお話になっていきます!

もうしばしお付き合いください。




〜次回予告〜

2/18 18時を予定しています!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ