表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/127

第38話:観測者、レベル30の檻を抜け、敵の未来(ログ)を「可愛く」汚染する


混沌工房カオス・アトリエ


日曜日当日。


リリースから一ヶ月が経とうとしていた。


すでにエリアは2つ開放され、来週には第5エリアの開放が控えている。


一旦そこでVer.1.0が終了し、エリアに加え街の拡張や、メインストーリーが本格始動する予定だ。


だがその前に。


今日、Ver.1.0の総決算とも言える目玉コンテンツが開放される。


僕たちは、参加の出来ないミツルマンを宥めるジィサンを見守りながら、クランホームへと集まっていた。


「わかったよおお……爺ちゃん頑張ってね! 僕応援してる!」


「おお、よしよし。午後はミツルマンといっぱい遊ぶぞう! 爺ちゃんが一番かっこいいところを見せてくるからの」


ジィサンが目尻を下げて孫を見送る。


ミツルマンがログアウトすると、彼はスッと表情を引き締め、杖をつき直した。


「……さて。孫のためにも、恥ずかしい真似はできんの」


「気合十分ですね、ジィサン」


そして……時刻は 9:30。


ピロン♪


クランメンバー全員の端末が同時に鳴動した。


公式より、全ユーザーへの緊急アナウンスだ。


【Official News:クラン対抗戦イベント『円環の回廊』開催】


日頃より『World of Arche』をプレイして頂いている冒険者様へ。


本日より、初のクラン対抗コンテンツが実装されます。


これより30分間、エントリー期間となります。


■ 本イベントの特別報酬について

本イベントに出現する全てのエネミー(Normal〜Unique)は、

【100%の確率で『真核』をドロップします】


「……!!」


クランホームが一瞬どよめく。


確定ドロップ。その一言が持つ意味は重い。普段なら見向きもされない雑魚エネミーすら、今日は「宝の山」に変わるということだ。


■ ルール概要


1. システム

・参加単位:クラン(1チーム最大15名)

・対戦形式:4クラン同時参加バトルロイヤル(PvPvE)

・レベルシンク適用:【Lv.30 固定】

※全参加者のステータス・装備性能はLv.30相当に圧縮・調整されます。

2. フィールド:『円環の回廊』

・中央から放射状に8つの「部屋チャンバー」が接続された特殊マップ。

・部屋の入口には「結界」が存在し、手前の「占領エリア」を制圧したクランのみが侵入・エネミー討伐権を得ます。

・【重要】:部屋の内部で生成される真核には、部屋の前(占領エリア)で行われた戦闘ログが高優先度で記録されます。

3. 評価ポイント

・敵対プレイヤーキル:2pt

・エネミーラストアタック:3pt

・ログ貢献ボーナス:0.5pt

(※特殊な行動で真核に濃いログを残したプレイヤーへの技術点)



「……来たか」


僕はアナウンスを読み込み、即座に脳内でロジックを組み立てる。


クランメンバーたちがざわめき始める。


「ええっ!? レベル30固定!? 俺、昨日やっとレベル34になったのに! STR下がっちまうじゃんか!」


ドドンパが自分の腕を見て嘆く。


「装備も圧縮されるの? じゃあ、私の可愛いリボンも性能落ちちゃうってこと?」


シロロも不満げだ。


「ぽよ? よくわかんないけど、おやつは出るぽよ?」


さすがは魔王(IQ3)。通常運転だ。


「……静かに。パニックになるな」


僕は手を叩き、全員の注目を集める。


「いいか、よく聞け。このルールは一見平等に見えるが、システム的な『穴』がある。僕たちはそこを突く」


僕は空中にウィンドウを展開し、図解を始める。


「まず、①『Lv.30シンク』の穴だ。ドドンパ、お前はSTRの低下を気にしていたな?」


「おうよ! 火力が下がったらジィサンの砲台役が務まんねぇだろ」


「違う。システムが圧縮するのはあくまで『ステータス依存の数値』だ。だが、『固定値』や『物理現象』までは圧縮できない」


僕はインベントリから、紫色の液体が入った瓶と、シロロが作った大量の宝石ゴミを取り出す。


「上位クランは今頃、『最強の剣が弱くなった!』と慌てているだろう。だが僕たちは違う。ステータスに依存しない『毒(固定ダメージ)』や、シロロの宝石による『物理演算での転倒(威力0)』を使う」


「なるほど! 相手が弱くなってるなら、毒の固定ダメは相対的に脅威になるってことか!」


ドドンパが膝を打つ。


「そういうことだ。数値上の強さを捨てて、盤面を制圧する」


次に、僕はマップの図面を指差す。


「そして②『人気の罠』だ。全エネミーから真核が確定ドロップする以上、プレイヤーたちは『より強いエネミー』を求めて中央やボス部屋に殺到する」


「そりゃそうだろ。強い敵の方が、基礎スペックが高いしな」


「だが、そこが落とし穴だ。激戦区になればなるほど、複数のクランが入り乱れてスキルを撃ち合うことになる。……フゥ、そんな場所で落ちた『真核』はどうなる?」


フゥが眼鏡の位置を直し、冷静に答える。


「……ログが濁るわね。火、水、物理、回復……色々な属性がごちゃ混ぜになって、器用貧乏な『なまくら』しか出来ないわ」


「正解だ。だから僕たちは、あえて『不人気なハズレ部屋』を狙う」


「えー? じゃあハズレの部屋に行くのー? 可愛い子いないかもよ?」


シロロがつまらなそうにする。


「フッ……シロロ。ここからが本番だ。③『ログの汚染ハック』を行う」


僕はニヤリと笑う。


「シロロは敵を可愛くしていい、戦闘が始まったらあちこちにド派手なキラキラを巻いて戦場を可愛くしてやれ」


「僕たちの場所以外で行われる戦闘に注目度ヘイトUPのデバフを加えるんだ」


キラキラした状態で戦闘が行われれば、苦労して手に入れた真核も職種によってはゴミに変わる。


隠密系アサシンの短剣に「発光」が付いたり、硬派な騎士剣から「星のエフェクト」が出たりすれば、性能以前にモチベーションに関わるだろう。


(僕らが直接戦闘に関わらないからと言って有利になると思うなよ……くっくっく)


シロロの顔がパァっと明るくなる。


「え! 可愛くしていいの?! 私頑張っちゃうよ!!!」


(扱いやすくて助かるよ、眞島ましろぉ……)


僕の中で魔王が憑依する。


時刻は 9:55。エントリー締め切りまであと5分。


「……ねぇ、イオリ君」


フゥが不安そうに手を挙げる。


「敵の攻撃は、実際に戦闘をしてみないとわからないと思うのだけれど……。狙ったログを上手く付けれるの? 不人気な部屋と言っても、敵プレイヤーは来るでしょう?」


「……確かにそうだ。だからこそ、手順を踏む」


僕は全員を見回し、詳細な作戦を告げる。


「今回の目的は、『存在の希薄ステルス』を刻むことだ」


「スポーンの位置や開始5分の敵の流れにもよるが、まずは接敵せず、周囲を確認する。開始5分間は敵がどこに流れているかを見極めろ。狙うのは大衆と逆の部屋。中のエネミーはNormal(雑魚)でいい。ログが刻めるなら、元々の真核の中身はおまけでしかない」


「部屋の前でログを刻む要因ベイトにぽよん。護衛にドドンパとジィサン」


「部屋の前で、フゥが壁を生成しつつ敵を足止めしろ。溢れた敵はシロロが片付けろ」


「だが、敵が何をするかはさっきも言ったが分からん。いくらフゥやシロロが前線を張ってもすり抜ける奴はいる」


僕は眼鏡を押し上げる。


「だが、止めるのは不要なログを使いそうな敵だけだ。重要な、且つ、目的に沿う敵だけ潜入させてスキルを使わせろ」


「僕が部屋の中で足止めをしつつ、敵にスキルを発動させる。発動を確認したら、ドドンパとジィサンで仕留める」


「ぽよん、お前は中で随時指示を待て。お前の可愛い真核を作らせてやる」

(今日で最弱は終わりだ、スライム強くらいにはな……)

「ぽよ!? ほんとぽよ!? わかったのだ〜! ぽよんに任せるのだ〜!」


ぽよんがやる気を出した。


「フゥ、例の『地層』は今どこだ?」


「ええ、バッチリよ。第3エリアの『火山岩盤』のログを保持してるわ。いつでも展開できる」


「よし。……準備はいいか。上位クランが『ステータス』で殴り合っている間に、僕たちは『ロジック』で全てを掠め取る」


僕はクランメニューを開き、【イベント参加申請】のボタンに指をかける。


「行くぞ。……CAカオス・アトリエ、出勤だ」


ボタンを押した瞬間、クランホーム全体が転送の光に包まれた。


【マッチング完了】

【転送を開始します】


視界が白く染まる中、僕は不敵に笑った。


今回の戦場は大盤振る舞いだ。敵も味方も全て……。


さあ、記録デザインの時間だ。


ついに始まるクランイベント戦!

今回はルールを見た瞬間に敵のモチベ低下も狙う性格の悪いイオリが出せました。


4クランの中に聖刻の円卓はいるのか…

そして、勝負の行方は…。


〜次回予告〜

ストックが無いため未定ですが早ければ今日中にあげます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ