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第35話:観測者、魔王の広報活動と老人の隠された「打撃力」を知る

ストックが予定より早く貯まったので投稿しちゃいました



◇ 現実 都内某所 防音室


配信開始3分前。


無機質なモニターの光だけが照らす部屋で、彼女はスマートフォンを置いた。


「運営さんに怒られないか心配……だけど〜!」


手元にあるのは、高級パティスリーのフランボワーズ・マカロン。


彼女はそれを一つ摘み上げると、躊躇なく口へ放り込んだ。


サクッ。


「んっんっ!」


甘美な砂糖の塊が、脳髄に直接エネルギーを流し込む。


血糖値の上昇。瞳孔が開く。


気だるげだった瞳に、プロの『演者』の光が宿る。


スイッチは入った。


「ぽよ〜! 魔王ぽよん・ルル=ルシふぇっ……ルシファリウスで〜す! ……よしよし」


発声練習を済ませ、配信画面を確認する。


「んッと、待機数は7万人……!! 『k』すごいぽよね〜」


『魔王ぽよん・ルル=ルシファリウスのアルケ重大!!職人『k』商品告知配信ぽよ〜!』


画面には待機画面の可愛いイラストが表示されている。


コメント欄はすでに『ぽよん軍』の皆さんの待機コメントでいっぱいだ。


ーーーー


ぽよん軍『ぽよん様〜! 全裸待機!』

ぽよん軍『『k』キタコレ!!』

ぽよん軍『世界征服おやつ


ーーーー


「……よし。降臨ログイン


マイクのミュートを解除した瞬間、その声は世界を溶かすほど甘く、高らかに響き渡った。


「ぽよぽよ〜ん! 魔界の最強! ……いや最弱? ……えっと……魔王ぽよん・ルル=ルシファリウスでづっっ!!」


ーーーー


ぽよん軍『珍しく名前言えたのに、噛むの可愛い』

ぽよん軍『草』

ぽよん軍『世界征服おやつ進行度足りてないぞ〜』

ぽよん軍『『k』情報教えて! ぽよん様〜!』


ーーーー


「今日はね〜! 世界征服も夢じゃないの! いいお話持ってきたのだ〜! あれ? なんのお話だっけ? おやつがいっぱい? 眠い?」


ーーーー


ぽよん軍『本日もIQ3定期』

ぽよん軍『可愛いから許す』

ましろぽよん軍:『ん可愛いいいいいよおおお』

ぽよん軍『職人『k』の商品ってタイトルにあるぞ〜〜!』


ーーーー


「そうなのだ〜! ぽよ〜〜! 今週土曜日21時より〜! 『k』による〜! おやつ交換会があるのだ〜!! ……冗談ぽよ〜! 配下ども〜! がっかりするなぽよ〜〜!!」


ーーーー


ぽよん軍『おやつ=真核? 魔王様あれおやつだと思ってるの可愛い』

ましろぽよん軍:『かわいいいいぃぃ!!』


ーーーー


「いいか〜! よく聞くのだ〜!! 最近噂の〜〜! 『k』!! が作った〜〜!」


「 真核が〜〜! 始まりの町エウレカの噴水広場で〜! kのクランメンバーが〜! 売ってくれるぽよ〜〜! 」


「でも2個しかないぽよ〜! 交渉があるぽよ〜! 配下どもはいいいいっぱいおやつ持ってくるのだ〜〜!」


ーーーー


ぽよん軍『まじかよ、『k』の真核いくらだよ』

ぽよん軍『10、20万Gじゃ効かなそう』

ぽよん軍:『魔王様kブランドの広報なの?!』


ーーーー


「ぽよんね〜! kを配下にしたのだ〜!」

「 おやつくれるから言ってるのだ〜! 世界征服計画の参謀にしたのだ〜! わっはっはっは〜!」


ーーーー


ぽよん軍守衛:『ぽよん様〜!!『k』って怖い人〜?』

ぽよん軍守衛:『何かされたら言ってね! 私守るから〜〜!! ぽよ〜〜!』


ーーーー


「守衛のもの〜! ありがとなのだ〜! でもkは優しいところもあるのだ〜! 」

「いっつもムスッとしてて、メガネくいくいしててお金大好きなのだ〜〜! 」

「おやつもあまりくれないのだ〜! あれ? おやつくれないのいい人ぽよ〜〜?!」


ーーーー


ぽよん軍『IQ3定期』

ましろぽよん軍:『ぽよん様フォローになってないよお〜〜! かわいいけどおおお』

ぽよん軍:『魔王様飼い慣らされてね?』


ーーーー


「ぽよ〜〜! うるさいのだ〜〜! とくかくぽよ!! みんないーーーっぱいおやつ持ってくるぽよ〜〜!」


「 よーし! アルケログインするぽよ〜〜! 引き続き中でも配信するのでそのままおやつ持ってアルケくるぽよ〜! 一旦、画面切り替わるぽよ〜〜!」


画面には再び待機画面が表示される。


「ぽよ〜〜!! しまった!! 怒られちゃう! メガネ魔王め! よし! マカロンあと2つ食べて配信もどるぞっ!」


---


混沌工房カオス・アトリエ


予定通り、ぽよんは7万人の前で「粗悪な真核」の販売予告を終えた頃。


僕はクランホームでジィサンと向き合っていた。


「イオリk君、少しいいかな?」


「どうしました?」


「ほっほ、昨日言った件だが……君の言うとおり、ミツルマンのママが心配しておってね。」


「完璧に守って見せると言ってくれたよと言うと、少しだが安心したようだ。娘に怒られなくて済んだわい、恩に切るよ」


「そうですか、それはよかった。ですがどこで言葉の槍が飛んでくるかわかりません。一応、考えてはいますが……。そのことはご理解願います」


「ほっほっほ、分かっておるとも。だが君と言う盾に感謝せねばな。……とね。ほっほっほ」


ジィサンが柔和に笑う。


だが、僕には分かっている。この笑顔の裏にある鋭い眼光を。


「フッ、さてジィサン。僕からも。今週末真核の販売がありますが、もう一つイベントがあります」


「プレイヤー達と戦うあれだろう?」


「はい、情報だけでなく実装が日曜日にあるそうです」


「ふむ、ワシにできるだろうか……。情報戦とは違う純粋な力の対戦じゃからなぁ」


「はい、ですが戦闘がメインとは限りません。貴方は貴方の闘い方があるはずです」


「ほっほっほ、そうだね。リーダー、指示は頼むよ」


僕は週末のイベントの内容について予測を立てる。


メインではないにしろ、戦闘がないわけではない。


ジィサンは市場操作は上手いが、戦闘はあまり見たことがない。一度見ておく必要があるな、この人のプレイスタイルを。


「ジィサン、クランメンバーになったので暗号資産化クリプト・ブロックは解けてますよね。ちゃんと見てもいいですか?」


「ああ、構わんよ」


ジィサンはそういうと、少しおぼつかない操作でステータスを僕に見せてくれた。


【ジィサン】Lv.31

職業: 僧侶・記録派生 特殊職業『護法僧』


ステータス:

HP:665 / MP:455

STR:98

VIT:…………


「?!」


僕は思わず目を見開く。


レベル31でSTR98?


レベル33の戦闘職であるドドンパでさえSTR77だ。


僧侶系の職でありながら、この数値は異常だ。


武器: 門球打撃棍もんきゅうだげきこん 属性[光/打撃]

種別: 棍/スティック

ランク: 真核武器[マッスルラビリット]


固有パッシブ:

[敵指定強化]:視野内にいる攻撃対象を選択出来る、指定した対象へのダメージが特大UP(damage+15%)

[敵指定複数化]:指定対象を3つまでにする


隠し効果:

[3点特攻]:視野に3人の選択対象がいる時、STRが50UP。自動追尾追加


アクセ: 庇護たる投資家の腕輪

ランク: ユニーク真核アクセ[伝説の大富豪クエスト]

PT及びクラン内の詳細ステータスを伏せることができる。


 効果が発動されるたびに鑑定及び観測及び看破系スキルを発動したプレイヤーの名前が表示される。

 効果が発動されている対象にも通知が表示される。(対象者名非表示)

 装備者がログインしている限り自動発動


(……武器の性能がデザインレベルなのは何故だ……?)


(それに、以前僕が観測スキルを使った際、僕の名前は通知されていたということか……)


「ジィサン、武器は……どうやって作ったんです?」


「ああ、それか……。前にも言ったがNPC達の集まり会の際に冒険譚を聞いたと言っただろう?」


ジィサンが懐かしそうに語り出す。


「その時にだね、ミツルマンと第1エリアのボスに行ったのだけどね、2人では勝手が分からず手伝ってくれた子達がいたのだよ」


「ほう、どんな人で?」


「うむ、カイザーなんとか君とガードガールちゃんだったかな?」


(……カイザー? ドドンパが言っていた『聖刻の円卓』の……。ガードはパラディンだな)


「その子達と倒した際に冒険譚の話をしたのだよ。少し離れた場所まで4人で真核を蹴ったのだ……」


「真核を運び、ワシはボスで落ちた素材を冒険譚通りに被せようとしたらね、


現実での趣味は何かと聞かれて、ゲートボールだと答えると、骨の素材を取り出しゴールポールに見立て3箇所建てた」


「ここに向かってそのスティックで打って通せと言うので、言う通りにしたのだよ」


「それは……僕たちと同じようにしっかりと環境を作っていたと……」


「そうなるな。彼らとはそこでお別れしたが、町に帰り生成とやらをするとこうなったのだ」


僕は息を呑む。


掲示板ではようやく「供物」だの「儀式」だのと言い始めている段階だ。


だが、彼らは直後の時点で、ここまで正確な「デザイン」を行っていたのか。


「掲示板ではようやく辿り着いている内容に近いです、少し進んでいる状態だ。もしかしたら彼らはもう僕と同じようにしっかりとした環境ログを植えているかもしれませんね」


「ほっほ……かもしれぬな。でも君のようにろぐ? を詳細に見て、ましてやろぐの移動はできんのだろう?」


「そうですね、観測士のスキルがなければ詳細なログ操作はできないでしょう。ですが……それはいつのことですか?」


「リリース4日目とかだったかな」


脅威だ。


彼らは僕とは違うアプローチで「正解」に近づいている。


「さて、そろそろ戻らないと妻に怒られるのでな。失礼するよ」


「あ、お疲れ様です」


ジィサンはログアウトしていった。


---



入れ替わるように、ドドンパが戻ってきた。


「おう、ジィサン落ちたか?」


「ああ。……ドドンパ、ジィサンのステータスを見たか?」


「いや? まだ見てないけど……なんかあったか?」


僕はジィサンの異常なSTR値と、武器の特性について説明する。


ゲートボールの動きを再現した「3点特攻」。


対象を3つ指定することで、爆発的な火力を生み出すロジック。


「マジかよ……。僧侶でSTR極振りとか、ロマンありすぎだろ」


「だが、その動きには癖がある。今のままでは対人戦で当てるのは難しいかもしれない」


「なら……俺のタクトでサポートできるんじゃねぇか?」


ドドンパが提案する。


「俺の予兆ラインでジィサンの攻撃軌道をガイドして、お前の観測で死角を埋める。……これ、最強の砲台ができるぞ」


「……なるほど。悪くない」


僕の脳内でシミュレーションが走る。


ジィサンの火力、シロロの殲滅力、ドドンパの指揮、そして僕の観測。


これなら、あの『カイザー』率いる攻略組とも渡り合えるかもしれない。


「そのためには、もう少し詰めが必要だ」


「詰め?」


「ああ。……スライム長老に会いに行くぞ」


「は? スライム長老って……あのぽよんが媚び売ってた?」


「そうだ。第5エリアでの強化を考えていたが、予定変更だ。クラン戦を考え、カイザーなんとかと絶対防御を突破するための策として、アレが必要だ」


「……お前、またろくでもないこと考えてるだろ」


「失敬な。……正解を導き出しに行くだけだ」


僕は杖を握りしめる。


次なる強化のピースは、あの霧の向こうにある。


ジィサンの武器の真実とカイザー率いる攻略組の実態


ジィサンの話を聞いて直感で作る彼らの正体とは……。


〜次回予告〜

34話の予定通り8:00に36話投稿します!!

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