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第34話:観測者、掲示板の考察と社内に潜む「カワイイ」の正体を特定する



◇ 第1エリア 街外れの一軒家前


SPスキルの習得を終え、僕たちは家を後にした。


「婆さーん、爺さーん、アンジュー! またなぁ!」


「にゃーお♪」


ドドンパが大きく手を振ると、アンジュが嬉しそうに鳴き返す。


一方、婆さんはまだ箒を構えたままだ。


「お前、これから大変だぞー。NPCに喧嘩売るなよもう」


「効率を考えてやらねばいけなかったんだ」


僕は肩をすくめる。


NPCとの友好度など、必要なフラグさえ立てばどうでもいい。


「はぁ……。みんなにも教えとかなきゃな。【大跳躍ハイ・ジャンプ】の正規入手ルート」


ドドンパがクランチャットへ書き込みを始める。


今日も色々なことがあった。


借金をチャラにし、粗悪品フェイクを作り、ジィサンを勧誘し、婆さんに嫌われた。


……疲れたな、なんか。


(……ログアウトして、今度こそマグロの煮付けを)


「そういや、クランイベントそろそろみたいだぞ。今週末情報出るっぽい」


「僕はあまり興味ないんだけどな」


「とか言って、結局ムキになるの目に見えてるわ」


ドドンパがニヤリと笑う。


確かに、報酬次第では動くかもしれない。


「……。攻略組って実際どうなんだ」


「んー、有名どころで言うと、『聖刻の円卓セイクリッド・ラウンド』ってクランだな。なんつったかな、『カイザーライトニング』って名前のやつがリーダー」


「フッ、厨二病だな」


「おまっ……。そうだな。でも初の特殊職業達成者とかって聞いたけど」


「ほう、なんてやつだ?」


「『時空剣士』だったかな。あとはサブリーダー的なので特殊職業『パラディン』」


「そうなのか。厄介そうだが、シロロがいれば問題なさそうだが?」


シロロの『可愛くない判定(超火力)』があれば、大抵の敵は沈むだろう。


「まぁ始まってみないとわからん、会ったことないし」


「そうか。とりあえず今日は遅いな。もう落ちるよ僕は。また会社でな」


「おう、お疲れ」


◇ 現実 イオリの部屋


ヘッドギアを外し、現実へ帰還する。


「ふぅ、飯食べるか。待たせてるしな」


電子レンジの音が鳴る。


チンッ♪


「待たせたな、マグロの煮付け」


温め直した煮付けと白飯。


食べながら、僕はコンパニオンアプリで掲示板をチェックする。


——【掲示板】——

【スレッド:伝説の職人『k』 Part9】

 1:名無しの冒険者:ID:mrisasu98 /xx月xx日 (金) 18:30

 > >んで? ダメだったんだろ? 乗り込んでさ。結局真核に何をすればいいんだ?

 > >

 2:名無しの冒険者:ID:vet_05

 > >>1 うん、追い返された。本人にあったけどスキル使ってきやがった。

 > >

 3:名無しの冒険者:ID:nudist09

 > >草。認めたやつしか見せない頑固職人か。

 > >

 4:名無しの冒険者:ID:irritated01

 > >でも、武器からしておかしかったよ。ペンだったし意味わからん風出てた。

 > >

 5:名無しの冒険者:ID:jyounannjima98

 > >>1 なんか真核ドロップしたら儀式するらしい。取得する前の一時間の行動でってのがミソ。

 > >エネミー100倒す→ユニーク倒す→取得でエネミーを倒すまでの行動だったわけじゃん。

 > >てことはだ?

 > >

 6:名無しの冒険者:ID:ukiukiya44

 > >>5 あああ、討伐記録だけじゃなくすればいいんや。3週間経ってようやく情報でたんかよ。

 > >攻略組ずるいって。

 > >

 7:名無しの冒険者:ID:nudist09

 > >>5、6 なるほど、強いエネミーの真核をすぐに取得しないで儀式ってそゆことw

 > >素材のお供えすればいいんやな。

 > >

 8:名無しの冒険者:ID:jyounannjima98

 > >そゆこと。試しに作ったけど、STR+15に第2エリアのボス素材周りに置いたら剣筋に残像残って、それにも判定ついた。

 > >

 9:名無しの冒険者:ID:mrisasu98

 > >>8 チートやんけ。属性UPとかSTR強化+VIT強化とかじゃない効果ってボス真核のみかと思ってた。

 > >

 10:名無しの冒険者:ID:jyounannjima98

 > >>9 そそ。でも俺より強い武器持ってるやつ結構いるぽい。第4エリアでガキンチョが意味わからん位敵集めて攻撃喰らわずに殲滅してたぞ。

 > >

————————


「フッ、その武器は僕がデザインしたんだ。強いに決まってる」


僕は煮付けを口に運びながら呟く。


「まだ、本当の所に気づいてはいなさそうだな……供物だけでできる訳がない……」


——【掲示板】——

 11:名無しの冒険者:ID:nudist09

 > >>10 それが魔王kの作ったやつでしょだから。

 > >じゃ結局蹴りは?

 > >

 12:名無しの冒険者:ID:crown80

 > >>11 環境の変更だね。取得しないように足で移動させたんだろ。

 > >それで供物捧げてエネミー討伐時の行動上書きするくらいの時間置けばいいのでは?

 > >

 ————————


 「……。やはりバレてるな」


だがいい。その程度の情報なら。


 今日作った『粗悪な真核』は、現環境ではかなり強くなる。


 それが市場にとっての『正解』として流布されれば、僕たちの本質オリジナルは守られる。


 問題は、あの真核で作った武器に『k』が付くかだが……。


 「あいつらが僕と同じクランな事を証明できればいい。クラン作成時にもらった『CAバッジ』があるな。ステータスの開示は必要ない。ぽよんにクランメッセージでいつ配信できるか聞いておくか」


 僕はアプリを開き、メッセージを送る。


——【Chaos Atelier】——


[イオリk]:>ぽよん、配信はいつ可能だ?

[魔王ぽよん]:ぽよ〜! 今聞こうと思っていたのだ〜〜!

[魔王ぽよん]:言われた通りに人を集めればいいぽよ〜??

[イオリk]:ああ、『k』が真核を市場に流すと言ってくれ。

[ドドンパ]:俺らが広場で手売りすればいいんだよな。

[イオリk]:ああ。

[ドドンパ]:ぽよんちゃん、『k』と同じクランメンバーが売るから100%保証と付け加えておいて。

[魔王ぽよん]:ぽよ〜! わかったのだ〜!! 明日、水曜日配信の土曜開催でいいぽよ〜?

[魔王ぽよん]:ぽよん出来たら、おやつくれるぽよ??

[イオリk]:1万G分、買ってやる。僕自ら買ってやる。

[魔王ぽよん]:ぽよ〜〜〜!!! わかったのだ〜! 配信スケジュール事務所に連絡するのだ〜!


—————————————


「ぽよん、意外としっかりしてるんだな」


これでいい。マグロの煮付け、ラストスパートだ。


僕のデータに完全にインプットしてやる。


「……うまい」


遅めの晩御飯を食べ、シャワーを浴びて就寝した。


◇ 現実 都内某オフィス 翌日昼


翌日、慎二ドドンパと社員食堂で昼食を食べているときのことだ。


「慎二、僕は気づいてしまったことがある」


「なんだよ、改まって。お前の頭が厨二病だってことか?」


「何を言っている? 僕は厨二病ではない。違う、シロロだ」


「シロロちゃんがどうした。あっ、昨日のか? 『現実』ってやつ」


慎二の手が止まる。


「お前も気づいたか。どうやら僕の現実アバターを知っている口ぶりだった」


「やっぱそこだよなぁ。社内か? お前友達いないもんな俺しか」


「そんなことはどうでもいい。だが……。社内にいるカワイイモンスター」


「はっはっは……まさか……眞島ちゃん……?」


 慎二の顔色が少し変わる。


 広報部のエース、眞島ましろ。


 社内のアイドル的存在で、いつもフリフリの服を着て「カワイイ」を連呼している。


「あいつ、ぽよんの配信で『ましろぽよん軍』って名前でコメントしていた」


「まじか……あれってことは……フゥちゃんは……」


 僕たちは視線を巡らせる。


 少し離れたテーブルに、眞島ちゃんと、経理部の津島さんが座っていた。


 津島さんは真面目で地味な印象だが、デスクにいつも綺麗な石を飾っているのを僕は知っている。


「津島ちゃん終わった? ランチ行こ!!」


「ええ、今終わったわ。今日はどこにいくの?」


「んーとね! 今日はパスタ行こ!!」


「あら? あなた昨日の晩御飯カルボナーラじゃなかった?」


「聞いてないと思ってたのに!! 石ころいじってたじゃん!!」


「…………………………」

「…………………………」


 完全に一致。


 昨日のゲーム内会話と全く同じ内容だ。


「まじかまじかまじかまじか、リリース初日で一緒にPT組んだの後輩かよ」

 慎二が頭を抱える。


「待て待て待て、有給バレてるだろ」


「やばい、向こうは気づいてるぞ流石に」


「ああああイケメンキャラなのに俺!! まっずい!!! ああ!!」


「だから、デフォルトでいいと」


「お前は分かってない!! 見た目ってのはモチベなんだぞ!! あああイケメンが崩れるううう」


「誰も、灯台男をイケメンと認識していないぞ」


「血も涙もないな、お前………」


 慎二は明らかに肩を落とし、項垂れている。


 外見ガワがそこまで大事か…?



 午後、慎二は使い物にならなかった。


 デスクでため息をつき、「俺のイケメンが……」「魔法使い(物理)が……」とブツブツ呟いていた。


 仕事は早いのに、メンタルが豆腐すぎる。


 定時後。


 僕は珍しく慎二に声をかけた。

 

「……慎二、帰るぞ」

「おう……」


 会社の近くのコンビニで、2本に分けられる棒アイスを買った。

 スーツ姿の男二人が、公園のベンチに座り込む。


 パキッ。


 アイスを割り、片方を慎二に渡す。


「……ほら」

「おう、サンキュ」


 慎二はアイスをかじり、夕焼け空を見上げた。


「……はぁ。まさかなぁ。あんな近くにいたとはな」

「世界は狭いな」

「全くだ。……でもよ、なんか笑えねぇか?」


 慎二が少しだけ笑う。


「ゲームリリースからたった3週間だぜ?」


「俺たち、草原でウサギ追いかけて、霧の中で迷子になって、火山で熱中症になりかけて……今じゃ魔王と勇者と、会社のアイドルと同じクランだ」


「……カオスだな」

「違いない! はははは!」


 慎二が大声で笑う。


 僕もつられて、小さく笑った。


「……フッ」

「なんだよ、スカしてんなぁお前は」


 慎二が呆れたように笑い、ふと夕焼け空の向こうへと視線を向けた。


 見上げると、そこには『SGH』のロゴが鈍く光る巨大な高層ビルがそびえ立っていた。


「……なぁ、あの企業って俺らの超親会社だよな。すめらぎグループ」


「ああ。世界規模のITやインフラ、金融まで牛耳る『世界の血管』だ。見えてるあのビルも、あんなにデカいのに本社じゃないけどな」


「ヤバすぎだろ。社長ってどんなやつだっけ?」


「さあな。だが、実権を握っているのは社長じゃなくて会長だったはずだぞ」


「へえ……雲の上の連中は何考えて生きてるんだろうな」


 慎二が別世界の住人を想像するようにぼやき、アイスをかじる。

 僕には関わりのない、遠い世界の話だ。


「うるさい。……アイスが溶けるぞ」

 

 僕たちはアイスをかじりながら、並んで座りながら黄昏た。


 現実ここも、あの世界も、悪くない。

 そう思える程度には、今日はいい夕暮れだった。


第34話いかがだったでしょうか?


ついに気づいてしまいましたね。

男性陣、女性陣とどちらも気付いていながらこの先黙ったままなのでしょうか……?


会社員が帰りにアイスを買って……遅い青春シーンでした!


そして奥に見える大企業『SGH』

確かにどんな、生活を送るんでしょうか…大企業の社長さん達は。


ここまでお読みいただきありがとうございました!


〜次回予告〜

2/12 8:00にあげます!!


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