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第32話:観測者、粗悪な正解(フェイク)を量産し、大投資家へ巨額のオファーを投げる



◇ 第4エリア グレアマイン ボスエリア


 巨大な水晶の巨人が砕け散り、光の粒子となって霧散する。


 無機質なファンファーレと共に、システムウィンドウがポップアップした。


【VICTORY】

討伐対象:クリスタル・タイラント


【リザルト】

獲得経験値:xxxxx EXP


ドロップアイテム:

・クリスタルガラス ×12

・砕けた鏡面装甲 ×5

・クリスタル・タイラントの真核 ×4


「ええええ! 落ちたぞ!! 真核や!! ウッホーーー!!!」


 ドドンパが猿のように叫び、ドロップ品を指差す。


「ミツルマン君の時と違って、討伐時の直接ドロップだね!!」


 シロロも目を輝かせている。


「ああ……この暴君みたいにゴツゴツしてるのに、なんて綺麗なクリスタル……。

 私これ、クランの自室に飾るわ……」


 フゥはウィンドウ操作もせず、地面に転がる真核の一つを拾い上げ、

 うっとりと頬擦りを始めた。


「ええ!? 拾っちゃうの?! 生成しないで?! イオリ君いいの?!」


「まぁ、いいだろう。フゥだぞ。

 鉱石系ボスの真核を保存用にするのは、想定内だ」


 肩をすくめる。

 彼女にとって石は装備素材ではなく、愛でる対象だ。

 戦力ダウンだが、モチベーション維持費と考えれば安い。


「まぁそうか」

「そうだね、フゥちゃんだもんね」


 二人も納得したように頷いた。


「二人とも。こいつを使いたいか?」


 問いかけると、ドドンパが顎に手を当てて考え込む。


「俺のタクトに使えるなら……攻撃予測ラインに岩を配置するとか?」


「不可能ではないが、破壊される可能性が高い」


 首を横に振る。


「次のエリアは予測済みだ。

 そこで僕が設計する。今回は金(G)にしろ」


「うーん、ゴツゴツしてて可愛くないからいらなーい!」


「そうだな。シロロも今、作るものはない」


 地面に残った三つの真核を見下ろす。


「だが、まだ拾うな。蹴るぞ。そして適当にデザインする」


「「適当?!」」


 二人の声が重なった。


「イオリが……適当に……?」

「何か悪いもの食べた? 腐ったマグロ?」


「チッ……僕を何だと思っている」


 眼鏡の位置を直す。


「隠蔽に使う。

 勇者の時と同じように、真核に『k』を刻むが――粗悪品だ」


「つまり、ちょっと良いくらいの出来のフェイクを作るってことか?」


「察しがいいな。そうだ」


 口角を上げる。


「本物は見せない。

 市場に流すのは『高性能だが理解の範疇』の品だ。

 そのための、ジィサン勧誘だ」


「真核のまま売るの? 生成してから?」


「第1エリアボス『マッスルラビリット』の素材はあるか?

『剛兎の毛皮』だ」


「懐かしいな。まだあるぜ」

「私もあるよ! 毛皮なのにゴツゴツしてて可愛くないから一回も使ってないけど!!」


 フゥは真核に頬擦りしたまま、無言で毛皮を差し出してきた。

 話は全部聞いているらしい。


「それでいい。

 ……第5エリアの開通を済ませてから蹴る」


 僕たち三名+一名(頬擦り継続中)で最奥の石碑に触れる。


 ピロン♪


『第5エリア:グラキエス・ロタ・チェンバーへの通行権限が付与されました』

『※現在、エリア開放準備中です』


「……よし。認証確保だ」


「おい、ぐら……ぐらでぃえいたー?」


 ドドンパが盛大に舌を噛みかける。


「グラキエスは『氷』でしょ?

 ピアス買った時に説明された! すっごい可愛いの!」


 即答するシロロ。


「その通り。次は氷だ。

 ……名前が安直すぎる。答えが書いてある」


「氷……!

 玄武岩……極寒の火山島……白と黒のコントラスト……尊い……

 氷晶石クライオライトもあるかも……」


 フゥのスイッチが入った。


 ため息を一つつき、来た道を引き返す。


 コツン。

 コツン……。


 真核を蹴る音。

 いい音だ。だが今回は、魂を込めない。



◇ 第4エリア グレアストーンの巣


「ここでいい」


 エリア中腹の、グレアストーン密集地帯。


「こいつらは光を吸収し、攻撃時に体内反射させて正拳突きを放つ。

 STR上昇と光属性を混ぜれば、それなりのログになる」


 グアアア!

 ピカピカピカ!!


 発光する鉱石ゴーレムが姿を現す。


「眩しっっ!! ブサイクだねこの巨人さん達」


 シロロが顔を覆う。


 僕は二人分の真核を足で寄せる。


「正拳突きに合わせ、断崖写本杖で弾き、衝突ログを刻む。

 仕上げに『剛兎の毛皮』を被せて取得」


「適当でいい。身代わりだ」


「ぽよんに配信で人を集めさせろ。

 お前達が『kが作った真核』として売る」


「うわー、悪徳商人」

「顔が悪そうだよイオリ君」


 シロロがラメを振りかける。


「……」


「よし! 浄化完了!」


「……やるぞ」


 僕は短く告げ、前に出る。


「「はーい」」


「はぁ……藍鉄鉱もあるといいわ……」


 フゥは近くの岩場に腰を下ろし、インベントリから大量の鉱石を取り出すと、

 掘削機で削り始めた。完全に自分の世界だ。


「……来るぞ! 灯台!」


「おうよ!

《風導戦術タクト(エアロコンダクター)》

スキル【濃霧予兆フォグ・オーメン】!」


 ドドンパが指揮棒を振るう。

 同時に風が巻き起こり、霧が流され、巨人の拳にまとわりつく。


 攻撃前。

 ピンク色のラメがラインとなり、軌道を表示した。


 ――攻撃予測スキル。


(……本当に使い勝手がいい)


「そこだ!」


 グォンッ!!


 光る拳が迫る。

 僕は杖をフルスイングし、地面に置いた真核を弾き飛ばした。


 ガキンッ!!


 真核と拳が衝突し、硬質な音が響く。

 真核は大きく弾かれ、宙を舞った。


「記述。『衝撃インパクト』」


 空中で杖を振り、真核に追加ログを刻む。


 ――雑だ。

 だが、それでいい。


「物理攻撃力」と「光属性」のログが、適当に混ざり合っていく。


「……今日の晩ご飯なにー?」


 シロロが宝石をチャージしながら、呑気に聞いてくる。


「俺はラーメンかな。こってりしたやつ」


 ドドンパが次の予兆を出しながら答える。


「私はパスタがいいなー。カルボナーラ!」


(……僕はマグロの煮付けだ。

 味、染みてる頃だろうな。

 というか、さっき腐ったマグロとか言ってなかったか?)


 内心でツッコミを入れつつ、杖を振り続ける。


「よし、シロロ! やれ!」


「はーい!

 可愛く綺麗に散って! えーい!」


 ドガガガガガ!!

 ドッカーーーーン!!


 宝石の礫が、巨人を粉砕した。


「ひぃ……なんか威力上がってきてない?」


 ドドンパが呆れた声を出す。


 戦闘終了。


 僕は転がる真核に近づき、用意していた『剛兎の毛皮』を被せる。


 観測士スキル:

詳細観測ディープ・スキャン


 対象:真核(仮)


 ログ:

【打撃】

【光反射】

【筋肉兎】


 ――定着確認。


「……よし、ログは付いている」


 毛皮に包まれた真核を拾い上げる。


 中身は、

 ボス真核+ボス素材+モブ行動。


 外見は、ただの毛皮の塊。

 性能も「そこそこに強い」程度へと収束しているはずだ。


「これが、今回の『正解』だ」



混沌工房カオス・アトリエ


 エウレカに戻った僕たちは、クランホームへと入った。


「ぽよ〜〜!! 待ってたのだ〜〜!!

 おやつは〜〜?!」


 魔王ぽよんが飛び出してくる。


「……後でシロロに貰え。それより仕事だ」


 僕は三人に、販売計画を指示する。


 ぽよんの配信で集客。

 ドドンパとシロロが「kブランド」として、この“そこそこ”の真核を売る。


 ――世間はこう思うはずだ。


「なんだ。kブランドって言っても、この程度か」


 それでいい。

 油断させればいい。


「さて……」


 時刻は22:20。

 冒険者端末のリストを確認する。


 ジィサンのステータスが、

 **【オンライン】**に変わった。


「……来たか」


 端末を開き、メッセージを作成する。

 孫の話をする場ではない。


 これは――ビジネスだ。



[受信者:ジィサン]

[件名:Chaos Atelier 筆頭株主へのオファーについて]


「ジィサン。

 お話があります。


 今から、どこかで会えませんか?


 単刀直入に言います。

 僕たちのクランの『筆頭株主』になって欲しいのです」


 送信。


 ――1秒後。


 即レス。


 ピロン♪


[差出人:ジィサン]

[件名:Re: Chaos Atelier 筆頭株主へのオファーについて]


「場所は第1エリア。

 君と初めて出会った断崖にて待つ。


 資料データを持って来い。

 ――話を聞こうか」


 第1エリアの断崖。


 僕が最初に真核を蹴り落とし、

 すべてが始まった場所。


 そこにいるのは、

 「ほっほっほ」と笑う好々爺ではない。


 数十年、相場を生き抜いてきた――

 投資家としてのジィサンだ。


「……フッ」


 武者震いにも似た感覚を覚えながら、席を立つ。


「行ってくる。

 ……本当の商談だ」


第1エリアのボスの素材を**そこそこの体現**に使わせました。

無駄な素材はないというイオリの概念に基づき今後も出てきた現実にもあるアイテムは話に出てくる可能性が高いです!!


次回、

ほっほっほが無いジィサンとの商談戦。


〜次回予告〜

ストックがないため未定です泣


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