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第29話:観測者、震える心臓を蹴り、轟音のプレスで「耳」を澄ます



◇ 第4エリア グレアマイン深部


ズズズズズ………ドドド……


大地の唸りと共に、黒い流動体が襲いかかる。


「記述。『衝撃ショック』」


ズンン……。


杖の一撃が、波打つ表皮の「振動の節目」を正確に貫いた。


ぽーーーんっっ


間の抜けた音が響き、巨大な振動種のエネミーが弾け飛ぶ。


「……派手に出てきているところ悪いが、もうお前のデータは取れたんだよ」


僕は飛び散る粒子を無感動に見つめる。


数時間の戦闘(作業)の末、ようやく「当たり」が出たようだ。


地面に転がったのは、黒く明滅する拳大の結晶体。


『バイブロ・エンペラーの真核』


ズズズズ……


「……真核まで揺れてるのか、こいつは」


結晶自体が微細な振動を繰り返し、地面の砂利を弾いている。


まさに、僕が求めていた「生きた振動源」だ。


「さぁ、行こう。記録デザインの時間だ」


僕は杖を背負い、震える真核の前に立つ。


誰にも邪魔されず、たった一人で「至宝」と向き合う時間。



コンッ。


爪先で軽く蹴り出す。


ブルブルッ!


「……ッ」


蹴った瞬間、真核が予期せぬ方向へ跳ねた。


自身の振動が回転に干渉し、不規則な軌道を描く。


「……ふっ。ブルブル震えているせいか、コントロールが面倒な奴だな」


だが、そうでなくては面白くない。


僕は杖を抜き放ち、空中に素早い記述を行う。


「記述。『微風ブリーズ』・補正」


ヒュンッ。


風の壁を作り、逸れそうになった真核の軌道を強引に修正する。


ドンッッ。


再び蹴る。


振動と回転、そして風圧。


全ての変数を計算し、目的地への「最短ルート」を描く。


ドドドンッ。


カカカ……(小石が落ちる音)


誰もいない鉱山の底で、乾いた音だけが響く。


心地よい緊張感。


僕の心拍数は、計算通りに上がっていた。


ドンッドンッ。


「……着いたか」


僕が辿り着いたのは、無数の穴が密集し、絶えず地鳴りが響くエリアの最奥。


通称「振核の断崖バイブロ・クリフ」。


上空の崖からは、エネミーの生態活動による落石が雨のように降り注ぐ「不可侵エリア」。


そして、その岩壁から染み出した水が、振動によって白く泡立ちながら落ちてくる場所。


「……また、断崖か」


自嘲気味に笑うが、条件としてはここが最適解だ。


ここはより深く、より危険な「正解」を記録するための録音スタジオだ。


僕はインベントリを開き、素材を展開する。


・『バイブロ・エンペラーの真核』

・『導水根』(第2エリア採取)

・『黒曜石』(第3エリア採取)

・『沸石ゼオライト』(フゥからの押し付け品)

・『透明な樹液』(在庫品)


そして、ここに来る道すがら、バザーで購入しておいた追加素材。


・『鉱泥ジェル』×10


このエリアの希少鉱猫ミネラル・キャットからドロップする素材だ。


高かったが、衝撃吸収材としてはこれ以上のものはない。


「……始めるぞ。製造フロー、【振動圧着と共鳴の儀】」


【STEP 1】仮組み:チキソトロピー効果の利用


まずは、真核に「外殻」の記憶を植え付ける。


僕は『黒曜石』の薄い板を取り出し、その表面にドロリとした『鉱泥ジェル』を塗る。


「……一層」


その上に、また黒曜石を重ねる。


「……二層」


黒曜石の硬度と、ジェルの粘性。


これを何層にも重ねることで、ミルフィーユ状の「複合装甲」の雛形を作る。


普通に重ねただけでは剥がれるが、ここは「振動地帯」だ。


「……記述。『液状化リキッド』」


僕が軽く衝撃を与えると、ジェルが振動によって一時的にサラサラの液体へと変化する。


チキソトロピー現象。


振動を与え続けることで粘度が下がり、黒曜石の微細な傷や隙間にまでジェルが浸透していく。


「……いいぞ。分子レベルで噛み合え」


【STEP 2】配線接続:神経ケーブル


次に、信号を伝える神経を通す。


僕は崖下の滝壺から、白く泡立つ水を汲む。


共鳴水レゾナンス・ウォーター


マナを含み、振動伝達率が異常に高い水。


「……吸え」


僕は『導水根』を共鳴水に浸す。


根は瞬く間に水を吸い上げ、パンパンに膨張し、生きているかのように脈動を始めた。


僕はその根を、積層黒曜石の隙間に血管のように這わせ、先端を『沸石ゼオライト』の穴に差し込んでいく。


振動で液状化したジェルが、根を優しく包み込み、パッキンのように密閉していく。


完璧な防水加工シーリングだ。


【STEP 3】核移植:心臓コア


仕上げに、仮組みした素材の中心に窪みを作り、震え続ける『バイブロ・エンペラーの真核』を足でセットする。


ガチッ。


「……まだ固定は甘い。システム上は『別々のアイテム』判定だ」


このままでは、ただ素材を並べただけ。


真核に「これが私の肉体だ」と誤認させ、一つのアイテムIDとして統合させるには、強烈な外的負荷プレッシャーが必要だ。


「……仕上げだ。環境負荷による、振動圧着プレス


【STEP 4】環境負荷:ログの圧着


僕は仮組みした素材一式を持ち、崖の方へと歩き出す。


ドガガガガガ!!


ズドォォォォン!!


上空から、大小様々な岩石と、エネミーが発する衝撃波が雨あられと降り注ぐ。


即死級の危険地帯。


「……ここだ」


僕は観測眼アイを開く。


無数の落石と衝撃波が交差する中で、**「衝撃波の密度は最大だが、物理的な岩石は当たらない」**という奇跡的な一点ポケットを見極める。


「……座標固定ロック


僕はそのポケットに、素材一式を滑り込ませた。


そして僕自身は、安全圏の岩陰からその様子を観測する。


「……来い」


ドゴォォォォォ!!!


直撃。


素材の直上で巨大な岩同士が衝突し、砕け散る。


その瞬間に発生した凄まじい「純粋な衝撃波ショックウェーブ」だけが、素材を垂直に押し潰す。


グググググッ……!!


「……いいぞ」


物理的な打撃なら壊れていただろう。だが、これは「圧力」だ。


音圧と風圧が、仮組みされたパーツを無理やり一つの塊へと圧縮していく。


黒曜石が軋み、液状化したジェルが硬化し、真核が素材の奥底へと完全に癒着(メリ込)していく。


「……馴染め」


外部からの破壊的な振動。


内部の真核の振動。


その二つが、極限状態で共鳴シンクロする。


この激しい振動の中で「壊れずに形を保った」という事実。


そのログこそが、後で生成される防具に「絶対的な振動耐性」と「共鳴探査機能」を焼き付ける。


「……壊れるなよ。僕の計算デザインは完璧だ」


カッッッ!!!!


数分後。


極限の圧力に晒された真核が、一際強く輝いた。


周囲の素材ごと、その形状を「記憶」した証だ。


観測ログ:環境負荷試験クリア / 形状記憶完了


ログ・キーピング:【振動圧着・複合装甲】


光が収束する。


そこには、無骨な黒い塊と化した素材群と、その中心で「ドクン」と脈打つ真核があった。


完成品ではない。だが、最強の設計図ログを内包した「種」だ。


「……よし」


僕は岩陰から出て、その熱を帯びた塊を拾い上げた。


ずしりと重い。


だが、その重さこそが情報の密度だ。


「……帰るぞ。コンバージョン(孵化)の時間だ」


僕はインベントリに「未来の手甲」を放り込み、轟音の鳴り止まぬ断崖を後にした。


(……フゥがこれを見たら、また『石が悲鳴を上げてる』とか言い出しそうだな。

まあいい。悲鳴ごと武器にするのが僕の流儀だ)


最後のバイブロ・エンペラー出番奪ってごめん!!!


〜次回予告〜

ストックがないため未定です泣

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