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第27話:観測者、ブランドkを立ち上げーーたくない。

 

◇ 始まりの街 エウレカ


 僕たちは完璧な仕事を終え、エウレカへと戻ってきていた。


『勇者の剣』の生成コンバージョンが終わるのを待っている間、周囲の喧騒が心地よく響く。


「とーーー!」


 施設の前で、ミツルマンはまだ剣でもない『真核』を抱き抱えるように振り回している(?)


 微笑ましい光景だが、その手にあるのは爆発的なエネルギーの塊だ。危なっかしい。


「……あっ」


 フゥがミツルマンに近づく。


「その真核、少しだけ目に焼き付かさせて。……完璧な鉱石だわ」


「フゥちゃん石なら子供からでも取り上げるの?!」


 シロロがドン引きしている。


「あら、石に年齢は関係ないわ。あるのは探究石心。それだけ……」


「フゥちゃん後半ただの欲望じゃん……。……あれっっ! なんか既視感なんだっけ?」


 シロロが首を傾げる。


 そんな二人をよそに、ドドンパが小声で話しかけてきた。


「なぁイオリ。核生成コンバージョン施設もあるし、ジィサン達クランに誘わないか?」


「……。子供ガキの変数は制御できん。ウチには既にIQ3の魔王がいるんだぞ。同居させる気か」


「っぽい事言って前半だろお前は。ったく」


 ドドンパが呆れたようにため息をつく。


 そこへ、ジィサンがにこやかに戻ってきた。


「ほっほ、ミツルマンはワシの孫だよ。ワシは孫と遊びたい、孫は勇者になりたい。その願いが叶っただけで良いんだよぅ、ほっほっほ」


「ジィサン悪りぃ! こいつに後で花火かますから! 勘弁してやってほしい!」


 ドドンパが頭を下げる。


「どちらにせよ、12歳未満はクランの加入制限がかかるがな」


 僕が冷めた事実を突きつけると、ドドンパは目を丸くした。


「そんな設定あるのか……。まぁしょうがないか、どんな悪い大人がいるかわからないからな。お前みたいなのに捕まったら終わりだ。魔王kめ」


 僕は無視して、ジィサンに話を振る。


「ところでジィサン。まさか第3エリアのボスの真核を持ってくるとは思っても見なかったですよ。2人で倒したんですか?」


「ほっほ、あちらのお嬢さん方が朝から新エリアまでの開通? を付き合ってくれてのぉ。Gで冒険者を個人で雇って真核を狙うつもりだったんだがな?」


 ジィサンが人差し指を突き立てる。


「ボスを倒したついでに個人報酬? 称号と一緒にミツルマンの前に落ちてなぁ。そのままワシが打ちながら運んできたのよ〜!」


(……勇者補正か)


 やはり、持っている星が違うらしい。


 そうして僕たちは核生成コンバージョン施設の前に到着し、ジィサンとミツルマンは中へと入っていく。


「チート性能なのは間違いないだろ。俺ら個人の記録よりずっと濃いんじゃないか?」


「あの子供ガキには過ぎたオモチャだろうな」


「にしても……あの記録ログ使ってよかったのか?」


 ドドンパは気にしているのだろう。


 6億G相当の価値を持つ「英雄の凱旋ヒーロー・パレード」のログ。

 あれは僕の記録保持一覧より既に消滅している。


「ふん。金なんぞいつでも稼げる。僕が思う『正解』ではなかっただけだ」


「お前ぶきっちょ〜」


 煽りながら笑うこいつも魔王だ。


 その時、施設の扉が開き、まばゆい光と共にミツルマンが出てきた。


 どこから出したのか、いかにも勇者ですといったマント、サークレットを身につけている。


「ゆーーしゃ参上!! 魔王を倒す!!!」


 ビシッ!


 本人はかっこいいと思っているだろうポーズ。


 ……僕も子供の頃していたな。


 自嘲気味に笑いながら、僕は小さな勇者を観測する。


 いつも遮断されていた[暗号資産化]が外れているのは、PTを組んでいるからか。


「【詳細観測ディープスキャン】」

 

——【Log】——

【対象: ミツルマン】

・職業: 戦士・記録派生 特殊職業『勇者(少年)』


【ミツルマン専用 名称:輝石の勇者剣・凱旋k(ヒーロー・パレードk)】

 ・種別:[片手剣 / 鈍器判定あり]真核武器

 ・ランク:ログデザイン級(勇者)

 ・製作者:ミツルマン

 ・ATK:+25(+音圧補正により変動)

 ・属性:光 / 雷(圧電) 変換 火


 [ログ構成]

 ・『ヴォルカニック・タイドの真核』

 ・絶縁の心

 ・英雄変身電圧

 ・英雄の凱旋(外部記録保持)

 ・主役の輝き

 ・ファントム・ヘイズ

 ・祖父乃庇護おじいちゃん・バリア


 [固有パッシブ]

 ・ 音波入力:音によるエネルギー変換。叫べば叫ぶほど、ATK上昇 MAX200%

  ※推奨ワード:「とぉー!」「負けるかぁ!」

 ・勇者パワー:注目度ヘイト特大UP+物理回避率50%上昇(2分)

 ・祖父之庇護:HP30%以下で光学バリア自動発動(戦闘1回)

 ・ 炎属性変換:音声認識 火山湖獣 ヴォルカニック・タイドの炎は剣に宿り、湖は鎮火させる。 

 ※推奨ワード :「炎よ宿れ」 「炎よ静まれ」

 ・絶縁の勇気 :精神干渉無効


 [隠し効果]

 ・勇者の休息_五時鐘_:基礎ステータス以外の全能力が17時以降大幅ダウン 9時より「勇者」覚醒

 ※公式コンパニオンアプリ プレイヤー選択画面より

 [ペアレンタルコントロール]お子様設定の変更で解除されます


【フレーバーテキスト】

「1,999人の熱狂、鉱山の反響、魔王の加護、そして老人の愛。

 全てをデータとして記録し、物理法則で編み上げた『作られた奇跡』。

 黒いカラスが鳴く頃、勇者は休息する。

 少年よ、その剣を握れ。君が信じる限り、それは魔法のような物理現象となる」

 ――ある観測者の記録より


———————————



 剣を振るうたびに、ヒュンッではなく、

 キィーン……カシャァン!

 という「光剣ライトセーバー」のような効果音が鳴り響く。


 子供心をくすぐる完璧な仕様だ。


「……凱旋kとはなんだ」


 ドドンパ達が僕のウィンドウを覗きに詰め寄ってくる。


「ちょ、ぷっ…凱旋kってお前ぷぷっ」


 ドドンパが吹き出す。



「かっこいいわね、雷と炎と圧……。

 雷と圧……これは『電気石トルマリン』の圧電効果ね。

 叫び声という音圧を電力に変えて、さらに炎熱を加えることで

『パイロ電気石』のような熱電効果も発揮している……。

 素晴らしい鉱石的循環だわ」


 フゥが一人で納得し、うっとりしている。



「かーらーすーなぜ鳴くのー」


 シロロが隠し効果を見て歌いだす。


(……ペアレンタルコントロールだと?

 凱旋kはひとまず置いとくとして、隠し効果にそんな機能が付くのか)


「……能力は確かにおかしいが、子供仕様だな」



「ほっほっほ! 素晴らしい! これなら孫も安心して冒険できるわい!」


 ジィサンが感極まった様子で、僕の手を握りしめる。


「イオリk君、いやk君。本当にありがとう。

 君のおかげでワシは孫を……間接的にも守ることができる」


「ありがとう! kおじさん!!」


 ミツルマンが満面の笑みで剣を掲げる。


「……」


(僕はおじさんでもなければ、kおじさんでもない)


「ぶはははは! 感謝されてるなー、kおじさん!」


 ドドンパが腹を抱えて笑う。


「そういえば……その k ってなんなの?」


 シロロが首を傾げる。


「ああ、こいつがキャラ作成の時にミスって入力したんだよ。一生背負う十字架だ」


「えー! うけるー! ダサかわいー!」


「……ミツルマン君、その剣でちょっとそこの鉱石を切ってみてくれない? 断面図を見たいの」


「いいよー! とぉー!!」


 フゥはブレない。


「ほっほっほ。それにしても見事な手腕じゃ。

 これならいっそ……『真核設計ブランドk』でも立ち上げてはどうかな? ほっほっほ」


 ジィサンが恐ろしいことを言う。


 ブランドk……? 冗談じゃない。


「早く使いたいー!! 爺ちゃん行こうー!!」


 ミツルマンが騒ぎ出す。


「おっ、俺も行くか! 第4エリア、まだ探索し足りねぇしな!」


「私は行くわ。……断面、断面……」


「私はぽよん様の配信見てくるから落ちるねー! お疲れkおじさん!」


 それぞれが自由に行動を開始する。


「……僕もやることがあるので、解散しよう」


 僕は一人、その場に残った。


 ぽよんか……。


 彼女の真核設計も練らなければならないが、ストリーマーだし僕たちの様にずっといるわけでもない。

 それに第5エリアからは僕も未知の領域だ。


 僕は自分の身体を見る。


 予測外のタスク続きで、防具がバザーで売られていたその場しのぎのままだ。


 他所の真核設計なんて、ぽよんで最後だ。くそ。


 第4エリアは定点カメラが少なかった。

 あのエリアの観測をしつつ、僕の防具も片付けるか。


 フゥの能力も考慮しなければならない。


 地形理解をせねば、彼女に毎度「できるか?」と聞くはめになる。


 僕の地形理解を高めて、彼女の「正解」の幅を広げる……か。


「……まずは、形成する素材を仕入れるか」


 僕がリリースまで365日見てきたLIVEから観測してきたデータを脳内で呼び起こし、思考する。


 受信機役レシーバーはこれでいい。


 僕は冒険者端末のインベントリを開き、アイテムを取り出す。


 手には、フゥから押しつけられた、40cm級の『沸石ゼオライト』。


 多孔質構造……電波や音波の吸収・吸着には最適だ。


 普段なら受け取らないが、ナイスだフゥ。


 発信機トランスミッターは……第4エリアはやはりデータが少ない。

 落盤ギミックの発生源、あるいは鉱石の共鳴ポイントの特定から入る必要があるか……。


 伝導ケーブル役は……森(第2エリア)のあの霧だ。


 湿地帯ならあるはずだ。『導水根』。

 水分を多く含み、電気を通しやすい植物の根。可能性は高い。


 絶縁も問題ないな。火山(第3エリア)に転がっているはずだ。

 そいつと『透明な樹液』でも使うか?


「僕の正解は僕がいれば良い、それはフゥの正解にもなる。さぁ、戻るか」


 そんなことを考えながら歩いていると、プレイヤーたちのヒソヒソ声が聞こえてくる。


「おい、イオリkじゃねあれ」


「魔王だ」


「なんかブツブツ言ってる、怖いけど感謝はしてるぜ……」


 口に出ていたか。


 僕はフードを深く被り直し、次なる観測へと歩き出した。


ミツルマンの隠し効果がハイライトでしょうか。


そしてようやく始まるイオリの装備制作……!笑

こいつ自分の作らなさすぎるけど先にやることの優先順位をつけていて

必要な時が来るっていう意味でもあります。


〜次回予告〜

ストックがないため未定です!

寝ます!

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