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第17話:装飾士、OLの勘で魔界に轟く蹴撃の噂を『観測』する

修正2/15 :タイトルの観測者、をシロロの装飾士に変更しました

 


 ◇ 現実 都内某オフィス


「おはようございま〜すっ!」


 カツカツカツっ!


 オフィスの廊下に、私のヒールの音が軽快に響く。


 今日は月曜日出勤です!


 受付の前を通ると、いつもの綺麗なお姉様方が揃って頭を下げてくれた。


 う〜ん、今日も制服の着こなしが完璧! 最高にカワイイ!


「わ〜おはようございますっ! 今日も可愛いくて目が溶けますね〜」


 私がニタニタしながら言うと、お姉様方は「もう、眞島さんたら」と笑ってくれる。


「はい〜! 可愛くワークっっ!」


 バチっとウィンクを決めて、私は自分の部署へ向かう。


 テンション上げていかないとね、月曜日は!


 オフィスに入ると、早速部長とすれ違った。


「あー! ぶちょー! おはようございます!」


「おう眞島。例の件頼むぞ」


「えへへ......善処します......」


 部長のしかめっ面も、私の笑顔で中和中和!


 自分のデスクに向かう途中、大好きな先輩を見つけた。


「先輩おはようございます!! そのバレッタ可愛いですね?! キラキラしてる!!」


「あら、気づいてくれた? これ新作なのよ〜」


「えへへ〜先輩わかってるぅ〜このこの!」


 肘で軽くつんつんすると、先輩も嬉しそう。


 よし、今日の私の「可愛いレーダー」も絶好調だ。


「あー! ミキちゃんおはよう!! うん、うん。......あー! この眞島に任せんしゃーい!」


 同期の子の悩みも可愛く解決!(したつもり!)


「ふぅ〜、今日も可愛く挨拶回りおわり〜っっと」


 デスクに到着して、私はくるりと回転椅子に座る。


 私は眞島まじま 真白ましろ、23歳!!! ピチピチのOLです!


 そして今は会社でお仕事中......。


 ダメダメ落ちるな私! さぁ〜お仕事お仕事!


 帰ったら配信もあるし...!!


 ふと隣の島を見ると、あの子がいつものように何かを凝視していた。


「津島ちゃーーんおーはよ!!」


「......あら、眞島さんおはよう」


 津島つしま 文華ふみかちゃん。私の同期で、少し変わった子。


 今日もデスクの端に置いたアメジストの原石を、うっとりした目で見つめている。


「今日もアメジスト可愛がってるね!」


「......そうなの、今日は一段と......この結晶の断層が......ブツブツ」


 相変わらずだなぁ。でも、そこが可愛いんだけどね!


「あれっ? 今日は先輩おやすみ? 外回り??」


 津島ちゃんの向かいのデスク。


 いつもなら、ちょっとうるさいくらい元気な種末先輩がいるはずなんだけど、今日は空席だ。


「......なんか今日は有給使っているそうで」


「えええっ?!」


 珍しい! あの皆勤賞みたいな先輩が!


「......あと矢田島さんも」


「ええ?!」


 斜め前の席、いつも眠そうな目でPCを叩いている矢田島先輩の席も空っぽだ。


(二人で有給? あれ? やっぱそうかなぁ......)


「そうなんだ〜、二人揃ってなんて仲いいね!」


 私は何気なく言ってみる。


「あっ今日ランチどうする?? オフィスの近くに美味しいカレー屋さんができたって聞いたんだけど、津島ちゃんどう??」


「......いいよ、12時でいい?」


「うん! 大丈夫! それじゃまた後でね!!」


 津島ちゃんは再び石の世界へ戻っていった。


 相変わらず石ばっかで仕事大丈夫かな?


 さーてやるか〜!


 私は同期に頼まれた仕事や、先輩が使う資料のチェックを行い、午前の仕事を可愛く(かつ迅速に!)こなしていった。


 12時。


 私は津島ちゃんと約束のカレー屋さんでランチに来ていた。


 店内はスパイスのいい香り! 内装もアジアンテイストで可愛い〜!


「ん〜っ! このバターチキンカレー、濃厚で最高!」


「......うん。ナンも焼きたてで、表面のパリパリ感が地層みたいでいいわ」


 津島ちゃんの独特な食レポを聞きながら、私たちは食事を進める。


 ふと、津島ちゃんがスプーンを置いて口を開いた。


「......そういえば、眞島さんごめん。こないだうっかりイオリ君達に、貴女と会社が同じだってこと......口が滑っちゃって」


「うん? いいよ〜?」


 私はラッシーを飲みながら笑う。


「イオリ君達というか、イオリ君は私に興味ないでしょ〜! 効率厨だし! 鬼だし! 人使い荒いし! 可愛くないし!」


「......ふふ、そうね」


「あっでねでね! こないだランチ行く時さ〜、なんか種末先輩と矢田島先輩がゲームのお話してて。ワールドなんだっけ......」


「......『World(ワールド) of(オブ) Arche(アルケ)』。隠された石を目指して......ね」


「後半願望じゃん!」


 津島ちゃんのブレなさに私は安心を覚える。


「やってるっぽいんだよね? しかもイオリってやっぱ......」


 私はスプーンで空を切る動作をしてみる。


 あのゲームの中での、冷徹で無愛想な観測士『イオリk』。


 そして現実での、無愛想で効率重視な『矢田島 庵』先輩。


「......まぁそうでしょうね。薄々気づいていたわ」


 津島ちゃんがあっさりと肯定した。


「昨日もクランホーム内で有給だと言っていたしね。私も気になっていたわ」


「えっ?! 知ってたの!」


(石以外の事にも一応興味あったんだ! 良かった!)


「......まさか二人と同じ会社で、しかも4人でクラン組むなんてねぇ〜」


 私は改めて、この奇妙な縁に驚く。


 ゲームの中での『カオス・アトリエ』。


 現実での『同じ会社の先輩後輩』。


「向こうは気づいているのかな?」


「......イオリ君は興味なさそうだから、気づいてないよきっと」


「そうだよね〜」


 あの人は、画面の中の数値ログ以外、何も見てない気がするもん。


(私達は気づいてしまった。にしても先輩イオリ......まーんまだなぁ。ふふっ)


 私たちは顔を見合わせて笑った。


 この秘密、いつまで隠し通せるかな?


 ◇


 午後の仕事も可愛く(定時ダッシュのために全力で)終わらせて、私は自宅へと帰還した。


「ただいま〜! さぁ〜て、至福の時間だぁ〜!」


 スーツを脱ぎ捨て、ピンク色のモコモコ部屋着に着替える。


 メイクを落とし、髪をシュシュでまとめて、PCの前へダイブ!


 時刻は20:00。


 今日は私の最推し、Vtuber『魔王ぽよん』様の配信があるのだ!


『魔王ぽよん・ルル=ルシファリウスのアルケ雑談配信』


 画面には待機画面の可愛いイラストが表示されている。


 コメント欄はすでに『ぽよん軍』の皆さんの待機コメントで埋め尽くされている。


『ぽよん様〜! 全裸待機!』


『今日はアルケか!』


世界征服おやつ


 そして——


「ぽよぽよ〜ん! 魔界の最強! ......いや最弱? ......えっと......魔王ぽよん・ルル=ルシファリウスで〜す!!」


 画面いっぱいに、ピンク髪ツインテの魔王がドアップで映る。


 ゆらゆら揺れるハート型の角!


 手には巨大なぷにぷにハートの《ぽよぽよセプター》!


「きゃああああ! ぽよん様ぁぁぁぁ! 今日も可愛いぃぃぃぃ!!」


 私は机をバンバン叩いて悶絶する。


「今日はね〜! 世界征服するぞ〜! ......あれ? なにするんだっけ? 征服? おやつ? ねむい?」


【ぽよん軍】草


【ぽよん軍】今日もIQ3で安心した


【ぽよん軍】征服の前に寝るな


【ぽよん軍】かわいいから許す


【ぽよん軍】ぽよん様〜〜〜〜!!!


 ぽよん様はセプターを振り回しながら、「ぽよんっ! ぽよんっ!」と謎の効果音を連発している。


 あぁ、尊い......。今日の仕事の疲れが一瞬で吹き飛んでいく......。


 癒されていると、突然ぽよん様が話題を変えた。


「そういえばさ〜〜〜! ぽよん、今日ね〜〜〜! 魔界ニュースで見たの!!」


 セプターを振り回しながら、ぽよん様は得意げに胸を張る。


「なんかね〜〜〜! 真核を蹴り飛ばしてる変な人間がいるんだって〜〜!! ぽよん、びっくりしちゃった〜〜!!」


「ぶふっ!」


 私は飲んでいた麦茶を吹き出しそうになった。


(えっ......それって......!)


 コメント欄が一気に加速する。


【ぽよん軍】あいつだ


【ぽよん軍】イオリkのことか


【ぽよん軍】蹴球ログの人www


【ぽよん軍】ぽよん様も蹴ってみて


【ぽよん軍】ぽよぽよセプターで真核割れそう


 やっぱり! イオリ君のことだ!


 ぽよん様は目をキラキラさせながら続ける。


「なんかね〜、武器を作るために変な儀式? をしてるんだって〜! ぽよんも儀式したい〜!」


「ぽよんもね〜〜〜! 真核ぽよ〜んって蹴ってみたいの!! でもね〜〜〜! ぽよん、足がぷにぷにだからね〜〜〜! たぶん真核のほうが勝つの!!」


【ぽよん軍】草


【ぽよん軍】自覚あるの偉い


【ぽよん軍】真核に負ける魔王


【ぽよん軍】かわいいからOK


「あははは! ぽよん様可愛すぎ〜!」


 私はお腹を抱えて笑う。


 でも、すぐにハッとした。


(え、待って。イオリ君の奇行が、私の推しに認知されてる......?!)


「でもね〜〜〜! ぽよんは魔王だからね〜〜〜!! 世界征服するぞ〜〜〜!!!」


 ぽよん様は再びセプターを掲げる。


「......あれ? 征服ってなにするんだっけ? ぽよん、忘れちゃった〜〜〜!!」


【ぽよん軍】今日も平常運転


【ぽよん軍】征服の定義を忘れる魔王


【ぽよん軍】かわいいから許す


【ぽよん軍】ぽよん様〜〜〜〜!!!


 私はスマホを握りしながら、画面の向こうのぽよん様を見てニヤニヤが止まらない。


「ぽよん様かわいすぎる〜〜〜!! 真核蹴る人の話してる〜〜〜!! 本当にイオリ君の事じゃん!! やば〜〜〜!! ぽよん様と繋がってる〜〜〜!!」


 私の机の上には、ぽよん様のアクリルスタンド、ぽよぽよセプターのミニチュア、そして“ぽよん軍”の缶バッジが綺麗に並んでいる。


 この祭壇の前で、奇跡が起きている!


 私は震える指で、コメント欄に『ましろぽよん軍』の名前で書き込んだ。


【ましろぽよん軍】ぽよん様〜〜〜!!今日もかわいいです〜〜〜!!


【ましろぽよん軍】真核蹴る人、実は身近にいたりして……!? なーんてw


【ましろぽよん軍】ぽよん様も蹴ってほしい〜〜〜!!


 送信!


 読んでくれるかな......ドキドキ......。


 すると、ぽよん様が画面に近づき、コメントを読み上げた。


「ん〜? ......あ! ましろぽよん軍ちゃん〜〜〜!! ありがと〜〜〜!!」


「きゃああああああああ!! 読まれたぁぁぁぁぁ!!」


 深夜のマンションで絶叫しそうになり、慌てて口を押さえる。


「ぽよんね〜〜〜! 真核蹴るのは怖いけど〜〜〜!! かわいい真核なら蹴りたい!! かわいいは正義だからね〜〜〜!!」


 シロロ(眞島 真白)は、机に突っ伏して悶えた。


「かわいい真核ってなに〜〜〜!! ぽよん様最高〜〜〜!! かわいい〜〜〜!! イオリさんにも見せたい〜〜〜!!」


 あの無愛想なイオリさんに、「かわいい真核作ってください!」って頼んだら、どんな顔するだろう?


「......非効率だ」とか言って一蹴されるかな?


 でも、ぽよん様のためなら......私、頑張っちゃうかも!


「よし! 明日ログインしたら、イオリさんに布教しよ!」


 そしてあわよくば、『ぽよん様用のかわいい真核』をイオリさんにデザインさせるのだ。


 私は幸せな気持ちで、画面の中で動き回るピンク色の魔王様を見つめ続けた。


 やっぱり、カワイイは正義だもんね!


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― 新着の感想 ―
それぞれの見えてる世界を見れる感じいいですね。仲間の個性が爆発してる作品なのでたまにこうして見れると楽しいかもです。 続き読ませてもらいますね!
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