第125話:観測者と時空剣士、仲間達の屍を超え決死の偽装を図る
◆に注意してください……!!
◇ 『La-Plus 0.1』真核内部
「ドドンパ、猫の恩返しだ。『アイテムを使った人物を探せ』」
僕の指示に、ドドンパは黙ってインベントリからアクセサリーを装備した。
ルナールの【垢BAN】のせいもあって、ドドンパの強く握る拳の音が僕にも聞こえてきた。
「ライちゃん……何回でも何回でも殴ろう……【ライちゃんの鉄槌】!!10連打あぁぁぁ!」
ドンドンドンドンドンッッ!
ドンドンドンドンドンッッ!
シロロの操る大熊が彼女の動きに合わせ、何度も何度も奴に鉄槌を振り下ろした。
あたりに凄まじい衝撃音と土煙が舞う。
(課金アイテムだろうが、CTは存在するだろう……!!)
やがて土煙が治まると、そこに現れたのは先程と何も変わらない『俺もお前も俺』の姿だった。
——【Log】——
[通知]
[oremo_omaemo_ore]を対象に
課金アイテム『身代わりの端切れ』が10個、使用されました。
———————-
『あー、2万円分も飛んだわー。次お前消すわー。あと2分だぞー』
「イオリ君……この人嫌いだよ!どうしよう!ほんとに許せないよ!どうにか……する方法はないの!?」
「おい……お前その制限の無い使用も権限とやらなのか?」
『あ?部分的にはなー……』
(チッ……万事休すか………)
『だから考えたって聞こえてるよー、馬鹿なのー?お前』
「ごめん、拘束もう持たないみたい」
フゥの言葉と同時に拘束スキルが崩れていく。
そんな光景を、僕達はただ見つめることしか出来ずにいた。
ピロンっ♪
僕の視界の端にはメッセージが表示されていた。
「………僕はここで終わりみたいだな」
「イオリ君何を言って……?」
『あー苦しかったなぁー。おいお前ら。親父の計画を邪魔しに来たんだろー?今辞めたらイオリkだけにしてやるよー?』
「ぽよん」
「ぽよ?」
僕は誰にも気付かれない様に小声でぽよんに話しかけた。
「オレもう許せない!!爺ちゃんスキルかけて!!!」
「くぅう!【護法僧スキル:千手の防護想】!!!」
「ああああああお前なんて嫌いだーーー!!!」
バチバチッッッ!!
「ぽよ〜! 闇妖術士スキル:【闇霧】!!」
ぽよんは突如、視界を悪くさせるスキルを放つ。
そして僕は、その闇霧の中でそっと呟いた。
「承認……」
「ぽよんちゃん何してるんだ?!ちょっ見えないってっ……!」
『はぁ?何だよこれー見えねぇんだけどー……しかも、何も考えてないとかまじかー。もうさー諦めろよ……』
「……俺も君……なんで……私達に話してくれなかったの……」
これまでずっと黙っていたまち子が口を開く。
『まち子ぉー……裏切ったやつが何言ってんのー?って、勇者見えてんの?この視界で?だるいなー』
「ていやあああああ!」
ビリビリビリビリ!!!!
その瞬間、ミツルマンの雷の剣が『俺もお前も俺』の肩を斬りつけると同時に、余波で闇霧が晴れていく。
◆
肝心のミツルマンの攻撃はと言うと……当然。
——【Log】——
[通知]
[oremo_omaemo_ore]を対象に
課金アイテム『身代わりの端切れ』が使用されました。
———————-
「うおおおお!」
バチバチバチッッ!!!
ミツルマンはダメージが入っていない事もアイテムを使われた事も理解した上で、肩に突き刺さったままの剣に雷を纏わせる。
『チッ……』
すると僅かながら奴のHPが削れたのだ。
「イオリk君……!これでダメージを与えれば……!!」
ジィサンには悪いがここで希望を与えても仕方がない。
僕はかつての仲間として、良く知るものとして事実を突きつけた。
ジィサンとミツルマンと僕だけが知っている内容と一緒に。
「『地下4階……次世代VRプログラム』…………奴の能力は……『量子もつれ(絶対回復)』なのを忘れましたカ……」
「イオリk君……?ほっほ……忘れてなどおらんよ……」
僕が言い終わると頃には、既に奴のHPは満タンまで戻っていた。
『おええっっっっ……あー相変わらず同期は気持ちが悪りぃな……』
奴はどこかの誰かとHPを同期していた。
「俺も君……せめて堂々と戦いをなさい……」
『まち子ぉーお前も元はズルしてたじゃねーかよー。どの口が言ってんのだー?バカおもろいなお前ー』
「マスターイオリ……ここは私達が!貴女は心臓部を探すんです!」
「まち子……僕が離れれば真っ先に垢BANダ……」
「イオリ……ダメだにゃ……恩返しも発動しねぇにゃ。アイテムを使った人物はこの場にいねぇみてぇだにゃ……」
ドドンパのアクセも通じない。
僕は暗い顔をしながらアクセを外すドドンパの顔を気怠げに見つめた。
「おい、イオリ……なんだよその顔は。諦めたのか。おいイオリ!!!!!!」
ドドンパの怒号も今の僕には意味を成さない。
伝わるといいが。
悪友の親友に。
『あれ?イオリk諦めた感じぃー?お前の思考読めたらより追い詰められると思ってAIと同期してきたんだけどなー。はぁーつまんなー。もう次行くか』
「イオリ君諦めてないよね……?私はもうダメだけど。信じてるよ」
『システムコール『La-Plus 0.1』:アカウント認識。権限01発動:永久追放。対象[Shiroro]』
視界に【La-Plus 0.1 System】の冷徹なログが流れた。
シロロの周りに、赤いウィンドウがいくつも表示されていく。
「向こうで待ってるよ。みんなを信じてる!!!」
皆の視線が僕に集まる。
——【La-Plus 0.1 System】——
▶︎ Status: [Shiroro] is now permanently excluded from the system.
(※状態:[Shiroro]は『World of Arche』より永久に除外されました。)
————————————————
また1人消えていく。
僕は声を出さずに考えずに精一杯『イオリ』を務めた。
「シロロちゃああああん!!」
「シロロお姉ちゃああああん!!」
その場に『僕』を残した悪友の為に、シロロの脱落を身に噛み締めながら。
「イオリ!!おい!何突っ立ってんだよ!いつもの様に何か……何かあるんだろお!!!!」
「…………」
「マスターイオリ!聞いてますの!!??」
「マチ……考えるな。そのまま焦るんだ」
僕は小声で、まち子に伝えた。
「……っっ!マスターイオリ!!いい加減にしてくださいまし!」
まち子は僕の意図を汲んで、そのまま自然な言葉を並べた。
「今は耐えるんだ……!後少しで僕の仲間達が届けてくれる……」
「イオリ……?」
僕の僅かな口調の変化から違和感を察したのか、ドドンパが怪訝な声を漏らす。
「少年!出来るだけ攻撃を与え続けろ!!!」
「うん!!kおじさん!!うああああ!!」
『言っておくけどさー、まだ俺攻撃一回もしてないからねー?つまりなー?攻撃する価値もねぇんだよ、お前ら』
「ロン君っっっ!!行っっくのだああああ!!!」
プォーン♪
ドッゴオオオオオン!!
『クハハハハ!無駄だってのー!!!』
ミツルマンやぽよんが猛攻を仕掛けるが、時差による攻撃ダメージでHPを減らしてはすぐに満タンへと戻っていく絶望的な光景が繰り返される。
「【MIN】!!!!【MAX】!!!」
まち子が空高くジャンプし、そのまま最大級の質量へと反転して地面へ落下する。
『まち子ぉ!何だよ目眩しのつもりかあああ?!』
「【加速回路】!!行け!ミツルマン!!!!」
ドンッッッッ!!!
バチバチッ!
土煙と雷光が舞う中、まち子が静かに口を開いた。
「短時間モードチェンジ……【破壊の女神】……!!」
僕は久々に見た。
まち子の大楯から赤黒い禍々しいオーラが溢れ出す瞬間を。
「懐かしい技だ。そうやって第3エリアのボスを倒したよな……まち子」
「行きますワアアアア!【MIN】!!」
シュンッッッ!
再び質量をゼロにしたまち子が空高く跳躍する。
「【MAX】!!」
今度は極限の質量(重さ)へと反転し、『俺もお前も俺』に向かって隕石のように落下していく。
「【殺戮の赤騎士】!!」
ッッッドン!!!!
——【Log】——
[通知]
[oremo_omaemo_ore]を対象に
課金アイテム『身代わりの端切れ』が使用されました。
———————-
何度も何度も攻撃を叩き込んでも、同じログが流れ続ける。
僕はその光景をただ見ることしか出来なかった。
依然として戦う術は持たない。
仕方ないと分かりつつも、幼馴染である奴の曲がった感情をただ見つめていた。
『ククク……何度も見てきてんだよそれはよぉ!いい加減飽きたぜ、次はお前だーまち子ー!!』
「もう5分経ったのか!?」
「次は私ですか……あとは頼みましたわよ……」
「ぽよ〜〜〜!守衛の者ォォ!!」
「ぽよん様!!!必ずやここにいる『K達』が何とかしますわ!!!」
『あばよ、5分だ…システムコール『La-Plus 0.1』:アカウント認識。権限01発動:永久追放。対象[Guard_Girl_Machiko]』
「すまナイまち子……君デ最後にしタイものダナ!」
「その喋り方……?!」
ドドンパが僕の発言に引っかかる中、まち子の目の前には赤いウィンドウがポップし、けたたましい警告音が鳴り響いた。
——【La-Plus 0.1 System】——
▶︎ Status: [Guard_Girl_Machiko] is now permanently excluded from the system.
(※状態:[Guard_Girl_Machiko]は『World of Arche』より永久に除外されました。 )
————————————————
その音が止まると同時に、彼女の姿は世界から消え去った。
「くそおおおお!!『k』!次は俺がいく!!!」
ドドンパは僕を見て力強く頷いた。
どうやら先程の喋り方で、ちゃんと僕の正体に気付いていたらしい。
ドドンパは何やらインベントリを操作し始めると、光るフードと二つのアイテムを手に取り、こちらを見てニヤリと笑った。
僕は知らなかった。
彼が灯台と呼ばれる所以を。
「時間は少しでも稼いでやる……っていつも俺こんな役じゃねーか!」
ピカッッッ!!
「光か……?」
「【加速回路】!!SPスキル【大跳躍】!うおおおおりゃああああ」
彼は凄まじい光量と共に、『俺もお前も俺』に向かって地面スレスレで跳躍した。
加速板の上で高速に。
「俺は……今の俺は……特大花火だァァァァァァ!!!」
ピカピカピカッッッ!!
『視界を潰しても意味がないことをまだ理解できないのかお前らはあああああ!!!』
ドォォォォォォンッ!!!!!
奴の言う通りダメージなんてない。
だが、衝突と同時に凄まじい爆裂音がエウレカ草原に響き渡った。
『あーーだから無効だって言ってんだろ!!時間稼ぎのつもりか?!ああ?!』
ここにいるメンバーが、時間稼ぎによって何が起きるかは恐らく分かっていない……だが彼らは『イオリk』のを信じただ汲んだ。
僕の発言だけをヒントにして。
そこからもただ時間を稼ぐためだけに彼らは可能な限りスキルを撃ち続けた。
フゥの拘束スキルの再使用で1分、魔王の拘束スキルで1分と……少しずつ。
僕はただ待った。
彼らからの突入の知らせを。
『あーー、拘束スキルの対策取っとくんだったなー……まぁいいかー、次はお前だ石ころ女ー!』
「次は私……『k』、さっき言ってた時間はどうなのかしら?」
ピロンっ♪
僕は視界の端に映るメッセージを見ながら、フゥに一言だけ伝えた。
「何でもいい、飛ばせる物を僕の足元へ」
フゥは意味を理解する前にインベントリから『ただの石ころ』を取り出し、僕の足元へ転がした。
僕は、イオリが持っていた【断崖写本杖】でそれに触れた。
もちろんこのペンは、僕の新武器が成り変わった偽装なのだが。
『また5分経ったぞ………クハハハハ!!!システムコール『La-Plus 0.1』:アカウント認識。権限01……』
「今ダ……!【時空剣士スキル:見えタラそこはすぐ隣!僕様の認識次第で入れ替え! 】」
(※システム名称:【視界座標の強制圧縮】)
「は?時空剣士スキルって何をっっカイザー!!」
「えぇ?! kおじさんじゃないの?!」
ドドンパの言う通り、僕様はカイザーだ。
『Arche』に渡された『ダアトの真核』を武器生成したと同時に僕の職業は特殊ヘッドギアを介さない純粋な『時空剣士』へと昇華したのだ。
その瞬間、ペンの先にあった『ただの石ころ』は、僕様の指定した座標へと転移した。
『権限01…フゴォッッ……!!』
その転移座標は、奴の口の中だった。
シュンッ!
シュンッ!
そしてそこに……僕様が待ち侘びた2人が転送してくる。
「わり、遅くなったンゴォォー!!」
「おらバカ主神!『反転した王冠』だ!」
奴は石を咥えたまま、驚愕の表情でただそれを見ていた。
僕様は、『温度差で逝けよ』が投げたアイテムをキャッチし高らかに言い放つ。
「システムコール『La-Plus 0.1』:アカウント認識。権限01発動:永久追放。対象[oremo_omaemo_ore]」
第125話いかがだったでしょうか?
何が起きたか分かりましたでしょうか……!?
真相は次話へ……!
フェンサーと温度差で逝けよが『Arche』に頼まれていたのは、フゥの小鉱兵が持ち去った『反転した王冠』を探し持っていくことだったみたいです!!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
〜次回予告〜
3/23【夜20時10分】に投稿致します!
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