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第124話:観測者、『垢BAN』の絶望を観測。


◇終わりの町 オブザーブド


「急げ!!」


「え?怖いお姉さんと、良く喋る人来てない!」


 僕の叫びに反応したシロロが後ろを振り返る。


 彼女の言う通り、僕たちの後ろにいたはずの『温度差で逝けよ』と『フェンサー』は、転送地点へと走ってきてはいなかった。


「ルナール〜!俺らさ〜!アルケーに頼まれてることあってーぇ!!やる事あるんだわ〜!」


「ハゲ女ぁ!あとで燃やしてやるから死ぬんじゃねぇぞ!ハゲ!」


 遠ざかる二人の声。


 どうやら、あの二人はアルケーに何かを頼まれていたらしい。


(何を……頼んだんだ……?

いや今はそんな事を考えている場合ではっ)


「ハゲてないもんん!あとでリボンつけてあげるね!!」


 シロロが負けじと大きな声で言い返す。


「イオリ君、急ぎましょう」


「kおじさん触るよ!!」


「触れ!!」


 フゥとミツルマンの声に合わせ、僕達は残された30秒で、石畳に偽装されていた狭間の石碑に一斉に手を触れた。


 シュンッッ!!

 


◇ 『La-Plus 0.1』真核トゥルーコア内部


「何だここ……」


 偽装された『狭間の石碑』から飛ばされた先は、流体金属を固めたような、継ぎ目一つ見当たらない空間だった。


 どこか高度な施設を思わせる、不気味なほどの静寂が漂っている。


「マスターイオリ……嫌な予感がしますわ……」


「ここは心臓部か……?」


 僕が周囲を見渡した、その瞬間だった。


 あたりを照らしていた無機質な光が、ぷつりと途絶えた。


 継ぎ目ひとつなかった鏡面のような壁面から、まるで古い塗装が剥がれるように無機質な『テクスチャ』が剥落していく。


 そして露出したシステムの裏側コードが再び別の景色を再構築する。


 数秒の静寂の後。


 目の前には、どこまでも続く青々とした草原が広がっていた。


 

◇ エウレカ草原?


「ぽよ〜!?ここ……エウレカ草原なのだ?」


「わ、魔王の言う通りだ!」


「ほっほ!どう言うことかのぅ」


「さっきのところよりは可愛いけど……不気味すぎ!」


「エウレカ草原の鉱石は取り尽くしてるけれど……」


 相変わらずカオスな反応を示す仲間たちの会話を背に聞きながら、僕は素早くスキルを発動し、一人この異常な状況を分析した。


「【詳細観測ディープスキャン】」


 ——【Log】——

 対象:第1エリア エウレカ草原[フィールドデータ]

 状態:エウレカ草原のフィールド状態を読み込み

 詳細:[oremo_omaemo_ore]によるスキルの発動対象へと選択

 ————————


「ここは本当に、エウレカ草原だ……」


「え、そんなことあるかよ……なんかさっきテクスチャ剥がれる感じだったろ」


 ドドンパが信じられないといった顔で周囲を見回す。


「『俺もお前も俺』だ。スキルで移動させられている」


 僕の回答を聞くと、フゥは静かにインベントリから『氷晶石』を12個取り出した。


「語り値450消費。【万鉱の抱擁姫スキル:石語の先鋒トーク・フォアランナー】」


「【深淵干渉観測アビス・インターセプト】」


 僕のパッシブが、彼女のスキル内の通信を傍受する。


 ——【Amaryllis System】——


『集合!姫のお気に入り氷晶小鉱兵クリオライトパペット軍団!』


『お姫様アンブラス!どうしたんだい!』


 ——————————————-


「対象[mui]を見つけたら報告よ…もし、既にいるなら教えて頂戴。エリアログは見れるわね?」


 ——【Amaryllis System】——

 

『お姫様アンブラス、分かったよ!』


『みんな探せ〜!姫のお願いだ!』


『ラジャー!』


 ——————————————-

 

 フゥの指示を受け、小鉱兵達は次々と小部隊を成して散開していく。


 そして、鉱石の特性を活かし……完全に景色に溶け込んで姿を消した。


「鉱石の特性をそのまま使えるのか」


「ええ……でも今は動いていない……このエリアに無為が入っていれば記録ログは残る。つまりスキルで姿を消しても動こうとはするはずよ」


「つまり、今この場にはいないが侵入すれば小鉱兵が動くと言うわけか……いいスキルだ」


 フゥとの会話中に異変は起きた。


 ——【HERO System】——

 

 勇者(少年)の【邪気看破イービル・センサー】を発動


『勇者よ!悪が近づいている。

 君が悪い奴と認知した存在を確認した!』


 座標 :[ x: 0 / y: 444 / z: 0 ]

 

 —————————————-


「……kおじさん!!僕のパッシブスキルが発動してる……悪いやつを発見してる!!」


「よくやった、ミツルマン!!y方向……みんな上だ!!」


 僕の叫びと同時に、全員が一斉に上空を睨みつける。


「うおおおおお!ビリビリドッカーーーーン!」


 ミツルマンの音声を認識し、【輝石の勇(ヒーロー・)者剣・凱旋k(パレードk)】から激しい雷が上空へと降り注ぐ。


 だが。


「kおじさん!当たってないよ!」


 空を切り裂いたはずの勇者の願い(雷)は、何もない虚空をすり抜けた。


『よぉ!!!もう1人の観測士ぃぃ!!

【量子観測士スキル:量子瀑布クオンタム・フォールズ】!!』


 ゴオォォォォォォォ……ッ!!!


 上空から、莫大な量子による攻撃が滝のように僕たちへと降り注いだ。


 直接的なダメージはない。

 だが、すぐにその最悪な効果は判明した。


「イオリ、やばい!絶対安全圏の可視化のパッシブスキルが発動しない」


「何!?」


 ドドンパの悲痛な声にステータスを確認すると、僕達全員のHPゲージの横に、見慣れないデバフアイコンが点灯していた。


『Trait Nullifier(特性消失)』


「特性……消失……だと……」


 奴が発動したたった一つのスキル。


 それだけで常時発動するドドンパの絶対回避ラインは封じられたのだ。


 ヒューーーーー……スタッ…。


 俺もお前も俺はふわりと物理法則を無視した着地をしてみせる。


(なんだ、スキルか……?)


 奴は、僕を見据えた後そのまま、首だけを傾げルナールへと視線をずらした。


『よぉールナールー。覚えてるよなー。お前が最後に俺にした事をよー』


 ルナールはかつて、こいつの恐怖に負け、僕達をスパイしていた。


 彼女が最後にした事と言えば、あの『至宝蹴り(金的)』だ。

 恨みに思われても仕方ないが……。


「……俺さん……あの時はすいません。でも、もうあなたの命令には従いませんっ!私は……カオスアトリエの一員ですから!!!」


 毅然と、彼女は言い放った。

 もう恐怖に支配などされていない。

 その言葉で完全に断ち切ったのだ。


『へー。うざいなーそう言うのー。お前から消すわー』


 一瞬の事だった。


『システムコール『La-Plus 0.1』:アカウント認識。権限01発動:永久追放。対象「renard」』


「え?」


 ——【La-Plus 0.1 System】——

 

 ▶︎ System Call: Permanent Exile.

(※システムコール:永久追放。)


 ▶︎ Identifying Target Account ID: [renard]... Found.

(※対象アカウントID[renard]を特定……成功。)


 ▶︎ Authenticating Administrator Authority...

(※管理者権限を認証中……)

┗ [User_ID]: [oremo_omaemo_ore]

(※[ユーザーID]:[俺もお前も俺])

┗ [Access_Level]: 01 (Permanent Deletion)

(※[アクセスレベル]:01(永久削除))

 ▶︎ Execution: Initiating Data Erasure and Server Disconnection...

(※実行:データ消去およびサーバー切断を開始します……)


 ——————

 

 ルナールの周りに、赤いウィンドウがいくつも表示されていく。


「そ、そんな……」


「そのシステムコールって……まさか……ルナールちゃああああん!!」


 ——【La-Plus 0.1 System】——


 ▶︎ Status: [renard] is now permanently excluded from the system.

(※状態:[renard]は『World(ワールド・) of(オブ・) Arche(アルケ)』より永久に除外されました。)


 ————————————————

 ドドンパの悲痛な叫びも虚しく、神の権限は冷酷に実行された。


 光の粒子すら残さず、ルナールのアバターが空間から完全に消去デリートされる。


「………チッ」


「嘘……こんなの……全然可愛くないよ……」


「相変わらずの外道ね……絶対に許さない」


 僕が舌打ちをこぼすと同時、シロロとフゥの目から、アバターの感情モジュールが処理しきれないほどの大粒の涙がこぼれ落ちた。


「くそ……クソ!!!!!!テメェ!!勝てないからってそうやって終わりにするつもりか!?」


『俺もお前も俺』は髪を掻き上げながら嗤い、ぽつりと呟く。


『勘違いするなよなードドンパだっけか?俺に歯向かうなら全員そうしたっていいんだぞー』


(つまり……『全員をそうするつもりではない』と言うことか)


 ルナールが消された今、僕の思考は焦るどころか余計に速く回っていた。

 怒りと冷静を同時に抱きながら。


『もう1人の観測士『イオリk』……そうだよそう言うことだよー』


「な……!?」


『なんで読めるのかってかー?お前らシステムAIの『Archeアルケ』と会話したんだろ?なら分かるよな……?』


「……思考を読むのは自動発動ってか……」


『えっとー、シロロの考えてる事言ってあげまーす……「可愛くないっ……! 絶対ぶっ飛ばすんだから」……はははおもろお前ー』


「もう、ほんと嫌いこの人……」


 シロロの顔は涙でぐちゃぐちゃだった。


『あー。安心しろよ。俺は『イオリk』をぶっ飛ばしに来たんだわー。それにさー、俺も権限全持ちじゃないから連発できねぇー、5分に一回よ。違反でもしてくれれば一斉にできるけど。なんか違反してみー?』


[次の発動まで04:30]


「ミミックちゃん……ちょっと頑張ってね」


 シロロはインベントリからクマのぬいぐるみを取り出し、【宝石変換鞄ティアーズ・ポシェット】を撫でながら鞄へと()()()()


「【絶凶の輝晶大熊ジェムライオット・ベア】……ライちゃん行くよ!」


 キラキラ……!


 ドゴゴゴゴゴゴッッ!!!


 ポシェットはみるみると膨らんでいき、やがて巨大な大熊へと変貌する。

 そしてシロロを掌に乗せたまま、ドスンと肩へと置いた。


「シロロ姉ちゃんカッケー……オレの力少しあげるね……!! 【勇者(少年)スキル:勇者の心(ライオンズハート)】」


 ミツルマンの言葉に呼応し、シロロを対象に巨大な大熊が眩い光を纏った。


 ——【戦闘Log】——

 [mituruman]がアクティブスキルを発動

 [shiroro]へ自身の攻撃力の50%を同期します

 —————————-


「攻撃力の同期……ミツルマン……」


 ルナールというバッファーが脱落した今のこの状態において、勇者の判断は最善だった。


「孫が頑張ってるのに、爺ちゃんが見てるだけではダメだのぉ。【護法僧スキル:千手の防護想(せんじゅのぼうごそう)】」


 シロロの身体に水色のオーラが纏う。


「防御力アップか……」


「私も……!!【羅生・らしょう・地層断罪門ちそうだんざいもん】!!」


 フゥが霧穿ち掘削機を地面に突き刺すと、『俺もお前も俺』を取り囲むように禍々しい岩の門が隆起し、奴を幽閉する。


『うおー。何このスキルやばー。『Life Bleed [Major](生命力流出[大])』レジスト……拘束も対抗しろよなー』


 奴は拘束を喰らってもなお余裕だと言わんばかりなのが、僕の予感を嫌なものへとさせた。


「みんなありがとう……!」


「攻撃力あげるね!!うおおおおおおおお!」


 バチバチバチバチッッッ!!


 ミツルマンのスキルは攻撃力を()調()させる。

 つまり、ミツルマン自身の攻撃力が上がれば、連動して対象者の攻撃力もさらに跳ね上がると言うことだ。


(シロロの素のSTRに勇者の攻撃力が乗ったスキルだ。倒すまではいかなくとも……かなりのダメージが出るはずだが……)


「【ライちゃんの鉄槌】!!!」


 シロロが拳を振りかぶると、連動した大熊が巨大な拳を振り上げ……容赦なく落とした。


 ズッッッッッッッッドーーーン!!!


「ぽよ……シロロちゃんすごいのだ……ロン君のスライム攻撃より音がでかいのだ〜!!」


 ぽよんが驚く中、エウレカ草原の地形を変えるほどの規格外の鉄槌が『俺もお前も俺』に振り下ろされた。


 だが。


「嘘。なんで? ダメージが無いよ……」


 ピロンっ♪

 その瞬間、激しい戦場には似つかわしくない、軽快なシステム音が鳴り響いた。


 ——【Log】——

 [通知]


 [oremo_omaemo_ore]を対象に

 課金アイテム『身代わりの端切れ』が使用されました。

 ———————-


『2000円もするんだぜーこれ。たった2秒の無敵時間でよー。親父に文句言うかー?』


「2秒間無敵の課金アイテム……?そんなもの実装されてないはずだ……」


『あーそれねー、未実装だからなーー』


 奴はシロロの攻撃を課金アイテムで無傷でやり過ごしてしまったのだ。


 しかし僕の注目はそこではなく、通知されたログの文面だった。


「『対象に使用された』?無為か?……フゥ、小鉱兵は今どうなってる?」


「小鉱兵は動いていないわ……」


「この場に無為は、『()()()』か……」


「ええ。アイテムを『使用した』のではなく『使用された』。……スキルで隠れてる訳でもないのに……第三者からの干渉サポートってことよね、これ」


 フゥはこのログの意味をすぐに理解したらしい。


 しかし、垢BANはここから思わぬ方向へと進んでいくのだった。

第124話いかがだったでしょうか?


システム権限によるルナールの無慈悲な追放(垢BAN)、そしてシロロと勇者の全力の鉄槌さえも無効化する『未実装の課金アイテム』。


理不尽の連続にイオリたちはどう立ち向かうのか!?


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


〜次回予告〜

3/23【朝8時10分】に投稿ハック致します!

少しでも「垢BANやば」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ぜひ画面下の【ブックマーク】や【☆☆☆☆☆】で応援していただけると、執筆の励みになります!


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