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第123話:観測者、軽口の男とキレ症女の増援、ラプラスの介入を観測


◇ 終わりの町 オブザーブド


 無為はシステムコールと共に、手にした『反転した王冠』を高く掲げた。


(あれは……鍵……。

 そうか、フゥがクンツァイト小鉱兵に出した願いの鍵とは、あれのことか……?

 だが、今動いても距離が……!)


 僕の脳内で最悪の予測が駆け巡る中、無為は冷酷に言い放った。


「This is the end.」

(※終わりだ)


「俺ちゃん!!!いつもの行くよ!!!」


「……っっ!?」


「え?お兄ちゃん!?」


「え?」


 空間に響き渡った聞き覚えのある軽薄な声に、無為が突如として反応し、その動きをピタリと止めた。


 かつてフゥを襲ったあの連携コンボ。


 カウンターの申し子と異名の付くこの男、フェンサー。


 敵からの攻撃がない状況下においてこの男は、自ら仲間(無為)の攻撃を受けそれを反転させるというとんでもない技の悪用を見せてかつて僕たちを苦しめた。


 それが今こうして、奴の気を逸らし完全に『パブロフの犬』となった訳だ。。


(だが、奴が何故ここに……?)


 僕の疑問を置き去りにするように、もう一つの聞き覚えのある苛烈な声が戦場に轟いた。


「振り分けろォォォ! 【熱力学の第三の目(パシュパタ・デーモン)】!!」


 ブォォォォォォォ!!!!


「Damn it!! The Crown is...!!」

(※くそっっ!!王冠がっっ)


 突如現れた『温度差で逝けよ』が、数千度を誇るであろう『マクスウェルの悪魔』の炎スキルを無為に向けて容赦なく解き放つ。


 熱波に煽られ、無為の手から『反転した王冠』がポロリと転げ落ちた。


 カンッ……カンカンカン……。


「フェンサーなんですの?!温ちゃん……貴女まで!!」


 かつての仲間の予期せぬ乱入に、まち子が興奮を隠しきれない声を上げる。


 その時だった。


 僕の中で、先ほどのフゥの『鍵』のお願いの正体が、カチリと音を立てて繋がった。


 チコチコチコチコ!


 甲高い足音を立てて現れたのは、フゥが先ほどこの『終わりの町 オブザーブド』に到着した際に生み出した『クンツァイト小鉱兵』たち。


 彼らは地に落ちた反転の王冠をわらわらと担ぎ上げると、あっという間にどこかへと持ち去っていった。


「あら、お願いしていてよかったわね」


「フゥ、どういうことだ?何故だ……最初から鍵の奪取をお願いしていたのか?」


 僕が尋ねると、フゥは当然のように眼鏡を押し上げた。


「だって、アルケーが『俺』と『無為』の二人が反転された『王冠(鍵)』を持って先に門を出て行ったと言っていたから。私の小鉱兵たちに『王冠を探して持ち帰れ』って無茶振りでお願いしていたのよ。まさか本当に奪い取ってくるとは思わなかったけど」


「……フッ」


 彼女の記憶力が、その無茶なお願いを通してこの盤面をひっくり返したと言うわけか。


「お兄ちゃん?どういうこと?!今日大会って言ってなかった!?!別ゲームの!!」


「え、いやさーカイザーから変な話を聞いたのよ!やばくね?ウケないピーナッツ案件じゃん! と思って、来たら飛ばされた!アルケー?とかいうやつに」


「よぉ、ハゲ女」


「ああああまだ言うの!?こんなに可愛く巻いてるのに!?怖いお姉さんなんか禿げちゃえ!!」


「ああ?!やんのかこのハゲ!」


「可愛くなれないよそんな怒ってたら!!」


 一気にカオスと化した空間に、僕は思わず頭を抱えそうになった。


(……シロロとこの女は因縁があるからな。

 喧嘩するほどなんたらだ)


 完全に蚊帳の外に置かれた無為が、低く震える声で呟いた。


「おい……遊馬あすま……優羅ゆら……」


「お前日本語喋れるのかよ!恥かいたじゃねぇか!どうしてくれるんだ!!」


「あああ無為ちゃん!リアルネームはダメっしょ?!」


「おいコラ、ルイ! …泣かされてぇのか?小学校でのこと覚えてるよなぁ?」


 ドドンパの怒りはさておき、無為ルイのリアルネーム暴露に焦り、声を荒げる温度差(優羅)。


(フェンサーの動揺は分かる。

 だが、このキレ症の女の名前……いや、人の名前をいじるのはやめておこう)


 僕は無為の素性も含め、新たな変数の登場に内心で小さく息を吐いた。


「とにかく、助かった。二人とも」


「うおおお『k』じゃん!おっひさ〜!俺らかっこよくねー?」


 久々の再会だろうがこのフェンサーの軽口は変わらない。


「くそハゲ坊主、勘違いすんなよ。アタシはカイザーに依頼されて金もらってきてんだ。後、報酬を払わなかった『泉』をぶっ飛ばしに来ただけだ」


「温ちゃん……貴女……無理してますわね?向こうでの口調で話せばいいのに……」


「……っ!まち子姉さん!やめてくれ!アタシはこっちではこれなんだ……」


 何故か急にしおらしい態度を取る温度差で逝けよ。


(まち子には弱いのかこの女)


 僕がいらない分析を始めていると、無為の姿が消えた。


「チッ……シュレディンガーの能力か……僕が天球儀で炙り出す!ぽよん!ロン君は起きてるか?!」


「ぽよ〜〜!ロン君寝ちゃってるのだあああ〜〜!!」


(このタイミングで寝マカか)


 だが、まち子がここで前に出た。


「フェンサー行きますわよ」


「え?まじ?ブラックホールは無理よ?」


わたくしの新たに得た種子のスキル!破壊の衝動、受け止めてくださいまし!!【破壊の女神の劫火(セクメト・フレア)】!!」


 ドシュゥゥゥゥゥッッ!!!!


「やばいンゴ〜!」


「アタシも混ぜろよ、踊れェェェ!【劫火の舞手(タンダヴァ・ライザー) スキル:三華焦閃トリシューラ・ビート】!!」


 ドッゴオオォォォォォンッ!!!!


「もう少し時間差で撃ってくれよ!きちいって!でもやるしか……ないっしょ!!【雄武二点突き(オウムニテンヅキ)】!!!!」


 ズドォォォォォンッ!!!


 ズドォォォォォンッ!!!


 その瞬間、2回。


 凄まじい破壊の連鎖が、無為が揺らいでいた『確率の海』を物理的に蒸発させた。


「I-Impossible...!? うぐっっっ……..!!」

(※なっ!?)


 確定デコヒーレンスした現実の重みが、無為の細い体を容赦なく打ち据えた。


 フェンサーによって一点に束ねられ、増幅された二つの破壊エネルギー。


 不確定な確率の海を彷徨っていた暗殺者は逃げ場のない衝撃にその身を焼かれ、無様に石畳の上を転がった。


「あのステルスチートをこうも容易く……」


「ほっほっほ……これが阿吽の呼吸と言う奴だのぅ」


 フェンサーという男は軽い男という印象しかない。


 だが、実力は本物だ。


 環境を使うフゥは天敵だっただけで今はまるで別人の様に見える。


「Shit! お前ら……本気でそっちに付くんだな……」

(※クソが!)


 すると無為は、人差し指で耳に対し、不規則な音とリズムを取りながら音を立てた。


「……モールス……!?」


「マスターイオリ、そうですわ。俺もお前も俺に連絡を取る際は必ず無為はアレを使っていましたの」


「まじで気持ち悪いななんか、イオリ、どうする」


「ドドンパ、LiDARのスキルをいつでも使える様にしておけ。あのスキルだ」


「アレか……だが使ったら……」


「分かっている、フゥ」


「何かしらのスキルを使って、奴が逃げようとしたら、拘束スキルと神樹の記憶地層だ」


 フゥは黙って頷く。


 僕達が奴の逃走を危惧し作戦を小声で伝えていた時だった。


 奴が、兜を外し冷酷な笑みを浮かべながら言った。


「Auf Nimmerwiedersehen」

(※あばよ。二度と拝むこともあるまい)


 奴のスキルではない何かで消えたのだ。


「あれ……!?不自然に音が途切れた感じに消えました……」


「お前相変わらず、音ばっかだな」


「温度差さんは、相変わらず楽しそうな音が聞こえますねっ!」


 温度差で逝けよが「ウルセェ燃やすぞ」とキレている声が聞こえてくるが僕はそれどころじゃなかった。


 僕のパッシブスキルが自動発動した事によってその消えた現象の正体を知ったからだ。


深淵干渉観測アビス・インターセプト


 ——【La-Plus 0.1 System】——

 ▶︎ Select the future where Player_ID [mui] successfully escaped.

(※プレイヤーID[mui]の逃げ切った未来を選択。)


 ▶︎ Selecting Target Player_IDs...

(※ターゲットプレイヤーIDを選択中……)


 ▶︎ Location identified: 'End Town: Observed'.

(※場所の特定……『終わりの町 オブザーブド』)


 Authenticating User_IDs...

 [Iori_k] ............. Verified.

 [dodonnpa] ........... Verified.

 [shiroro] ............ Verified.

 [Fuu] ................ Verified.

 [maou_poyon] ......... Verified.

 [jisan] .............. Verified.

 [mituruman] .......... Verified.

 [renard] ............. Verified.

 [Guard_Girl_Machiko] . Verified.

 [fencer] ............. Verified.

 [ondosade_ikeyo] ..... Verified.


 ▶︎ ID Authentication [SUCCESS].

(※ID認証成功)


 ▶︎ Approver: ID [oremo_omaemo_ore]

(※承認者:ID[俺もお前も俺])


 ▶︎ Applying Information: Weakening_Console.

(※適応情報:弱体化コンソールを適用)


 ▶︎ Execution in 30 seconds... Countdown initiated.

(※開始まで30秒……カウント開始)

 —————————————


「………お前ら。今すぐ狭間の石碑のブロックを触れ!!!! 急げ!!!!!」


 解析デコードした瞬間、僕は叫んだ。

第123話いかがだったでしょうか?

まさかのフェンサー&温度差コンビがカオス・アトリエに合流(?)

無為を追い詰めますが……ラストで『俺もお前も俺』の理不尽な未来選択が発動。

絶望の30秒カウントダウン、イオリたちはどう動く!?


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

〜次回予告〜

3/22【夜20時10分】に投稿ハック致します!

少しでも「ここでフェンサー!?」「忘れてた温度差」と思っていただけたら、ぜひ画面下の【ブックマーク】や【☆☆☆☆☆】で応援していただけると、執筆の励みになります!


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