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第122話:観測者、石の公式に困惑し、【垢BAN】コールの暗殺者と対峙す。


◇ 終わりの町 オブザーブド


 僕達は狭間の石碑に触れ、アルケーが言っていた『終わりの町 オブザーブド』へと到着した。


「うわ、色がありません!あのエウレカの喧騒も何もないですね……人がいない、不気味な町って感じです……」


 ルナールの言う通りだ。


 石造りの街並みも、噴水広場も、建物の配置も。

 見た目は『始まりの町 エウレカ』と完全に一致しているのに、町全体から「色」が失われ、無機質なモノクロの世界が広がっていた。


「気味悪いななんか」


 ドドンパが周囲を見渡し、警戒心を露わにする。


 そんな時だった。


 チコチコチコチコ……!!


「あれ!!ねぇ小人……小石?」


 ミツルマンが足元を指差す。


 チコチコチコチコ……!!

 チコチコチコチコ……!!


「いいわ、貴方達……整列よ!」


「いや、は?」


 フゥの楽し気な掛け声と共に、足元のただの『石畳いしだたみ』たちが意思を持ったように一斉に起き上がり、綺麗な列を作り始めたのだ。


「ええええ!カワイイいいい!」


「ぽよ〜〜!石が動いてるのだあああ〜〜!」


「わあぁ……!まるでお上品なリボンが躍っているみたいな、淡いライラックのソナタですねっ!!」


「色が全部違って見えますわね!これは一家に一鉱、欲しいですわ……!」


『一家に一鉱』とは、どこかの国の偉い学者が言った言葉だっただろうか。そうに違いない。


 僕は意味の分からない極めて投げやりな解析ギブアップで、自らの思考を強制終了させた。


(まち子も感想がおかしいな……いつもの『愛故に』でも良かったのではないか?)


「ほっほっほ!」


 一人楽しそうに笑うジィサンを横目に、僕は思わず観測スキルを発動してしまった。


「【詳細観測ディープスキャン】」


 ——【Log】——

[対象]クンツァイト小鉱兵

 状態:一時的な自律稼働状態(パペット化)

 所属:万鉱の抱擁姫(オーア・アンブラス)

 詳細:鉱石アイテムに一時的な味方NPCの自律AIの付与

 状態:お願い対象(*鍵*の捜索)がまだ遂行されていません。

 —————-——


「おいフゥ……これはお前の新職業(・・・)か……?」


「そうみたいね、さっきの未来予測?の門を通ったからかしら」


(……なるほど。僕達の種子が発芽したのと同じ原理か……。

 だがこのお願いの対象(鍵)とは……?)


「シロロと同じで、鉱石への『語り値』と言う独自のMPがあるわ」


「フゥお姉ちゃん!ほんとに鉱石王国の姫になったの??」


「まぁ、そんな感じね……」


万鉱の抱擁姫(オーア・アンブラス)』。


 全ての鉱石を愛し、抱擁することで彼らに命を吹き込むという、常軌を逸した職業らしい。


「うん、分かるけど分からん」


 ドドンパが遠くを見つめながらぶつぶつと呟いている。

 フゥだから納得はできるが、常識的には理解不能だということだろう。


「フゥ……どんなスキルがある?」


 僕が尋ねると、フゥは自身のステータスを覗き込み、恍惚とした顔で説明し始めた。


「まず……この子達みたいに、一時的に『鉱石カテゴリー』の所持アイテムに語り値MPを与えると、私のお願いを絶対に遂行しようと動くみたいね」


「なるほど……遂行できるかはともかく、お前の手となり足となるのか」


「それから、レアリティによってMP消費値の変動があるわね。位階が高い程、消費量は少ないみたい……。蓄積のタイミングは分からないわ」


「『語り値』と言うくらいだから、鉱石と対話でもすれば蓄積するのだろう……」


 自分で言っていて呆れる。


 後で『対話』という単語の定義を、辞書で引き直す必要があるかもしれない。


「スキルは、この小鉱兵を従えるモノしかないわ。でも、使い方が無限にありそうね……。さっさと心臓部を壊して他の事を色々試したいわ!!!」


 馬鹿げている。

 世界を救う為にここまで来たと言うのに。


 彼女にとっては、己の狂気と向き合う方を優先したいらしい。


『世界を救う < 鉱石愛=フゥ』


 僕の脳内にこんな公式が浮かび上がったが、無茶苦茶な式だ。


「フゥの狂気スキルもいいが、心臓部を探そう。『俺もお前も俺』が出てくる前に」


 僕達は3人×3チームで手分けして探すことにした。


 しかし……。


 〜1時間後〜


『おい、イオリ。ダメだ、西区画に怪しいところはない』


『ふむ、イオリk君。東区画もダメだのう。

 家に入る事もできないし見つからんわい』


『こちらもだ。南区画全滅だ。

 残るは北の区画のみだな、一度集まろう』


 ドドンパとジィサンからのVCを受け、僕たちは再び合流した。

 そのまま北区画も満遍なく探したが、何一つそれらしきものは見つからなかった。


「これだけ探し回っても見つからないのはおかしいですわね……」


「私のスキル、使えるかしら……」


 するとフゥは町の地面、『石畳』にペタリと耳を当て始めた。


 数秒後。


「【万鉱の抱擁姫スキル:石語の先鋒トーク・フォアランナー】!!」


 ゴトンッッ……!!

 ゴトゴトゴト!!


 フゥの周りにあった6枚の石畳が、ひとりでに起き上がる。


 そして、僕のパッシブスキルがここで自動発動した。


「【深淵干渉観測アビス・インターセプト】」


 ——【Amaryllis System】——

『集合!現地のモノクロ石畳兵団!』


『お姫様アンブラス!どうしたんだい!』

 ——————————————-


「………なんだ……さっきは発動しなかったじゃないか、このポンコツパッシブめ……」


 最初に発動した時は、この深淵干渉のパッシブは発動しなかった。


 このスキルは恐らくだが、それぞれの持つ狂気(特殊職業)達のシステムを覗き見するだけのスキルだ。


 役に立つのかは不明だが。



 つくづく僕の職業スキルには『攻撃スキル』がない。



 フゥは何やら恍惚とした顔で、「ええ」や「お願いね」と石畳の兵達と会話をしているようだ。



 ——【Amaryllis System】——

『探せー!現地のモノクロ石畳兵団!』


『お姫様アンブラス!違うエリアに行きたいんだね!』


『探すよ!』

 ——————————————-


「なぁ、猫の恩返しより強くないか?」


「そちらはCTだけで制限がほぼないだろう。特殊MPの概念があるならそう卑下する事もないさ……」


「大丈夫だよドドンパ君!お揃いだし!」


「ルナールちゃん……!!そうだな!!ごめんなイオリ!」


「すまないが、謝罪の意図が読めない」


「いや、寂しそうだからお前」


「ええ!イオリさん寂しいんですか!?」


「チッ」


 僕達がくだらない会話をしていると。


 ゴトゴトゴトッ!


 石畳兵達が列をなして戻ってきた。

 中には2匹(?)くらい転けている個体もいる。


「きゃあああ可愛いいいい!フゥちゃん私このスキル好き!」


「ぽよ〜〜!お前達も石畳にやられてるのだ〜!?ぽよんもよくやられるのだ〜!」


 それを見て、シロロとぽよんがわちゃわちゃと騒いでいた。


 そしてフゥは、彼らから何やら報告を聞いているようだった。


「イオリ君……材質が違う石畳があるみたい。ついてきて!」


 するとフゥは勢いよく駆け出していった。


 それと同時に、石畳兵達はいつの間にか自分たちが元いた場所へ何事もなく自然に敷かれた状態へと戻った。


「なるほど……1つのお願いを完遂すると戻るのか」


「おら、分析してないで行くぞ!みんな行っちまった!」


「ああ、行こう」


 〜数分後〜


「ここら辺みたいよ、あの子達の軌跡が残っているわ」


 僕はフゥの言う場所へ視線レティクルを合わせ、スキルをかけた。


「【詳細観測ディープスキャン】」


 ——【Log】——

 対象:石畳(偽装)


 状態:周囲の石畳との材質の偽装を検知

 ————————


「これは……」


「【深淵の観測者スキル:深淵詳細観測アビス・ディープスキャン】」


 ——【Log】——

【System:対象ログの深層演算データを展開します】

 ▶︎ Target_Log:石畳のテクスチャ偽装および内部構造

 ┗ [要因1]:表層は周囲と同じ『モノクロの石畳』

 ┗ [要因2]:内部材質に高密度魔力結晶体を検知。

 ┗ [要因3]:オブジェクトID【狭間の石碑】。

 隔離領域への転送ポートとして隠蔽配置。

 —————-——


「フゥ、ビンゴだ。これは『狭間の石碑』だ」


「まじか!?俺の猫の恩返しは狙いが定まってないと使えないからな……明確な違いだな」


「イオリ君。これで、石の持つ意思の力を実感したでしょう?」


「その言葉は、僕がゲーム内で君に言った言葉だが……まぁいい。そうだな、よくやった」


 フゥはこれでもかと、ドヤ顔をして見下している感じを醸し出してくる。

 アバターの身長が低いせいであまり威厳は無いが。


 だがその時だった、ミツルマンが突如声を荒げた。


「ねぇ!kおじさん!あの人!僕が姫を守った時に居た!見えない人だよ!!」


 一斉にミツルマンの指差す方向を見る。


 そこにいたのは聖刻の円卓の6人目。

 見えない暗殺者『無為むい』だった。


「Mui...!! Is it really you?」

(無為...!! 貴方なの?)


「Machiko... Why are you here? And who are they? Have you joined their side?」

(まち子……何故ここにいる?そしてなんだ?そいつらは。お前はそっち側についたのか)


 まち子は無為を視認するなり、流暢な英語で会話を始めた。


(……こいつは外人だったな、そう言えば)


「Where is Kaiser? I don't see him here. And Old Man, was it? Thanks for the other time. Thank you so much for hitting me in the face with that ball.」

(カイザーもか?居ないようだが。そしてジィサンだったか?あの時は世話になったな。顔面にボールを当ててくれてどうもありがとうな)


「Ho ho... No need for thanks, young man.」

(ほっほ……礼には及ばんよ小童)


「わ、お爺ちゃん英語喋れるの……かっこいい……」


「Stu-Stupid! ……えーっと、なんだっけ。……そうだ!What do you want!?」

(ばーか!……えーっとー、なんだっけ。そうだ!……なんの用だ!)


「え、ミツルマン喋れんの?え?天才っ子?」


(……これは驚いた。

 ドドンパよりよっぽど優秀だな)


「Hey, Mui, was it? No... It's against the rules, but let me say this. Louis Stein. Whatever happened to 'I am you, and you are me'?」

(おい、無為だったか?いや……ルール違反だが言わせてもらおう。ルイ・シュタイン。『俺もお前も俺』はどうした?)


「ぽよ〜。人間kも喋れるのだ……ねぇルナールちゃんなんて言ってるのだ?」


「えーと、『俺もお前も俺』はどうしたって!」


「ぽよ?!わかるのだ?!」


「Iori_k... How do you know that name? I see, so you know about my father's plan... Have you come to stop it?」

(イオリk……何故その名を……そうか、お前ら知っているのか父上達の計画を…止めに来たんだな?)


「No... I just thought I'd crush you all again.」

(いや……お前達をまた潰してやろうと思ってな)


「I don't know how you found out about the plan... but if you're going to interfere with my father, I'll erase you here.」

(どこで計画を知ったのかは分からないが……父上の邪魔をするならここで消す)


「イライズ……?消しゴム?!消すってことか!!! やれるもんならやってみろ!」


 ドドンパがタクトを構え前に出る。


「ドド兄ちゃん…それイレイサーだよ」


「お?え?」


「ドドンパ君……少しダサいわよ……英語勉強してきなさい」


 フゥに何故か説教をされているが、フゥは出来るのだろうか。

 想像が付かない。


(……十にも満たない小学生に何を言われているんだ、この親友アホは)


 一人、アホ面へと冷徹なツッコミを入れる中……。


「System Call: 'La-Plus 0.1'. Identify Account. Invoke Authority 01: Permanent Exile.」

(システムコール『La-Plus 0.1』:アカウント認識。権限01発動:永久追放)


(……ッ!)


 アルケーの恐れていた事が。


 僕達は無為こいつとまともに会話をした事なんてなかったのに。


 俺もお前も俺の仲間と言うだけで復讐リベンジを選ぶとたかを括ってしまっていた。


(チッ……最悪だ……。ここで【垢BAN】されて終わりなのか……?)

第122話いかがだったでしょうか?

モノクロの終わりの町で、フゥがまさかの石に命を吹き込む新職業に覚醒!

そして、無為が放った絶望の【垢BAN】コール。イオリたちはどう切り抜けるのか!?


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

〜次回予告〜

3/22【朝8時10分】に投稿ハック致します!

少しでも「垢BANズル!」「ミツルマン英才教育?!」と思っていただけたら、ぜひ画面下の【ブックマーク】や【☆☆☆☆☆】で応援していただけると、執筆の励みになります!


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