表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/127

第101話:観測者、深淵の門を見据え、時空剣士の『真実』に戦慄する


◇ 第11スフィア



 僕たちは第11スフィアの中ボスが潜むポイントへ、ハニから借りた鈴の音とロン君が示した方向に従って進んでいた。


 その道中、先ほど出会った掲示板のドン『ジョウナン』が現状どう扱われ、どの程度の影響力を持っているのかをまち子やドドンパから聞き、実際に掲示板を覗いて確認した。


 どうやら、あいつの情報なら何かと信用度が高いらしい。


 念のため、カオス・アトリエとして一発で分かるようドドンパにコテハンを付けさせ、ジョウナンの書き込みに『確定』の後押しを打ち込んでおいた。


「どうだ、掲示板の様子は」


「……ああ。俺の名前見て、本物だって信用したようだな。あいつすげーな、普通に」


 ドドンパがウィンドウを閉じながら感心したように言う。


「なんか、イオリ君に心酔しているように見えたわね。悪魔なのに」


「ぽよ〜!ぽよんがお外の世界で広報担当で、あの人間jはこっちの『情報管理職』なのだ〜!」


「「「「「………」」」」」


 ぽよんの口から飛び出した謎のビジネス用語に、僕たちは一瞬言葉を失った。


「ハッハー!魔王!そンナ語彙を知ってイルのカ!!」


「ぽよん様をバカにしないでくださいまし」


 カイザーが驚きの声を上げると、すかさずまち子が大楯を構えて威圧する。


「ぽよん様は天才なんだから!!カイザー君もリボンつけて可愛くなろ?」

「ハッハー……諦めテなかッタのカ!!」


 シロロがド派手なピンクリボンを取り出してカイザーに迫る。


「カイザー、うるさいわよ。ハゲなさい」

「ハゲてくださいー!曲作りましょうか?」

「お願いしようかしら……BGMに乗って1時間リピートのハゲコールね」


 フゥとルナールからの容赦のないハゲコールが続く。


「ハッハー!エグい!鬼畜ノ所業ダナ!」

「きもっ!カイザーきも!」

「ハッハー!」


 ドドンパのストレートな悪口にも、カイザーは全く堪えずに謎のポーズで笑い声を上げていた。


 僕はこのいつもの(頭の痛くなる)カオスな会話を背にしながら、荒野の先に揺らぐ中ボスの影を捉えた。


 ピロンっ♪


 だがその瞬間、僕の視界の端にメッセージの着信通知がポップアップした。

 ジョウナンからだ。


 ——【メッセージ】——

[送信元:ジョウナン]

[件名:情報①]

 テストは合格だろうか?


 そして『俺もお前も俺』関連だ。

 裏道にて発見。

 スキルで会話内の選択肢を出した。

 あんたには言っておくが、俺は『性別』次第で情報を開く能力が変動しちまう。

 分かったことは、『6人目』と一緒に行動。

 選択肢は『ケテル』『ダアト』。

 ダアトはロックで開けなかった。

 ケテルは排除、既知の為。

 だが『ダアト』は現実で調べてくる。


 以上だ。

 定期的に送ろう。

 ————————————


「ほっほ、きたのかな?彼から」


 ジィサンが僕の顔を見て尋ねる。


「ええ。『俺もお前も俺』が何故か動いていることと、『ダアト』という情報が」


「ダアト……ほっほ。イオリk君は分かるかな?」


「前にTavタヴを調べた時に少し見ましたが……隠された第11のセフィラ……」


「ほっほ、ワシも気になって前に調べてのぉ……不要であったな!」


 さすがは歴戦の投資家だ。

 この世界の根幹設定セフィロトに関する予習も抜かりない。


「……もしかすると『Archeアルケ』は『ダアト』を狙っている?通常プレイでは行けない場所であるべきです、存在するなら」


 黙って聞いていたまち子が、スッと静かな声で入ってくる。


「辻褄は合いますわね」


「ああ、まち子も知っているのか?」


「ええ、お爺様と同じ理由ですわ。王冠の前に座し、『深淵の門(アビス)』にされていると……」


「アビスか……。フッ、そこを覗くのなら【深淵の観測者(アビス・オブザーバー)】である僕の出番でしかないな。正におあつらえ向きって訳だ」


 僕が薄暗い笑みを浮かべた、その時だった。


「おい、イオリ。会議もいいが……やろう。アレ」


 ドドンパがタクトで前方の中ボスを指差した。


「ああ……」


 スタートが第11スフィアで、現在時刻は既に15時前。


 ミツルマンの能力ダウンとログアウト時間である、17時のタイムリミットを考えると、少しばかり焦りを覚える時間帯だ。


 そんな時、あいつはまた気の抜ける事を言い始める。


「ぽよ〜、お腹ぺこぺこなのだ〜!そろそろおやつ食べたいのだ……」


「……もう少し我慢しろ。攻略中に食べるのはダメだ」


 僕は冷たく却下する。


 おやつ(甘味)の摂取によって発動する【3時の(ティータイム・)失踪(バニッシュ)】。

 それこそが、唯一『Archeアルケ』とコンタクトを取れるかもしれない貴重な機会フラグなのだ。


「もっとおやつを食べられない世界になるかもしれないぞ」


「ぽよ〜!?そんなの嫌なのだ〜!我慢するのだ〜〜!」


 僕が適当な脅しをかけると、ぽよんは顔を青ざめさせてあっさりと頷いた。


 ほんとちょろいなこいつ。

 だが、時に妙に的を射た様な事を言ったりするので油断はできない。

 9割は必要ないが。


「ほっほ!イオリk君、どう倒そうかの!早く進まねばいけないのだろう?」


 ジィサンがゲートボールスティックを構えながら問う。


「あいつも第2スフィアと同じで重そうですね……」


 僕は遠目に見える重装甲の巨体を観測し、暗黒微笑を浮かべた。


「埋めましょう」

「愛を教えて差し上げますわ」

「やーい!埋め殺〇ー!」


 キラーン♪

 シロロが物騒な言葉を叫んだ瞬間、あの音が鳴り響いた。


 システムがシロロの言動を『カワイイ』と判定し、職業専用のMP(カワイイ指数)が貯まったことを知らせるアレだ。


「「………」」


 僕とドドンパは無言で固まった。


「あ!2200までカワイイ指数戻ったー!」


 シロロが無邪気に喜ぶ。


「システムバカだな」


 僕が思わず毒づくと、ドドンパがニヤリと笑って横から口を挟んだ。


「カワイイってな、200種類あるねん」


「「「「「…………………」」」」」


 女子陣全員の氷河期のように冷たすぎる視線が、ドドンパを射抜いた。


「テレビの流行り好きね。それに少し古いわよ」

「ドドンパ君ないわー」

「ぽよ〜!アホーなのだ〜!」

「愛故に庇いきれませんわね」


 フゥ、シロロ、ぽよん、まち子から、容赦のない辛辣な言葉が突き刺さる。


「え?俺のこと嫌い?」

 ドドンパが本気でショックを受けた顔をした時。


「そんなこと無いです!私は………」

 ルナールが身を乗り出して否定し、途中まで言いかけて「ハッ!」とし、顔を真っ赤にして口を噤んだ。


「え!!」

 ドドンパが期待の眼差しを向ける。


「ああわわわ、で、でも!少し古いのは同意です!」


「うう……」


 ルナールの照れ隠しの追撃を受け、ドドンパはがっくりと肩を落とした。


「チッ……早く埋めるぞ」


 僕はカオスすぎる空間パーティに舌打ちをし、重装甲の中ボスへ向かって歩き出した。


◇ 第11スフィア ボス討伐後 枯れた樹[狭間の石碑]



「アルカナと転送用の枝も落とすなんてラッキーだったぜ。あと一個か!」


「ああ、スケジュールに書いてあったので知ってはいたがな」


 僕たちは第2スフィアの中ボス同様、プールを作り出し、中ボスを生き埋めにして討伐。


 結果、『空白のアルカナ大』に加え『枯れた樹の枝』もドロップし、二つのキーアイテムを確保した。


「先へ進もう」


 僕たちはいつもの様に精神防壁を狂気で抜け、石碑前でアルカナを使おうとした、その時だった。


 ——【Official_Info】——

 [境界の旅人たちへ]

 過酷な精神の防壁を越え、深淵の半ば(第11スフィア)に至りし冒険者たちへ。

 運営チームでは、皆様のここまでの軌跡を記録するため、「国勢調査アンケート」を実施しております。

 各プレイヤー個人の現在の強さを示す【職業】と【レベル】を入力してください。

 ご回答いただいた皆様には、システムよりショートカット転送用の『枯れた樹の枝×1』を特別報酬として配布いたします。

 ▶︎ 職業:

 ▶︎ レベル:

[ 回答して報酬を受け取る ]

 ———————————

 僕がウィンドウを確認すると、テキストの手入力ではなく、チェックボックス形式で表示されていた。


 ——【System】——

 ▶︎ 職業:

 [ ] 観測士

 [ ] 深淵の観測者

 ▶︎ レベル:[ 59 ]

 ——————————


「イオリ君ー?これ何?入力していいのー?」


「なんでこんな調査するんでしょう……?」


「国勢調査ですから、職業分布などと同じで第6エリア到達プレイヤーの情報を開示したいのでしょう」


 シロロとルナールの疑問に、まち子が静かに推測を口にした。


「……調査?なぜこんな『国勢調査』などする?」


「イオリ、どうする?」


 僕の呟きと、ドドンパの言葉。

 それと同時に皆の視線が僕へと集まった。


(プレイヤーのステータスを把握したいなら、データベースから直接覗き見れば済む話だ。

 それをわざわざ……)


「ハッハー!イオリkヨ!僕様は、最初は『戦士』だったのダガ、武器を手ニシてカラ『時空剣士』ノミになったノデ、選択画面に一つシカ出なイノだガ!!」


 カイザーの言葉に、まち子以外の全員から驚愕の声が漏れる。


「ちょっと待て……()()()()()()()ということか?」


「半ば強引ではありましたが……サクラとしての任務を決めた時の事ですわ。『俺もお前も俺』からあるヘッドギアを渡されたんですのよ、カイザーだけ。……そこからログインしたら、データはそのまま『武器』が変わり、基礎職業は『上書き』に。詳しくは聞くなと添えて」


「ちょっと待って、どういう事?」

「ぽよ〜?」


「ほっほ……今はその『へっどぎあ』はどうなったのかの?」

「ハッハー!僕様の家はセキュリティが厳重なノデ回収には来ていナイ!」

「カイザーさんもおぼっちゃまですもんね……あ!またリアル情報を……ごめんなさい……」

「ハッハー!気ニするナ!フェンサー妹ヨ!隠シてなどいナイ!」


「カイザーと俺もお前も俺は私たちより付き合いが長いんですのよ。カイザーに渡す際は『お前の区切って話す口癖をトリガーにこの職業の特殊MPが貯まる仕様だ、カタコトで喋ってみろ』と言われていましたの」


「!!!???」


 立て続けに交わされる会話から明かされた事実。

 VRデバイスの音声認証キーの件に、僕は思わず戦慄を覚えた。


「私の『カワイイ指数』と同じ感じかなー?」

「え、お前普通に喋れんの?」


 シロロとドドンパの疑問に、僕は一人納得していた。

 カイザー達、聖刻の円卓組が加入した日の事だ。


 僕と二人きりになった際、彼は真面目なトーンで普通に喋っていたのだ。

 だがその痛いロールプレイに、そんなシステム的な意味があったとまでは予測できなかった。


『喋れるよ』

 一切の濁りもない、無駄にイケボな、流暢で落ち着いた青年の声。


 あまりのギャップに、全員が言葉を失い、完全に硬直した。


「ほっほ……変な感じがするの」

「なんか変ですよねやっぱ!現実と同じ喋り方くらいにしてください!」

「君たち・がそうしろ・と言った・んだろうっ!」

「変ねそれでも」


 ジィサンやルナール達からの非難を受け、必死に普通の喋りを保とうとするカイザーだったが、フゥにはアッサリと否定されていた。


「そうか、そういう事か……。

時空剣士は最初から何かの実験に使う為の、試験的な『システム干渉』職業。だがなぜ、カイザーにそれを渡したのか……。

そこまでは分からないが、辞めるとMPが無くなる為、維持の必要があるんだな?」


「そうダ!イオリkは頭がいイナ!僕様も良く分カラなかッタのニ!最初!」


 僕の推測に、彼がいつもの口調で大きく頷きを返してきた。


「情報が多すぎる……バラバラに撒かれた情報を繋ぎ合わせても断片的すぎる……今は進むしかない」


「とりあえず、基本職入力するぞ?俺らは」


「ああ、それでいい。報酬だが、『枯れた樹の枝』は先ほどの中ボスドロップを加えてクランで[30個]なので、9人分の報酬はミツルマンに渡そう」


 ドドンパの言葉に同意し、僕は指示を出した。


「分かった!kおじさん僕の指掴んで選ぶのやって!怖い、間違えたら!」


「ん……ああ……」


 僕がミツルマンの背後に回り、彼の指を掴んでウィンドウを操作し、今後のために丁寧に教え込んだ。


「いいか、ここにチェックを入れるんだ。

 特殊職業の[勇者(少年)]は特別だ、ひけらかすな」


「分かったー!」


「お父さんになったらあんな感じなのかな」

「イオリ君の子供……」

「結婚できるか?まず」


 素直に返事をするミツルマンの背後から、シロロ、フゥ、ドドンパの言いたい放題なヒソヒソ声が聞こえてくる。


「いなければもらってやるのだ〜!」


 そこに投下された、ぽよんの爆弾発言。


「「!?!?」」


「ぽよ〜?」


 まち子とシロロが硬直を見せる中、ぽよんは気の抜ける返事をしながら小首を傾げている。


 だが、彼女の言葉に反応したのか、何故かロン君が王笏から体をニュルンと伸ばしてきた。


 プォーン……♪

 ベシッッッッ!!


「え?」


 フゴッッッッ!!


「痛ェェェ!え?!は!?おいクソマカロン、なんで俺やねん!!」


 理不尽な鋼鉄ビンタを顔面に喰らい吹っ飛ぶドドンパの姿に、周囲からどっと笑いが起きた。


「ぽよん、周りに合わせなくていい」

「ぽよ〜!」


 僕の問いにぽよんが明るく返し、ロン君も激しく身を揺らす。


「さっさと行くぞ、第12スフィアへ」


「「「「「「「おー!」」」」」」」


 カイザーのカタカナ混じり口調の真実が判明したが、運営の意図にはまだ何か決定的な裏がある気がしてならない。


 その微かな予感が、僕の思考を深淵へと引き摺り込んでいく。


 考えることが多すぎる。

 だが、今は前へ進まなければならない。


 ようやく半分を超えた時点で、僕らの未来はすでに確定していたのだ。



 全てのスフィアを抜けた先で、カイザーの理不尽な能力が完全に封じられる運命にあるとも知らずに。

第101話いかがだったでしょうか?

ジョウナンから送られてきた『ダアト(深淵)』というワード。

これが意味するところとは一体。


そしてラストの不吉なモノローグ。第6エリアの仕様により、カイザーのチート能力が完全に封じられる運命……。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


〜次回予告〜

3/11【夜20:10】に投稿ハック致します!


少しでも「ドドンパ不憫で草」「カイザーの口調そういうことだったの!と思っていただけたら、ぜひ画面下の【ブックマーク】や【☆☆☆☆☆】で応援していただけると、執筆の励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ