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第0話:観測者、正解を綴るための前夜(イヴ)を語る

3/6 追記:ゲームの目的、真核が何なのかと言う点を分かりやすくする為の改稿を行いました。



まずは興味を持って開いて頂きありがとうございます!!


本作品は『真核』と言うアイテムがキーアイテムとなっており主人公『イオリ』が

様々な物理法則を基にとんでもない能力を生み出しながら仲間と冒険?破壊していく作品になります。


前置きはこれくらいにして……それでは、0話。ご覧ください。


◇プロローグ


「――おい、生きてるか? 画面の向こうの観測者さんよ」


 ビデオ通話のウィンドウ越しに、慎二がニヤついている。


「いよいよ明日だな。公式掲示板、見たか?

 目玉のアイテム、『真核』から作れる装備の予想スレ、一晩で数万レス超えてるぞ。全プレイヤーが血眼になって、神頼みで『運』を天に任せる準備をしてる」


「……見てない。あんなノイズ、脳の容量の無駄だ」


 机の端には、飲みかけの栄養ドリンクが何本も横倒しになっている。


 生活リズムはとうに崩壊しているのに、僕の意識だけは妙に冴えていた。


 僕は三枚のディスプレイに映り続ける「365日、24時間分の定点観測ログ」から目を離さずに即答する。


World(ワールド) of(・オブ) Arche(・アルケ)』。


 リリース365日前から、ゲーム内の様子を定点カメラでライブ配信し続けるという異様な売り出し方をした前代未聞のVRMMO。


 画面に映るのは、始まりの町から第4エリアまで、視点移動すらできない不便な公式の映像だ。


 だが、そこから得られるデータは膨大だった。


 特定の座標における「風速」「湿度」「時間毎に動き回るNPCの動向」や「各エリアのエネミーの生態」といった相関図が、まるで生物の脈動のように流れていた。


「相変わらず冷てぇな。お前、その『真核』狙いじゃないのかよ」


「狙っているさ。僕の『真の目的』を達成するための、絶対的な第一歩としてな」


 僕はキーボードを叩き、一つのシミュレーション結果を慎二に共有する。


「このゲームは最初は第2エリアまでしか開放されていないが、短いスパンで第5エリアまで順次開放されていく仕様だ。……当然、エリアの環境ギミックに応じた対策アイテムの需要は、解放と同時に爆発する」


「……需要?アイテムの?」


「そうだ。

 プレイヤー間で自由に売買ができる『バザーシステム』

 僕はここで、情報を武器に初期段階から圧倒的な富を築き、市場を完全に独占モノポリーする。

 第4エリアは定点カメラが少なく、第5エリアに至っては未知だが……少なくとも第3エリアまでの経済は、僕が完全に支配できる」


「ひえっ……相変わらずえげつねぇ。でも、市場を操るには初期資金と、最速でエリアを突破する『力』が要るだろ?」


「だからこそ、まずは初期段階での『真核』が必要なんだ」


 慎二の問いに、僕は口角を歪める。


「慎二、このゲームのドロップシステムを忘れたわけじゃないよな。レアエネミーが落とす『核』は、アクセサリーの素材になる程度で誰が作っても大体同じ効果に落ち着く。

だが、ユニークエネミーが落とす『真核』は違う。拾い上げた瞬間、つまり『取得時より直近1時間のプレイヤーの行動ログ』を吸い上げて性能を決定するんだ」


「公式は『ユニークエネミーとの熱い戦闘内容が、強力なスキルとして形になる』なんて煽っているが……そのままじゃ、ただの適当なノイズが混ざった『中身が空っぽのゴミ』だ」



「……は? ゴミって……お前、まさか戦わずに別の行動だけを真核に吸わせる気かよ!?」

 

 慎二の呆然とした声に、僕はマウスを滑らせて、一つの座標データを強調表示した。



「それに、僕が仕事以外の1年間を全て費やして観測し続けて分かったことがある。この世界の『物理エンジン』は、異常なまでに無駄に精巧に作られているんだ。全ての物理法則が現実と同じように作用するのなら……この世界に、無駄なアイテムなど一つもない」



「真核が吸い上げるのは、戦闘の動きだけじゃない。


 周囲の環境情報……どの場所で、どんな環境負荷を受け、どんなオブジェクトが存在していたか。意図的に発生させた『物理現象』ですら、システムに証明ログできれば。

 そのすべてが、武器の『素材』として蓄積される。他人の応援も、通りすがりの回復も、僕にとってはログを濁らせる

不純物ゴミ』でしかない」



「……物理現象って、あれか? 小学校の理科でやった、片栗粉と水混ぜて叩いたら硬くなるやつ、みたいな?」


「『ダイラタンシー現象』のことか。ああ、そうだ」


 僕は頷き、仮想のシミュレーションを語る。



「真核は、手で拾い上げるまでは『取得判定』にならず、周囲のログを吸い込み続ける。……だから、もし地面に落ちた真核をすぐに拾わず、ダイラタンシー現象を起こしたスライムの中に手を使わずに沈めたり、叩きつけたりしたとすればどうなる?」



「は……? スライムに沈める?」


「ああ。システムはそれすらも『環境ログ』として認識し吸い込む。結果として、普段はドロドロの液体で物理攻撃を吸収し、急激な衝撃を与えた瞬間だけ鋼鉄以上の硬度を持つ『最強の質量兵器(鈍器)』が誕生するかもしれない」


「お、お前……マジでゲームの中で科学実験する気かよ……」


 慎二の呆れたような声に、僕はマウスを滑らせて、一つの座標データを強調表示した。


「それはあくまで一つの可能性シミュレーションだ。……僕が明日、最初にやるのはこっちだ」


 画面に映し出されたのは、ライブ配信で何度も確認した、第1エリアの果てにある断崖絶壁だ。


「この断崖の座標。ここはプレイヤーが通常の遊び方で登れる場所の中で、一番高度が高い。そして、特有の強い風が常に吹き抜けている」


「……それがどうしたって言うんだよ」


「想像してみろ。もし別の場所でユニークエネミーを倒し、ドロップした真核をその場で拾わず、地面を『蹴り飛ばしながら』この断崖まで運び続けたらどうなる?」


「……はぁ!? 蹴って運ぶ!? アイテムをか!?」



「そうだ。『長時間の移動の軌跡』『強烈な高低差の負荷』そして『断崖の風』。意図的に用意したノイズの無い環境下でそのログを完遂させれば……真核はそれを『神話級の属性因子』として誤認する可能性がある」



「……誤認、って。お前、運営の想定をバグらせる気かよ……」

 慎二が引き気味な声で呟く。


「バグじゃない。仕様の隙間やシステムの穴を突く『正解』だ。みんなは草原で適当に剣を振り回して、偶然落ちただけのゴミに一喜一憂するんだろうがな」


 僕は背もたれに深く寄りかかり、漆黒の画面を見つめた。


「だが、個人の行動や初期の環境だけで作れるログには、いずれ限界が来る。……僕が思い描く『完璧な真核』をデザインするには、どうしても莫大な資金が必要なんだ」


「資金? 武器作るのにそんな金が要るのかよ」


「ああ。時にはシステムに干渉する権利や、他人の行動すらも『素材ログ』として金で買い上げなければならないからな。

……そのための市場独占モノポリーだ」


 画面の向こうで慎二が息を呑むのが分かった。


「……徹底的だな、本当。キモいレベルで完璧主義だわ。お前の言う『正解』ってやつ、隣で特等席で見せてもらうぜ」


 マウスを鳴らし、全てのログを保存する。

 明日から始まるのは、不確かな冒険などではない。


「僕の正解を叩き出してやる。運営、震えてサーバー管理しろよ」


————


 のちに、『変態』『悪徳メガネ』『詐欺師k』と数々の異名で呼ばれながら、狂気的な個性を放つ集団を率いる事になる男。


 不遇職『観測士』でありながら、圧倒的なデータと論理ロジックでこの世界の常識を蹂躙する物語が、今、始まろうとしていた。



 だがただのゲーム攻略では終わらない事を彼らは知らない。


 彼の異常な執着と最適化は、やがて運営(神)がこの仮想世界に隠した『真の目論見』すらも狂わせる、最凶の特異点バグとなっていく。


物理法則ルールで世界をバグらせる。

知識特化型・VRMMO攻略(破壊)譚。


ーーーー



ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

次話、いよいよ『Worldワールドofオブ Archeアルケ』サービス開始。


他のプレイヤーたちが剣や魔法でせっせとスライムを叩く中、不遇職『観測士』を選んだイオリが最初に宣言した行動は――

ドロップ率1%の至宝(激レアアイテム)を、泥まみれにして『蹴り飛ばす』ことでした。


物理エンジンと環境ログを悪用した、前代未聞の『武器デザイン(ハック)』がいよいよ幕を開けます!


少しでも「こいつヤバいな」「どうなるか面白そう!」と思っていただけたら、

ぜひ画面下の【ブックマーク】や【☆☆☆☆☆】で応援していただけると、

執筆の励みになります!


(※次話、さっそく親友がドン引きします)

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― 新着の感想 ―
感想での意見を汲み取ってくれてありがとうございます。真核ってユニークボスモンスター限定のアイテムだったんですね。 そして主人公の目的も判明。前よりだいぶわかりやすく感じました!
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