(8) 食材調達
「おっ! じゃあこれから同僚としてよろしくな!」
ソールがニコニコと笑いながらそう言いはなった。……同僚? どういうことかと聞いてみると、ソールはブルーフォレストで調理係として働いているらしい。
調理係と聞いてちょっと意外だと思った。ソールは見た目的に運動が得意そうなので、働いていたとしても食材の調達係をやっているものだと……。
「今意外だと思ったでしょう?」
私の考えを見透かしたようにアンナさんが笑う。
「え! まぁはい」
「最初は食材の調達に行ってもらってたんだけどね……? 出る度出る度、問題を起こして帰ってくるから」
「つまりは問題児だから出さないように?」
最後のリリィの質問にはアンナさんは答えなかったが、苦笑いを浮かべたことで実質正解だとわかった。
そのやりとりを聞いて、ソールは不満げな表情を浮かべている。なんだかその表情はネロに似ていて、兄妹なんだなと改めて感心した。
「まぁとりあえず、みんなは何の担当をしたい?」
アンナさんが私達に問いかけてくる。……調理か食材調達か。
メンバーを考えると、私は食材調達の方にまわった方がいい気がするけど。
「私、食材調達行くよ! 体動かすの得意だし!」
「あー、じゃあ俺も食材調達担当しようかな」
「え? ノックスも!?」
ノックス、前に料理してたの見たし、調理の方も出来るんじゃ? どうして食材調達に?
思わず疑問を顔に浮かべていると、それを見たノックスが説明を始めた。
「リリィもルーナも料理得意だろ? それでルキアはたぶん苦手」
「いや苦手っていうか、体動かす方が向いているというか……」
「とにかく! 人数的には俺が調達に行った方がちょうどいいしね」
「「なるほど!」」
なんだか私が脳筋である的な感じの共通認識がみんなの中にできている気がする。いつの間に? 元の世界でも言われてたし、そんな私脳筋感出してるかな?
疑問を浮かべつつも話し合いは進み、無事に役割分担ができた。
・
・
・
「えーと、マリンベリーだっけ?」
「もっと奥に行かないとないかも」
私とノックスは森へと食材を探しに来た。本当はまだ働かなくても良いと言われたが、コーラルストリートで見た屋台などで買い物をしたかったのでお金が必要なのだ。
レイラやソールが私達に買ってあげようかなどと言ってくれたが、さすがに私達より少し年下に見える彼らにおごってもらうのはちょっと……。
そのためこうして森へとやってきた。リリィやルーナはブルーフォレストで料理をしているはずだ。
ノックスの手には何枚かの紙がまとめられた冊子のようなものがある。そこに集めてくる食材の特徴やイラストが載っている。今一番必要なのはマリンベリーという果物らしい。
それにしても……
「なんで私には絶対渡さないでなの!?」
「ルキアに渡すとなくしそうだからじゃない?」
「それを言ったらソレイユもでしょ!?」
「僕は絶対なくさないよ!」
「嘘だねー」
「なにをー!?」
「ぷっ! 似た者同士だね」
ソレイユと言い合いをしていると、ノックスに笑われた。……やっぱりみんなにうっすらバカにされているような気がする。このソレイユと似た者同士なんて……
そんなことを思っていると、もふもふのソレイユの足に蹴られた。さすがそこに関してだけは察しが良い。
3人(1匹?)で森の中を歩いていると、急に地面が消えた。いや消えたんじゃない。穴か何かに私が落ちたんだ。
ドサッ!
「いたた……」
空洞のようなものが地面の下にあったらしく、ちょうどそこに落ちてしまったようだ。大きめな空洞で私が落ちてきたであろう地面は私の頭上の高い位置にある。
「おーい! 大丈夫?」
「だいじょーぶ!」
上からノックスの声がする。
「あっ! ルキア見て!」
いつの間にか私のところに降りてきていたソレイユが何かを発見したようだ。ソレイユの視線の先を見ると……何かの果実がたくさん実っている低木があった。
「もしかしてマリンベリー?」
「うーん、わかんない!」
「役に立たないなぁ」
「ルキアだって覚えてないじゃん!」
「私はいーの! ソレイユはお助けマスコットでしょ!?」
「お助けマスコットだって万能じゃないの!」
「はいはい! そこまで。とりあえず近くに確認しに行こうか」
いつの間にかノックスも降りてきていたようで、私達の不毛な争いに決着をつけてくれた。
マリンベリーらしき果実へと近づくと、ノックスの持っている冊子に載っているイラストと比べる。
「おっ! 合ってそう」
「やった! じゃあたくさん摘んじゃお! あればあるほど良いって言ってたし」
「「そうだね」」
私達は手分けしてマリンベリーを収穫し始めた。
・
・
・
あらかた収穫したところで、まだまだこの空洞に生えているのではと思い始めた。2人に少し移動しようと声をかけようとしたとき……
「キャー! 誰か!」
「「「今のは!?」」」
どこからか悲鳴が聞こえてきた。声の響き方的に、この空洞と繋がっているどこからか聞こえてきたような気がする。
「ルキア、ノックス! シャドーの気配もする!」
ソレイユのアホ毛がフヨフヨとどこかを指し示している。……これは怪物が現れたに違いない。
ノックスと目を合わせて頷く。私は変身ステッキを、ノックスはペンダントを取り出した。
「メイクアップマジック!」
私達は光に包まれた。
光が収まり、そこに立っていたのは変身を完了したルキアとノックスだった。




