(6) 観光
「……お話は一段落つきましたか?」
レイラが恐る恐る私達に声をかけてきた。
しまった、ここはレイラたちの家なのに私達だけで熱中して話してしまった。
「ごめん! うん! 話し合いは終わったよー」
「よかったです。それでは……」
「あのさ! コーラルストリートに一緒に行こう!」
レイラがなにかを話そうとしたとき、横から入るようにネロが話しかけてきた。……コーラルストリート?
新しく出てきた場所名についても気になるが、レイラが話そうとしていたことも気になる。レイラへと視線を向けると、レイラは苦笑しながらネロの頭に手を置いた。
「私もネロと同じことを言おうと思っていました」
「お姉ちゃんもー? やっぱりそうだよね!」
2人ともコーラルストリートという場所に私達を連れていこうという提案をしたかったようだった。
「コーラルストリート?」
「それはね……」
コーラルストリートについて聞くと、ネロが楽しそうに説明し始めた。自分のわかることだから張り切っているのかもしれない。小さい子あるあるかも。ランもよくやる笑
ネロの話に笑みを浮かべながら相づちを打つ。他のみんなの顔にも笑顔が浮かんでいたり、笑顔までいかなくともほほえましいものを見る表情が浮かんでいる。
ネロの説明と、足りない部分はレイラの補足によってなんとなくコーラルストリートについて理解できた。
コーラルストリートはこの近くにある通りの名で、様々なものが揃う通りらしい。食べ物や服、家まで揃うということだった。……家?
とりあえずいつまで私達がこの世界にいるのかはわからないが、最低限生活用品を揃える必要がある。そのためコーラルストリートには絶対に行かないといけないようだ……
「コーラルストリートにはね! 屋台もいっぱいあって、美味しいものいっぱいあるんだよー!」
ネロが身振り手振りをたくさんしながら私達に説明してくれる。
そして詳しい屋台の食べ物について、近くにいたルーナに説明し始めた。ルーナは下に妹などがいないため、どうネロに接すればいいか戸惑いつつも、一生懸命話を聞いているようだ。
「良ければどうですか?」
レイラがにこりと笑いかけてくる。
……この服装なら変に目立つこともないだろう。みんなで顔を合わせて頷いた。
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人が道いっぱいに広がっている。楽しそうな声が至るところから聞こえてくる。
私達はコーラルストリートへとやってきた。
怪物の被害があると聞いていたため、こんなにたくさんの人が楽しそうに外にいることが少し疑問にも思う。
先ほど電話のために出た場所ではそんなに人はいなかったし、この世界にはこんなに人がいたのかと驚きだ。
まぁ大々的には怪物の被害の情報が広まっていないのかもしれない。
「こっちだよー!」
ネロがルーナの手を引っ張り、どこかへと走り出した。
そして2人の姿が人混みの中へと消えていった。
「あっ! 見えなくなっちゃった!」
「たぶん行く場所はわかるので大丈夫ですよ」
はぐれてしまうと私達は焦ったが、レイラが冷静に返事をくれた。
その余裕そうな顔からどうやらネロが先に行ってしまうことは予想がついていたように思われる。行き先がわかっているならばと、私達はのんびりと歩き出した。
人混みへと足を踏み出すと、左右から食べ物のいい匂いが流れてくる。チラチラとお店を冷やかしながらレイラについていく。
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人混みをかき分けながら歩き続けていると、目の前のレイラが立ち止まった。
「ここです!」
案内された場所には大きな建物が建っていた。その建物の入口では人が頻繁に出入りしている。目立つところに掲げられている看板にはブルーフォレストの文字。
「「「ブルーフォレスト?」」」
「知り合いがやっている宿屋兼食堂です! 知り合いはとてもいい人達なんですよ。よく私達もお世話になるんです」
どうやらレイラたちの知り合いのお店らしい。
私達にそう話し、レイラはブルーフォレストの扉をゆっくりと開けた。
開けられた扉から中のにぎやかな声が聞こえてきた。その中にはネロの高い声も聞こえる。さっと店内を見渡すと、食事をしているたくさんの人が見える。きっとここは食堂なんだろう。
先ほどまでのコーラルストリートにいた人たちとは異なり、少しボロボロになった服を来ている人が多い。もしかしたら冒険者かもしれない。まぁこの世界に冒険者がいるかどうかは知らないが。私の世界でたまに見る冒険者に雰囲気が似ている気がする。
そんな風に店内を観察していると、カウンター席にルーナとネロ、そして知らない若い男性が話しながら座っているのが視界に入ってきた。
「あ、ネロとルーナいた……」
「おや! レイラじゃないか!」
「アンナさん!」
ネロとルーナのもとへと向かおうとしたとき、元気よくレイラの名前を呼ぶ声があった。
その声に反応してレイラが嬉しそうに声をあげた。声をかけてきた主を見ると、恰幅のいい明るそうな女性だった。レイラの知り合いのようだ。
「皆さん紹介しますね! こちらのブルーフォレストを営んでいる方で、アンナさんと言います」
「いらっしゃい! レイラの知り合いなら安くするよ!」
「「「初めまして」」」
アンナさんに挨拶をしてもらったが、あまりの元気の良さに私達は少し圧倒されてしまった。けれどアンナさんの纏う雰囲気からこの場所があたたかく感じる理由を知れた気がする。
私達はブルーフォレストへとやってきた。




