(5) 広がる闇
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ネロとレイラの家へと戻ると、アトランティス風の服装を見にまとったみんなが出迎えてくれた。変身は解いているようだ。
「えー! みんな似合ってる! シエルやリュンヌが用意したの?」
ソレイユは私についてきていたため、シエルやリュンヌがみんなの服装を用意したのだろうか?
「リリィとルーナのぶんは私達が用意しましたが……」
「彼のぶんは、私の弟のものです」
「レイラの弟?」
「私のお兄ちゃんのだよ!」
なるほど、聖のぶんだけはレイラの弟でネロの兄という人物の服か。妖精たちは男性の服は用意できないのかな?
私の心の中で浮かべた疑問に答えるように、ソレイユが話し出す。
「僕たち妖精は基本契約者にしか魔法をかけられないんだ。まぁ一部例外はあるけどね」
ということはソレイユは私に、シエルは百合に、リュンヌは遥にしか魔法をかけられないということかな?
百合や遥は私と同じように女性ものの服だがそれぞれ少しデザインが違う。
私と百合はふんわりとした部分が多く、遥のものは体のラインがわかるような少しタイトなデザインだ。私のものには腰で絞る紐のようなものがついていて、百合にはついていない。
デザインが異なることで、よりそれぞれに合ったスタイルになっている。
「百合も遥も聖も本当に似合ってるよ!」
「「「あっ!」」」
「なにっ!?」
みんなを褒めたところ、同時に声をあげた。思わず聞き返す。おかしなことは言ってないはずだけど……?
「名前は変身後のもので呼び合おうってなったんだ」
ノックスが説明してくれた。百合や遥、聖などの名前は、私の名前とは違い、この世界では馴染みがないらしい。
聖メーテル教会の面々は勇者たちを敵視しているため、できるだけ違和感を持たれないようにということらしい。
なるほど、だからレイラは私が外に出るときに教会の人の見回りに気をつけてと忠告してきたのか……
「ねぇなんで聖メーテル教会は勇者を敵視しているの?」
「詳しくはわかりませんが……」
レイラが私の疑問に対して、知っている情報を話してくれた。
定期的に神殿で聖メーテル教会が式典を開くだと言う。そこで語られるのは以下のことらしい。
女神さまが試練を与えるのは自分の世界の人間に対してだけだ。
試練とは己の力で乗り越えるべきものだ。
物語にて語られる勇者は試練への侵入者だ。
己の力で試練を越えられないものには祝福など与えられはしない。
勇者をもてはやすものは弱き己を変えようとしない弱者だ。
今こそ己の手で試練を越えて魅せよ!
試練は孤独に挑むものであり、他者の試練を手助けすることは、つまりその挑戦者の成長を阻害する悪の行為だ!
といった具合だそうだ。
「えぇ! じゃあ1人で怪物を倒しにいくのは問題ないわけ?」
「いえ、試練を受けるのは神殿内と定められているそうなんです」
「ん? じゃあ外に出てきている怪物とやらはどうするんだ?」
「外で怪物に遭遇するのは、そういう運命だと受け入れろと……」
「「「「えぇ!」」」」
明らかにその聖メーテル教会とやらはめちゃくちゃだ。けれどあのよくわからない考えに心酔している人間もかなり多いらしい。
聖メーテル教会を信じている者が、怪物と会ったとき抵抗せずに連れ去れたという話を聞いたことがあるともレイラは話していた。
「おかしいとは思うんです。けれどだんだん女神さまの試練とはそういうものなのかと思うようになってきていて……」
レイラが少し信じているというような話をし出した。思わずぎょっとレイラを見て、気づいたことがあった。
ふんわりとレイラの周りを薄い紫色の魔力が漂っている。まるで風に色がついているようだ。レイラは本の世界に没頭しているリリィのように、心ここにあらずだ。
……まさかこうやって信者を増やしている?
どこから紫色の魔力が流れてきているかと探ろうと思ったとき、バタンと窓を閉める音が聞こえた。
「窓開いてた! 寒いと思ったんだよ!」
「ネロ。閉めてくれたの? ありがとう」
レイラは音で思考が現実へと戻ってきたようで、ネロのもとへと歩いていった。周りに漂っていた紫色の魔力もいつの間にか消えていた。
今のは……
「そういえばファタールからなんて?」
「あ、うん。えっとね……」
考えごとをしていると、隣にいたノックスから声をかけられた。
ファタールから色々聞いたんだった! 思考を切り替えて、ノックスに向き合う。少し離れた場所にいたリリィやルーナを呼んで、情報を共有した。
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「帰れないか……」
みんな世界を移動することなんて初めて(妖精界は例外かな?)で、それに帰れないという点にショックを受けているようだった。
……そうだよね。私は夢みたいな感じで始まって、何回も移動したからなんか慣れちゃったけど普通は困惑するよね。それに帰れないって辛いし。
「……でもきっとこの世界の闇を祓えば帰れるんでしょ?」
「それならやるしかないわね」
「そうだね。……学校のことはなんとかしてくれるって言ってたらしいけど、頼んだ家具どうなってるかな。受け取っといてもらえるかな」
「なんかみんな意外と余裕そう!? なんで?」
もっと暗い雰囲気になるかと思ったが、なんだかみんなの顔は明るい。不思議に思って、問いかけるとみんなはなんてことないように笑った。
「ルキアがまだ帰れてないってこと知ってるしね。私達がその仲間になったってだけだから」
「それにどうせ知り合いや……友達はここにいるみんなだけだし」
「俺もそうだな。唯一の家族もここにいるしな」
「そ、そういうもんなのか」
「「「そういうもんなの」」」
たぶん本当はそこまでみんな軽く考えてはいないだろう。だけど心配をかけまいと明るく言っているのかもしれない。
私がこれ以上なにか言っても変わらないだろうし……うん。
「じゃあこの世界の闇も協力して祓おう!」
「うん!」
「そうね」
「そうだな」
新たにアトランティスへの闇へと挑む覚悟を決めた。




