(4) 連絡
第1章の「(9)帰れない」の部分を(10)と分割しました。
帰れなかった10日間の部分を書き足しました。
「外へ行かれるのですか?」
レイラが私を引き留めた。心なしか焦りが表情に浮かんでいるように見える。
「うん。知り合いから連絡来たから」
「その板で……? いやそれよりも……!」
レイラはスマホを珍しげに見つめていたが、何かを思い出したかのように話し出した。
レイラによると聖メーテル教会が見回っているかもしれないということだ。そのため気をつけてほしいと……。
私の顔なんて知らないんじゃないかと思ったが、この魔法少女の服が目立つということらしい。
観光客でもこんな服の人は見たことがないということで、このまま出歩くと目をつけられるかもしれない。
「確かにこの服は……」
「私の服お貸ししますよ?」
「いや変身解けば大丈夫なはず!」
レイラが服を貸してくれようとしてくれたが、断った。地球で生活したときのように変身を解けば勝手に環境に合う服になるはずと思ったためだ。
変身を解除しようと変身ステッキを取り出すと……。ん? 前まではなかった羽のような飾りがついている。不思議には思ったが、今は忙しいしあとで確認しようと意識から追いやった。
軽くステッキを振ると私の体は光に包まれ、服装が変わった。
「これは……! 地球での服? ソレイユ、ここに合った服にならないの?」
「うぅーん、僕もあんまりこの世界の服装わからないな。あっ! レイラ見せてもらってもいい?」
ソレイユがレイラにこの世界の服を見せてもらいに別室へと飛んでいった。
……時間がかかるなら、レイラに借りた方が早い気もするけど。この時点でだいぶ時間を使っていて、かかってきていた電話も切れてしまった。
「ねぇ! 時間かかるなら服借りても……」
「「おまたせー!」」
レイラとソレイユに声をかけようとしたとき、ちょうど2人が戻ってきた。ソレイユが意気揚々と近づいてきた。
「これは絶対似合うと思う!」
ソレイユがもふもふの手のひらから光を発し、私へと向けてきた。そういえばこんな風にソレイユの魔法を見るのは初めてかもしれない。
そんなことを考えているうちに、私の服は見たことのないものに変わっていた。よく見たらレイラやネロの服装に似ている気がする。
「「「かわいいー!」」」
「うん、似合ってるよ」
「いいじゃない」
みんなが口々に褒めてくれる。嬉しくて軽くその場で回る。スカートがふわりと広がった。
「やっぱり僕の見立て通りだね!」
「これならば外に出ても教会の方には気づかれないと思います」
「あ、電話!」
変わった服にテンションが上がっていたが、レイラの言葉でファタールから連絡がきてたことを思い出した。急いでスマホを持って外へと出た。
プルル……
「もしもし! 遅くなっちゃったごめん!」
「いいよー。忙しかった?」
「忙しいわけではないんだけど……」
「そう? あ、そうだ。地球の浄化無事に終わったみたいだね。頑張ったね」
ファタールから地球の浄化が完了したことを聞いて心底ほっとした。なんとなくできていた気もしていたが、正確なことはわかっていなかったから……。
妖精界にファタールが様子を見に行ったところ、地球に通じる木の根がしっかりと浄化されていたようだ。それに加え、スマホの映像でも私達の動きを見ていたらしく、優しく褒めてくれた。
「良かった……。無事に終わってたのね」
「それでどうする? ルキア元のアルテルに1回帰るかい?」
「あっ! それのことなんだけど……」
ファタールに私達がアトランティスという世界に来てしまったこと、それと勇者伝説やレイラから聞いた話を伝えた。
話を聞いたファタールからは電話ごしにひどく驚いた気配が伝わってきた。
「それは……みんな行ってるってことだよね?」
「えぇ、私だけじゃなくてみんな一緒だよ!」
「なるほど……」
「何か問題が?」
「ルキア1人ならたぶんエウロの力で元の世界に送れるんだけど、何人もってなるとね」
確かにやっと私の帰る目処が着くぐらいだ。複数人を送るのはコストが大きいのかもしれない。考えるために少し黙ると、ファタールが問いかけてくる。
「ルキアは長い間、元の世界に帰れてないから1人でも帰るかい?」
「……ファタールはわかってるでしょ? 私1人で帰るわけないって」
「そうだね。愚問だったよ」
「ねぇレイラが言っていた怪物って……」
「あぁシャドーだね」
やはりシャドー。それならば私がやることは1つだ。
「アトランティスの闇も祓ってみせるよ」
「心強いね。……地球でのみんながいなくなった諸々の問題は対処しとくよ」
「問題?」
「学校とかね」
「なるほど」
「じゃあ気をつけてね」
ファタールとの電話が終わった。この世界で私のやることが明確になった気がする。まずはみんなに情報を共有しないと。
スマホをしまい、ネロとレイラの家に戻ろうと歩き始めたときに少し遠くにフードを被った人が見えた。フードを被っている人、敵だったノックスのときのせいで怪しく見えるんだよなー。
こんな人目につくところに怪しい人はいないかとは思ったが、視線で追ってしまう。
そのとき強風が吹いて、私の髪や服を強く揺らした。視線の先にいたフードの人物も強い風にあおられたようだ。勢いよくフードが外れた。
フードの下から出てきたのは妖艶な女性だった。
「綺麗な人……」
思わず呟いたとき、女性と目が合った気がした。
女性は再びフードを深く被り、人混みへと消えていった。……見すぎてたかもしれない。
みんなのもとへと帰るために私は踵を返して歩き出した。




