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(26) 現れたもの


 私達を包んでいた柔らかな光がだんだんと消滅していった。

 ボロボロになった私達が明らかになる。互いにその姿が視界に入り、思わず目を合わせて笑い合う。


「よかったよ。もとに戻って」

「ほんとよ!」

「ごめんね。なんだか私が私じゃなくなった感覚で……」

「心配したんだからー!」

「ルキア苦しいよ!」


 優しいリリィに戻ったことを再確認し、力強く抱きしめる。ルーナとノックスはにこやかに見守っている。


「ねぇそういえば……」


 パチパチ……

 リリィに詳しい話を聞こうと思ったとき、どこからか手を叩く音が聞こえてきた。音の方へと視線を向けると雨宮さんがゆっくりと歩いてくるところだった。


「すごいですね! 思わず感動して涙が出そうでした。」

「雨宮さん。……やっぱりあなたが……」


 雨宮さんは全く感動したようには見えない表情で話しかけてきた。けれどすぐに視線を私達から外した。

 雨宮さんは大きな卵に触れながらなにか確かめているようだった。


「……ちょうどいいな。あとは仕上げか」


 こちらが視線を向けていると、ようやく私達の存在を思い出したように微笑みかけてきた。そしてゆっくりと眼鏡を外し、髪をくしゃりとかき混ぜた。

 ……だいぶ雰囲気が変わるな。知的な印象から女性を手玉にとっていそうな男性に変化した……。


 怪しげに雨宮さんを見ていると、隣にいたノックスが大声を出した。


「あんたは……! 確か……レウィス!」

「「「レウィス?」」」


 私達は知らないが、ノックスはあの顔を知っているようだった。名前を呼ばれた雨宮さんもとい、レウィスは驚いたように目を丸くした。


「あちゃー、やっぱり覚えてたか」

「どういうことだ?」

「ノックス、君がこちらにいたときの記憶はある程度は消したんだけど……。残ってるかなーって思ったんだよね。やばいなー、怒られるな」


 レウィスは1人納得したように呟いている。……前にノックスが操られていたときの仲間なんだろうか。


「あなたあの気持ち悪い操りヤローの知り合い!?」

「ぷっ! あはは!」

「なにがおかしいのよ!?」

「いや先輩やっぱりルキアちゃんに気持ち悪がられてるじゃん」

「先輩?」

「そ! ノックスを操っていた人の後輩。まぁ親友みたいなものだけどね!」


 レウィスはあの異常に執着してくる敵と仲間のようだった。やはりシャドーを使って世界を闇に包もうとする組織がいるみたいね。

 私達が敵意をあらわにするとレウィスは困ったような表情をした。


「うーん、あんまり俺は戦闘は得意じゃないんだよな」

「そう?それは良かった。ならさっさと倒すだけよ」

「あれ、リリィちゃん厳しいな。」

「当たり前でしょ。……と思ったのに」


 リリィが小さくなにかを呟いた。あまりに小さい声で隣にいた私にもよく聞こえなかった。けどまぁなんとなく言った言葉はわかる気がする。


「ん? ごめんなんて? ……って話をしてる間にもちょうどいいね」


 レウィスが触れていた大きな卵にヒビが入り始めた。

 ……まさかあれが孵化する!? あの大きさから生まれるシャドーなんて、ドラゴンと同じくらいの大きさになるんじゃない!?


 私達に緊張が走る。孵化する前にレウィスを倒さなければと駆け出した。私達がレウィスのもとに到着する前にレウィスが呟いた。


「その前に仕上げだね」


 パチンッ!

 レウィスが指を鳴らした。なぜ?


「あ゛ぁぁぁ!」 

「「シエル!」」


 その瞬間、悲痛な声が聞こえてきた。そして一緒に聞こえたソレイユとリュンヌのシエルを呼ぶ声。思わず私達は立ち止まり、声の方へと目を向けた。

 そこにはソレイユとリュンヌの頭上に紫色の球体が現れていた。……まさかあれがシエル!?


 紫色の球体は吸い込まれるようにレウィスの手の上へと移動してきた。レウィスはそれを弄ぶように転がしてから、卵へと押しつけた。

 シエルらしき紫色の球体は溶けるように大きな卵へと吸収された。


「これで完成かな。どこまで効果を発揮するか……」


 まるで実験を観察しているかのようにレウィスは呟く。私達が憤りの声をあげると、楽しそうに笑った。


「大丈夫。さすがに君たちは死なないんじゃない?特にルキアちゃんを殺したら怒られちゃうしね」

「そんなこと心配してないわ! シエルは!?」

「さぁ? とりあえず俺は帰らせてもらうよ。違う場所で観察しとくね!」

「「「そんなことさせるわけないでしょ!」」」

「ふざけてるのか?」

「「ふざけるなー!」」


 私達は一斉にレウィスに攻撃をしかけた。けれどすでにレウィスの背後にはあの闇魔法で作られている空間が出現していた。

 それにレウィスが再度指を鳴らしたことで、小さな卵たちが一斉に孵り私達の邪魔をする。


「じゃあ……」

「待って!」


 消えようとしたレウィスにリリィが声をかけた。シャドーと私達が戦う戦闘音の中で、私にはその会話が聞こえてきた。


「ねぇ! 全部嘘だったの!? 本が好きだって言ったこと、甘いものが苦手だってこと、私らしくあることが……好きだってこと!」


 レウィスは少し考えるように自身の左下の方へと目線を向けた。そしてにっこりと笑って言った。


「嘘だよ。全部嘘。騙されてバカみたいだね」


 それだけ言ってレウィスは消えていった。こちらからリリィの表情は見えない。

 ……大丈夫だろうか。すぐにリリィに声をかけに行きたかったが、襲ってくるシャドーたちのせいでうまくいかない。


 パキパキ……

 嫌な音が聞こえ、急いで視線を大きな卵へと向けた。卵には先ほどより大きなヒビが入っていた。


「まずい! 生まれちゃ……」


 バキバキバキ!

 大きな音を立てて、卵が孵化してしまった。


 割れた卵からは濃い闇の魔力も同時に溢れだしてきた。そして姿を表したのは大きな天使だった。


 ……大きな天使? 




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