(25) 取り戻すために
「浮いてる!?」
リリィの体がふわりと宙に浮かび上がった。上から攻撃してくるつもりなのかもしれない。
「ダークアロー」
ヒュッ! ドサドサドサ!
紫色の矢が大量に上から降り注いでくる。
私達はバラバラの方向へと逃げながら、攻撃の隙を探す。けれどリリィの位置の方が優位なのもあり、なかなか隙がみつからない。
私達は逃げるのに必死なのに対し、リリィは余裕そうに微笑みを浮かべている。いつもリリィの表情にむかつくことはないのだが、今はイラつきを覚える。
しばらく走り回っていたところで、やっとルーナとノックスと集合した。
「どうする!?」
「どうするって……攻撃するしかないでしょ?」
「攻撃……。リリィに……」
「たぶんあの状態なら致命傷は与えないよ」
「ノックス……。そうよね」
「それに逃げてるだけじゃ埒があかないわよ! ほらまた!」
少し話をできたが、またリリィの攻撃が降ってくる。分散するときに互いに目をあわせてうなずいた。……攻撃をしかけるしかない。
足に力を入れて、近くの木を蹴りあげる。その反動を利用してリリィが浮いている場所より高くへ飛び上がる。
「「!」」
飛び上がるとリリィと目が合った。そのときになってやっとリリィは微笑みを崩して、驚いた表情をした。
「フレイム!」
「くっ!」
炎がリリィを包み込むように放つ。
リリィは少し顔を歪めて飛び退いた。
「アイスニードル!」
飛び退いた先を塞ぐようにノックスが氷を放った。まるで氷の檻のようになり、リリィは立ち止まった。
その隙を見逃さないようにルーナが魔力をこめた拳で攻撃をしかけた。
「さっさと目を覚ましなさいよ!」
「うわぁすごいパンチ……」
グシャッ!バキバキバキ!
勢いよく殴られたリリィは、氷の檻を破壊しながら吹き飛ばされていった。そして空中から落ちて地面へと横たわった。
「……まだ核は紫色のままね。ルキア」
「わかってる」
浄化のために横たわったリリィへと近づく。
ゆっくりと歩いていく。けれどリリィが起き上がる気配はない。それにピクリとも動かない。……大丈夫なのだろうか。
横たわったリリィのすぐ近くで立ち止まる。まだ紫色の光がリリィの核でチラチラと光っているのがわかる。
「フレ……」
「ル……ルキア」
「リリィ!」
浄化のためにリリィの核近くへと手をかざした。そのままフレイムを放とうとしたときに、リリィの体がピクリと動いた。閉じられていた瞼がゆっくりと開かれ、私の名前を呼ぶ。
「「ルキア!」」
「わかってる」
ルーナとノックスが鋭く私の名前を呼ぶ。わかっている。まだ浄化は済んでいないからこれはまだ元のリリィじゃない。
「ルキア?」
けれど名前を呼ばれると……どうにも攻撃できない。
私が手をかざしたまま迷っていると、リリィがニヤリと笑った。
「あっ!」
「ダークソード」
「キャッ!」
「「ルキア!」」
リリィは闇魔法で剣のようなものを作り出し、私に斬りかかってきた。幸い魔法少女の服がガードしてくれたようで斬られはしなかったが、勢いよく吹き飛ばされた。
その勢いのまま少し離れた場所にあった岩へと私は叩きつけられた。
「カハッ!」
「大丈夫!? ルキア!」
ソレイユが私に近寄ってポーションをかけてくれる。回復のポーションらしい。
「リリィ!」
「このっ!」
その間にルーナとノックスがリリィへと攻撃をしかけた。
しかし2人がかりでも互角のようで、一進一退の攻防が見える。
「ソレイユ……ポーションなんて持ってたのね」
「最近手に入れたんだ。ほら喋らないで回復に集中して」
「切り傷はないよ」
「打撲はあるでしょ」
「ルキア」
ソレイユに回復してもらっていると、シエルがゆっくりと近づいてきた。体調不良だから隠れててって言ったのに!
「おねがいリリィを」
「うん。わかってるよ。私の友達だもん。任せて」
そっとシエルの手を握ると、シエルの目から涙が溢れてきた。
そのとき大きな衝撃が地面から伝わってきた。思わず戦っている3人の方へと視線を向けると、なにか大きな衝突があったのか3人がそれぞれ別の方向に吹き飛ばされるところだった。
「行ってくるね」
「「いってらっしゃい」」
ソレイユとシエルにそう告げ、立ち上がった。
ルーナとノックスには悪いがリリィのもとへと一直線に向かう。歩いている途中で、リリィそして百合のときに一緒に過ごした頭の中に思い出が流れてくる。
最初に出会ったときのこと、初めて一緒に食べたカップラーメン、一緒に行ったカフェ。まだまだたくさんの思い出が溢れてくる。
リリィがよろよろと立ち上がろうとしたのが見えたので、駆け足で近寄り押さえつける。横たわったリリィの上へと馬乗りになった。
リリィは私の拘束を解こうと暴れる。すごい力だ。このまま浄化を……。リリィは憎しみをこめた目で睨んでくる。
「ねぇ……私のこと嫌いになっちゃった?」
「……」
思わず問いかけてしまう。リリィは何も言わずに睨んでくる。
「私はリリィのことが大好きだよ。……だから雨宮さんが良い人だったらいいなって本気で思ってた。でもダメだなって感じたし教えられた。……友達の幸せは願うものでしょ?」
ポタポタ……
リリィの顔に熱い水滴が落ちていくのが見える。……私泣いてるのね。
「……」
リリィは憎しみの表情を落とて私をぼーっと見てくる。そして私が浄化のために解いた左手をそっと私の頬へと伸ばしてきた。
「……」
「リリィ?」
そのとき私の両肩に手が乗った。気がつくとルーナとノックスが近くまで来ていたようだ。その2人があたたかい笑みを浮かべて私の肩に手を乗せている。
すると不思議なことにリリィの核が光りだした。それに共鳴するかのように私達の核も光りはじめた。まるで繭のように光が優しく私達を包み込んだ。
「「「これは……!?」」」
そして繭の中でリリィの核にあった紫色の光が消えていくのがわかった。
ゆっくりと目を閉じ、また開いたリリィ。その表情は優しげなものに変わっていた。
「「「リリィ……?」」」
「ごめんね皆。ただいま」
「「「……おかえり!」」」
リリィが戻ってきた。……おかえりなさい。
私達は光の中で抱き合った。




