(21) 忍び寄る危険
タイトルを少し変更しました。
真っ白な廊下をゆっくりと歩く。
前を歩く雨宮さんの歩くペースがのんびりのため、後ろを歩く私達のペースも自然と遅いものになる。
やがて前に来た部屋の前へと到着した。雨宮さんが扉を開けて中へ入っていった。それに続くように入ろうとすると、前から不思議そうな声があがった。
「あれ? さっきまでこの部屋にいたはずなんだけど……」
その言い草から中にはリリィやシエルはいないようだった。
「どこか死角にいるとかじゃないですか?」
「わざわざ隠れるようなことするかな?」
私達も部屋へと入ると、やはりパッと見は部屋の中にはリリィたちの姿は見当たらなかった。
入った部屋は相変わらず本棚の圧迫感が強い。けれども前にも思ったけれど、不思議な安心感がある。落ち着いた雰囲気の空間だから?
まぁ廊下や他の部屋が真っ白に統一されていたことからすると、ここの違和感は少しあるが。
ノックスは少し眉を潜めて腕をさすっている。疑問に思い、こっそりと話しかける。
「ノックスどうしたの? 寒い?」
「いや寒くないけど……なんかここ気持ち悪くない?」
「気持ち悪い? 特にそうは思わないけど。」
「なぜかゾワゾワする。ルキアは感じないの?」
「別に……? 逆に心地いいと感じるけど。」
「俺だけ? ……ソレイユは?」
「僕もなんかふわふわ心地いいよー!」
「えぇ……それに特にこの扉から……」
ノックスは苦痛に耐えるような表情で部屋にあった扉へと近づく。そんなところに扉があったのか。なぜかカモフラージュされているようで、一見するとただの本棚に見える。
ノックスがドアノブへと手をかけようと手をのばす……
「あっ! そこは!」
「「え?」」
ノックスと扉の間に雨宮さんが割って入ってきた。
「なにか隠してるんですか?」
「まぁある意味そうだね。ここの研究施設の機密情報ってとこかな。企業秘密ってやつさ。」
「なるほど!」
「でもこの扉に君たちが気づくってことは、百合ちゃんたちもここに入ったのかもしれないのか……。とりあえず君たちはここにいて!」
雨宮さんは扉にある本へと指を押し当て、部屋の中へと入っていった。
「今のは指紋認証?」
「指紋認証?」
「指に模様があるのがわかる? これを読み取って鍵を開けるシステムだよ」
「へぇー! ても誰でも開けられちゃうんじゃない?」
「いや指紋は一人一人違うんだ」
「それなら安心ね! ……それなら雨宮さんはなんでノックスが開けられないのにあんなに焦ってたのかな?」
「……確かにな。というかリリィ、いや百合はどうやって中に?」
「確かに!」
ますます疑問が増えていく。それにしても百合の名前を知っているってことは、リリィは雨宮さんの前で変身を解いたのかな……?
しばらく扉の前で待っていると、扉が内側から開いた。
出てきた雨宮さんは百合を抱えていた。その百合の腕の中にはシエルがいる。そして2人とも意識がない!?
「百合! シエル!」
「すみません。2人とも中で眠っていたみたいなんですが、少し体調が悪いみたいです」
シエルごと百合を受けとる。確かに触れる体は熱っぽい。これは早く帰ってちゃんと寝させてあげないと。
「ごめんなさい帰ります!」
「えぇ、いつでもまたきてください。百合ちゃんたちにもお大事にって伝えといてください」
「はい! ソレイユ、ノックス帰ろう!」
「うん! 帰ろう!」
「気になることはあるけど……そうだね」
3人(2人プラス1匹)で急いで施設を飛び出した。私の腕の中には百合とシエルがいる。
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私達が出ていった部屋で雨宮はポソリと呟いた。
「あとは開花を待つだけだな……」
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外へと出た私達。ソレイユは私とノックスの肩に手を置いた。
そしてソレイユの転移魔法が展開された。周りの景色が変わっていく。
気がつくと百合の部屋へと移動していた。急いで寝室へと2人を連れていく。布団へとゆっくりとおろしたときに、2人の核が変色したように見えた。
「今……紫色に? いや見間違いか。」
一瞬紫色になったように……。でも魔法少女の核には浄化効果があるはずだし、今は完全に真っ白。私も疲れているのかもしれない。
2人に布団をかけて部屋から出た。
リビングへと戻るとノックスがソレイユと話し合いをしていた。
「やっぱり俺から見てもあの人は怪しいと思う。それにあの建物。なにかやばいことが隠されてると思う」
「やばいこと?」
「うん。とりあえず百合をこれ以上雨宮さんに関わらせない方がいいと思う」
「うーん、それは難しいんじゃないかな? ね、ルキア?」
「そうね。難しいと思うわ」
「どうして?」
「あー、たぶん百合は雨宮さんのことが好きだと思うの」
「恋愛的に?」
「うん。恋愛的に」
「なーるほど。でもどこか怪しいと思わないのかな?」
「ミステリアスな部分って結構魅力的なのよ」
「なんかルキア、説得力あるね。実体験?」
「ソレイユ、今はそんなこと話してる場合じゃないから。とりあえず百合が元気になったら忠告はしとこうかな」
百合へと警告はしておこうと考えた。まぁ聞いてくれるとは思えないが。それに……雨宮さんは怪しい部分はあるがなぜか信頼できるんだよな。これはどうして? そんなに話していないはずなのに。
ノックスは不審がっているけれど。ソレイユもそれほど警戒していないように思える。
「そういえば……」
「「ん?」」
「あ、いやなんでもない。お腹すいたね」
「確かに。ショピングモールで結局なにも食べてないんだよな」
「お昼にしよっか」
先ほどの見たかもしれない核の変色について話そうかと口を開いた。けれど私の見間違いの可能性が高いし、そんなことに時間を使わせるのは申し訳ないと思った。
それにお腹もすいたし、また見えたときに考えようと頭のすみへと追いやった。
この考えが間違っていたことに気づくのは、しばらく経ってからだった。




