(20) 交差する光と闇
シャドーの視線は相変わらず私へと固定されている。
目をより惹きやすいように、大袈裟に走り出す。
「ツカマエル!」
「捕まえられるもんならね!」
狙いどおり、シャドーはこちらへ一直線に向かってくる、ノックスのことは意識外にあるようだ。
素早く攻撃をかわしながら動きまわる。それによってシャドーへ大きなストレスを与えているように感じる。イライラしたかのようにシャドーの声に鋭さが増している。
「ツカマエラレナイ! トマレ! トマレヨ!」
「あっ!」
まるで先ほどの再現のように転んで倒れ込む。……もちろん演技だ。
シャドーも余裕がないのか、いたぶるなどの様子もなく真っ直ぐにこちらへ向かってくる。
「……かかった」
視界いっぱいにシャドーが映ったとき、思わず笑みがこぼれてしまった。ピンチであるはずの私が笑ったことで、シャドーは驚いた顔をした。けれどその姿も一瞬で見えなくなった。
バーン!
大きな氷の塊が巨人シャドーの脳天を貫くように飛んできた。
脳天を貫通すると、すぐにシャドーの体の崩壊が始まった。すごい威力だ。……核は攻撃のときに同時に破壊してしまったようだ。
まぁいいか。なんか気持ち悪いシャドーの核を吸収するのは嫌だったし。
シャドーに当たった氷の塊は、細かくくだけ散った。空中にキラキラと細かい氷が舞っている。なんだかとても幻想的だ。
その空間を突っ切るようにノックスが歩いてきた。
「ノックスナイス!」
「ルキアもシャドーの気を惹いてくれてありがとう」
パシーン!
近寄ってきたノックスとハイタッチをかわす。
「すごい氷魔法だったね! もともと使ってたの?」
「いや初めて使ったよ」
「初めて!?」
「なんとなく使えるって思ったんだよね」
「へぇー!」
すると頭の中に映像が流れてきた。
ノックスに似てる男性が大きな氷魔法を使っているところだ。先ほどの光景ではなく、知らない場所だ。けれどなぜか見覚えがある。それに敵対していると思われるものと戦闘している場面だが、ひどく安心感が広がる。
私? も炎をその敵対していると思われるへと放っている。それも今の私が使う魔法よりもすごく強力に見える。
そこで映像が終わった。
「これは……?」
「ルキアにも今の見えた?」
「うん、頭の中になにかの映像が……」
「やっぱりなにか忘れていることがあるみたいだね」
「なんで忘れているんだろうか」
「定期的に思い出されることも何か意味があるのかな……?」
「シャドーのようなものと戦っているみたいだよね」
「あっ! ソレイユは何か知らないの?」
「僕!?」
ソレイユは目を左右に泳がせたかと思えば、やはり話すことはできないと話した。正確には話そうと口を開いたが、言葉になっていない感じだ。それに対して、ソレイユは悔しそうな顔をした。
その様子を見て、ノックスと私は目を合わせた。たぶん同じことを考えているのだろう。
ソレイユを困らせたいわけではないので、この会話はいったんやめることにした。
「そういえばシエルたちが近くにいるって言ってたけど、リリィ来なかったね」
「確かに。シャドーの気配があったら来そうだけどな」
「シエルたちのところへ行こう。ソレイユ、まだ近くに反応はあるんでしょ?」
「あるよ!」
「たぶん雨宮さんのところでしょ」
「雨宮さん?」
私達はたぶんシエルたちがいると思われる研究施設へと向かい、歩き始めた。
ノックスは雨宮さんとは会ったことがないので、軽く説明しながら森の中を歩く。一応、私が怪しいと考えていることも話しておいた。やはりノックスも話を聞くかぎり怪しいと言っていた。
「まだ直接会ってないからわからないけど、警戒してた方がいいな」
「うん。ノックスから見ても判断してほしい」
「任せて。一応闇魔法に携わってたこともあるし、気配的なものはわかるはず」
「あ、そうなんだ」
「うん。どんな人たちに操られてたのかは覚えてないんだけどね」
「人たち? 複数人いるの?」
「なにかの組織のはずだよ。最初に関わりを持ったときも何人かいた」
「そ、そうなのね。目的はなんなんだろう」
「さぁ? ただ俺が両親を亡くして、落ち込んでいたときに接触してきたんだよ」
シャドーの裏にいる組織について少し聞けたところで、研究施設が見えてきた。
「ここが?」
「うん。いるかな?」
ピンポーン!
施設入口にあるチャイムを鳴らす。さすがにシエルたちの反応があるため、無人のことはないと思うが……
しばらく待つとガラス扉ごしに、奥の方から人影が小走りで近づいてくるのが見えた。あのシルエットはたぶん雨宮さん?
ガチャ
「すみません! お待たせしました。ルキアさんお久しぶりです」
「あ、雨宮さん。お久しぶりです」
出てきた雨宮さんは眼鏡に天パの髪は変わっていなかったが、マスクをしていて顔がほとんど隠れている。
「マスク?」
「あぁちょっと風邪気味で。それでどうしました?」
「あーと、リリィ来てないですか?」
「リリィさんですか? あぁ来てらっしゃいますよ!中へどうぞ。」
「ありがとうございます。……? ノックスどうかした?」
雨宮さんに招かれたため、中へ入ろうとしたときノックスが少し停止しているのがわかった。
「ん? あ、なんでもない。すみません失礼します」
「えぇ、どうぞ。ノックスさん」
雨宮さんが少し目を細めてノックスを見た。なんだろうその反応。気になったが、雨宮さんはそのままこちらへ背中を見せて歩きだした。
私も続こうとしたとき、後ろからノックスにこそっと話しかけられた。
「俺、あの人にどこかで会ったことある」
雨宮さんは何者だろうか。




