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(16) 日常への帰還


 足が床にゆっくりと着く感覚がした。今回は無事に移動できたようで、リリィの部屋へと私達は到着した。


「じゃあ無事に帰ってきたところで……俺たちはいったん家に帰るよ。」

「え? もう?」

「うん。家の掃除もしなきゃだしね」

「そうね、兄さん。リュンヌお願い」

「わかったわ」

「「じゃあまた!」」


 聖とルーナそう言って、リュンヌの手を掴んで消えていった。帰ったのだろう。……今度またルーナたちの家にお邪魔したいな。きっとそこは暖かい家に戻っていることだろうから。

 ちなみにルーナたちが帰る前に連絡先は交換済みだ。なにかあったらまた連絡する手はずになった。


「とりあえずいったん落ち着いたー!」

「そうだね」


 変身を解除し、ソファーへと勢いよく腰かける。その隣に百合がそっと座った。


「ここでルキアと百合の違いが出るねー」

「うるさいなー。知ってる人しかいないからいいでしょー」


 ソレイユと軽口を叩く。

 こうしていると日常に戻ってきた感じがする。まぁ考えなくちゃいけないこともたくさんあるけれど……。


 こうしてこの後は何事も起こらずに、1日が終わった。



 ガチャガチャパタパタ……

 心地よい眠りの中で、なにか物音が鳴っていることに気づいた。誰かがなにかしてる……?

 寝ぼけながら布団から這い出る。まだまだ寒い季節ということもあり、体を震えさせながら寝室を出た。


 ガチャ

 リビングへと足を踏み入れると暖かい空気が私を包んだ。


「あれ? ルキアちゃん起きちゃった?」

「うん。なんとなく。学校?」

「そうだよ。うるさくしちゃったかな」

「大丈夫だよ」

「あ、朝ごはんはカウンターの上においてあるから!」

「了解。時間大丈夫?」

「やばい! いってきます!」

「いってらっしゃい!」


 制服を着た百合が学校に行く準備をしていたようだった。

 時間が迫っているのもあって、バタバタと家を出ていった。


「あ、たまごトースト」


 まだ作りたてなのか温かい朝ごはんを口へと運ぶ。うん、幸せ。


 そのままのんびりと静かな朝の時間を楽しんだ。ソレイユはまだまだ夢の中のようだ。



 あの後ソレイユが起きてきて、静かな時間は終了した。

 今はソレイユと対戦ゲームをしているところだ。


「待って、なんかソレイユうまくない!?」

「得意なんだよねー! このゲーム!」

「そういえばソレイユって地球のものとかなんでそんなに詳しいの?」

「あー、この世界で暮らして長いからね」

「この姿で生活してたの?」

「あ、いいの? ルキア負けちゃうよ?」

「え? あっ!」


 ソレイユのこれまでの生活は気になったが、ゲームが負けそうになってその思考はどこかへ飛んでいってしまった。


「あー! 負けた!」

「ちゃんと集中してないからだよー」


 ソレイユがドヤ顔をかましてくる。可愛い見た目のはずなのに、腹立つ表情だ。


「よしもう一回!」

「もちろんといいたいんだけど……」

「もしかしてシャドー?」

「正解!」

「ならしょうがない。行こう!」


 ソレイユの手を握る。周りの風景が変わっていく。



 気がつくと、外に立っていた。足元には小さな小石がまんべんなく散りばめられていて、目の前には大きな木造の建物が立っている。いくつかの動物のようなものの石像も見える。


「ここは……?」

「神社だね。こんな神聖な場所に出るなんて」

「神聖な場所?」

「そう。神様が祀られているところだよ」

「へぇー。それならなおさら早くシャドーを祓わないとね!

 メイクアップマジック!」


 私の体が光に包まれ、服装が変化していく。

 あっという間にフリフリキラキラの魔法少女の格好になった。


「さぁシャドーはどこ……」

 

 ガシャーン!

 木造の建物の裏手の方から大きな物音が聞こえた。

 思わずソレイユと目をあわせてうなずいた。そして物音の方へと急いで向かう。



「ニクイニクイ!」


 一体のシャドーが裏手にある木々へと攻撃をしかけているのが視界に入った。


「こらー! なに暴れてるの!」

「ニクイニクイニクイ!」

「聞こえてない? ……こちらに攻撃をしてくる様子もないね。木が憎いの?」

「まるで丑の刻参りだね」

「丑の刻参り?」

「まぁ呪いの儀式みたいなものだよ」

「へぇー。まぁどちらにせよ、止めなきゃね」


 木々に囲われた場所で縦横無尽に暴れまわっているシャドーへと近づく。けれど手らしきものを形作っている部分が素早く動き、なかなか隙が見つからない。


「あのシャドーの中心に核があるのは見えるけど、あそこまで炎が届かない。」

「僕が囮になろうか?」

「私達の存在を無視してるか、気づいてないかのどちらかはわからないけど、こっちに意識を向けてない以上は囮は意味ない気がする」

「そっか……」


 シャドーの攻撃がギリギリ当たらない木の上で、シャドーを観察する。遠距離攻撃をしたところで、周りを動きまわっている触手? のようなものに阻まれる気がする。

 

「そういえばソレイユ、あのシャドーが丑の刻参りに似てるとか言わなかった?」

「うん。神社で恨み言を言いながら、木に攻撃を与えてるってそれしか思いつかなくて。まぁ深夜じゃないからそのものではないと思うんだけど」

「もしかしたら関係あるのかもしれない。ねぇ! それって儀式なんでしょ? なんかダメなことないの?」

「ダメなこと……。あ、噂だと人に見られたらダメって聞いたことある」


 人に見られたらダメ……。今私達があのシャドー見てるけど何の変化もないな。もしかして本当に私達の存在に気づいてない?


「なにか……存在に気づかせる方法……」

「あの触手みたいなのが高速で動いているから、その音とかで気づかないのかも」

「音は聞こえないなら……光は?」

「光?」

「そう。この鬱蒼とした森に中で、急にまばゆい光が近くで光ったらそっちに気づかないかな?」

「気づくかなぁ?」

「だってあのシャドーの動きみて、適当に歩いているんじゃなくてちゃんとまだ傷をつけてない木の方へと歩いてる」

「……ほんとだ。じゃあ見て動いてるのかな」

「わからないけどやってみる価値あり!」


 私の炎魔法は最近白く変化し、よりまばゆいものになった。これならなおさら強く発光して、シャドーの意識を向けられるかもしれない。

 木の上から飛び下り、シャドーの目線の先らしきところで大きな炎を出現させる。


「フレイム!」


 真っ白な炎が薄暗い森の中で強く発光しながら生まれた。

 縦横無尽に暴れまわっていた触手? がピタッと止まった。


「あっ! 止まっ」

「ミタナ……? ミタナミタナミタナミタナ!?」

「ひっ! こわっ!」


 シャドーは目を見開き、こちらへと勢いよく向かってきた。


「でも好都合! フレイム!」

「ギャー! アツイ! アツイ! ……アァ……」


 真っ直ぐに突っ込んできたシャドーへと炎魔法を放った。シャドーは炎に包まれ、苦しみながら消えていった。


 シャドーが燃え尽きる寸前に抜き取った核を手のひらの上で転がす。


「よし核回収。」

「ルキア、ナイスー!」

「なんとかなってよかったよ。じゃあ吸収。」


 紫色の核へと魔力を込める。だんだんと白色へと変色し、浄化されているのがわかる。

 そして真っ白になった核を吸収した。


「変わったシャドーだったね。」

「そうだね。……あ。」

「ん?」

「またシャドーの気配。」

「えっ!?」


 まだまだシャドー退治は続きそうだ。


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