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(14) きっと生まれ変わっても


「ん……私は……」

「おはよう。エウロ」

「ファタール……? ゴホッ!」

「あっ! 大丈夫?」


 エウロが目を目を覚ましたが、顔面にかかっていた液体が口に入っていたようでむせ始めた。それをやった張本人はしれっと心配の言葉をかけている。


「なんで水が……? あ、みなさん。みっともないところをお見せしました。……このままの挨拶で申し訳ありません」

「いや、全然かまわないけど……エウロは大丈夫?」

「えぇ、ルキアありがとうございます。そうだ、魔法少女ルーナこちらに来てもらえませんか」

「え? 私? ……わかりました」


 目を覚ましたエウロは、夢で見たときとは異なり、やはり人間とは異質の存在であると感じた。

 エウロに呼ばれたルーナもそのことを感じるのか、恐る恐る近づいていった。あの特別な目をルーナにも授けるのだろうか。


 あんまり近くに立っていても邪魔かと思い、エウロたちから離れると服を軽く引っ張られる感覚がした。感覚の方へ目を向けると、リリィが小さくスカートを引っ張っているのが見えた。


「リリィ? どうしたの?」

「いや、ルキアなんだか妖精王様と親しそうじゃない?」

「えっ!? ……あ、でも確かに夢で会った気がして、勝手に友達みたいに接しちゃってたかも」

「ルキアも見たの?」

「え? 聖も?」

「俺は彼女と会うのは初めてのはずなんだけど、なんだか初めて会った気がしないんだ」

「2人ともそうなんだ。……もしかしたら本当に会ったことあるのかもよ?」

「リリィどういうこと?」

「輪廻転生ってことかな。前世とかで会ったことあるのかも」

「「前世……」」


 もしかして見せられている夢は前世の記憶なのかもしれない。確かに前に友人たちと呼んでくれたし。もし本当にそうなら……エウロは友人に忘れられているってことなのか……。


「でもまた来世で会えるって素敵だね」

「え?」


 少し暗い気分になっていたときに、柔らかいリリィの声が耳に入ってきた。


「私も来世でもこの先の来世でも、何度でもみんなに会いたいよ」

「記憶がなくても?」

「うん。だってまた友達になれると思ってるから」

「リリィ……。そうね。私もきっとまた友達になる。絶対!」

「それは……俺も入ってるの?」

「えぇ。最初は男の人ってだけで距離をおいてすみません。……でも話をきちんとすることで……大切な仲間だって思えるようになりました」

「リリィ! 聖! 良かった!」


 3人で絆を確認しあっていると、エウロたちの方から声が投げ掛けられた。ルーナが目を白黒させているのも見える。


「おーい! 仲良しのみんなー! こっちおいでー!」


 ファタールの呼びかけでエウロたちの方へ向かった。


「楽しそうに話してたけど何の話してたの?」

「えっとね、生まれ変わってもまた友達になろうって話! きっとこのみんななら記憶がなくてもまた友達になれるって思うの!」

「!」


 私の言葉にファタールはひどく驚いた顔をしたが、すぐに暖かい日だまりのような笑みを浮かべた。


「ファタール、どうかしたの?」

「いや……素敵だね。ルキアらしいよ」

「私だけじゃないよ! みんな同じ考え!」

「そっか。じゃあ僕も何度でも君たちと友達になりたいな。僕はずっと覚えておくから、また会いに行くよ」

「ずっと覚えておく?」


 そっか。ファタールは長生き? だから私達の寿命よりも長い時間を生きるのか。

 リリィとルーナはその話をしてもらったのか、驚いた様子は見せない。唯一驚いているのは聖だけだ。


「そっかノックスには話してなかったっけ」

「聖でお願いします」

「! ……じゃあ聖ね。僕は長い時間を生きていてね。普通の人間の寿命よりも遥かに長い時間を生きているんだ」

「なるほど……。でもまぁ俺が生まれ変わってもきっと記憶をなくしているんでしょうけど、またあなたとはめぐり会うと思います」

「どうして?」

「なぜかあなたと話すと懐かしい心地がするんです。きっと前世に友人とかだったんじゃないですか? ……仮に違くても今世で友人になればいい。ルキアが信頼してるならいい人ぽいですし?」


 ファタールは聖の言葉に呆気にとられた顔をしていたが、急に破顔して笑いだした。


「あはは! 思慮深く見えて、意外と脳筋だよね」

「……やっぱり昔の知り合いなんじゃ……?」

「内緒! さぁ、雑談はここまでにしようか」

「お話が一段落したところで、皆様にお伝えしなければいけないことがあります」


 にこやかな会話が終わったところで、エウロが真剣な目をして語りだした。


 エウロによると、この闇の魔力の汚染が停止しているのは一時的なものらしい。今は私達の浄化とファタールの使ったポーションによって、簡易的な封印をしているだけに過ぎないようだ。

 また時間が経過すれば、闇の魔力の汚染は再開するだろうと……。


「私の力ではここに闇の魔力を止め、妖精界への影響を最小限にすることが限界です。それもどこまで持つか……」

「なっ! じゃあいったいどうすれば!」

「それを皆様に解決してほしいのです」


 エウロが一体化している大樹は世界のバランスを保つ役割をしているのだという。そしてその大樹の根っこ、1本1本の先が異なる世界と通じているらしい。

 なるほどそれで前にリュンヌが、エウロのことを管理者なんて言っていたのか……?


「今、もっとも汚染が伝わってくるのが……地球がある世界なのです。」

「「「「「えっ!?」」」」」

「地球のどこかに汚染を発生させているものがあるはずです」

「それって、どこにあるかはわからないの?」

「申し訳ありません。わからないのです」

「地道に探すしかないってわけね」

「えぇ、危険だとは思いますがどうかお願いいたします」


 エウロの宝石のような目から涙が流れ出した。

 思わずかけよって両手で彼女の頬を優しく包む。


「泣かないで! 大丈夫! 私達に任せて! だって私達は魔法少女だから! 闇を祓ってみせる!」


 彼女の目から涙は止まらないが、瞳がきらめき出したのがわかった。あぁ、ちゃんと伝わってる。


「じゃあさっそく地球へと向かいます!」


 後ろに立っていた仲間たちの方へと振り返る。彼女たちの顔も正義感に満ちた顔になっているのがわかった。

 決意を新たにしながら、妖精王の部屋を出ていく。



 残されたエウロとファタールは軽く会話をかわす。


「彼女たちは相変わらず強いね」

「えぇ。……逆に私なんて……」

「やれることを精一杯できればいいんだよ。じゃあ僕も行こうかな」

「そうですね。……外のことをお願いいたします。私はここでできるだけのことをします」

「ん、頑張れ。たまに僕もここの浄化には来るから」

「でもあなたは他の世界の浄化もしていて……仕事が……」

「これくらいどうってことないさ。逆に気づくのが遅くなってごめんね」

「その点は尊敬します。あなたに負けないように頑張らないとですね」

「あれー? 意外と厳しい!?」


 2人の友人のようなやりとりが部屋に響いていた。



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