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(13) 妖精王エウロを救え


 濃厚な闇の魔力が満ちているせいか、なかなか十分な光の魔力が集まらない。これでもリリィの魔力が足されて、魔法が形成されるスピードが上がっているはずなのに……。魔力が集まるスピードが普段戦うときの5分の1ほどのスピードだ。

 こんな中で魔法を1人で形成できていたファタールっていったい……。


「あっ! 木の根がボコボコとなり始めた!」

「……良くない歓迎の予感だね」

「俺たちで2人を守ろう」


 ルーナの声で皆が視線を大樹へと向けた。私達からはうっすらと見える大樹の根っこが、不自然に盛り上がり始めているのがわかる。まるで何かが生まれてくるかのようだ。

 みんなもそのことを察知したのか、私達の護衛をしてくれるようだ。


「ごめん! 少し時間かかる!」

「おっけー! こっちは僕たちに任せて」

「……! 来たわ!」


 大樹からシャドーが生まれてきた。

 水魔法が形成されるまでの耐久戦スタートだ!



 魔力がなかなか集まらない……。リリィの眉間にも皺がよっているのが見えるから、彼女も相当魔力を込めているはずだ。

 魔法を生成しようとする私達に近づく1つの影。


「ギャハハ!」


 カキン!

「危ない危ない」

「ファタール!」

「こっちは心配しないで、君たちには指1本触れさせないから」


 1体のシャドーがこちらに向かってきたが、ファタールのバブルによって守られた。先ほどの発生源ほど闇の魔力が濃くないからか、ファタールは手を繋がずに魔法を形成させている。

 ……やはり魔力量が私達とは桁違いなのかもしれない。


 視界の先ではルーナと聖が肉弾戦でシャドーたちと戦っている。あの2人は今はうまく魔力が練れないと思うけど……素の身体能力?

 まるで2人でダンスを踊るように、群がってくるシャドーを蹴散らしている。……強いな月影兄妹。それに……ピンチだけどなんだか楽しそうだ。


 って考え事をしてる場合じゃない。集中しなきゃ。

 でも……そろそろ。


「リリィ、いけそうかも」

「うん。私もだいぶ魔力を練れたよ。ヒール!」


 リリィのヒールが私の体を包む。私の魔力と混ざり合い、大きな力へと変わっていく。


「ウォーターフォール!」


 大きな水の塊が部屋の上部へと出現した。それが何百、何千の水の粒となって部屋中へ降り注ぐ。現れた水魔法にはリリィの魔力がちゃんと含まれていて、遠目からみても金色に輝いているのがわかる。


 目の前が見えなくなるほどの水量が降ってくる。

 地面に水がぶつかる音の他に叫び声が聞こえてくる。……これはシャドーの叫び声?


「いったいどうなったの……?」


 目の前の光景を見ながら、祈るような気持ちで隣に立つリリィの手を握る。リリィが強く握り返してくれて、心強く思えた。


「うまく言ったみたいだね」


 少し後ろに立っていたファタールからポツリと聞こえた。


 そこからすぐに目の前に降っていた水魔法が止まった。開けた視界にはシャドーの姿は見当たらない。いるのはずぶ濡れになった私達だけだ。


「ルキア! 成功じゃない!?」


 少し離れた場所にいるルーナが嬉しそうに声をかけてくる。私は親指を立てて、成功の合図を送った。それを見て、ルーナも聖も嬉しそうに笑った。

 先ほどまでこの空間を満たしていた闇の魔力も見当たらない。逆に光の魔力が空間を満たしていて、息がしやすい。


 ソレイユたちもやっと部屋に入れるようになったらしく、ふわふわと飛んできた。まぁ濡れている私達に触れたくはないのか、近くで浮いているだけだ。


 コツコツ……

 私の少し後ろにいたファタールが歩きだし、私を追い抜いていった。向かう先は……大樹、いやエウロのもとだ。


 それに続くように私も歩きだした。手を繋いだままのため、引っ張るようにリリィも連れていく。

 途中でルーナたちにも合流して、ファタールに続く。


「ねぇ、ルキア。あの女性が?」

「そう妖精王エウロだよ」

「この間、私の最後の力をとか言ってなかった?」

「言ってたね……」

「だ、大丈夫なのかな」

「まだ生きているとは思うわよ」


 いつの間にかルーナに抱かれているリュンヌがぽそりと呟く。


「え? リュンヌ!?」

「彼女がもし亡くなっていたら、妖精界の汚染はあんなものじゃすまなかったはずよ」

「きっとファタールがなんとかしてくれるよ。すごい魔法使いだから」

「ソレイユ……。信頼してるのね」

「まぁ僕の師匠みたいなところもあるしね」

「私の師匠でもあるんですよー。リュンヌもですねー」

「へぇー!」

「買いかぶりすぎだよ」


 ファタールのすごさを改めて聞いていると、どうやら聞こえていたらしく、ファタールから照れ臭そうな返事が返された。

 

 そんなファタールは意識のないエウロに近づいたかと思えば、懐から瓶を取り出した。

 あれは……ポーション? アクアの家では見たことのない種類に見えるけど。どうするのだろうか。


 パシャ!

「「「「えっ!?」」」」


 ファタールはその瓶の中身をエウロへとかけた。中身は液体のようでもともと水魔法で少し濡れていたエウロの顔が、もっとびしょぴしょになった。


「ちょっと! なにしてるの!?」

「ん? あぁ、起こそうと思って」

「いやいや、それにしても乱暴すぎじゃない!?」


 思わずファタールに詰め寄る。

 けれど後ろではソレイユたちがなにやら物騒な話をしているのが、聞こえてきた。


「僕もあぁやって起こされたことがあるな……」

「確かあんたが毒沼に落ちたときね」

「違いますよー。媚薬を間違えて飲んでしまったときですー」

「どっちも違うよ!?」


 え? この師弟の間じゃ、普通のことなの……?

 私だけがおかしいのかと思い、リリィたちに目を向けるとみんなも目を丸くさせているのがわかった。良かった。私が変わっている訳じゃなかった。


 そのポーション瓶の中身をファタールに問おうとしたとき、エウロのまぶたが震えたのがわかった。


 そしてゆっくりと目が開かれた。宝石のような目が見えた。


 

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